【試乗記】日産リーフe+ G(FF)
- 日産リーフe+ G(FF)
歓迎すべき進化
電気自動車「日産リーフ」のラインナップに新たに加わった、大容量バッテリー搭載の上級モデル「e+」。「JC08モードで570km」という一充電走行距離が注目されているが、その進化は動力性能や“走りの質”など、多岐にわたるものだった。
電気自動車を身近な存在にしたリーフ
2010年に発売された日産リーフの世界累計販売台数が、2019年3月に40万台を突破した。日本メーカーの製品がこの市場をリードしているというのは、日本人のひとりとして素直にうれしい。
日本においては、EVをこれだけ身近な存在にしたのがリーフであることは確かだし、日産ディーラーや高速道路のサービスエリアはもちろんのこと、いまやショッピングモールやコンビニの駐車場にまで充電器の設置が進んでいるのも、リーフの普及なしには考えられなかっただろう。かつて、マツダの「ユーノス・ロードスター」がオープンカーを身近なものにしたのと同じくらい、リーフの登場は大きな意味を持っていると、少なくとも私は思うのである。
そんなリーフに、待望の大容量バッテリー搭載モデルが追加になった。日産は2017年に2代目リーフをデビューさせた際に、2018年に高性能モデルを投入することを予告。買い替え予備軍や、新規オーナー予備軍の期待が高まっていた。そして2019年1月、予定よりも少し遅れて登場したのが、このリーフe+ということになる。
一番の見どころは、駆動用バッテリーの容量が標準タイプのリーフに比べて55%増え、40kWhから62kWhになったことだ。これにより、一充電走行距離は322km(WTLCモード)/400km(JC08モード)から458km/570kmへ、4割強も延ばすことに成功した。
日本においては、EVをこれだけ身近な存在にしたのがリーフであることは確かだし、日産ディーラーや高速道路のサービスエリアはもちろんのこと、いまやショッピングモールやコンビニの駐車場にまで充電器の設置が進んでいるのも、リーフの普及なしには考えられなかっただろう。かつて、マツダの「ユーノス・ロードスター」がオープンカーを身近なものにしたのと同じくらい、リーフの登場は大きな意味を持っていると、少なくとも私は思うのである。
そんなリーフに、待望の大容量バッテリー搭載モデルが追加になった。日産は2017年に2代目リーフをデビューさせた際に、2018年に高性能モデルを投入することを予告。買い替え予備軍や、新規オーナー予備軍の期待が高まっていた。そして2019年1月、予定よりも少し遅れて登場したのが、このリーフe+ということになる。
一番の見どころは、駆動用バッテリーの容量が標準タイプのリーフに比べて55%増え、40kWhから62kWhになったことだ。これにより、一充電走行距離は322km(WTLCモード)/400km(JC08モード)から458km/570kmへ、4割強も延ばすことに成功した。
全高が5mm高くなったわけは?
駆動用バッテリーの大容量化には、バッテリー自体の改良に加えて、バッテリーを構成するセルの数を増やす必要があった。実際リーフe+では、これまでの192個から288個に増やしている。ちょうど1.5倍だ。当然、増えたバッテリーの収納スペースが必要になるが、キャビンやラゲッジスペースを犠牲にせずに格納場所を確保したのがうれしいところだ。
その実現のために、リーフe+ではバッテリーセルをモジュールにグループ化する際、その接続方法をハーネスから基板に変えたり、レーザー溶接によってセル同士を接合したりするなどしてコンパクト化を実現。さらに、ホイールベース内のフロア下に設けたバッテリー搭載スペースを、従来よりも下方に20mm拡大している。ただ、そのままでは最低地上高が150mmから130mmに下がってしまうので、車高を5mm上げて135mmの最低地上高を確保した。これにともない、全高が1540mmから1545mmへと高まったというわけである。
バッテリーの大容量化により、リーフe+の車両重量はリーフに比べて160kg増加。それにあわせてボディー剛性をアップするとともに、サスペンションの強化が図られている。これがリーフe+の走りにプラスに働いているのは、後ほど詳しく触れることにする。
その実現のために、リーフe+ではバッテリーセルをモジュールにグループ化する際、その接続方法をハーネスから基板に変えたり、レーザー溶接によってセル同士を接合したりするなどしてコンパクト化を実現。さらに、ホイールベース内のフロア下に設けたバッテリー搭載スペースを、従来よりも下方に20mm拡大している。ただ、そのままでは最低地上高が150mmから130mmに下がってしまうので、車高を5mm上げて135mmの最低地上高を確保した。これにともない、全高が1540mmから1545mmへと高まったというわけである。
バッテリーの大容量化により、リーフe+の車両重量はリーフに比べて160kg増加。それにあわせてボディー剛性をアップするとともに、サスペンションの強化が図られている。これがリーフe+の走りにプラスに働いているのは、後ほど詳しく触れることにする。
同じモーターでも加速が鋭く
そんなこんなで、リーフよりも50~70万円高いプライスタグが付くリーフe+だが、リーフとの見た目の違いは驚くほど少ない。フロントバンパー下にブルーのリップスポイラーが装着されているが、それに気づくのはオーナーくらいのものだ。プレスリリースには「充電ポートに『e+』ロゴを配置するなど、『日産リーフe+』であることをさりげなく伝えています」とあるが、あまりにさりげなさすぎる。インテリアもリーフと同じデザインで、上級モデルにふさわしい演出があってもよかったのではないかと個人的には思うのだが……。
しかし、走りだすとそんな不満は瞬時に消えうせた。前述のとおり、リーフe+の車両重量は160kg増えているが、動き出しが鈍くなるどころか、反対に加速が鋭く、よりスポーティーな動きを見せたのだ。もともと力強い加速を示すリーフだが、リーフe+ではそれに輪をかけて素早くなった印象。特に50km/hを超えてからの加速の伸びが著しく、高速道路への流入や追い越しの場面では、これまで以上に余裕が感じられた。
日産によれば、リーフe+のモーターはリーフと同じものだが、駆動用バッテリーの大容量化によってインバーターに供給できる電流が増えたために、最高出力、最大トルクともにリーフを上回る性能を手にしたという。バッテリーの大容量化の恩恵は、こんなところにもあったのだ。
しかし、走りだすとそんな不満は瞬時に消えうせた。前述のとおり、リーフe+の車両重量は160kg増えているが、動き出しが鈍くなるどころか、反対に加速が鋭く、よりスポーティーな動きを見せたのだ。もともと力強い加速を示すリーフだが、リーフe+ではそれに輪をかけて素早くなった印象。特に50km/hを超えてからの加速の伸びが著しく、高速道路への流入や追い越しの場面では、これまで以上に余裕が感じられた。
日産によれば、リーフe+のモーターはリーフと同じものだが、駆動用バッテリーの大容量化によってインバーターに供給できる電流が増えたために、最高出力、最大トルクともにリーフを上回る性能を手にしたという。バッテリーの大容量化の恩恵は、こんなところにもあったのだ。
レベルアップした走り
こうした動力性能の進化よりうれしかったのが、走りの質が確実にレベルアップしたこと。フロア下に重量物のバッテリーを搭載するリーフは、もともと重心が低いが、バッテリーの増量によりさらに重心が10mm低くなったことと、サスペンションなどの見直しにより、ロールやピッチの動きがよく抑えられている。おかげで、街中での動きはより落ち着いたものになり、高速走行時のフラット感も明らかに向上した。
強力な回生ブレーキを使って、アクセルペダルの操作だけで減速を制御できる「e-Pedal」使用時も、減速時のノーズダイブが穏やかになった。コーナリング時のロールもよく抑えられているが、乗り心地はより快適になっており、そのバランスの良い仕上がりは、期待以上のものだった。
気になる航続距離についても、東京から御殿場、そして、横浜までの約240kmを走行して、バッテリー残は25%、うまくいけばあと113kmは走れるという状況。ちょっとした日帰りドライブなら途中の充電は不要というのは助かる。
大容量のバッテリーを積み、ひたすら航続距離を延ばすことが電気自動車の価値とは思わないが、少なくとも今回のリーフe+では、バッテリーの大容量化が良い結果を生み出したと思う。走りが楽しめるという意味でも、このリーフe+の登場を歓迎したい。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
強力な回生ブレーキを使って、アクセルペダルの操作だけで減速を制御できる「e-Pedal」使用時も、減速時のノーズダイブが穏やかになった。コーナリング時のロールもよく抑えられているが、乗り心地はより快適になっており、そのバランスの良い仕上がりは、期待以上のものだった。
気になる航続距離についても、東京から御殿場、そして、横浜までの約240kmを走行して、バッテリー残は25%、うまくいけばあと113kmは走れるという状況。ちょっとした日帰りドライブなら途中の充電は不要というのは助かる。
大容量のバッテリーを積み、ひたすら航続距離を延ばすことが電気自動車の価値とは思わないが、少なくとも今回のリーフe+では、バッテリーの大容量化が良い結果を生み出したと思う。走りが楽しめるという意味でも、このリーフe+の登場を歓迎したい。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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