【海外試乗記】マツダ3ハッチバック(FF/6MT)/マツダ3セダン(FF/6AT)
- マツダ3ハッチバック(FF/6MT)/マツダ3セダン(FF/6AT)
挑戦者の気概
マツダのCセグメントモデル「アクセラ/マツダ3」が4世代目に進化。斬新なエクステリアデザインに加え、刷新されたシャシーやパワートレインのラインナップなど、見どころに満ちた新型の出来栄えを、米ロサンゼルスでチェックした。
世界と再び伍(ご)して戦うために
初代マツダ・アクセラ/マツダ3は「ファミリア」の後継として2003年にデビュー。代を追うごとに輸出が増え、世界戦略車としての色合いが濃くなっていったファミリアは、国内市場に気を配って全幅1700mm以下の5ナンバーサイズに収めていたが、ネーミングの変更でそれを吹っ切り、アクセラはひとまわり大きな欧州Cセグメントの標準的なサイズとなった。小さなサイズで室内空間をそれなりに取ろうとするとエクステリアデザインは平板なものになりがちで、実際ファミリアもそうだったが、堂々の3ナンバーサイズとなったアクセラは塊感のある立体的な造形で日本車離れしたスタイルに。走りも欧州車的で、マツダの評価を押し上げることになった。販売台数でもマツダ全体の3分の1ほどを占める大黒柱となり、ファミリアからアクセラへの転身は大成功を収めた。
当時は欧州Cセグメントの代表格である「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の5代目が発表されたばかりで、モーターショーでこれをチェックした谷岡 彰主査は「アチラさんもさすがだと思うけれど、ウチのほうが勝っているところもあるんですよ」と和やかに語っていたのを思い出す。その後の十数年、欧州車は特にボディーやシャシーでの進化の度合いが大きく、相対的に日本車はちょっと停滞気味だったこともあって、現行の7代目ゴルフはかなりの高みに行ってしまった感がある。以前は背中に手がかかっていたのに、少し距離が離れてしまったのだ。
だが、間もなく北米や欧州で販売が開始される新型マツダ3は、再び世界の頂点に王手をかけるつもりだ。2012年の「CX-5」から「スカイアクティブテクノロジー」と「魂動デザイン」を採用した新世代商品群を展開し、それまで大衆的だったブランドイメージをプレミアム方向に押し上げたマツダだが、すべてのラインナップにそれが行きわたり(軽自動車や商用車は除く)、本格的な“2周目”に入る最初のモデルがこのマツダ3ということになる。
当時は欧州Cセグメントの代表格である「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の5代目が発表されたばかりで、モーターショーでこれをチェックした谷岡 彰主査は「アチラさんもさすがだと思うけれど、ウチのほうが勝っているところもあるんですよ」と和やかに語っていたのを思い出す。その後の十数年、欧州車は特にボディーやシャシーでの進化の度合いが大きく、相対的に日本車はちょっと停滞気味だったこともあって、現行の7代目ゴルフはかなりの高みに行ってしまった感がある。以前は背中に手がかかっていたのに、少し距離が離れてしまったのだ。
だが、間もなく北米や欧州で販売が開始される新型マツダ3は、再び世界の頂点に王手をかけるつもりだ。2012年の「CX-5」から「スカイアクティブテクノロジー」と「魂動デザイン」を採用した新世代商品群を展開し、それまで大衆的だったブランドイメージをプレミアム方向に押し上げたマツダだが、すべてのラインナップにそれが行きわたり(軽自動車や商用車は除く)、本格的な“2周目”に入る最初のモデルがこのマツダ3ということになる。
“第2世代スカイアクティブ”を全面採用
ハードウエアでは、新世代車両構造技術の「スカイアクティブビークルアーキテクチャー」、ガソリンとディーゼルのクロスオーバーエンジンともいえる「スカイアクティブX」を採用。魂動デザインは引き算の美学という考え方で深化させ、新たなステージへと踏み出すことになる。インテリアもプレミアムブランドだと名乗っても何ら違和感がないほどに質感が高まっていて、価格が少し上がったとしても納得はいく。2代目CX-5は内容から判断して、マツダ新世代商品群2.0ではなく1.5ぐらいの位置付けだったとみていいだろう。
デザインに関しては、2018年のロサンゼルスモーターショーや2019年の東京オートサロンに出品されたので、写真や実車を目にした人も多いことだろう。サイドのキャラクターラインが存在しないことでシンプルな面構成となっているが、面形状がネガティブに入り込んでいることもあって陰影が深く、実際に太陽の下で目にすると、光の当たり方で表情が大きく変化して見る者を飽きさせない。セダンは伝統的な3ボックススタイルで落ち着いた趣があるが、ハッチバックは特にリアビューがセクシーで目を奪われる。好き嫌いは分かれるかもしれないが、カーデザインの最先端を突っ走っているのは間違いないだろう。
今回、ロサンゼルスで試乗がかなったのは北米仕様のセダンと欧州仕様のハッチバック。前者は2.5リッター自然吸気(NA)ガソリンエンジン+6段AT、後者は「Mハイブリッド」機構付きの2リッターNAガソリンエンジン+6段MTで、残念ながらスカイアクティブXは用意されなかった。
したがって、試乗はシャシー性能のチェックがメインとなった。走り始めてまず驚かされたのが、あらゆる動きが滑らかでスムーズなことと、音・振動が極めて低く抑えられていることだった。乗り心地がいいとかスポーティーだとか感じる以前に、高品質で洗練されたいいモノに乗っていることを実感したのだ。その昔のマツダ車は、普通のセダンやハッチバックでも「ロードスター」や「RX-8」などに通じる「走る歓(よろこ)び」があるから、少々粗削りでも許せるといったことが多かったが、今は隔世の感がある。
デザインに関しては、2018年のロサンゼルスモーターショーや2019年の東京オートサロンに出品されたので、写真や実車を目にした人も多いことだろう。サイドのキャラクターラインが存在しないことでシンプルな面構成となっているが、面形状がネガティブに入り込んでいることもあって陰影が深く、実際に太陽の下で目にすると、光の当たり方で表情が大きく変化して見る者を飽きさせない。セダンは伝統的な3ボックススタイルで落ち着いた趣があるが、ハッチバックは特にリアビューがセクシーで目を奪われる。好き嫌いは分かれるかもしれないが、カーデザインの最先端を突っ走っているのは間違いないだろう。
今回、ロサンゼルスで試乗がかなったのは北米仕様のセダンと欧州仕様のハッチバック。前者は2.5リッター自然吸気(NA)ガソリンエンジン+6段AT、後者は「Mハイブリッド」機構付きの2リッターNAガソリンエンジン+6段MTで、残念ながらスカイアクティブXは用意されなかった。
したがって、試乗はシャシー性能のチェックがメインとなった。走り始めてまず驚かされたのが、あらゆる動きが滑らかでスムーズなことと、音・振動が極めて低く抑えられていることだった。乗り心地がいいとかスポーティーだとか感じる以前に、高品質で洗練されたいいモノに乗っていることを実感したのだ。その昔のマツダ車は、普通のセダンやハッチバックでも「ロードスター」や「RX-8」などに通じる「走る歓(よろこ)び」があるから、少々粗削りでも許せるといったことが多かったが、今は隔世の感がある。
隔世の進化を遂げた快適性
音に関してはただ静かだというだけではなく、パワートレインが発するノイズ、外から侵入する風や他のクルマの音、ロードノイズ/パターンノイズなどのバランスがよくて聞き心地がいい。特に感心したのが、良路からザラザラの路面に変わっても、音質・音量の変化が少ないこと。静かになればなるほどここが気になるものだが、マツダ3は上手に折り合いをつけていた。振動・騒音の元となる路面から受けたエネルギーの緩衝材となる減衰節を、Bピラーに仕込んでいるのが効果を発揮しているようだ。微細なものまで振動を抑え込んでいることも含めて、静粛性に関してはゴルフやもっとプレミアムなCセグメントカーに対しても優位に立っている。
セダンは、ハイウェイで直進するときに進路を乱されがちでチョロチョロとするのが気になったが、どうやらこれは北米仕様が履くオールシーズンタイヤに原因があったようだ。サマータイヤのハッチバックでは問題なかったので、日本仕様でもおそらく大丈夫だろう。ただ、オーナーになってタイヤを交換する時は、マッチングに気を使ったほうがいいかもしれない。ワインディングロードでもハッチバックはリニアなハンドリングをみせて気持ちよく走れたが、セダンでペースを上げていくと少しだけライントレース性が薄れてくるからだ。
スカイアクティブビークルアーキテクチャーは、基本骨格のストレート化と環状構造を基本とするマツダのボディーを進化させたもので、これまでの上下左右方向に加えて前後方向にも骨格を連続させた環状構造となっている。剛性を向上させるとともに、サスペンションに応答遅れなどがない本来の機能を果たさせることに役立っているという。リアは従来のマルチリンクからトーションビームへと変更されたが、きちんとストロークしている感覚があって乗り心地もなめらかだった。
セダンは、ハイウェイで直進するときに進路を乱されがちでチョロチョロとするのが気になったが、どうやらこれは北米仕様が履くオールシーズンタイヤに原因があったようだ。サマータイヤのハッチバックでは問題なかったので、日本仕様でもおそらく大丈夫だろう。ただ、オーナーになってタイヤを交換する時は、マッチングに気を使ったほうがいいかもしれない。ワインディングロードでもハッチバックはリニアなハンドリングをみせて気持ちよく走れたが、セダンでペースを上げていくと少しだけライントレース性が薄れてくるからだ。
スカイアクティブビークルアーキテクチャーは、基本骨格のストレート化と環状構造を基本とするマツダのボディーを進化させたもので、これまでの上下左右方向に加えて前後方向にも骨格を連続させた環状構造となっている。剛性を向上させるとともに、サスペンションに応答遅れなどがない本来の機能を果たさせることに役立っているという。リアは従来のマルチリンクからトーションビームへと変更されたが、きちんとストロークしている感覚があって乗り心地もなめらかだった。
日本の道でも早く試してみたい
マツダはドライビングポジションに大きなこだわりをみせてきたが、今回は骨盤を立てて座らせ、理想的な着座姿勢になるシートを採用。たしかに、コックピットに収まって走らせていると、自然と背筋が伸びるとともにクルマの挙動に敏感になれている気がして、運転がうまくなったようにさえ思える。ステアリングやペダルの操作も、ごく自然に行えるのでクルマと一体になれる感覚も強い。人間の能力を引き出すことで走る歓びにつなげるというコンセプトが、理に適っているのだ。
パワートレインに関しては、低回転・大トルク型のガソリン直噴ターボやディーゼル、電気モーター、それに多段ミッションなどに慣れてきている身からすると、特筆すべきものはなかった。2.5リッターとそれなりの排気量があるNAガソリンエンジンでも常用域のトルクは並レベルで、6段ATとの組み合わせではドライバビリティーがいいというほどではない。6段MTなら自らの選択で操れるので、2リッターでもストレスを感じづらかった。Mハイブリッドは、24V電源を採用するベルトドライブ式のISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)で加速時のアシスト効果を行うマイルドなハイブリッド機構。ただ、それ以上に回生エネルギーの効率的な活用や、アイドリングストップからのエンジン再始動がスムーズになるといった効果が大きく、商品性を高めている。
Mハイブリッドも組み込むスカイアクティブXは、常用域のトルクやレスポンスに優れるというので期待したい。日本仕様では1.8リッターのディーゼルエンジンも用意されるということで、このどちらかが本命になりそうだ。
今回の試乗はセダンとハッチバックを合わせて2時間ほどで、判断を下すにはまだ乗り込みが足りないというのが正直なところだが、Cセグメントの世界トップを本気で目指した気概はヒシヒシと伝わってきた。少なくともデザインはライバルよりも攻めていて、走りでは質感を飛躍的に高めている。日本導入は2019年半ばの見込み。一刻も早く、走り慣れた道でライバルたちと比較してみたいと強く思わされたのだった。
(文=石井昌道/写真=マツダ/編集=堀田剛資)
パワートレインに関しては、低回転・大トルク型のガソリン直噴ターボやディーゼル、電気モーター、それに多段ミッションなどに慣れてきている身からすると、特筆すべきものはなかった。2.5リッターとそれなりの排気量があるNAガソリンエンジンでも常用域のトルクは並レベルで、6段ATとの組み合わせではドライバビリティーがいいというほどではない。6段MTなら自らの選択で操れるので、2リッターでもストレスを感じづらかった。Mハイブリッドは、24V電源を採用するベルトドライブ式のISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)で加速時のアシスト効果を行うマイルドなハイブリッド機構。ただ、それ以上に回生エネルギーの効率的な活用や、アイドリングストップからのエンジン再始動がスムーズになるといった効果が大きく、商品性を高めている。
Mハイブリッドも組み込むスカイアクティブXは、常用域のトルクやレスポンスに優れるというので期待したい。日本仕様では1.8リッターのディーゼルエンジンも用意されるということで、このどちらかが本命になりそうだ。
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