【試乗記】ルノー・キャプチャー インテンス(FF/6AT)

【試乗記】ルノー・キャプチャー インテンス(FF/6AT)
ルノー・キャプチャー インテンス(FF/6AT)

頼りがいのあるクルマであれ

日本導入から4年を経たルノーのコンパクトSUV「キャプチャー」の実力を、大幅なマイナーチェンジを機にあらためて検証。商品力高めのイマドキなクロスオーバーに“ルノーらしさ”はあるか? ドライブフィールを中心に、その出来栄えを確かめた。

トランスミッションに難あり

「キャプチャー」は2013年のジュネーブショーで世界初公開されたルノーのコンパクトSUV。日本では2014年2月に発売された。
「キャプチャー」は2013年のジュネーブショーで世界初公開されたルノーのコンパクトSUV。日本では2014年2月に発売された。
日本に導入される仕様は、上級グレードの「インテンス」およびレザーシートを備えた「インテンスレザー」のみ。今回はインテンスに試乗した。
日本に導入される仕様は、上級グレードの「インテンス」およびレザーシートを備えた「インテンスレザー」のみ。今回はインテンスに試乗した。
センターコンソールに配置されたレバー式のシフトセレクター。「キャプチャー」のトランスミッションは、デュアルクラッチ式ATの6段EDCである。
センターコンソールに配置されたレバー式のシフトセレクター。「キャプチャー」のトランスミッションは、デュアルクラッチ式ATの6段EDCである。
いいニュースと悪いニュースとがあって、いいニュースはキャプチャー、日本でそこそこかもっと売れている。ルノー・ジャポンの販売成績アップ(8年とか連続で対前年比アップであるらしい)に確実に貢献している。そんなのはいまさらニュースでもなんでもないかもしれないけれど、2014年だったかに日本で発売されたそのキャプチャーがマイナーチェンジされて今回試乗記を書く仕事がまわってきたのは、少なくとも私にとってはいいニュース……なのかどうか。

で、悪いニュース。まず、このクルマは変速関係の運転があまり上手ではない。というか、ハッキリ申し上げてヘタである。1.2リッターのガソリン直噴ターボに、トランスミッションはDCT(Dual Clutch Transmissionの頭文字)、ルノー呼称だとEDC(Efficient Dual Clutchの頭文字)……ということで額面的にはイマっぽいけれど、乗った感はむしろガチャコン(シングルクラッチAMT)に近いかもしれない。それも、どちらかというとあまり(かもっと)デキのよろしくないほうの。そのぐらいに思っておいてもらうと、イザ試乗したときビックリしなくて済むでしょう。

具体的な現象としては、たとえば変速のショックやアクセルペダルの操作(低いギアで走っているときにスパッと離すとか)に対するギクシャクが、前後方向やピッチング方向のGフォースの変化というか急変の原因になっている。で、それらによって体が、あるいは頭部が揺さぶられる。

「キャプチャー」は2013年のジュネーブショーで世界初公開されたルノーのコンパクトSUV。日本では2014年2月に発売された。
「キャプチャー」は2013年のジュネーブショーで世界初公開されたルノーのコンパクトSUV。日本では2014年2月に発売された。
日本に導入される仕様は、上級グレードの「インテンス」およびレザーシートを備えた「インテンスレザー」のみ。今回はインテンスに試乗した。
日本に導入される仕様は、上級グレードの「インテンス」およびレザーシートを備えた「インテンスレザー」のみ。今回はインテンスに試乗した。
センターコンソールに配置されたレバー式のシフトセレクター。「キャプチャー」のトランスミッションは、デュアルクラッチ式ATの6段EDCである。
センターコンソールに配置されたレバー式のシフトセレクター。「キャプチャー」のトランスミッションは、デュアルクラッチ式ATの6段EDCである。

「ルーテシア」はこうじゃなかったのに

今日のルノー車ではおなじみのパワープラントとなっている、1.2リッター直4直噴ガソリンターボエンジン。118psの最高出力と205Nmの最大トルクを発生する。
今日のルノー車ではおなじみのパワープラントとなっている、1.2リッター直4直噴ガソリンターボエンジン。118psの最高出力と205Nmの最大トルクを発生する。
2018年3月のマイナーチェンジで採用された、ドライブモードセレクト機能「エクステンデッドグリップ」のコントローラー。路面の状況に応じて、「標準モード」「ソフトグラウンドモード」「エキスパートモード」の3種類から走行モードを選択できる。
2018年3月のマイナーチェンジで採用された、ドライブモードセレクト機能「エクステンデッドグリップ」のコントローラー。路面の状況に応じて、「標準モード」「ソフトグラウンドモード」「エキスパートモード」の3種類から走行モードを選択できる。
センタークラスターに搭載された「R&GOラジオ」も、マイナーチェンジで追加された装備のひとつ。専用のアプリをスマートフォンにインストールすると、各インフォテインメント機能をスマートフォンで操作できるようになる。
センタークラスターに搭載された「R&GOラジオ」も、マイナーチェンジで追加された装備のひとつ。専用のアプリをスマートフォンにインストールすると、各インフォテインメント機能をスマートフォンで操作できるようになる。
「変速がヘタ」だけならまだしもご愛嬌(あいきょう)かもしれないけれど(ワーゲンじゃなくてルノーだし)、変速その他にともなってエンジン+トランスミッションがハデにユサユサして、それが乗り心地の快適さの領域にまで食い込んでいる。影響を及ぼしている。路地裏みたいなところを走っていると、だからすごくストレスがたまる。広い道路へ出ても、まだ足りない。早く、発進加速とか変速とかのできるだけないところを走りたい。心からそう思うようになる。

トランスミッション関係の印象が芳しくないとしたらおそらくその半分はエンジンのせいで、実際この1.2ターボはあまり……。たとえばレスポンスとか。1速の無過給領域でミョーに上のほうまで引っ張りたがるのも、ちょっと気になる。同じ(?)パワートレインの「ルーテシア」はこんなじゃなかったと記憶していて、だから「キャプチャーのこの仕様、パワートレインの車両適合はちゃんとやってあるのか?」と思った(同じクルマのセダンとワゴン程度の重さの違いでも、ドライバビリティーがズレてしまうことがある)。気を使ったところで自動変速、こちらでやれることはロクにない。ロクにないけれどゼロでもないところがまたナンとも……。

今日のルノー車ではおなじみのパワープラントとなっている、1.2リッター直4直噴ガソリンターボエンジン。118psの最高出力と205Nmの最大トルクを発生する。
今日のルノー車ではおなじみのパワープラントとなっている、1.2リッター直4直噴ガソリンターボエンジン。118psの最高出力と205Nmの最大トルクを発生する。
2018年3月のマイナーチェンジで採用された、ドライブモードセレクト機能「エクステンデッドグリップ」のコントローラー。路面の状況に応じて、「標準モード」「ソフトグラウンドモード」「エキスパートモード」の3種類から走行モードを選択できる。
2018年3月のマイナーチェンジで採用された、ドライブモードセレクト機能「エクステンデッドグリップ」のコントローラー。路面の状況に応じて、「標準モード」「ソフトグラウンドモード」「エキスパートモード」の3種類から走行モードを選択できる。
センタークラスターに搭載された「R&GOラジオ」も、マイナーチェンジで追加された装備のひとつ。専用のアプリをスマートフォンにインストールすると、各インフォテインメント機能をスマートフォンで操作できるようになる。
センタークラスターに搭載された「R&GOラジオ」も、マイナーチェンジで追加された装備のひとつ。専用のアプリをスマートフォンにインストールすると、各インフォテインメント機能をスマートフォンで操作できるようになる。

重くて重心の高いボディーに対してアシが弱い

ボディーカラーはいずれもツートンで、テスト車に採用されている「イヴォワール+カプチーノM」を含む、全4種類のバリエーションが用意されている。
ボディーカラーはいずれもツートンで、テスト車に採用されている「イヴォワール+カプチーノM」を含む、全4種類のバリエーションが用意されている。
タイヤサイズは205/55R17。試乗車にはクムホのマッド&スノータイヤ「ソルスKH25」が採用されていた。
タイヤサイズは205/55R17。試乗車にはクムホのマッド&スノータイヤ「ソルスKH25」が採用されていた。
「インテンス」に装備されるファブリックシート。シートカラーは、インテンスにはブラウンとグレーの2色が用意されるのに対し、「インテンスレザー」はブラックのみとなっている。
「インテンス」に装備されるファブリックシート。シートカラーは、インテンスにはブラウンとグレーの2色が用意されるのに対し、「インテンスレザー」はブラックのみとなっている。
リアシートには160mmの前後スライド機構を採用。シートの位置を最も後ろにした場合、ニールームの長さが640mmという広々とした空間が得られる。
リアシートには160mmの前後スライド機構を採用。シートの位置を最も後ろにした場合、ニールームの長さが640mmという広々とした空間が得られる。
ものすごくざっくりいうとキャプチャー、ルーテシアの車高が高いやつである。タイヤ径がルーテシア比デカいぶんをさらに超えてライドハイトが高くなっていて、ということはフツーに考えるとフロントのロワーアームの下反角もアップしている(測ったり比べたりはしてないけれど)。で、そうだと思うとナルホドな感じがあったりする。そんな気が。具体的には、ロールの傾き始めのところに張りがありそうな感じとか。ルーテシア比径のよりデカいタイヤを履いている感じは、これも明瞭にある。ワーキング物件系の頼もしさ。よくいえば、そういえる……かもしれない。

車体のしっかり感は、上屋に関してはハッキリとある。ルーテシア比、いかにもゴツそう&重たそう。しかしシャシー関係はというと、そうでもない。重たくて重心も高いはずの上屋に対して、だからバランス上、少し下がヤワい感じ。メモには「ポヨン」とあった。ポヨンって……。

キャプチャーを運転して有料道路や高速道路(というかぶっちゃけ、信号がロクにない道)を走るのは、楽しいか苦痛かでいうと、まあ楽しい。ルノー、好きだし。でもやはり「ポヨン」である。もうちょっとそれっぽくいうと、フワつき感? 減衰感の不足?

ロールにしろ上下動にしろ、サスペンションがストロークした(縮んだ)先でギュッと止まるか収まるかする感じが足りない。ポヨンと反転。ワインディングロードを走るときなんかもふくめて、そのポヨンがあまり気にならないときはイイ。気にならなければならないほどナイス。で気をよくしてペースを上げると、ポヨンのせいで安心感が薄れる。手に汗。

ポヨン。ことによると、なかにはそれをフランス車っぽさの発露的なナニモノかだと思い込んでくれる人もいるかもしれない。

ボディーカラーはいずれもツートンで、テスト車に採用されている「イヴォワール+カプチーノM」を含む、全4種類のバリエーションが用意されている。
ボディーカラーはいずれもツートンで、テスト車に採用されている「イヴォワール+カプチーノM」を含む、全4種類のバリエーションが用意されている。
タイヤサイズは205/55R17。試乗車にはクムホのマッド&スノータイヤ「ソルスKH25」が採用されていた。
タイヤサイズは205/55R17。試乗車にはクムホのマッド&スノータイヤ「ソルスKH25」が採用されていた。
「インテンス」に装備されるファブリックシート。シートカラーは、インテンスにはブラウンとグレーの2色が用意されるのに対し、「インテンスレザー」はブラックのみとなっている。
「インテンス」に装備されるファブリックシート。シートカラーは、インテンスにはブラウンとグレーの2色が用意されるのに対し、「インテンスレザー」はブラックのみとなっている。
リアシートには160mmの前後スライド機構を採用。シートの位置を最も後ろにした場合、ニールームの長さが640mmという広々とした空間が得られる。
リアシートには160mmの前後スライド機構を採用。シートの位置を最も後ろにした場合、ニールームの長さが640mmという広々とした空間が得られる。

商品力はあるほうなんだけど……

フロントまわりでは、新たに採用されたフルLEDヘッドランプやコの字形のLEDデイタイムランプ、バンパー中央部のスキッドプレートなどが、マイナーチェンジ後のモデルの特徴となっている。
フロントまわりでは、新たに採用されたフルLEDヘッドランプやコの字形のLEDデイタイムランプ、バンパー中央部のスキッドプレートなどが、マイナーチェンジ後のモデルの特徴となっている。
荷室容量は、後席を後端にスライドさせた状態で377リッター、前端にスライドさせた状態で455リッター、ラゲッジボードの位置を下げ、後席をたたんだ状態では1235リッターとなっている。
荷室容量は、後席を後端にスライドさせた状態で377リッター、前端にスライドさせた状態で455リッター、ラゲッジボードの位置を下げ、後席をたたんだ状態では1235リッターとなっている。
「キャプチャー」にはブレーキエネルギー回生機構や、バッテリーからの電源供給の機会を増やしてエンジンの負荷を軽減するエナジースマートマネジメント(ESM)などが搭載されており、JC08モード計測で17.2km/リッターという燃費を実現している。
「キャプチャー」にはブレーキエネルギー回生機構や、バッテリーからの電源供給の機会を増やしてエンジンの負荷を軽減するエナジースマートマネジメント(ESM)などが搭載されており、JC08モード計測で17.2km/リッターという燃費を実現している。
ほどほどのところに美味しい領域が……というと、これはおよそどんなクルマでもそうかもしれない。でもキャプチャーはルノーなんだから、もうちょっと(かもっと)頼れるやつ系の走りのクルマであってほしい。たとえ、とっつきの印象が多少アレだろうと。商品力的にサエなくとも。現実にはキャプチャー、商品力的にはむしろけっこうイケてるほうだと思う。

乗り心地が快適で、普段はボサーッと系かもしれないけれど、イザというとき光る安心の走り→で惚(ほ)れちゃう。ルノーのクルマの価値ないし美点はそこにある。いいルノーの基準からするとキャプチャー、ちょっとならずオッチョコチョイ系の物件といえる。快適さや楽しさを感じられる領域がなくはないけれど、全体に落ち着きが足りない。あと、ゴーストップを繰り返す状況での変速のヘタッピさ(からくる乗り心地の不快さ)。

「じゃあ、いまのルノーではなにがオススメ?」と訊(き)かれた設定で勝手に書くと、私が最近運転したなかでは「トゥインゴ」がイイ。実用車のど真ん中というよりは、ちょっとファンカー寄りの物件として。

トゥインゴのなかでも「GT」がオススメです。さらにいうと、できたら、たぶん、MTのほう。GTはEDCつきの個体しか運転したことがないのでアレだけど、MTモデル比+30kgか40kgかの重量増が車両の後端近くで発生していることによると思われるクルマの動きというか乗り心地関係の現象があったので。

(文=森 慶太/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)

フロントまわりでは、新たに採用されたフルLEDヘッドランプやコの字形のLEDデイタイムランプ、バンパー中央部のスキッドプレートなどが、マイナーチェンジ後のモデルの特徴となっている。
フロントまわりでは、新たに採用されたフルLEDヘッドランプやコの字形のLEDデイタイムランプ、バンパー中央部のスキッドプレートなどが、マイナーチェンジ後のモデルの特徴となっている。
荷室容量は、後席を後端にスライドさせた状態で377リッター、前端にスライドさせた状態で455リッター、ラゲッジボードの位置を下げ、後席をたたんだ状態では1235リッターとなっている。
荷室容量は、後席を後端にスライドさせた状態で377リッター、前端にスライドさせた状態で455リッター、ラゲッジボードの位置を下げ、後席をたたんだ状態では1235リッターとなっている。
「キャプチャー」にはブレーキエネルギー回生機構や、バッテリーからの電源供給の機会を増やしてエンジンの負荷を軽減するエナジースマートマネジメント(ESM)などが搭載されており、JC08モード計測で17.2km/リッターという燃費を実現している。
「キャプチャー」にはブレーキエネルギー回生機構や、バッテリーからの電源供給の機会を増やしてエンジンの負荷を軽減するエナジースマートマネジメント(ESM)などが搭載されており、JC08モード計測で17.2km/リッターという燃費を実現している。

テスト車のデータ

ルノー・キャプチャー インテンス
ルノー・キャプチャー インテンス
ルノー・キャプチャー インテンス

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4135×1780×1585mm
ホイールベース:2605mm
車重:1280kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:118ps(87kW)/5000rpm
最大トルク:205Nm(20.9kgm)/2000rpm
タイヤ:(前)205/55R17 91V M+S/(後)205/55R17 91V M+S(クムホ・ソルスKH25)
燃費:17.2km/リッター(JC08モード)
価格:269万9000円/テスト車=276万9200円
オプション装備:※以下、販売店オプション ETC車載器(1万2960円)/フロアマット(2万5920円)/エマージェンシーキット(3万1320円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2338km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:305.8km
使用燃料:22.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.8km/リッター(満タン法)/13.8 km/リッター(車載燃費計計測値)


ルノー・キャプチャー インテンス
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