【試乗記】ホンダCR-VハイブリッドEX・マスターピース/EX・マスターピース
- ホンダCR-VハイブリッドEX・マスターピース(4WD)/EX・マスターピース(FF/CVT)
普通って大変だ
年間販売台数は実に70万台と、いまやすっかりホンダの世界戦略を担うモデルとなった「CR-V」。5代目となる新型の出来栄えを確かめるべく、ハイブリッド車とガソリン車に試乗。ホンダの言う“究極に普通なクルマ”の実力を試した。
いまやホンダを代表するグローバルモデル
初代CR-V が登場したのは1995年のこと。前年にデビューした「トヨタRAV4」とともに、日本のSUVブームの火付け役となった。当初は日本専用車だったものが海外でも人気を博し、いまやCR-Vは年間70万台以上を売り上げるホンダを代表するグローバルモデルである。
日本においては2016年に一度販売を終了していたのだが、世界的なSUVブームを受け、弟分の「ヴェゼル」からのステップアップや、「ステップワゴン」「オデッセイ」からの“ミニバン卒業組”の受け皿を担うべく、およそ2年ぶりに日本市場へ復活を遂げたというわけだ。
CR-Vの開発責任者・永留高明氏は、プレゼンテーションの場で「世界中の方々にお使いいただいているクルマであり、ことさらに尖(とが)る必要はない。究極に普通なクルマをつくりたいという思いで開発した」と話した。
“究極に普通なクルマ”。永留氏はその言葉の意味として「世界中の誰もが、いつでも、どこでも、自由で快適にストレスなく走れること」と話していたが、グローバルモデルに課される条件がひとつやふたつでないことは想像に難くない。さらに言えば、最終的には仕向け地ごとの味付けの違いが求められる。よくよく考えればとても深い言葉だ。
果たして、日本仕様のパワートレインは、CR-V初となるハイブリッドと1.5リッターVTECターボの2本立てで、両方にFFと4WDの設定がある。グレードもそれぞれ、ベースの「EX」と上級仕様の「EX・マスターピース」の2種類というシンプルな構成。新型のハイライトは、ハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」に初めて4WDが組み合わされたこと。そしてガソリンモデルに7人乗りの3列シート仕様が用意されたことだ。
日本においては2016年に一度販売を終了していたのだが、世界的なSUVブームを受け、弟分の「ヴェゼル」からのステップアップや、「ステップワゴン」「オデッセイ」からの“ミニバン卒業組”の受け皿を担うべく、およそ2年ぶりに日本市場へ復活を遂げたというわけだ。
CR-Vの開発責任者・永留高明氏は、プレゼンテーションの場で「世界中の方々にお使いいただいているクルマであり、ことさらに尖(とが)る必要はない。究極に普通なクルマをつくりたいという思いで開発した」と話した。
“究極に普通なクルマ”。永留氏はその言葉の意味として「世界中の誰もが、いつでも、どこでも、自由で快適にストレスなく走れること」と話していたが、グローバルモデルに課される条件がひとつやふたつでないことは想像に難くない。さらに言えば、最終的には仕向け地ごとの味付けの違いが求められる。よくよく考えればとても深い言葉だ。
果たして、日本仕様のパワートレインは、CR-V初となるハイブリッドと1.5リッターVTECターボの2本立てで、両方にFFと4WDの設定がある。グレードもそれぞれ、ベースの「EX」と上級仕様の「EX・マスターピース」の2種類というシンプルな構成。新型のハイライトは、ハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」に初めて4WDが組み合わされたこと。そしてガソリンモデルに7人乗りの3列シート仕様が用意されたことだ。
“エンジンは黒子”のハイブリッドシステム
ボディーサイズは全長×全幅=4605×1855mmと、想像していたほどは大きくない。いまや、このセグメントのSUVは肥大化の一途をたどっており、全幅が1900mmというモデルもあるくらいだ。とはいえ、このカテゴリーでは輸入車勢だけでなく、「日産エクストレイル」「マツダCX-5」「三菱アウトランダー」、さらに2019年には「トヨタRAV4」も復活がうわさされるなど、日本車も群雄割拠する。それだけに、常識的なサイズに収められている。
フロントマスクは、近ごろのホンダが採用しているグリルとヘッドライトが連続した「ソリッドウイングフェイス」と呼ばれるデザインだ。つり目で押し出しの強いイメージゆえ、てっきり北米デザインチームによるものかと思いきや、実はアメリカと日本のデザイン案を折衷し、日本サイドで仕上げたものだそうだ。たしかによく見れば、人気のヴェゼルとの共通性をもたせた顔つきであることがわかる。
エクステリアデザインのチェックを終え、まずはハイブリッドの4WD仕様に乗り込む。インテリアは視認性や操作性にすぐれたシンプルなデザインで、こちらはすべて日本サイドによるものだという。ハイブリッド仕様ではシフトノブがなく、モニターの下側にP、R、N、Dのボタンが配されている。またステアリングにはシフトパドルが備わる。
ハイブリッドシステム自体は、ステップワゴンや「アコード」などにも用いられている走行用と発電用の2つのモーターを備えたシステムだ。これに2リッターのガソリンエンジンを組み合わせる。エンジンは主に発電用モーターを回すことに使われるので、発進や加速する場面では電気自動車さながらにスルスルとスピードを上げていく。パワートレインは3つのモードで作動し、バッテリーの電力で走る「EVドライブ」モードから、強く加速するとエンジンで発電しモーターを駆動する「ハイブリッドドライブ」モードへ、そして高速巡航時にはエンジンのみで走行する「エンジンドライブ」モードへと、瞬時に切り替わっていく。モーターだけで315Nmを生み出すから、想像以上にパワフルだ。
フロントマスクは、近ごろのホンダが採用しているグリルとヘッドライトが連続した「ソリッドウイングフェイス」と呼ばれるデザインだ。つり目で押し出しの強いイメージゆえ、てっきり北米デザインチームによるものかと思いきや、実はアメリカと日本のデザイン案を折衷し、日本サイドで仕上げたものだそうだ。たしかによく見れば、人気のヴェゼルとの共通性をもたせた顔つきであることがわかる。
エクステリアデザインのチェックを終え、まずはハイブリッドの4WD仕様に乗り込む。インテリアは視認性や操作性にすぐれたシンプルなデザインで、こちらはすべて日本サイドによるものだという。ハイブリッド仕様ではシフトノブがなく、モニターの下側にP、R、N、Dのボタンが配されている。またステアリングにはシフトパドルが備わる。
ハイブリッドシステム自体は、ステップワゴンや「アコード」などにも用いられている走行用と発電用の2つのモーターを備えたシステムだ。これに2リッターのガソリンエンジンを組み合わせる。エンジンは主に発電用モーターを回すことに使われるので、発進や加速する場面では電気自動車さながらにスルスルとスピードを上げていく。パワートレインは3つのモードで作動し、バッテリーの電力で走る「EVドライブ」モードから、強く加速するとエンジンで発電しモーターを駆動する「ハイブリッドドライブ」モードへ、そして高速巡航時にはエンジンのみで走行する「エンジンドライブ」モードへと、瞬時に切り替わっていく。モーターだけで315Nmを生み出すから、想像以上にパワフルだ。
足まわりや四駆の制御に見るこだわり
驚いたのは、そのハンドリング性能のよさである。新型「シビック」のものをベースとした新世代プラットフォームを採用しており、足まわりはフロントはストラット、リアはマルチリンク式だが、前後ともに振幅感応型ダンパーと振動軽減のための液封コンプライアンスブッシュを組み合わせるなど、相当なこだわりがみてとれる。このあたりは北米やアジア仕様とは異なる、イギリス、ドイツ、オーストリアなどでテストが行われた“欧州&日本向けチューニング”のたまもののようで、ステアリングの応答性がよく、乗り心地もフラットで挙動も安定している。また車速や操舵量に応じてブレーキを制御し曲がりやすくする「アジャイルハンドリングアシスト」が備わっており、カーブが連続するような場面でもより安定性を高めている。
4WDは電子制御の多板クラッチによって前後のトルク配分をコントロールする方式だ。ワインディングロードなどではリア側に多くトルクが配分されるため、明らかにノーズの入りがよく、グイグイと前に進む感触があって気持ちがいい。制御はスムーズで段付き感などまったくないが、いかに細やかな制御を行っているかを知りたければ、メーター内にリアルタイムのトルク配分を表示することも可能だ。この日はドライのアスファルト路面でしか試乗していないが、開発者によると山形県の豪雪地域でもテストを行っており、雪道も相当いけるという。これはまたの機会を楽しみに待ちたい。
もう1台、1.5リッター直4直噴ターボ+CVTを搭載したFF車にも試乗した。専用開発のターボチャージャーを組み合わせることで、出力、トルクともに強化されており、ハイブリッド仕様ほどのパワフルさはないが動力性能に不満はない。車両重量が先のハイブリッドより70kgほど軽くなることもあり、こちらも軽快に走る。
4WDは電子制御の多板クラッチによって前後のトルク配分をコントロールする方式だ。ワインディングロードなどではリア側に多くトルクが配分されるため、明らかにノーズの入りがよく、グイグイと前に進む感触があって気持ちがいい。制御はスムーズで段付き感などまったくないが、いかに細やかな制御を行っているかを知りたければ、メーター内にリアルタイムのトルク配分を表示することも可能だ。この日はドライのアスファルト路面でしか試乗していないが、開発者によると山形県の豪雪地域でもテストを行っており、雪道も相当いけるという。これはまたの機会を楽しみに待ちたい。
もう1台、1.5リッター直4直噴ターボ+CVTを搭載したFF車にも試乗した。専用開発のターボチャージャーを組み合わせることで、出力、トルクともに強化されており、ハイブリッド仕様ほどのパワフルさはないが動力性能に不満はない。車両重量が先のハイブリッドより70kgほど軽くなることもあり、こちらも軽快に走る。
本当によくできた“普通”のクルマ
試乗車はガソリン仕様にのみ用意される3列シート7人乗りだった。「全長4605mm、ホイールベース2660mmのCセグSUVの3列目に、広大なスペースを期待するのはどだい無理というもの」という先入観をもって乗り込むと、178cmの大人でも2列目シートとスペースを融通しあえば意外に座れることに驚いた。もちろん長距離ドライブは遠慮したいが、ちょっとした移動なら何ら問題ない。
実はこの3列シートは、当初の計画にはなかったものという。エクステリアデザインが確定したあとに、特にタイ市場からの要望で採用が決まったそうだ。それでも、燃料タンクを薄くするなどホンダの“M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想”のノウハウによって、デザインに手を加えることなくそれを実現している。ミニバンは卒業したけど、年に数度だけ3列目を使いたいというニーズには、ちょうどいいだろう。
この新型CR-V、セールスの出足は好調とのこと。今のところガソリン車とハイブリッド車の比率は55:45、4WDが44%で、上級グレードのEX・マスターピースが62%を占めているという。
「個人的にはハイブリッドで4WDのEX・マスターピースがいいけれど、400万円超はちょっと高いかな」とつぶやくと、ある開発者から「他社ではオプションにしているような、(ADASの)『ホンダセンシング』もLEDヘッドライトもパワーシートも18インチホイールも全車に標準装備していて、上級グレードには本革シートにサンルーフ、パワーテールゲートまで標準で付くんですから……」と訴えられた。なるほど、さもありなん。
しかし、ミドルクラスSUVにこれだけの装備。現代の“究極に普通なクルマ”のハードルがいかに高いか、よくわかるというものだ。
(文=藤野太一/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
実はこの3列シートは、当初の計画にはなかったものという。エクステリアデザインが確定したあとに、特にタイ市場からの要望で採用が決まったそうだ。それでも、燃料タンクを薄くするなどホンダの“M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想”のノウハウによって、デザインに手を加えることなくそれを実現している。ミニバンは卒業したけど、年に数度だけ3列目を使いたいというニーズには、ちょうどいいだろう。
この新型CR-V、セールスの出足は好調とのこと。今のところガソリン車とハイブリッド車の比率は55:45、4WDが44%で、上級グレードのEX・マスターピースが62%を占めているという。
「個人的にはハイブリッドで4WDのEX・マスターピースがいいけれど、400万円超はちょっと高いかな」とつぶやくと、ある開発者から「他社ではオプションにしているような、(ADASの)『ホンダセンシング』もLEDヘッドライトもパワーシートも18インチホイールも全車に標準装備していて、上級グレードには本革シートにサンルーフ、パワーテールゲートまで標準で付くんですから……」と訴えられた。なるほど、さもありなん。
しかし、ミドルクラスSUVにこれだけの装備。現代の“究極に普通なクルマ”のハードルがいかに高いか、よくわかるというものだ。
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