【試乗記】2018ワークスチューニンググループ合同試乗会(前編:TRD/STI編)
- トヨタ・クラウン2.0 RS TRD(FR/8AT)/ハイエース スーパーGL TRD(FR/6AT)/スバルWRX STIタイプRA-R STIパフォーマンスパッケージ装着車(4WD/6MT)/フォレスター プレミアム STIパフォーマンスパーツ装着車(4WD/CVT)/インプレッサスポーツ2.0i-L EyeSight STIパフォーマンスパーツ装着車(4WD/CVT)
ねらいはさまざま
TRD/STI/NISMO/無限という国内メーカー直系の4ブランドが、”峠道”のようなクローズドコースで合同試乗会を開催。まずはTRDがチューンした「クラウン」「ハイエース」と、STIのパーツをフル装備した「WRX STIタイプRA-R」「フォレスター」「インプレッサスポーツ」の走りをリポートする。
ポテンシャルの高さが光る ――TRDクラウンfor RSボディー
ニュルブルクリンクでのテスト風景をカタログ上でうたうのみならず、プロモーションビデオまでを用意して歴代のモデルとは“走りの格”が異なることをアピールする新型クラウン。
でも、メーカーが合同で借り切ったインダストリアルプールと呼ばれる時間帯になると、MINIの一番下のグレードや、時にはフォードのパネルバンなんかも普通にテスト走行しているんだけどね……と、当初はあの場所をあまりに神格化することにちょっと違和感を覚えたりもしたものだ。
が、「なるほどこれならば、“ニュルで鍛えた!”と高らかにうたいたくもなるだろうな」と理解できるのが、いくつかのTRD製パーツを組み込んだ2リッターターボの「RS」グレードで、群馬サイクルスポーツセンターの荒れ果てたコース上を、全開走行してみた後となる今の心境である。
ドレスアップ効果を主眼に置いたボディーキットを除けば、ボディー前後端部への「パフォーマンスダンパー」装着や、「86」などでもおなじみの「ドアスタビライザー」採用、シューズの交換など、行われたリファインは小規模だ。
それゆえ、ステアリング操作への応答がシャープで、ボディーの動きの収まりが良く、荒れた路面上でも舐(な)めるように接地してくれる……といった好印象の大半は「クラウン本来のポテンシャル」と推測できるものの、それでも前出のさまざまなTRD製のアイテムが、そんな美点に拍車を掛けてくれたことは疑いない。
鍛造ホイールと組み合わされたミシュランタイヤも、コンフォート性と走りの性能のバランスがベストマッチ。「クラウン、侮れず!」なのである。
でも、メーカーが合同で借り切ったインダストリアルプールと呼ばれる時間帯になると、MINIの一番下のグレードや、時にはフォードのパネルバンなんかも普通にテスト走行しているんだけどね……と、当初はあの場所をあまりに神格化することにちょっと違和感を覚えたりもしたものだ。
が、「なるほどこれならば、“ニュルで鍛えた!”と高らかにうたいたくもなるだろうな」と理解できるのが、いくつかのTRD製パーツを組み込んだ2リッターターボの「RS」グレードで、群馬サイクルスポーツセンターの荒れ果てたコース上を、全開走行してみた後となる今の心境である。
ドレスアップ効果を主眼に置いたボディーキットを除けば、ボディー前後端部への「パフォーマンスダンパー」装着や、「86」などでもおなじみの「ドアスタビライザー」採用、シューズの交換など、行われたリファインは小規模だ。
それゆえ、ステアリング操作への応答がシャープで、ボディーの動きの収まりが良く、荒れた路面上でも舐(な)めるように接地してくれる……といった好印象の大半は「クラウン本来のポテンシャル」と推測できるものの、それでも前出のさまざまなTRD製のアイテムが、そんな美点に拍車を掛けてくれたことは疑いない。
鍛造ホイールと組み合わされたミシュランタイヤも、コンフォート性と走りの性能のバランスがベストマッチ。「クラウン、侮れず!」なのである。
チューニングのテーマは“快適” ――TRDハイエース
このところ毎年開催されるこのイベントとしては、おそらく初となる商用モデルの出展。それゆえに、その他のブランドのスタッフが大いに慌てた(?)と話題だったのが、その名も「TRDハイエース」だ。
かつては「ワンボックスワゴン」と呼ばれる乗用車版があったものの、今やその手の用途はミニバンが賄うのが主流。そうはいってもスペース効率に優れたこの種のモデルをホビーなどのために用いるユーザーは少なからず存在するわけで、TRDハイエースのチューニングの狙いどころも、「スポーティーに走るためではなく、より快適な乗り心地を得る」という点にあったという。
日本では珍しいホワイトレターが目を引くグッドイヤー製のタイヤとTRD製アルミホイールのセットを除くと、前出の目的達成のために採用されたのは、「アジアクロスカントリーラリー(AXCR)での知見をフィードバックした」という大径ピストンを採用したモノチューブ式ダンパーと、「リアサスペンションからの入力によるボディー変形量を低減させる」という、ボディー後端部に装着されるメンバーブレースのセット。
ちなみに、リアにリーフ式を用いることもあって大幅な構造変更を伴うことになるため、スプリングはノーマルを流用している。
今回のテスト車は、2リッターのガソリンエンジンを搭載した標準ボディーの「スーパーGL」グレードがベースで、そこに125kgのウェイトを搭載した状態。さすがに「ミニバンと同様」とまでは言い難いものの、同条件のノーマル車に比べると、波状路面での“うさぎ跳び挙動”がかなり抑制されることになっていたのは確かだ。
一方、いわゆる“キャブオーバー型”で前輪上へと着座するカタチになるので、サイドの張り出しが強いスポーツシートは乗降性をかなりスポイルする結果に。見た目には優れるが、装着するか否かは吟味が必要だ。
かつては「ワンボックスワゴン」と呼ばれる乗用車版があったものの、今やその手の用途はミニバンが賄うのが主流。そうはいってもスペース効率に優れたこの種のモデルをホビーなどのために用いるユーザーは少なからず存在するわけで、TRDハイエースのチューニングの狙いどころも、「スポーティーに走るためではなく、より快適な乗り心地を得る」という点にあったという。
日本では珍しいホワイトレターが目を引くグッドイヤー製のタイヤとTRD製アルミホイールのセットを除くと、前出の目的達成のために採用されたのは、「アジアクロスカントリーラリー(AXCR)での知見をフィードバックした」という大径ピストンを採用したモノチューブ式ダンパーと、「リアサスペンションからの入力によるボディー変形量を低減させる」という、ボディー後端部に装着されるメンバーブレースのセット。
ちなみに、リアにリーフ式を用いることもあって大幅な構造変更を伴うことになるため、スプリングはノーマルを流用している。
今回のテスト車は、2リッターのガソリンエンジンを搭載した標準ボディーの「スーパーGL」グレードがベースで、そこに125kgのウェイトを搭載した状態。さすがに「ミニバンと同様」とまでは言い難いものの、同条件のノーマル車に比べると、波状路面での“うさぎ跳び挙動”がかなり抑制されることになっていたのは確かだ。
一方、いわゆる“キャブオーバー型”で前輪上へと着座するカタチになるので、サイドの張り出しが強いスポーツシートは乗降性をかなりスポイルする結果に。見た目には優れるが、装着するか否かは吟味が必要だ。
“買えない”がウイークポイント ――WRX STIタイプRA-R STIパフォーマンスパッケージ装着車
装備の吟味や軽量パーツの使用などで軽量化を推進した一方、ピストンやコンロッド、クランクシャフトなどに許された“公差”内の中央値に近いパーツをよりすぐった“バランスド・エンジン”を搭載。こうして、「500万円以内に収める」ことにも配慮をしながらWRX STIの名を名乗るにふさわしい運動性能を追求したのが、去る7月19日に500台という限定台数で発売されたタイプRA-Rというモデル。
ここに紹介するのは、“走りのレベルのさらなる昇華”を目的に、それをベースとしながらさまざまなSTIパフォーマンスパーツを組み込んだ一台だ。
「風洞での実験や、ニュルブルクリンクでの走行実験で効果を実証した」というボディーキット「スタイルパッケージ」などに加えて採用されたのは、フレキシブルタワーバーにフレキシブルドロースティフナー、そしてフレキシブルサポートサブフレームリアという3点で構成される「コンプリートキット」。
いずれにも“フレキシブル”という文字が含まれるように、単に剛性や突っ張り効果を増すだけではなく、適度な“いなし”の動きを許容することでしなやかな挙動を実現させるという、STIではおなじみのパーツ類だ。
そんなモデルでの走りは、まるで“群サイ向けにあつらえた”ような仕上がりだった。
コース内に1カ所だけ存在する「1速まで落としたくなるヘアピン」では、圧縮比を8まで落とされた心臓がトルクの落ち込みを露呈する。けれども、それ以外の場面ではシフトワークを駆使することでフルブースト状態をキープ。常に爆発的な加速力を得ることができるのだ。
路面を捉えて離さない“粘り腰”のフットワークも、とんでもないスピード性能を獲得するための原動力。最大のウイークポイントは、チューニングのベースとなるタイプRA-Rが、「発売後数時間で完売してしまった!」という点だろう。
ここに紹介するのは、“走りのレベルのさらなる昇華”を目的に、それをベースとしながらさまざまなSTIパフォーマンスパーツを組み込んだ一台だ。
「風洞での実験や、ニュルブルクリンクでの走行実験で効果を実証した」というボディーキット「スタイルパッケージ」などに加えて採用されたのは、フレキシブルタワーバーにフレキシブルドロースティフナー、そしてフレキシブルサポートサブフレームリアという3点で構成される「コンプリートキット」。
いずれにも“フレキシブル”という文字が含まれるように、単に剛性や突っ張り効果を増すだけではなく、適度な“いなし”の動きを許容することでしなやかな挙動を実現させるという、STIではおなじみのパーツ類だ。
そんなモデルでの走りは、まるで“群サイ向けにあつらえた”ような仕上がりだった。
コース内に1カ所だけ存在する「1速まで落としたくなるヘアピン」では、圧縮比を8まで落とされた心臓がトルクの落ち込みを露呈する。けれども、それ以外の場面ではシフトワークを駆使することでフルブースト状態をキープ。常に爆発的な加速力を得ることができるのだ。
路面を捉えて離さない“粘り腰”のフットワークも、とんでもないスピード性能を獲得するための原動力。最大のウイークポイントは、チューニングのベースとなるタイプRA-Rが、「発売後数時間で完売してしまった!」という点だろう。
高いコントロール性を誇るSUV ――フォレスター プレミアム STIパフォーマンスパーツ装着車
5代目へとモデルチェンジしたばかりのフォレスター。そんなモデル用のパーツが早くも用意されるのは、“メーカー直系”のブランドならではの身軽さだ。
今回テストドライブしたのは、WRX STIの場合と同様、フレキシブルタワーバーにフレキシブルドロースティフナーと、STIが得意とする「フレキシブルパーツ」に、各部のガーニッシュで構成されるエアロパッケージを装着したモデル。
もちろん、特に前出のSTI製フレキシブルパーツ類が、素早い振動の減衰などによって、さらなる好印象をもたらしていた可能性は大きい。
が、群馬サイクルスポーツセンターのタフでタイトなコースでより強く実感させられたのは、「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」と名付けられた新骨格を採用するモデルのポテンシャルの高さだった。
単にボディーの剛性感が高いというのみならず、そこにしっかりと位置決めをされながらしなやかに動くサスペンションが組み合わされた結果として、すこぶる優れた接地性と高いボディーコントロール性を実感させられることに。
そして、そんな基本的なテイストは現行のインプレッサ以降、SGPを採用する新世代のモデルに共通する印象でもある。それゆえ、実は今回が自身にとっての初試乗となる新しいフォレスターでも、SGPを用いたがゆえのポテンシャルの高さを確信するに至ったということだ。
今回テストドライブしたのは、WRX STIの場合と同様、フレキシブルタワーバーにフレキシブルドロースティフナーと、STIが得意とする「フレキシブルパーツ」に、各部のガーニッシュで構成されるエアロパッケージを装着したモデル。
もちろん、特に前出のSTI製フレキシブルパーツ類が、素早い振動の減衰などによって、さらなる好印象をもたらしていた可能性は大きい。
が、群馬サイクルスポーツセンターのタフでタイトなコースでより強く実感させられたのは、「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」と名付けられた新骨格を採用するモデルのポテンシャルの高さだった。
単にボディーの剛性感が高いというのみならず、そこにしっかりと位置決めをされながらしなやかに動くサスペンションが組み合わされた結果として、すこぶる優れた接地性と高いボディーコントロール性を実感させられることに。
そして、そんな基本的なテイストは現行のインプレッサ以降、SGPを採用する新世代のモデルに共通する印象でもある。それゆえ、実は今回が自身にとっての初試乗となる新しいフォレスターでも、SGPを用いたがゆえのポテンシャルの高さを確信するに至ったということだ。
フットワークの上質さが際立つ ――インプレッサスポーツ STIパフォーマンスパーツ装着車
- ガンメタリックの「STI 18インチアルミホイール」がスポーティーさを強調する。今や地味な印象も受ける「インプレッサ」だが、新世代プラットフォームを採用するモデルの中でも「最も質の高いフットワークを提供してくれる」一台だ。
横方向には力強く踏ん張り、縦方向にはしなやかにいなす――そんなコンセプトに基づいた「フレキシブルパーツ」に加え、ボディーの動きを緩和させるラテラルリンクセットなどを組み込んだのが、今回用意されたインプレッサ。
そんなモデルで早速スタートすると、ゆっくりとしたスピードでも十分に実感できるのが、ベースモデル比でもさらに上質なフットワークのテイスト。
「XV」やフォレスターなど、人気のSUVの陰で今や地味な印象も受けるインプレッサだが、無理に大径のシューズを履かせたり地上高を上げたりしていないこのモデルが、新世代のスバルグローバルプラットフォームを採用するモデルの中にあっても、実は「最も質の高いフットワークを提供してくれる」というのは本当なのだ。
こうして、そもそもベースモデルでも走りの質感に長(た)けたインプレッサだが、当然ながらそうしたベースモデルよりはコストの制約が少なく、開発にもより多くの時間と手間を費やしたSTIパーツを組み込んだこのモデルでは、本来備えている美点がより素直なカタチで味わえるという印象。
そんなインプレッサの走りで不満が残るとすれば、アクセル操作とクルマの動きの間に、どうしてもワンクッションが挟まれてダイレクト感に欠けるCVTがもたらすテイスト。
さすがのSTIでも、この部分だけはどうにもならないだろう……と、もちろん理解はできるのだけれど。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=近藤 俊)
そんなモデルで早速スタートすると、ゆっくりとしたスピードでも十分に実感できるのが、ベースモデル比でもさらに上質なフットワークのテイスト。
「XV」やフォレスターなど、人気のSUVの陰で今や地味な印象も受けるインプレッサだが、無理に大径のシューズを履かせたり地上高を上げたりしていないこのモデルが、新世代のスバルグローバルプラットフォームを採用するモデルの中にあっても、実は「最も質の高いフットワークを提供してくれる」というのは本当なのだ。
こうして、そもそもベースモデルでも走りの質感に長(た)けたインプレッサだが、当然ながらそうしたベースモデルよりはコストの制約が少なく、開発にもより多くの時間と手間を費やしたSTIパーツを組み込んだこのモデルでは、本来備えている美点がより素直なカタチで味わえるという印象。
そんなインプレッサの走りで不満が残るとすれば、アクセル操作とクルマの動きの間に、どうしてもワンクッションが挟まれてダイレクト感に欠けるCVTがもたらすテイスト。
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