【試乗記】マツダ3セダン プロトタイプ(FF/6AT)
- マツダ3セダン プロトタイプ(FF/6AT)
雪も溶かすパッション
もうすぐ国内での販売がスタートする新型「マツダ3」。その走りを支えるマツダの新世代技術とはどのようなものなのか。同社のテストコースで開発車両に試乗して確かめた。
特別な場所で初対面
いま日本のクルマ好きから最も注目を集めているクルマといえばマツダ3だろう。
スポーツカーや高級車ならいざ知らず、普通のハッチバック/セダンがこれだけ注目されるのは不思議な気もするが、最近のマツダのクルマづくりを見れば、それもむべなるかな。なるほどいまのマツダのラインナップは、どのモデルを選んでも“ハズレくじなし”の充実ぶりだ。
その屋台骨を支えるマツダ3(日本名:アクセラ)の新型が2018年秋のロサンゼルスモーターショーで発表され、年明けの東京オートサロン2019で日本初披露された。多くのクルマ好きが待望するそのマツダ3に、日本国内で初めて試乗することができた。
とはいえ、今回の試乗は北海道北部の剣淵町にあるマツダの試験場コース内という限定されたシチュエーションで行われた。毎冬、マツダがここで行っている雪上取材会に、新型マツダ3のプロトタイプが用意されたのである。
旭川から貸し切りバスに揺られて1時間半。剣淵試験場に到着すると、おや、覚悟していたほど寒くない。この日の天気は快晴で、予報によれば最高気温は4度に達するだろうとのことだ。
「0度以上になると雪が溶けてしまうので、基本的にはテストを行わないんですよ」と、マツダのスタッフが教えてくれたが、どうやらこの日は特別暖かい日だったようだ。
スポーツカーや高級車ならいざ知らず、普通のハッチバック/セダンがこれだけ注目されるのは不思議な気もするが、最近のマツダのクルマづくりを見れば、それもむべなるかな。なるほどいまのマツダのラインナップは、どのモデルを選んでも“ハズレくじなし”の充実ぶりだ。
その屋台骨を支えるマツダ3(日本名:アクセラ)の新型が2018年秋のロサンゼルスモーターショーで発表され、年明けの東京オートサロン2019で日本初披露された。多くのクルマ好きが待望するそのマツダ3に、日本国内で初めて試乗することができた。
とはいえ、今回の試乗は北海道北部の剣淵町にあるマツダの試験場コース内という限定されたシチュエーションで行われた。毎冬、マツダがここで行っている雪上取材会に、新型マツダ3のプロトタイプが用意されたのである。
旭川から貸し切りバスに揺られて1時間半。剣淵試験場に到着すると、おや、覚悟していたほど寒くない。この日の天気は快晴で、予報によれば最高気温は4度に達するだろうとのことだ。
「0度以上になると雪が溶けてしまうので、基本的にはテストを行わないんですよ」と、マツダのスタッフが教えてくれたが、どうやらこの日は特別暖かい日だったようだ。
歩いているように運転させたい
- 「人間の能力を最大限に発揮できるビークルアーキテクチャー」を目指すというマツダ。そのためには「歩いている状態をドライビングで表現するのが理想的」で、「歩行時と同様に、骨盤および脊柱を立てた状態で運転席に着座するのが望ましい」という。写真は説明用のスライド資料。
マツダ3には5ドアハッチバックと4ドアセダンがあるが、用意されたのは基本的にセダンのみ。クルマにはラッピングによる擬装が施されていた。あくまでプロトタイプであり、市販車そのものではありませんよ、ということである。
試乗前のプレゼンテーションでは、「人間中心のクルマ開発」という言葉が繰り返された。「人間の持つ身体能力を最大限に生かし、クルマと一体化するように」というのがその趣旨で、マツダが初代「ロードスター」以降唱える“人馬一体”をさらに進化させた、と説明された。
興味深かったのは、開発者が述べた「人間の歩行について研究した」という言葉だ。「歩いているような自然な状態をクルマの運転においても再現する」ことを目指し、そのために個々のシステムがバラバラに存在するのではなく“クルマ全体のコーディネート”ができることを重視したという。
クルマに乗り込んでそれを実感したのは、シートのつくりだ。ドライバーの体を“面”で受け止めるような形状でかけ心地がよく、座面の先端部分を上下させられるなど、細かな調整機構が備わる。
開発者いわく、“歩くように運転する”ために一番大事なのは「骨盤を立てて座れるシート」なのだという。確かに昔から、欧州車と日本車の一番の違いは「シートのつくり」だと言われてきた。そう考えるとマツダがシートに着目し、そこに力を注いだというのは納得できる。
試乗前のプレゼンテーションでは、「人間中心のクルマ開発」という言葉が繰り返された。「人間の持つ身体能力を最大限に生かし、クルマと一体化するように」というのがその趣旨で、マツダが初代「ロードスター」以降唱える“人馬一体”をさらに進化させた、と説明された。
興味深かったのは、開発者が述べた「人間の歩行について研究した」という言葉だ。「歩いているような自然な状態をクルマの運転においても再現する」ことを目指し、そのために個々のシステムがバラバラに存在するのではなく“クルマ全体のコーディネート”ができることを重視したという。
クルマに乗り込んでそれを実感したのは、シートのつくりだ。ドライバーの体を“面”で受け止めるような形状でかけ心地がよく、座面の先端部分を上下させられるなど、細かな調整機構が備わる。
開発者いわく、“歩くように運転する”ために一番大事なのは「骨盤を立てて座れるシート」なのだという。確かに昔から、欧州車と日本車の一番の違いは「シートのつくり」だと言われてきた。そう考えるとマツダがシートに着目し、そこに力を注いだというのは納得できる。
姿勢制御の効果は絶大
- 「GVCプラス」は、エンジントルクのコントロールによってターンイン時の応答性を高める制御「G-ベクタリングコントロール」に、旋回中からターンアウト時にかけての安定性と収束性を向上させるブレーキ制御を加えたもの。先行してSUV「CX-5」にも搭載されている。
試乗は試験場ならではの内容で、雪上でのダブルレーンチェンジ、定常円旋回、峠道を模したコースの走行など、さまざまなモードを体験することができた。そのすべてのシチュエーションで恩恵を感じたのは、「G-ベクタリングコントロール プラス(GVCプラス)」という技術だ。
「G-ベクタリングコントロール(GVC)」はマツダ独自の技術で、簡単に言えば、コーナーに進入するとき、ハンドル操作に応じてエンジンのトルクを微妙に絞り、“前輪の荷重”を増やすことで曲がりやすくするというもの。
GVCプラスでは、さらにコーナーから立ち上がるとき、ハンドルを戻す操作に合わせてコーナー外側の前輪にほんのちょっとブレーキを利かせる。これによりクルマを直進状態に戻そうという力が生まれ、車体が安定する。
特に雪の上ではこのGVCプラスの効果は絶大だった。試乗ではGVCプラスをオン/オフ両方のモードで試すことができたが、オフの状態ではカーブで「すわスピンか?」という状態に陥ってしまう場面でも、オンにすればクルマがさりげなくキュッと進路に戻してくれ、安定した姿勢でカーブを脱出できる。
大事なのは、この制御があくまで“自然に”行われることだ。いかにも「クルマが助けてくれた」ではなく、よくよく注意していなければわからないぐらいのさりげなさで介入してくれる。これがマツダの言う「人間中心」ということなのだろう。
「G-ベクタリングコントロール(GVC)」はマツダ独自の技術で、簡単に言えば、コーナーに進入するとき、ハンドル操作に応じてエンジンのトルクを微妙に絞り、“前輪の荷重”を増やすことで曲がりやすくするというもの。
GVCプラスでは、さらにコーナーから立ち上がるとき、ハンドルを戻す操作に合わせてコーナー外側の前輪にほんのちょっとブレーキを利かせる。これによりクルマを直進状態に戻そうという力が生まれ、車体が安定する。
特に雪の上ではこのGVCプラスの効果は絶大だった。試乗ではGVCプラスをオン/オフ両方のモードで試すことができたが、オフの状態ではカーブで「すわスピンか?」という状態に陥ってしまう場面でも、オンにすればクルマがさりげなくキュッと進路に戻してくれ、安定した姿勢でカーブを脱出できる。
大事なのは、この制御があくまで“自然に”行われることだ。いかにも「クルマが助けてくれた」ではなく、よくよく注意していなければわからないぐらいのさりげなさで介入してくれる。これがマツダの言う「人間中心」ということなのだろう。
スムーズで静かで心地いい
一般道から試験場に至るアプローチ道路を使って、数kmではあるが通常の使用に近い状況での走行を試すこともできた。
まず、走りだした瞬間のスムーズさが印象的だ。まあ、スタートがスムーズなんていうのは当たり前だと思うかもしれないが、アクセルの踏み込み量と、それに対する加速のバランスが絶妙というか、気持ちいいのだ。
試乗したクルマは2.5リッターのガソリンエンジンを積んでいた。左ハンドルの北米向け仕様だ。新型マツダ3の“目玉”と伝えられる、ガソリンとディーゼルのハイブリッド的特徴を持つ次世代エンジン「スカイアクティブX」は、残念ながら試すことができなかった。エンジン自体の性能やフィーリングは、現行モデルとそれほど変わらない印象だったが、6段ATの滑らかさや乗り心地のよさ、そして室内の静粛性の向上は、新旧を乗り比べながらの試乗でしっかり感じられた。
2012年に登場した「CX-5」が、「スカイアクティブテクノロジー」と「鼓動デザイン」を採用した“新しいマツダ”のクルマづくりの起点だったとすれば、エンジンやシャシーに関する新技術が“全部盛り”になったこの新型マツダ3は、いわばその第2章のスタートとなるモデルだ。
今回試乗したのは擬装が施されたプロトタイプであり、内外装の質感やディテールまでは確認できなかったが、クルマの“中身”については隅々に至るまで妥協のない作り込みが行われていることがわかった。
今回の取材会では、この新型にかけるマツダ開発陣の真摯(しんし)な思いと気合が感じられた。参加した総勢16人の開発スタッフが、われわれ取材メディアに対し入れ代わり立ち代わり熱い言葉を語るのだから。
これだけの熱意で「人間中心のクルマ開発をしました」と言うならば、いいクルマができないワケはないだろうと、そう思ってしまったのは、僕がすっかり“マツダの魔法”にかかってしまったからだろうか。
(文=河西啓介/写真=ダン・アオキ、webCG/編集=関 顕也)
まず、走りだした瞬間のスムーズさが印象的だ。まあ、スタートがスムーズなんていうのは当たり前だと思うかもしれないが、アクセルの踏み込み量と、それに対する加速のバランスが絶妙というか、気持ちいいのだ。
試乗したクルマは2.5リッターのガソリンエンジンを積んでいた。左ハンドルの北米向け仕様だ。新型マツダ3の“目玉”と伝えられる、ガソリンとディーゼルのハイブリッド的特徴を持つ次世代エンジン「スカイアクティブX」は、残念ながら試すことができなかった。エンジン自体の性能やフィーリングは、現行モデルとそれほど変わらない印象だったが、6段ATの滑らかさや乗り心地のよさ、そして室内の静粛性の向上は、新旧を乗り比べながらの試乗でしっかり感じられた。
2012年に登場した「CX-5」が、「スカイアクティブテクノロジー」と「鼓動デザイン」を採用した“新しいマツダ”のクルマづくりの起点だったとすれば、エンジンやシャシーに関する新技術が“全部盛り”になったこの新型マツダ3は、いわばその第2章のスタートとなるモデルだ。
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