【試乗記】スバル・フォレスター アドバンス(4WD/CVT)
- スバル・フォレスター アドバンス(4WD/CVT)
スバルは分かっている
新型「フォレスター」のフルモデルチェンジから少し遅れて登場した、モーターアシスト機能付きパワーユニット「e-BOXER」搭載の「アドバンス」。刷新されたプラットフォームと進化したハイブリッドパワートレインの組み合わせは、どんな走りをもたらすのか。
進化は見えづらいが中身は大きく変わった
ものすごく個人的なことだけれど、スバル・フォレスターにはちょっとばかり好感を持っていた。というのも、実は親しい友人が、今となっては先代となった自然吸気エンジンのモデルを所有していることで、ステアリングを握る機会も少なくなく、そのたびに「うん、いいクルマだな」とほのかに感じさせられてきたからだ。
あらためて、なぜそんなふうに感じさせられてきたのか、考えてみた。おそらくそれは、乗っているときの感覚が“自然”だから、なのだと思う。それもありきたりの“自然”ではなくて、とても心地のいい“自然”。どこかが尖(とが)りすぎていたり落ち込みすぎていたりすることがなく、あらゆる要素のそれぞれが結構高いところにあって、巧みなバランスを描いていることで、余計な何かに気を持っていかれることがない。
スバルのお家芸であるフラット4エンジンは、重心高を低くすることができるうえに構成コンポーネンツを左右対称に配置することができるから、前後左右のバランスもいいのだけど、そこが変に強調されている感じもない。もちろん元気に走ろうと思えば応えてくれるだけの実力はそれなりにあるし、フラット4エンジンが生む独特の味わいなんかもあるのだけれど、それより角という角を上手に丸めたような“自然”なフィールが「いいクルマだな」とほんのり感じさせる。そんなクルマであるように思えるのだ。
2018年6月のフルモデルチェンジで5代目となったフォレスターの、それもメインストリームとなるe-BOXER搭載モデルはどうだろうか?
新型フォレスターはスタイリングが先代のイメージをかなり継承していることもあって、パッと見では進化の道筋が見えにくいようなところもあるが、中身はずいぶん変わっている。
あらためて、なぜそんなふうに感じさせられてきたのか、考えてみた。おそらくそれは、乗っているときの感覚が“自然”だから、なのだと思う。それもありきたりの“自然”ではなくて、とても心地のいい“自然”。どこかが尖(とが)りすぎていたり落ち込みすぎていたりすることがなく、あらゆる要素のそれぞれが結構高いところにあって、巧みなバランスを描いていることで、余計な何かに気を持っていかれることがない。
スバルのお家芸であるフラット4エンジンは、重心高を低くすることができるうえに構成コンポーネンツを左右対称に配置することができるから、前後左右のバランスもいいのだけど、そこが変に強調されている感じもない。もちろん元気に走ろうと思えば応えてくれるだけの実力はそれなりにあるし、フラット4エンジンが生む独特の味わいなんかもあるのだけれど、それより角という角を上手に丸めたような“自然”なフィールが「いいクルマだな」とほんのり感じさせる。そんなクルマであるように思えるのだ。
2018年6月のフルモデルチェンジで5代目となったフォレスターの、それもメインストリームとなるe-BOXER搭載モデルはどうだろうか?
新型フォレスターはスタイリングが先代のイメージをかなり継承していることもあって、パッと見では進化の道筋が見えにくいようなところもあるが、中身はずいぶん変わっている。
あえてハイブリッドとは言わない
- 「e-BOXER」のパワーユニットは、最高出力145ps、最大トルク188Nmを発生する2リッター水平対向直噴エンジンと、13.6ps、65Nmを発生する電動モーターの組み合わせ。駆動方式はスバルの特徴でもある「シンメトリカルAWD」を採用する。
最も大きいのは、2016年デビューの5代目「インプレッサ」から採用がスタートした「スバルグローバルプラットフォーム」が導入されていることだろう。車体や足まわり全体の剛性を70~100%強化し、サスペンションそのものも改良。さらなる低重心化を図り、フレームワークを見直すことで路面の状況やGなどが生む入力の分散方法も一新するなど、設計の根っこの部分から全面刷新したスバルの新世代プラットフォームだ。開発には相当なチカラが注ぎ込まれている。
パワートレインも一新されている。従来の2リッター自然吸気と2リッター+ターボは設定がなく、2.5リッターの自然吸気エンジンと、フォレスターでは初となる2リッター自然吸気+モーターのハイブリッドユニットが搭載されている。
スバルはあえてハイブリッドとは言わずモーターアシストと表現しつつe-BOXERとネーミングしているが、従来の2リッターエンジンをベースにした最高出力145ps/最大トルク188Nmに同13.6ps/同65Nmのモーターを組み合わせた、いわゆるマイルドハイブリッドと呼ばれるシステムである。そしてトランスミッションは、すべてが「リニアトロニック」と呼ばれている7段マニュアルモード付きCVT、駆動は従来のものに改良を加えたアクティブトルクスプリットAWDだ。
ほかにも改良されたポイントは伝え切れないほどあるのだが、とにもかくにも、今回の試乗車はそのe-BOXERを搭載するモデル、アドバンスだった。インプレッサで高評価を得ていたスバルグローバルプラットフォームと、これまで「XVハイブリッド」に搭載されてきたシステムを大幅に進化させたe-BOXERの組み合わせがどんな印象を与えてくれるのか、興味津々だった。
走りはじめて最初に「おっ?」と思ったのが乗り心地のよさだったので、その辺りについて触れておくと、先代と比べてちゃんと体感できるくらいに快適さを増していた。サスペンションがしっかり動いている様子が伝わってきて、十分に滑らかにしてしなやかといえるフィール。しっとりしていて、当たりも優しい。車体の剛性が大幅に上がったことで、ダンパーやスプリングの働きを生かせるようになったことの表れだろう。
パワートレインも一新されている。従来の2リッター自然吸気と2リッター+ターボは設定がなく、2.5リッターの自然吸気エンジンと、フォレスターでは初となる2リッター自然吸気+モーターのハイブリッドユニットが搭載されている。
スバルはあえてハイブリッドとは言わずモーターアシストと表現しつつe-BOXERとネーミングしているが、従来の2リッターエンジンをベースにした最高出力145ps/最大トルク188Nmに同13.6ps/同65Nmのモーターを組み合わせた、いわゆるマイルドハイブリッドと呼ばれるシステムである。そしてトランスミッションは、すべてが「リニアトロニック」と呼ばれている7段マニュアルモード付きCVT、駆動は従来のものに改良を加えたアクティブトルクスプリットAWDだ。
ほかにも改良されたポイントは伝え切れないほどあるのだが、とにもかくにも、今回の試乗車はそのe-BOXERを搭載するモデル、アドバンスだった。インプレッサで高評価を得ていたスバルグローバルプラットフォームと、これまで「XVハイブリッド」に搭載されてきたシステムを大幅に進化させたe-BOXERの組み合わせがどんな印象を与えてくれるのか、興味津々だった。
走りはじめて最初に「おっ?」と思ったのが乗り心地のよさだったので、その辺りについて触れておくと、先代と比べてちゃんと体感できるくらいに快適さを増していた。サスペンションがしっかり動いている様子が伝わってきて、十分に滑らかにしてしなやかといえるフィール。しっとりしていて、当たりも優しい。車体の剛性が大幅に上がったことで、ダンパーやスプリングの働きを生かせるようになったことの表れだろう。
自然なモーターアシスト
プラットフォームの進化は、もちろん“曲がる”ことにも効いている。フォレスターは代々、背の高いSUVにしては普通のセダンなどに近い感覚で曲がっていけるクルマだったが、新型はハンドリングがさらに向上していて、操作に対する反応もよくなっているし、コーナーにおけるクルマの動きの素直さも正確さも増している。前後にも左右にも無駄な動きはなく、すんなり気持ちよく曲がってくれるのだ。
そしてこのモデルのキモでもある、e-BOXER。バッテリーの充電が十分な状態でゆるやかにアクセルペダルを踏んでいくと、モーターのみのチカラでスルスルと走りだし、そのまま40km/hまではEV走行が可能だ。元気よくアクセルペダルを踏み込むとわりと早いタイミングでエンジンが始動するが、ペダルの踏み込み具合を抑えるドライビングに努めれば思いのほか長い距離をモーターのみで走ることができる。本格的なハイブリッドほど電気に頼った走りができるところまではいかないが、スバルの狙いはそこではないのだろう。
そんなふうに感じたのは、ペダルの踏み込み具合をそう気にすることなく走りはじめて、わりとすぐのことだった。通常の2リッター自然吸気エンジンと比べて力強い加速を示してくれるのもそうなのだが、そのフィーリングがとても自然なのだ。おそらく何も知らずに走らせたらモーターのアシストがあるクルマだということに気づかず、「2リッターにしてはチカラあるねぇ」なんて感じる人もいるかもしれない。
ドライブモードを「S(=スポーツ)」に切り替えると、ちょっとばかりドーピング感のあるトルクの立ち上がりを見せ、軽く背中を押されるような力強い加速を味わわせてくれるが、それでもいわゆる“電気ターボ”のような「やってます!」感はほとんどない。加速感も減速感もナチュラルで、無理なく気持ちいいのだ。とても大人っぽいのである。
そしてこのモデルのキモでもある、e-BOXER。バッテリーの充電が十分な状態でゆるやかにアクセルペダルを踏んでいくと、モーターのみのチカラでスルスルと走りだし、そのまま40km/hまではEV走行が可能だ。元気よくアクセルペダルを踏み込むとわりと早いタイミングでエンジンが始動するが、ペダルの踏み込み具合を抑えるドライビングに努めれば思いのほか長い距離をモーターのみで走ることができる。本格的なハイブリッドほど電気に頼った走りができるところまではいかないが、スバルの狙いはそこではないのだろう。
そんなふうに感じたのは、ペダルの踏み込み具合をそう気にすることなく走りはじめて、わりとすぐのことだった。通常の2リッター自然吸気エンジンと比べて力強い加速を示してくれるのもそうなのだが、そのフィーリングがとても自然なのだ。おそらく何も知らずに走らせたらモーターのアシストがあるクルマだということに気づかず、「2リッターにしてはチカラあるねぇ」なんて感じる人もいるかもしれない。
ドライブモードを「S(=スポーツ)」に切り替えると、ちょっとばかりドーピング感のあるトルクの立ち上がりを見せ、軽く背中を押されるような力強い加速を味わわせてくれるが、それでもいわゆる“電気ターボ”のような「やってます!」感はほとんどない。加速感も減速感もナチュラルで、無理なく気持ちいいのだ。とても大人っぽいのである。
安全装備の充実にも納得
そうそう、安全性を売りにするスバルなだけに、安全装備についても少し触れておくべきだろう。従来どおり「アイサイトVer.3」が標準装備されるのに加え、「アイサイト・ツーリングアシスト」が同じく全車に備わるようになった。これは追従機能付きのクルーズコントロール、車線維持機能、先行車追従操舵機能で構成されるシステムで、120km/hまでの車速域でステアリング、アクセル、ブレーキを自動制御してドライビングをサポートしてくれる。
フロント側を確認するカメラから前車が消えてしまいがちな、例えばワインディングロードのような場所ではアシストが切れがちになり、有効とはいえない──そもそもそうしたシチュエーションのためのモノじゃない──のだけど、高速道路を巡航するような場面では結構な助けとなってくれる。前車との車間の取り方や加減速などが、だいぶ人間の感覚に近づいている感じもある。ちなみに夜も深まった首都高速でも試してみたのだけど、不満らしい不満はなく、極めて楽チンに全く危なげもなくグルリと一周させてくれた。
もうひとつ。このアドバンスには「ドライバーモニタリングシステム」が備わっている。顔認証を利用してドライバーをモニタリングする仕組みで、居眠りや脇見を検知すると警告を与えてくれるというものだ。試しに脇見運転を装ってみると、メーターへの表示とサウンドでしっかり警告を与えてくれた。この顔認証は5人まで登録することができ、ドライバーがクルマに乗り込むと、シートポジションやミラーの位置、ディスプレイの表示などをあらかじめ設定しておいた各人のセットに自動的に合わせてくれるというもの。シートベルトを締め終わる頃にはポジション合わせも終わっているぐらい動作も速い。家族で1台のクルマを使うのであれば、とっても便利な機能である。
まぁそのあたりはうれしいプラスアルファであるが、ともあれフォレスターは、新型になっても「うん、いいクルマだな」と感じられるクルマだった。それも、まろやかで自然という素晴らしい持ち味を生かす方向で成し遂げられていた。ただひとつ違うのは、さまざまな要素のバランスの良さが、もう一段階大きな輪を描いているように感じられたこと。「分かっているなぁ」と膝をたたきたくなるような気分だった。
(文=嶋田智之/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
フロント側を確認するカメラから前車が消えてしまいがちな、例えばワインディングロードのような場所ではアシストが切れがちになり、有効とはいえない──そもそもそうしたシチュエーションのためのモノじゃない──のだけど、高速道路を巡航するような場面では結構な助けとなってくれる。前車との車間の取り方や加減速などが、だいぶ人間の感覚に近づいている感じもある。ちなみに夜も深まった首都高速でも試してみたのだけど、不満らしい不満はなく、極めて楽チンに全く危なげもなくグルリと一周させてくれた。
もうひとつ。このアドバンスには「ドライバーモニタリングシステム」が備わっている。顔認証を利用してドライバーをモニタリングする仕組みで、居眠りや脇見を検知すると警告を与えてくれるというものだ。試しに脇見運転を装ってみると、メーターへの表示とサウンドでしっかり警告を与えてくれた。この顔認証は5人まで登録することができ、ドライバーがクルマに乗り込むと、シートポジションやミラーの位置、ディスプレイの表示などをあらかじめ設定しておいた各人のセットに自動的に合わせてくれるというもの。シートベルトを締め終わる頃にはポジション合わせも終わっているぐらい動作も速い。家族で1台のクルマを使うのであれば、とっても便利な機能である。
まぁそのあたりはうれしいプラスアルファであるが、ともあれフォレスターは、新型になっても「うん、いいクルマだな」と感じられるクルマだった。それも、まろやかで自然という素晴らしい持ち味を生かす方向で成し遂げられていた。ただひとつ違うのは、さまざまな要素のバランスの良さが、もう一段階大きな輪を描いているように感じられたこと。「分かっているなぁ」と膝をたたきたくなるような気分だった。
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