【試乗記】マツダ3セダン20S Lパッケージ(FF/6AT)/マツダ3ファストバックXD Lパッケージ(FF/6AT)
- マツダ3セダン20S Lパッケージ(FF/6AT)/マツダ3ファストバックXD Lパッケージ(FF/6AT)
傑作の予感
マツダのグローバルな名称を冠し、「アクセラ」から生まれ変わったCセグメントモデル「MAZDA3(マツダ・スリー)」。歴史ある多くのライバルがひしめくなか、どのような魅力を持ったモデルに仕上げられたのか。発売後、初試乗となったテストコースから報告する。
デザインは引き算の美学
- 「マツダ3セダン」(手前)と「マツダ3ファストバック」(奥)。2018年11月のロサンゼルスモーターショーで世界初公開された。日本では2019年1月の東京オートサロンで初披露され、同年5月24日に販売開始。マツダではこのモデルを“魂動デザイン第2章”と位置付けている。
- 手前が「セダン」、奥が「ファストバック」。同じデザインテイストのリアコンビネーションライトが採用されているが、リアフェンダーのデザイン処理を含め、ボディー後端の印象は大きく異なっている。マツダブランドを示すエンブレムは立体的な形状で、手動のトランク(ハッチゲート)オープナーも兼ねている。
クルマのデザインで興奮したのは久しぶりだ。マツダ3のハッチバック版である「ファストバック」は、世界中で絶賛されたコンセプトカー「マツダ・ビジョン クーペ」と同種の美しさを備えている。しかも全長4460mmという、現代においてはコンパクトと言いたくなるサイズのなかで伸びやかさを表現しているあたりが、拍手喝采だ。
そして、「これだけカッコいいんだから中身は多少ボロくても目を瞑(つむ)ろう」と思ったけれど、ハンドルを握ると傑作の予感がした。「傑作」ではなく「傑作の予感」としたのは、試乗したのが路面の滑らかなクローズドコースだったからだ。一般道で乗ればまた別の感想を持つかもしれないけれど、以下、傑作の予感がした理由を、順を追って記したい。
Cセグメント、つまり「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「ルノー・メガーヌ」と同じクラスに属するマツダ・アクセラがフルモデルチェンジを受け、国内での車名は海外市場と同じくマツダ3へと変更されることになった。
マツダはこれまで、クルマづくりの技術においては「SKYACTIV(スカイアクティブ)テクノロジー」を、デザインにおいては「魂動(こどう)=Soul of Motion」というコンセプトを標榜(ひょうぼう)してきた。マツダ3はその両方において次のステージへと進んだ第1号車とのことであり、つまりこのクルマを見ればマツダの未来が想像できるということでもある。
5月24日より販売が開始されたマツダ3に試乗したのは、栃木県のGKNドライブラインジャパンのテストコース。試乗は、高速周回路とハンドリング路を組み合わせて行う。
まずは、目がハートの形になってしまったデザインについてふれたい。マツダは2010年に「魂動=Soul of Motion」というデザイン哲学を打ち出し、2012年に発表した「CX-5」以降、生き物のようにダイナミックかつエレガントな動きを感じさせる造形が好評を博してきた。
では、“魂動デザイン第2章”となるマツダ3は、どんな方向に進んだのか。ひとことで言えば、削(そ)ぎ落とす方向、引き算の美学だ。ファストバックの写真をご覧いただくとわかるように、クルマの個性を演出する常とう手段だったキャラクターラインではなく、きれいに湾曲した面の張りの豊かさで勝負している。
この日は、梅雨の合間の青空が広がっていた。Cピラーからリアフェンダーに至るボリューム豊かな面には青空と白い雲が映り込み、その雲が流れていく。クルマのデザインにはまだまだ可能性が残されているんだとうれしくなる。
そして、「これだけカッコいいんだから中身は多少ボロくても目を瞑(つむ)ろう」と思ったけれど、ハンドルを握ると傑作の予感がした。「傑作」ではなく「傑作の予感」としたのは、試乗したのが路面の滑らかなクローズドコースだったからだ。一般道で乗ればまた別の感想を持つかもしれないけれど、以下、傑作の予感がした理由を、順を追って記したい。
Cセグメント、つまり「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「ルノー・メガーヌ」と同じクラスに属するマツダ・アクセラがフルモデルチェンジを受け、国内での車名は海外市場と同じくマツダ3へと変更されることになった。
マツダはこれまで、クルマづくりの技術においては「SKYACTIV(スカイアクティブ)テクノロジー」を、デザインにおいては「魂動(こどう)=Soul of Motion」というコンセプトを標榜(ひょうぼう)してきた。マツダ3はその両方において次のステージへと進んだ第1号車とのことであり、つまりこのクルマを見ればマツダの未来が想像できるということでもある。
5月24日より販売が開始されたマツダ3に試乗したのは、栃木県のGKNドライブラインジャパンのテストコース。試乗は、高速周回路とハンドリング路を組み合わせて行う。
まずは、目がハートの形になってしまったデザインについてふれたい。マツダは2010年に「魂動=Soul of Motion」というデザイン哲学を打ち出し、2012年に発表した「CX-5」以降、生き物のようにダイナミックかつエレガントな動きを感じさせる造形が好評を博してきた。
では、“魂動デザイン第2章”となるマツダ3は、どんな方向に進んだのか。ひとことで言えば、削(そ)ぎ落とす方向、引き算の美学だ。ファストバックの写真をご覧いただくとわかるように、クルマの個性を演出する常とう手段だったキャラクターラインではなく、きれいに湾曲した面の張りの豊かさで勝負している。
この日は、梅雨の合間の青空が広がっていた。Cピラーからリアフェンダーに至るボリューム豊かな面には青空と白い雲が映り込み、その雲が流れていく。クルマのデザインにはまだまだ可能性が残されているんだとうれしくなる。
- 「マツダ3セダン」(手前)と「マツダ3ファストバック」(奥)。2018年11月のロサンゼルスモーターショーで世界初公開された。日本では2019年1月の東京オートサロンで初披露され、同年5月24日に販売開始。マツダではこのモデルを“魂動デザイン第2章”と位置付けている。
- 手前が「セダン」、奥が「ファストバック」。同じデザインテイストのリアコンビネーションライトが採用されているが、リアフェンダーのデザイン処理を含め、ボディー後端の印象は大きく異なっている。マツダブランドを示すエンブレムは立体的な形状で、手動のトランク(ハッチゲート)オープナーも兼ねている。
見事な内外装の統一感
- 伝統的な3ボックススタイルを採用している「マツダ3セダン」。ボディーサイズは、全長×全幅×全高=4660×1795×1445mmで、ファストバックよりも200mm全長が長く、全高が5mm高い設定になっている。
- 一見何の変哲もないデザインに見えるが、乗員の「骨盤を立てること」と「脊柱のS字カーブを維持できること」を設計のポイントにしたというフロントシート。太もも部分のフィット感を出すために、チルト調整機能を全車標準装備としているのもこだわりの部分。オルガン式アクセルペダルも引き続き採用されている。
マツダ3はセダンとファストバックの2種のボディーと、4種のエンジンが用意される。4種のエンジンの内訳は、1.5リッターのガソリン、2リッターのガソリン、1.8リッターのディーゼル、そして新しい燃焼方式「火花点火制御圧縮着火」とマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「スカイアクティブX」。この中でスカイアクティブXだけは今秋からの販売で、現時点ではスペックも明らかになっていない。スカイアクティブXと1.5リッターのガソリンだけには6段MTの設定があるものの、他のエンジンは6段ATとの組み合わせのみとなる。
まずは2リッターのガソリンエンジンを積んだセダン、「マツダ3セダン20S Lパッケージ」に乗り込む。ハッチバックの美しさに目を奪われがちになるけれど、セダンもなかなかスタイリッシュだ。特に斜め後ろから見ると、ハッチバックと同様に美しい面で見せようとしている意図が伝わってくる。いかついフロントグリルやギラギラとしたキャラクターラインなど、“盛る”方向で個性を出そうとするよりも、知的でクールに感じる。
インテリアもシンプル。水平基調の造形に必要なものだけが配置されていて、限られた空間なのに広いと感じさせる雰囲気は、どことなく茶室を連想させる。今回はクローズドコースでの試乗だったのでカーナビを操作することはなかったけれど、これだけシンプルな造りでインターフェイスが良好ならば素晴らしいことだ。公道試乗会で確認したい。
素晴らしいといえば、エクステリアとインテリアのイメージが、見事に統一されている点も素晴らしい。クルマ全体のデザインの方向性がぴたっとひとつの方向を向いていて、ブレがない。
ドライバーズシートに収まり、エンジンスタート。実は、このシートの第一印象はあまり芳しいものではなかった。どうにも上半身の収まりが悪いというか。けれども、基本にのっとってシート位置を調整して正しいポジションに改めたところ、シートへの印象は激変した。
体を包み込むようにホールドするシートはあるけれど、このシートはちょっと違う。包むとかホールドというよりも、尾骨のあたりが磁石でくっついているように感じて、背中や腰が特にサポートされているという感覚はないものの、結果として体が動かずに運転に専念できている。
マツダの開発陣に聞けば、人間は歩行時にバランスを保つためのサスペンション機能を備えているという。この人間の能力を最大限に発揮させるためのシート作りを行ったとのことで、具体的には「骨盤を立てること」と「脊柱のS字カーブを維持できること」がポイントだという。
こう聞いても、正直、なんのこっちゃという感じではあるけれど、経験したことのない掛け心地であることは間違いない。ただし、前述したようにこのシートの良さはポジションが正しくないと発揮されない。真芯に当たれば飛ぶけれど、スイートスポットをちょっとでも外すと手がシビれる玄人向けのバットのようだ。
まずは2リッターのガソリンエンジンを積んだセダン、「マツダ3セダン20S Lパッケージ」に乗り込む。ハッチバックの美しさに目を奪われがちになるけれど、セダンもなかなかスタイリッシュだ。特に斜め後ろから見ると、ハッチバックと同様に美しい面で見せようとしている意図が伝わってくる。いかついフロントグリルやギラギラとしたキャラクターラインなど、“盛る”方向で個性を出そうとするよりも、知的でクールに感じる。
インテリアもシンプル。水平基調の造形に必要なものだけが配置されていて、限られた空間なのに広いと感じさせる雰囲気は、どことなく茶室を連想させる。今回はクローズドコースでの試乗だったのでカーナビを操作することはなかったけれど、これだけシンプルな造りでインターフェイスが良好ならば素晴らしいことだ。公道試乗会で確認したい。
素晴らしいといえば、エクステリアとインテリアのイメージが、見事に統一されている点も素晴らしい。クルマ全体のデザインの方向性がぴたっとひとつの方向を向いていて、ブレがない。
ドライバーズシートに収まり、エンジンスタート。実は、このシートの第一印象はあまり芳しいものではなかった。どうにも上半身の収まりが悪いというか。けれども、基本にのっとってシート位置を調整して正しいポジションに改めたところ、シートへの印象は激変した。
体を包み込むようにホールドするシートはあるけれど、このシートはちょっと違う。包むとかホールドというよりも、尾骨のあたりが磁石でくっついているように感じて、背中や腰が特にサポートされているという感覚はないものの、結果として体が動かずに運転に専念できている。
マツダの開発陣に聞けば、人間は歩行時にバランスを保つためのサスペンション機能を備えているという。この人間の能力を最大限に発揮させるためのシート作りを行ったとのことで、具体的には「骨盤を立てること」と「脊柱のS字カーブを維持できること」がポイントだという。
こう聞いても、正直、なんのこっちゃという感じではあるけれど、経験したことのない掛け心地であることは間違いない。ただし、前述したようにこのシートの良さはポジションが正しくないと発揮されない。真芯に当たれば飛ぶけれど、スイートスポットをちょっとでも外すと手がシビれる玄人向けのバットのようだ。
- 伝統的な3ボックススタイルを採用している「マツダ3セダン」。ボディーサイズは、全長×全幅×全高=4660×1795×1445mmで、ファストバックよりも200mm全長が長く、全高が5mm高い設定になっている。
- 一見何の変哲もないデザインに見えるが、乗員の「骨盤を立てること」と「脊柱のS字カーブを維持できること」を設計のポイントにしたというフロントシート。太もも部分のフィット感を出すために、チルト調整機能を全車標準装備としているのもこだわりの部分。オルガン式アクセルペダルも引き続き採用されている。
人間中心のクルマづくりを実践
- 試乗車の「Lパッケージ」グレードには、グレーメタリック塗装の10本スポークデザインアルミホイールと215/45R18サイズの「トーヨー・プロクセスR51A」タイヤが装着されていた。タイヤは「マツダ3」との専用開発品になる。
- コックピットは、3眼デザインのメーターや左右のエアコンルーバーをシンメトリーに配置。ステアリングホイールは先代モデルよりもスポークを細くし、垂直に立てているという。テレスコピックの調整幅を前後に先代比で10mmずつ拡大し、合計で70mmを確保している。
走りだしてまず感じるのは、圧倒的な静かさだ。路面状態が良好なクローズドコースだからロードノイズが小さいという点を差し引いても、風切り音の小ささは特筆モノ。速度を100km/h程度まで上げても、オプションのBoseサウンドシステムのボリュームを上げる必要は感じられない。
静粛性の向上には、ドアに位置していたスピーカーを移動させるなど、細かい部分にまで配慮したとのこと。ちなみにボディーに穿(うが)つ穴が、車体面積に対して1%増えるとノイズは30%も増えてしまうとのことで、穴を極力減らすことに留意したそうだ。ほかにもマツダ車として初めて、ボディーパネルとマットの間にスペースを設けた二重壁構造を採用したことも、静粛性アップに貢献している。
静かさに続いて感じるのが、滑らかさ。アクセルペダルを踏むとスムーズに加速し、ブレーキペダルを踏むと力の入れ具合に応じて意図した通りに減速する。こう書くとあたりまえであるけれど、あたりまえのことを感心するぐらいの高いレベルでやっているところがスゴい。たとえて言うならおいしい空気、おいしい水、おいしいお米といったところか。
マツダの開発陣によれば、アクセル操作にしろブレーキ操作にしろ、人間の意図した通りの反応があると、心地よく操作することができ、疲労も少ないという。ペダル配置を製造者側の事情ではなく人間の体に合わせること、操作した時のクルマの動きを人間の感性に沿わせることなど、「人間中心のクルマづくり」をマツダはうたっているけれど、確かにその効果は感じられる。
気になったのは、2リッターのガソリンエンジンと6段ATの組み合わせ。ストップ&ゴーがほとんどない今回の試乗会では不満は感じないし、むしろシームレスで素早い変速など、好印象を持った。けれども、世の中では多段化が進んでいる。発進ではより力強さが得られる低いギア比、高速ではエンジン回転の上昇を抑えられる高いギア比を実現できる8段AT、9段ATが主流となっているいま、6段ATに古くささは感じないか。これも公道試乗会で試したい。
静粛性の向上には、ドアに位置していたスピーカーを移動させるなど、細かい部分にまで配慮したとのこと。ちなみにボディーに穿(うが)つ穴が、車体面積に対して1%増えるとノイズは30%も増えてしまうとのことで、穴を極力減らすことに留意したそうだ。ほかにもマツダ車として初めて、ボディーパネルとマットの間にスペースを設けた二重壁構造を採用したことも、静粛性アップに貢献している。
静かさに続いて感じるのが、滑らかさ。アクセルペダルを踏むとスムーズに加速し、ブレーキペダルを踏むと力の入れ具合に応じて意図した通りに減速する。こう書くとあたりまえであるけれど、あたりまえのことを感心するぐらいの高いレベルでやっているところがスゴい。たとえて言うならおいしい空気、おいしい水、おいしいお米といったところか。
マツダの開発陣によれば、アクセル操作にしろブレーキ操作にしろ、人間の意図した通りの反応があると、心地よく操作することができ、疲労も少ないという。ペダル配置を製造者側の事情ではなく人間の体に合わせること、操作した時のクルマの動きを人間の感性に沿わせることなど、「人間中心のクルマづくり」をマツダはうたっているけれど、確かにその効果は感じられる。
気になったのは、2リッターのガソリンエンジンと6段ATの組み合わせ。ストップ&ゴーがほとんどない今回の試乗会では不満は感じないし、むしろシームレスで素早い変速など、好印象を持った。けれども、世の中では多段化が進んでいる。発進ではより力強さが得られる低いギア比、高速ではエンジン回転の上昇を抑えられる高いギア比を実現できる8段AT、9段ATが主流となっているいま、6段ATに古くささは感じないか。これも公道試乗会で試したい。
- 試乗車の「Lパッケージ」グレードには、グレーメタリック塗装の10本スポークデザインアルミホイールと215/45R18サイズの「トーヨー・プロクセスR51A」タイヤが装着されていた。タイヤは「マツダ3」との専用開発品になる。
- コックピットは、3眼デザインのメーターや左右のエアコンルーバーをシンメトリーに配置。ステアリングホイールは先代モデルよりもスポークを細くし、垂直に立てているという。テレスコピックの調整幅を前後に先代比で10mmずつ拡大し、合計で70mmを確保している。
サラリとスゴいことをやっている
もう1台、1.8リッターのディーゼルエンジンを積むハッチバック、「マツダ3ファストバックXD Lパッケージ」にも試乗する。ゼロ発進の機会がほとんどないクローズドコースなので、発進加速というディーゼルの見せ場はほとんどなかったけれど、ノイズはまったく気にならず、滑らかな回転フィールは称賛に値するレベルだ。
試乗コースとクルマに慣れてくるに従って、おのずと平均速度も上がる。すると、高速周回路のバンクの入り口や、ハンドリングコースでの穏やかな動きに感心することになる。たとえば高速周回路のストレートである程度のスピードに達し、そこからバンクに入る瞬間も4輪がぴたりと吸い付いて、まったく怖い思いはしない。
ハンドリング路でハードコーナリング中に、わざとブレーキを踏んだりハンドルを切り増したりしても、マツダ3は澄ました顔で安定した姿勢をキープする。「人馬一体」とはマツダお得意のフレーズであり、確かにマツダ車にはそう感じるものが多いけれど、人と馬がさらに密着した感がある。ケンタウルスか?
ただし路面に凸凹がほとんどないコースだったので、乗り心地についての評価は控えたい。開発陣によれば、音にしろハーシュネス(路面からの突き上げ)にしろ、減らしたり小さくするのは当然で、次のステージとして人の感性に障らないレベルを目指しているとのことだ。振動の抑制については、振動を集めて減衰するという考え方で、その減衰を行う部分には減衰節という部品をマツダで初めて採用したという。
結論としてマツダ3はドライバーが思った通りに加速し、減速し、滑らかかつ静かに走る。エンジンのパワーだとかハンドリングの楽しさだとかが突出して素晴らしいわけではない。
ただし、そうしたわかりやすい魅力でアピールしなくてもいいクルマだとわかる。スゴいところがないのに素晴らしいクルマだということが伝わってくるのが、このクルマのスゴいところだ。繰り返しになるけれど、傑作の予感がする。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
試乗コースとクルマに慣れてくるに従って、おのずと平均速度も上がる。すると、高速周回路のバンクの入り口や、ハンドリングコースでの穏やかな動きに感心することになる。たとえば高速周回路のストレートである程度のスピードに達し、そこからバンクに入る瞬間も4輪がぴたりと吸い付いて、まったく怖い思いはしない。
ハンドリング路でハードコーナリング中に、わざとブレーキを踏んだりハンドルを切り増したりしても、マツダ3は澄ました顔で安定した姿勢をキープする。「人馬一体」とはマツダお得意のフレーズであり、確かにマツダ車にはそう感じるものが多いけれど、人と馬がさらに密着した感がある。ケンタウルスか?
ただし路面に凸凹がほとんどないコースだったので、乗り心地についての評価は控えたい。開発陣によれば、音にしろハーシュネス(路面からの突き上げ)にしろ、減らしたり小さくするのは当然で、次のステージとして人の感性に障らないレベルを目指しているとのことだ。振動の抑制については、振動を集めて減衰するという考え方で、その減衰を行う部分には減衰節という部品をマツダで初めて採用したという。
結論としてマツダ3はドライバーが思った通りに加速し、減速し、滑らかかつ静かに走る。エンジンのパワーだとかハンドリングの楽しさだとかが突出して素晴らしいわけではない。
ただし、そうしたわかりやすい魅力でアピールしなくてもいいクルマだとわかる。スゴいところがないのに素晴らしいクルマだということが伝わってくるのが、このクルマのスゴいところだ。繰り返しになるけれど、傑作の予感がする。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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