【海外試乗記】アウディe-tron(4WD)
- アウディe-tron(4WD)
一番新しく最も現実的
2018年9月に、市販バージョンがアメリカで世界初公開された「アウディe-tron」。SUVスタイルのEV専用モデルがみせる走りは、内燃エンジン搭載車といったいどこが異なるのか。UAEの首長国アブダビでファーストコンタクトを行った。
最初から高い完成度
偽装を取り去ったアウディ初の市販電気自動車「e-tron」は、はっきりくっきりとした八角形のシングルフレームグリルを持ち、私のようなガソリンの匂いを嗅ぎながら育ったオヤジ世代にもまったく違和感のない姿形に感じられた。
自動車に興味がない人には、普通の「Q7」や「Q5」と見分けがつかないかもしれない。電気自動車は、内燃エンジンを搭載しないゆえにこれまでの自動車の形の制約から解放され、自由で斬新なデザインが可能になるとの意見を持つ人もいるが、最新技術の粋を集めたとしても、現実の道路環境を他車と分け合う場合には依然として従来の形に合理性があるのだという印象を強くした。まあ、アウディの場合は奇抜なデザインを選択する必要がないということだろう。私の場合は自動車メーカーが本腰を入れて開発した電気自動車がスマートなSUVスタイルであることに安心したのである。
キャビンのフロア下に敷きつめられた容量95kWh、重さ約700kgというリチウムイオンバッテリーのせいで、フロア高は若干持ち上げられているのだが、ドライバーズシートに座ってみると、ほとんど違和感のないパッケージングであることが分かった。ドア下部の黒いガーニッシュのおかげで分厚く見えないように配慮されているが、傷防止のカバーなどではなく、そこには端から端までみっちりバッテリーが詰まっている。
乗り込む時より降りる際のほうが足を遠くに伸ばさなければ地面に届かなかったが、それは脚が短いせいかもしれない。e-tronの全長×全幅×全高は4901×1935×1616mm、ホイールベースは2928mmとQ7ほどではないが堂々としたサイズを持つ。
当然、後席も広々としており、フロアが平らなこともあり3名乗車も問題ないはずだ。リアシートのほうが座面との関係で若干フロアの高さを感じるが、不都合なほどではない。また荷室内にもバッテリーによる浸食はなく、容量は600リッターと十分(さらにフロントフード下にも60リッターのラゲッジコンパートメントが備わる)、リアシートのバックレストを倒せば1725リッターまで拡大することができる。要するにちょっと見ただけでは、大容量リチウムイオンバッテリーやコントロールユニットを搭載した電気自動車であることをうかがわせるところはないのである。
自動車に興味がない人には、普通の「Q7」や「Q5」と見分けがつかないかもしれない。電気自動車は、内燃エンジンを搭載しないゆえにこれまでの自動車の形の制約から解放され、自由で斬新なデザインが可能になるとの意見を持つ人もいるが、最新技術の粋を集めたとしても、現実の道路環境を他車と分け合う場合には依然として従来の形に合理性があるのだという印象を強くした。まあ、アウディの場合は奇抜なデザインを選択する必要がないということだろう。私の場合は自動車メーカーが本腰を入れて開発した電気自動車がスマートなSUVスタイルであることに安心したのである。
キャビンのフロア下に敷きつめられた容量95kWh、重さ約700kgというリチウムイオンバッテリーのせいで、フロア高は若干持ち上げられているのだが、ドライバーズシートに座ってみると、ほとんど違和感のないパッケージングであることが分かった。ドア下部の黒いガーニッシュのおかげで分厚く見えないように配慮されているが、傷防止のカバーなどではなく、そこには端から端までみっちりバッテリーが詰まっている。
乗り込む時より降りる際のほうが足を遠くに伸ばさなければ地面に届かなかったが、それは脚が短いせいかもしれない。e-tronの全長×全幅×全高は4901×1935×1616mm、ホイールベースは2928mmとQ7ほどではないが堂々としたサイズを持つ。
当然、後席も広々としており、フロアが平らなこともあり3名乗車も問題ないはずだ。リアシートのほうが座面との関係で若干フロアの高さを感じるが、不都合なほどではない。また荷室内にもバッテリーによる浸食はなく、容量は600リッターと十分(さらにフロントフード下にも60リッターのラゲッジコンパートメントが備わる)、リアシートのバックレストを倒せば1725リッターまで拡大することができる。要するにちょっと見ただけでは、大容量リチウムイオンバッテリーやコントロールユニットを搭載した電気自動車であることをうかがわせるところはないのである。
たくましいアルミフレームにうっとり
しかしながら、中身はぜいたくというか、感心するほど本格的だ。昼食会場となったアブダビ動物園にはランニングシャシーが展示されていたが、バッテリーを取り囲んだいかにも堅牢(けんろう)そうなアルミ押し出し材と鋳造材のフレームはもちろん、エアサスペンションのアーム類やモーターブラケットのごついアルミパーツもほれぼれするような見事さである。ここまで頑丈そうなバッテリーフレームが必要なのかと尋ねたら「200km/hで走行中に万一のアクシデントが起こっても万全であるためにはもちろん」とひと言で返された。
e-tronは前後アクスルに1基ずつの非同期型モーターを搭載して4輪を駆動する「クワトロ」である。フロントモーターは125kW、リアは140kWの出力を持つが、ブーストモード時にはそれぞれ135kWと165kWに引き上げられ、最大でトータル407.8ps(300kW)と664Nmのシステム出力とトルクを発生、ブーストモード時の0-100km/h加速は5.7秒、最高速は200km/hにリミッターで制限されている。航続距離はWLTPモードで400km以上とされている。ちなみにバッテリーのアルミフレームがボディーの剛性にも寄与していることは言うまでもない。
欧州では2019年初めからe-tronのデリバリーが開始される予定で、日本には2019年後半以降に上陸するという。ドイツ本国ではベーシックな仕様で約8万ユーロと発表されているが、この成り立ちなら決して高くはないと思う。むしろ、このe-tronだけでは採算が取れないのではないかと心配になるほど。そのためにe-tronスポーツバックやロサンゼルスモーターショーで発表されたばかりの「e-tron GTコンセプト」が控えているというわけだ。
e-tronは前後アクスルに1基ずつの非同期型モーターを搭載して4輪を駆動する「クワトロ」である。フロントモーターは125kW、リアは140kWの出力を持つが、ブーストモード時にはそれぞれ135kWと165kWに引き上げられ、最大でトータル407.8ps(300kW)と664Nmのシステム出力とトルクを発生、ブーストモード時の0-100km/h加速は5.7秒、最高速は200km/hにリミッターで制限されている。航続距離はWLTPモードで400km以上とされている。ちなみにバッテリーのアルミフレームがボディーの剛性にも寄与していることは言うまでもない。
欧州では2019年初めからe-tronのデリバリーが開始される予定で、日本には2019年後半以降に上陸するという。ドイツ本国ではベーシックな仕様で約8万ユーロと発表されているが、この成り立ちなら決して高くはないと思う。むしろ、このe-tronだけでは採算が取れないのではないかと心配になるほど。そのためにe-tronスポーツバックやロサンゼルスモーターショーで発表されたばかりの「e-tron GTコンセプト」が控えているというわけだ。
「空走感」が肝要
ちょっと乱暴な言い方だが、パワーユニットがどんなものであれ、スロットルペダルから足を離した場合の滑らかな“空走感”こそ高級車の証しであると思う。驚いたのはスイーッと速度が落ちることなくコースティングするe-tronの滑らかさである。
電気自動車ゆえに、スロットルオフでは即座に回生ブレーキが作動すると決めてかかっていたこともあるが、これだけのボディーを持ち、太いタイヤを履くSUVとは信じられないほど、惰性でどこまでも転がっていくようで、各運動部分の精度の高さ、徹底的なエアロダイナミクス処理をうかがわせた。
いやいや、右足ひとつで運転できる「ワンペダルドライブ」が電気自動車の特徴ではないのか、それじゃエネルギー回生ができないじゃないか、との反論も聞こえそうだが、もちろんそれをアウディが見落とすはずはない。コースティングするか、回生ブレーキが作動するかは、モード設定と周囲の交通環境に応じて変化し、さらにはナビの地図データも利用しているという。
たとえばラウンドアバウトが前方にあると、同じ速度から足を離しても即座に回生が始まり、それは先行車がいても同様、さらにステアリングパドルで回生ブレーキのレベルを3段階に切り替えることもできる。ブレーキペダルを踏み込んでも0.3G相当までは通常の機械式ブレーキは作動せず、回生ブレーキのみが働くという。とにかく実によく考えられているのだ。
アウディによれば車速が70km/hを超えると、転がり抵抗など他の要素よりも空気抵抗が一番の課題になるという。また、ご存じのように、高速走行時の相対的な効率の低さが電気自動車の弱点のひとつである。それを克服するための鍵となる技術が回生制御とエアロダイナミクスである。
電気自動車ゆえに、スロットルオフでは即座に回生ブレーキが作動すると決めてかかっていたこともあるが、これだけのボディーを持ち、太いタイヤを履くSUVとは信じられないほど、惰性でどこまでも転がっていくようで、各運動部分の精度の高さ、徹底的なエアロダイナミクス処理をうかがわせた。
いやいや、右足ひとつで運転できる「ワンペダルドライブ」が電気自動車の特徴ではないのか、それじゃエネルギー回生ができないじゃないか、との反論も聞こえそうだが、もちろんそれをアウディが見落とすはずはない。コースティングするか、回生ブレーキが作動するかは、モード設定と周囲の交通環境に応じて変化し、さらにはナビの地図データも利用しているという。
たとえばラウンドアバウトが前方にあると、同じ速度から足を離しても即座に回生が始まり、それは先行車がいても同様、さらにステアリングパドルで回生ブレーキのレベルを3段階に切り替えることもできる。ブレーキペダルを踏み込んでも0.3G相当までは通常の機械式ブレーキは作動せず、回生ブレーキのみが働くという。とにかく実によく考えられているのだ。
アウディによれば車速が70km/hを超えると、転がり抵抗など他の要素よりも空気抵抗が一番の課題になるという。また、ご存じのように、高速走行時の相対的な効率の低さが電気自動車の弱点のひとつである。それを克服するための鍵となる技術が回生制御とエアロダイナミクスである。
何度でもフル加速が可能
電気自動車の効率を考えた場合、高速走行時の空気抵抗こそ課題であり、アウディがカメラ式のミラーを採用した理由はまさにそこにある。e-tronはQ5よりひとまわり大きなサイズのSUVにもかかわらず、バーチャルエクステリアミラーを装着したe-tronのCd値は0.27(一般的なドアミラー装着車は0.28という)と非常に優秀だ。もちろん、それだけではなく、アンダーフロアは完全にフラットな上にエアサスペンションは120km/h以上の高速になると車高を26mm低めるという。
さらに上下ふたつに分かれたグリル開口部の奥には条件に応じて制御されるシャッターが設けられおり、空気抵抗の低減と冷却能力の確保をコントロールする。e-tronは冷却性能にも徹底的に配慮されており、バッテリーはもちろん、前後のモーターにもクーラント冷却剤が循環している。
e-tronは最大150kWでの直流急速充電にも対応しているが(約80%まで30分)、その場合にも冷却は欠かせないため4系統の冷却システムが備わり、バッテリーに最適な25℃から35℃に保つという。「ウチのは何度でもフル加速できます」とエンジニアは胸を張っていたが、いかにも高速走行が必須であるヨーロッパ車らしい設計といえる。
もうひとつの大きな特徴が、「レクサスES」と同様、カメラで撮影した映像を車内のモニターに映し出す「バーチャルエクステリアミラー」である(オプション装備)。OLEDモニターはドアハンドルの前に一体化されており、アウディらしい精密さできれいに設置されている。
ただし慣れの問題が大きいのかもしれないが、大きなラウンドアバウトなどで左右に並走車がいる場合には距離感がつかめなくていささか不安になったことも事実である。このバーチャルミラーも設定を変えることができるようだが、正直言って新しいe-tronに満載されたさまざまな機能を試すにはまるで時間が足りず、詳しい使い勝手を報告できないのが残念だ。
だが、とにかく完成度は非常に高い。意地悪な見方をしても、ブレーキペダルのタッチがやや人工的だったことぐらいしか不満は見当たらなかった。風で飛ばされた砂で覆われたグラベル路では“クワトロ”と名乗るにふさわしい戦闘力を持つことも確認できた。電気自動車びいきではない私が言うのだから間違いはない。
(文=高平高輝/写真=アウディ/編集=櫻井健一)
さらに上下ふたつに分かれたグリル開口部の奥には条件に応じて制御されるシャッターが設けられおり、空気抵抗の低減と冷却能力の確保をコントロールする。e-tronは冷却性能にも徹底的に配慮されており、バッテリーはもちろん、前後のモーターにもクーラント冷却剤が循環している。
e-tronは最大150kWでの直流急速充電にも対応しているが(約80%まで30分)、その場合にも冷却は欠かせないため4系統の冷却システムが備わり、バッテリーに最適な25℃から35℃に保つという。「ウチのは何度でもフル加速できます」とエンジニアは胸を張っていたが、いかにも高速走行が必須であるヨーロッパ車らしい設計といえる。
もうひとつの大きな特徴が、「レクサスES」と同様、カメラで撮影した映像を車内のモニターに映し出す「バーチャルエクステリアミラー」である(オプション装備)。OLEDモニターはドアハンドルの前に一体化されており、アウディらしい精密さできれいに設置されている。
ただし慣れの問題が大きいのかもしれないが、大きなラウンドアバウトなどで左右に並走車がいる場合には距離感がつかめなくていささか不安になったことも事実である。このバーチャルミラーも設定を変えることができるようだが、正直言って新しいe-tronに満載されたさまざまな機能を試すにはまるで時間が足りず、詳しい使い勝手を報告できないのが残念だ。
だが、とにかく完成度は非常に高い。意地悪な見方をしても、ブレーキペダルのタッチがやや人工的だったことぐらいしか不満は見当たらなかった。風で飛ばされた砂で覆われたグラベル路では“クワトロ”と名乗るにふさわしい戦闘力を持つことも確認できた。電気自動車びいきではない私が言うのだから間違いはない。
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