【試乗記】マツダ・アテンザセダンXDプロアクティブ(FF/6AT)

【試乗記】マツダ・アテンザセダンXDプロアクティブ(FF/6AT)
マツダ・アテンザセダンXDプロアクティブ(FF/6AT)

これなら長く付き合える

マイナーチェンジを受けた「マツダ・アテンザセダン」に試乗。“マイチェン”とはいえ、その内容はエンジンやシャシーにも手が入った大規模なもの。現行型の最終バージョン(?)の仕上がりを確かめるとともに、来るべき次期型にも思いをはせた。

最近では珍しいゴーゴー偏平タイヤ

今回は、ディーゼルモデルの中間グレードにあたる「XDプロアクティブ」のFF、AT仕様車に試乗。車両本体価格は340万2000円。
今回は、ディーゼルモデルの中間グレードにあたる「XDプロアクティブ」のFF、AT仕様車に試乗。車両本体価格は340万2000円。
「XDプロアクティブ」のAT車には225/55R17サイズのタイヤが標準装備される。ちなみに同じグレードでもMT車には225/45R19タイヤが標準となっており、そのためか価格はMT車のほうが5万円高い。
「XDプロアクティブ」のAT車には225/55R17サイズのタイヤが標準装備される。ちなみに同じグレードでもMT車には225/45R19タイヤが標準となっており、そのためか価格はMT車のほうが5万円高い。
2012年のデビュー以来、現行型「アテンザ」にマイナーチェンジが施されるのは4度目のこと。今回はフラッグシップモデルとしての“走る歓び”を提供することをテーマとしている。
2012年のデビュー以来、現行型「アテンザ」にマイナーチェンジが施されるのは4度目のこと。今回はフラッグシップモデルとしての“走る歓び”を提供することをテーマとしている。
今回試乗したアテンザは白。強すぎる広島カープレッドじゃなくてよかった。色はともかく、カメラマンが撮影しているのをちょっと離れた場所から見ていて、ふとタイヤが小さいことに気付いた。カタログを見ると225/55R17とある。アテンザも上級グレードなどには225/45R19という大径タイヤが備わるが、今回の試乗車は「プロアクティブ」という中間グレードで、このサイズが備わっていた。

近頃は50偏平だと控えめなほうで、45とか40偏平のタイヤがさして高性能でもないクルマにも装着されている。大径で低偏平のタイヤが装着されているほうがカッコいいという風潮になったのはいつからか。最初は性能向上、つまりグリップ力を高め、変形を減らすために大径化、低偏平化が進んでいったはずだが、近頃はコスメティックチューンとして大径化と低偏平化が進められている。ダンパーの進化によって、メーカーがその車種のオプションとして設定している程度のインチアップならば乗り心地が悪化するということもあまりなくなったというのもあるだろう。

けれども、世の中に大径、低偏平タイヤを装着しているクルマがはびこっているからか、控えめにゴーゴー偏平にとどめたアテンザが、新鮮で、上品に見えた。悪くない。ダークな塗装のためホイールが際立たないというのもあるのかもしれないが、とにかく全体のバランスはいいなと感じた。カッコよさをタイヤ&ホイールの大径化に頼っているクルマが多すぎる。アテンザはその割合が低いのではないか。

今回は、ディーゼルモデルの中間グレードにあたる「XDプロアクティブ」のFF、AT仕様車に試乗。車両本体価格は340万2000円。
今回は、ディーゼルモデルの中間グレードにあたる「XDプロアクティブ」のFF、AT仕様車に試乗。車両本体価格は340万2000円。
「XDプロアクティブ」のAT車には225/55R17サイズのタイヤが標準装備される。ちなみに同じグレードでもMT車には225/45R19タイヤが標準となっており、そのためか価格はMT車のほうが5万円高い。
「XDプロアクティブ」のAT車には225/55R17サイズのタイヤが標準装備される。ちなみに同じグレードでもMT車には225/45R19タイヤが標準となっており、そのためか価格はMT車のほうが5万円高い。
2012年のデビュー以来、現行型「アテンザ」にマイナーチェンジが施されるのは4度目のこと。今回はフラッグシップモデルとしての“走る歓び”を提供することをテーマとしている。
2012年のデビュー以来、現行型「アテンザ」にマイナーチェンジが施されるのは4度目のこと。今回はフラッグシップモデルとしての“走る歓び”を提供することをテーマとしている。

インテリアの装飾もちょっと控えめ

インパネの形状が刷新されており、エアコン吹き出し口の高さをそろえることで、よりエレガントな印象を与えられている。
インパネの形状が刷新されており、エアコン吹き出し口の高さをそろえることで、よりエレガントな印象を与えられている。
助手席側のエアコン吹き出し口の間は、ヘアライン加工が施されたアルミ調パネルで飾られている。
助手席側のエアコン吹き出し口の間は、ヘアライン加工が施されたアルミ調パネルで飾られている。
「XDプロアクティブ」には、グレーの濃淡でツートンカラーとした、布製表皮のシートが標準装備となる。
「XDプロアクティブ」には、グレーの濃淡でツートンカラーとした、布製表皮のシートが標準装備となる。
マツダが2018年5月にアテンザをマイナーチェンジした。これがフルモデルチェンジ前の最後の大がかりな変更となるだろう。フロントグリルは横桟タイプからメッシュというかドットタイプに変わった。その脇のクロームパーツはヘッドランプの下端をなぞるように伸びた。従来ラーメンマンのひげみたいな角度だったアンダーグリル両脇の細いクロームパーツは水平になった。リアも左右のコンビランプをクロームパーツが結ぶようなデザインとなった。

中間グレードのプロアクティブの場合、車内はやや質素だ。レザーシートではなくツートンのクロス(布)シートが備わる。座り心地は悪くない。レザーよりも表面がソフトだから密着感があって好ましい。上級グレードのダッシュパネルにはウルトラスエード「ヌー」(東レ製)という素材が用いられるのに対し、プロアクティブはビニールレザー的な素材が貼られる。これはちょっと上級グレードがうらやましい。

それにしても現行アテンザは出た時からスタイリッシュなセダン/ワゴンだったが、飽きられないよう数年ごとにデザインに手が加えられた結果、現在まで新鮮さを保っていると思う。

インパネの形状が刷新されており、エアコン吹き出し口の高さをそろえることで、よりエレガントな印象を与えられている。
インパネの形状が刷新されており、エアコン吹き出し口の高さをそろえることで、よりエレガントな印象を与えられている。
助手席側のエアコン吹き出し口の間は、ヘアライン加工が施されたアルミ調パネルで飾られている。
助手席側のエアコン吹き出し口の間は、ヘアライン加工が施されたアルミ調パネルで飾られている。
「XDプロアクティブ」には、グレーの濃淡でツートンカラーとした、布製表皮のシートが標準装備となる。
「XDプロアクティブ」には、グレーの濃淡でツートンカラーとした、布製表皮のシートが標準装備となる。

自慢のディーゼルエンジンの性能も強化

搭載される2.2リッターディーゼルターボエンジンは、最高出力が175psから190psへと、最大トルクが420Nmから450Nmへと強化されている。
搭載される2.2リッターディーゼルターボエンジンは、最高出力が175psから190psへと、最大トルクが420Nmから450Nmへと強化されている。
エンジン性能の強化にあたっては、新形状の燃焼室や多段急速燃焼、可変ジオメトリーターボといった新技術を採用している。
エンジン性能の強化にあたっては、新形状の燃焼室や多段急速燃焼、可変ジオメトリーターボといった新技術を採用している。
トランスミッションの改良についてはアナウンスされておらず、従来通りのトルコン式の6段ATを採用する。
トランスミッションの改良についてはアナウンスされておらず、従来通りのトルコン式の6段ATを採用する。
全席で会話ができるよう配慮した静粛性強化も図っており、ボディー骨格やサスペンションの見直し、トップシーリング材の変更やピラートリム内への吸音材追加といった改良が加えられている。
全席で会話ができるよう配慮した静粛性強化も図っており、ボディー骨格やサスペンションの見直し、トップシーリング材の変更やピラートリム内への吸音材追加といった改良が加えられている。
かつてマツダといえばロータリーだったが、最近ではマツダといえばディーゼルだ。もっとも当のマツダはあまりそういうイメージになってほしくないのだろうが。今回のアテンザに搭載されるのも2.2リッター直4ディーゼルターボエンジンだ。このエンジンはこれまでも多くのマツダ車に搭載されてきたものだが、「CX-8」が発売されたタイミングで最高出力が従来の175psから190psへと、最大トルクが420Nmから450Nmへと進化した。それが今回アテンザにも搭載されたというわけだ。

175ps、420Nm時代のアテンザでも特に動力性能に不満はなかったが、パワーアップは邪魔にはならない。アクセルペダルを深く踏んだ際により鋭い加速が得られるようになったのはいいことだ。もっといいのは、余裕が増したことで、同じ加速を得るのに深くペダルを踏まなくてもよくなったことだ。A地点からB地点に同じ時間をかけて移動したとしても、パワフルなクルマで行くほうが疲れないというのは“クルマあるある”だ。アクセルペダルを深く踏まないということはエンジンの回転数を上まで使わなくて済むということであり、そのほうが静かというのもあるのだろう。

実際、今回の試乗でアテンザのパワーアップを明確に体感したかというとそうでもないが、静粛性が向上したのは体感できた。同乗者は打ち明けられるまでディーゼル車であることに気付かないのではないか。冷間時のアイドリングのみカラカラという音が少し目立つが、最近はガソリンエンジンも直噴が主流であり、これくらいの音を立てるクルマもけっこうある。4気筒ディーゼルとしては最も静かな部類に入る。ただしこの静粛性はエンジンの音量を減じる努力だけでなく、音が車内に侵入する際の到来方向などを考慮した遮音材の採用など、車両全体の改良によって獲得したものだという。

搭載される2.2リッターディーゼルターボエンジンは、最高出力が175psから190psへと、最大トルクが420Nmから450Nmへと強化されている。
搭載される2.2リッターディーゼルターボエンジンは、最高出力が175psから190psへと、最大トルクが420Nmから450Nmへと強化されている。
エンジン性能の強化にあたっては、新形状の燃焼室や多段急速燃焼、可変ジオメトリーターボといった新技術を採用している。
エンジン性能の強化にあたっては、新形状の燃焼室や多段急速燃焼、可変ジオメトリーターボといった新技術を採用している。
トランスミッションの改良についてはアナウンスされておらず、従来通りのトルコン式の6段ATを採用する。
トランスミッションの改良についてはアナウンスされておらず、従来通りのトルコン式の6段ATを採用する。
全席で会話ができるよう配慮した静粛性強化も図っており、ボディー骨格やサスペンションの見直し、トップシーリング材の変更やピラートリム内への吸音材追加といった改良が加えられている。
全席で会話ができるよう配慮した静粛性強化も図っており、ボディー骨格やサスペンションの見直し、トップシーリング材の変更やピラートリム内への吸音材追加といった改良が加えられている。

次期アテンザは直6搭載のFR!?

フロントマスクでは、グリルの形状をドットを並べたようなメッシュタイプに改めたほか、より大胆なメッキ装飾が施されている。
フロントマスクでは、グリルの形状をドットを並べたようなメッシュタイプに改めたほか、より大胆なメッキ装飾が施されている。
リアまわりでは、左右のコンビランプをメッキパーツでつなぐことで、ワイドな印象を強調している。
リアまわりでは、左右のコンビランプをメッキパーツでつなぐことで、ワイドな印象を強調している。
トランクルームの容量は474リッター。トランク側にもリアシートを倒すボタンが備わっており、長尺物を積む際に役立つ。
トランクルームの容量は474リッター。トランク側にもリアシートを倒すボタンが備わっており、長尺物を積む際に役立つ。
マツダの次世代シャシーに向けて開発された技術も先行して採り入れられており、ダンパーのバルブ構造変更やスプリングの荷重軸線最適化などにより、サスペンションシステムが一新されている。
マツダの次世代シャシーに向けて開発された技術も先行して採り入れられており、ダンパーのバルブ構造変更やスプリングの荷重軸線最適化などにより、サスペンションシステムが一新されている。
その結果、あくまでイメージだが、路面からの入力をダンパーのみに任せず、ボディーも含めた車両全体で受け止めているような印象をアテンザに抱いた。コーナーにおけるボディーのロールの仕方は漸進的で唐突なところがない。ステアリングフィールはしっとり系で剛性感も高い。全体的に完成度が高い。マイナーチェンジされたアテンザの白眉は乗り心地とハンドリングのバランスのよさ。2017年に、マツダが所有する美祢自動車試験場(旧美祢サーキット)で、2019年に登場する次期「アクセラ」と思われる新型車に試乗した。まだ外観ができあがっていない(できていても見せるわけにいかない)ために現行アクセラの外板を無理やり貼り付けた試作車だったが、その乗り心地のよさに感心した。その車両には試作段階のガソリン自着火の新エンジン「スカイアクティブX」が搭載されていたが、それよりも新開発のボディーの出来の良さに驚いた。今回のアテンザには、次世代ボディーに施すさまざまな新設計のうち、現行世代の車両にも使える部分をいくつか採用したという。

次期アテンザはいつ出るのか? 2020年あたりだろうか。マツダが直6エンジンを搭載したFRセダンを開発しているといったうわさも聞くが、それは次期アテンザなのだろうか。それともアテンザよりも上級なサルーンが登場するのだろうか? 「ルーチェ」か? 「ロードペーサー」か? それとも「アマティ」か!? それは時がくればわかるだろう。いずれにせよ、クルマはあとからどんどん新しいのが出てくるが、今回乗った現行アテンザの最終モデルなら、新しいのに目移りせず、じっくりと長く付き合えるのではないだろうか。

(文=塩見 智/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

フロントマスクでは、グリルの形状をドットを並べたようなメッシュタイプに改めたほか、より大胆なメッキ装飾が施されている。
フロントマスクでは、グリルの形状をドットを並べたようなメッシュタイプに改めたほか、より大胆なメッキ装飾が施されている。
リアまわりでは、左右のコンビランプをメッキパーツでつなぐことで、ワイドな印象を強調している。
リアまわりでは、左右のコンビランプをメッキパーツでつなぐことで、ワイドな印象を強調している。
トランクルームの容量は474リッター。トランク側にもリアシートを倒すボタンが備わっており、長尺物を積む際に役立つ。
トランクルームの容量は474リッター。トランク側にもリアシートを倒すボタンが備わっており、長尺物を積む際に役立つ。
マツダの次世代シャシーに向けて開発された技術も先行して採り入れられており、ダンパーのバルブ構造変更やスプリングの荷重軸線最適化などにより、サスペンションシステムが一新されている。
マツダの次世代シャシーに向けて開発された技術も先行して採り入れられており、ダンパーのバルブ構造変更やスプリングの荷重軸線最適化などにより、サスペンションシステムが一新されている。

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