【海外試乗記】マツダ3ファストバック<スカイアクティブX搭載車>

マツダ3ファストバック<スカイアクティブX搭載車>【海外試乗記】
マツダ3ファストバック<スカイアクティブX搭載車>

その先が見たくなる

ガソリンエンジンならではの爽快感と、ディーゼルエンジンの力強さ。その“いいとこ取り”をうたうマツダの「スカイアクティブX」ユニットは、どんな走りを味わわせてくれるのか? 新エンジン搭載の「マツダ3」にドイツで試乗した。

究極の技術が現実に

国内では2019年5月に発売された新型「マツダ3」。このうち次世代ガソリンエンジンたるスカイアクティブXを搭載するモデルは発売時期が異なり、同年7月に予約受け付けを開始、同年10月に販売される見込みとなっている。
国内では2019年5月に発売された新型「マツダ3」。このうち次世代ガソリンエンジンたるスカイアクティブXを搭載するモデルは発売時期が異なり、同年7月に予約受け付けを開始、同年10月に販売される見込みとなっている。
スカイアクティブX搭載車のエンジンルーム。「マツダ3」の他のガソリンエンジン車やディーゼル車よりもはるかに大きな、独自デザインのカバーが装着されている。
スカイアクティブX搭載車のエンジンルーム。「マツダ3」の他のガソリンエンジン車やディーゼル車よりもはるかに大きな、独自デザインのカバーが装着されている。
コックピット周辺部は、3連型のメーターパネルや細身のステアリングホイールなどが特徴で、ヘッドアップディスプレイも用意される。写真はMT車のもの。
コックピット周辺部は、3連型のメーターパネルや細身のステアリングホイールなどが特徴で、ヘッドアップディスプレイも用意される。写真はMT車のもの。
リアには「SKYACTIV X」のエンブレムが添えられる。この名は、スカイアクティブGとスカイアクティブDに次ぐ第3のスカイアクティブエンジンとして与えられた。
リアには「SKYACTIV X」のエンブレムが添えられる。この名は、スカイアクティブGとスカイアクティブDに次ぐ第3のスカイアクティブエンジンとして与えられた。
ドイツ・フランクフルト近郊で行われた国際試乗会で、スカイアクティブXの開発に携わったマツダの技術者たちはこれを「夢の扉を開いたエンジンだ」と言った。もはや夢ではなく現実のものとなったのは、内燃エンジンの目指す究極の到達点と言われてきた圧縮着火技術である。

圧縮着火のメリットは、スパークプラグによる火花点火では不可能な希薄燃焼が可能になることだ。燃焼室内を高温、高圧にすれば、いわば勝手に燃えてくれる。逆に言えば、希薄燃焼を可能とするには圧縮着火が不可欠となる。

希薄燃焼とは、つまり、燃料に対する空気の割合を多くするということだ。少ない燃料で燃焼できれば単純に効率が良いし、空気を絞らなくていいので吸気損失も軽減できる。また、燃焼温度が下がってNOx低減にもつながるという。

そう書くと、かつて1990年代のリーンバーンエンジンは燃焼温度が高く、NOxが増えることが問題で、そのためNOx吸蔵還元触媒などが必要となったのではと思い出す方も、きっといらっしゃるだろう。筆者もその記憶があったのだが、聞けば空気量を中途半端ではなく、それこそ理想空燃比の倍ほどに増やせば燃焼温度が下がり、NOxも減るのだという。その発想はなかったので、とても驚いた。

じゃあ、なんでかつてのリーンバーンエンジンはそうしなかったのかといえば、そんなに薄い混合気を火花点火で燃焼させることができなかったから。だからこそ希薄燃焼を目指したスカイアクティブXには、圧縮着火が不可欠だったのである……ということで、話はようやくつながるわけだ。

国内では2019年5月に発売された新型「マツダ3」。このうち次世代ガソリンエンジンたるスカイアクティブXを搭載するモデルは発売時期が異なり、同年7月に予約受け付けを開始、同年10月に販売される見込みとなっている。
国内では2019年5月に発売された新型「マツダ3」。このうち次世代ガソリンエンジンたるスカイアクティブXを搭載するモデルは発売時期が異なり、同年7月に予約受け付けを開始、同年10月に販売される見込みとなっている。
スカイアクティブX搭載車のエンジンルーム。「マツダ3」の他のガソリンエンジン車やディーゼル車よりもはるかに大きな、独自デザインのカバーが装着されている。
スカイアクティブX搭載車のエンジンルーム。「マツダ3」の他のガソリンエンジン車やディーゼル車よりもはるかに大きな、独自デザインのカバーが装着されている。
コックピット周辺部は、3連型のメーターパネルや細身のステアリングホイールなどが特徴で、ヘッドアップディスプレイも用意される。写真はMT車のもの。
コックピット周辺部は、3連型のメーターパネルや細身のステアリングホイールなどが特徴で、ヘッドアップディスプレイも用意される。写真はMT車のもの。
リアには「SKYACTIV X」のエンブレムが添えられる。この名は、スカイアクティブGとスカイアクティブDに次ぐ第3のスカイアクティブエンジンとして与えられた。
リアには「SKYACTIV X」のエンブレムが添えられる。この名は、スカイアクティブGとスカイアクティブDに次ぐ第3のスカイアクティブエンジンとして与えられた。

勝因は逆転の発想

スカイアクティブXユニット(写真)では、従来のガソリンエンジンと同様にスパークプラグが用いられるものの、その燃焼は、スパークプラグを使わない高圧縮ディーゼルエンジンのようにシリンダー内で同時多発的に行われ、ピストンをより力強く押し下げられることが可能となっている。
スカイアクティブXユニット(写真)では、従来のガソリンエンジンと同様にスパークプラグが用いられるものの、その燃焼は、スパークプラグを使わない高圧縮ディーゼルエンジンのようにシリンダー内で同時多発的に行われ、ピストンをより力強く押し下げられることが可能となっている。
「色気のある塊」をデザインテーマに掲げる「マツダ3ファストバック」。ボディーサイドにキャラクターラインは入れられておらず、滑らかな曲面で生命感が表現されている。
「色気のある塊」をデザインテーマに掲げる「マツダ3ファストバック」。ボディーサイドにキャラクターラインは入れられておらず、滑らかな曲面で生命感が表現されている。
シンプルな造形で美しさや上質感が表現されたインテリア。赤×黒のツートンカラーのほか、黒基調のインテリアカラーも用意される。
シンプルな造形で美しさや上質感が表現されたインテリア。赤×黒のツートンカラーのほか、黒基調のインテリアカラーも用意される。
スカイアクティブX搭載車のキモであるSPCCI(火花点火制御圧縮着火)が行われていることは、8.8インチのセンターモニター上にも示される。主に高回転域においては、従来方式の燃焼に切り替わる。
スカイアクティブX搭載車のキモであるSPCCI(火花点火制御圧縮着火)が行われていることは、8.8インチのセンターモニター上にも示される。主に高回転域においては、従来方式の燃焼に切り替わる。
しかし圧縮着火は、これまた簡単ではない。燃焼室内を高温・高圧にするには圧縮比を可変にする必要があり、しかも有効な温度域は実に3℃の範囲内と極めて狭い。しかも、圧縮着火領域を外れた時には速やかに火花点火に切り替えなくてはならないからで、これまで筆者が試作車に乗っているダイムラーやフォルクスワーゲンをはじめ、世界中の自動車メーカーが挑んできたHCCI(予混合圧縮自着火)がついぞ実用化に至らなかったのは、そのせいである。

マツダは、それをSPCCI(火花点火制御圧縮着火)と呼ぶ独自技術でクリアした。特徴は、圧縮比の制御を点火プラグによる着火で生成される“膨張火炎球”で行うこと。プラグ周辺にできる膨張火炎球が、着火寸前まで圧縮された混合気を最後のひと押しとばかりに圧縮し、着火へと導くのだ。

これなら制御は点火時期で行えばいいから融通が利きやすい。しかも、圧縮着火が難しい領域ではプラグ着火させればいいので、容易にシームレスな運転が可能になる。そう、圧縮着火なら不要のはずの点火プラグを生かすという逆転の発想が、夢を現実にしたのである。

試乗車は、このスカイアクティブXを搭載した「マツダ3ファストバック」。ギアボックスは6段AT、そして6段MTが用意されていた。

圧縮着火エンジンということで、スカイアクティブXの圧縮比は従来のガソリンエンジンの常識をはるかに超える16.3に設定されている。スカイアクティブGが登場した時の、圧縮14.0という数値にも驚愕(きょうがく)したものだが、そんな常識はずれのエンジンが当然のように安定したアイドリングを刻んで、筆者が乗り込むのを待っている光景には、軽く感動してしまった。前述の通り、筆者はこれまでもHCCIのテストエンジンをいくつも試してきて、この技術には思い入れがあったから、圧縮着火のガソリンエンジンに乗るというのは、自分自身にとっても夢だったのだ。

スカイアクティブXユニット(写真)では、従来のガソリンエンジンと同様にスパークプラグが用いられるものの、その燃焼は、スパークプラグを使わない高圧縮ディーゼルエンジンのようにシリンダー内で同時多発的に行われ、ピストンをより力強く押し下げられることが可能となっている。
スカイアクティブXユニット(写真)では、従来のガソリンエンジンと同様にスパークプラグが用いられるものの、その燃焼は、スパークプラグを使わない高圧縮ディーゼルエンジンのようにシリンダー内で同時多発的に行われ、ピストンをより力強く押し下げられることが可能となっている。
「色気のある塊」をデザインテーマに掲げる「マツダ3ファストバック」。ボディーサイドにキャラクターラインは入れられておらず、滑らかな曲面で生命感が表現されている。
「色気のある塊」をデザインテーマに掲げる「マツダ3ファストバック」。ボディーサイドにキャラクターラインは入れられておらず、滑らかな曲面で生命感が表現されている。
シンプルな造形で美しさや上質感が表現されたインテリア。赤×黒のツートンカラーのほか、黒基調のインテリアカラーも用意される。
シンプルな造形で美しさや上質感が表現されたインテリア。赤×黒のツートンカラーのほか、黒基調のインテリアカラーも用意される。
スカイアクティブX搭載車のキモであるSPCCI(火花点火制御圧縮着火)が行われていることは、8.8インチのセンターモニター上にも示される。主に高回転域においては、従来方式の燃焼に切り替わる。
スカイアクティブX搭載車のキモであるSPCCI(火花点火制御圧縮着火)が行われていることは、8.8インチのセンターモニター上にも示される。主に高回転域においては、従来方式の燃焼に切り替わる。

驚くほど静かで軽やか

「マツダ3」のスカイアクティブX搭載車は、今回試乗した「ファストバック」以外に「セダン」もラインナップされる。トランスミッションは6段ATと6段MTの2種類で、駆動方式はFFのほかに4WDも選べる。
「マツダ3」のスカイアクティブX搭載車は、今回試乗した「ファストバック」以外に「セダン」もラインナップされる。トランスミッションは6段ATと6段MTの2種類で、駆動方式はFFのほかに4WDも選べる。
メーターパネルは中央が7インチの液晶画面になっており、表示する情報を変更できる。
メーターパネルは中央が7インチの液晶画面になっており、表示する情報を変更できる。
カーオーディオにはBoseのサウンドシステムが用意される。ウーファーの取り付け位置を工夫することでキャビンそのものの静粛性も高められている。
カーオーディオにはBoseのサウンドシステムが用意される。ウーファーの取り付け位置を工夫することでキャビンそのものの静粛性も高められている。
MT仕様に乗り込み、いよいよ走りを確かめる。小気味よいタッチのシフトレバーを1速に入れてクラッチをつなぐと、クルマは力強く滑らかに発進した。感触は上々。アクセルのツキが良いし、トルクの出方もリニアで、軽やかに走る。

静粛性の高さにも目を見張った。エンジン音自体は中低音域が強調された独特なものだが、ボリュームは小さい。以前に試した試作車は結構騒々しかった記憶があったので聞いたら、エンジンは完全にカプセル化されているという。これは騒音の抑制はもちろん、実は保温効果もある。朝、通勤して止めておいたクルマに帰りに乗る時、まだ熱が残っていればエンジン本体も触媒も、すぐに最適な領域で稼働できる。

郊外に出てペースを上げると、軽快な吹け上がりにますます気持ちが弾んできた。トルクカーブはフラットだが高回転域に入るほどに回転上昇の勢いは高まって、つい6500rpmのレブリミットまで引っ張りたくなってしまう。

正直、現行のスカイアクティブGはフィーリングが平板で全体にパンチもなく、特に進化したマツダ3のシャシーに対しては、いろいろな意味で物足りなさを抱かせていた。スカイアクティブXはついにそれを払拭(ふっしょく)してくれたと言っていい。

「マツダ3」のスカイアクティブX搭載車は、今回試乗した「ファストバック」以外に「セダン」もラインナップされる。トランスミッションは6段ATと6段MTの2種類で、駆動方式はFFのほかに4WDも選べる。
「マツダ3」のスカイアクティブX搭載車は、今回試乗した「ファストバック」以外に「セダン」もラインナップされる。トランスミッションは6段ATと6段MTの2種類で、駆動方式はFFのほかに4WDも選べる。
メーターパネルは中央が7インチの液晶画面になっており、表示する情報を変更できる。
メーターパネルは中央が7インチの液晶画面になっており、表示する情報を変更できる。
カーオーディオにはBoseのサウンドシステムが用意される。ウーファーの取り付け位置を工夫することでキャビンそのものの静粛性も高められている。
カーオーディオにはBoseのサウンドシステムが用意される。ウーファーの取り付け位置を工夫することでキャビンそのものの静粛性も高められている。

もっとパワーが欲しくなる

2リッターのスカイアクティブX搭載車は、同排気量のスカイアクティブG搭載車を24psと25Nm上回る、最高出力180ps、最大トルク224Nmを発生する。
2リッターのスカイアクティブX搭載車は、同排気量のスカイアクティブG搭載車を24psと25Nm上回る、最高出力180ps、最大トルク224Nmを発生する。
スカイアクティブXユニットの単体イメージ。写真手前がフロント側で、空気を多く採り入れるための「高応答エアサプライ」(写真上部手前)やマイルドハイブリッドシステムのISG(中央手前)が装着されている。
スカイアクティブXユニットの単体イメージ。写真手前がフロント側で、空気を多く採り入れるための「高応答エアサプライ」(写真上部手前)やマイルドハイブリッドシステムのISG(中央手前)が装着されている。
フロントシートは、骨盤を立てたうえで脊柱のS字カーブを維持するという、理想的な運転姿勢が取れるようデザインされている。
フロントシートは、骨盤を立てたうえで脊柱のS字カーブを維持するという、理想的な運転姿勢が取れるようデザインされている。
実はこうした好印象には、エンジン本体だけでなくさまざまな補機類の貢献も大きいようだ。例えば小気味いい発進の際には、実は24V電装系を使ったマイルドハイブリッドシステムのISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)がエンジン回転数を早めに持ち上げてスムーズさを補っているし、変速の際にもISGが今度は逆に発電制御によって回転数を素早く下げさせ、小気味よいシフトアップを可能にしている。また、高負荷域でのアクセルオンの際には、機械式スーパーチャージャーを使った高応答エアサプライがシリンダー内に多くの空気を強制的に送り込み、レスポンスを確保しているという具合だ。

これらは仮になくても成立はするが、マツダはこれらを、マツダ3登場を機にさらに強く主張している“人間中心の走り”を、パワートレインでも具現するためあえて組み合わせた。クルマが意のままに反応し、人とクルマの一体感が高まるようにと、いずれも動作は目立つことなく、縁の下の力持ちに徹している。

しかし、そういう観点では不満もないわけではない。最たるはパワー、トルクの物足りなさ。180ps、224Nmは従来のガソリン2リッターを上回るとはいえ、ドイツの幹線道路では上り勾配のたびにシフトダウンを求められるなど、積極的に走りを楽しんでいる時は良くても、高めのギアでゆったり行きたい時などには余裕が足りない。しかも、これは燃費にも直結してくる。

6段AT仕様なら、やはりアクセル開度こそ大きめとはいえ変速はクルマ任せになるから、ドライバビリティー面の不満は小さくなる。しかし、新しいテクノロジーに触れているという実感もますます薄くなってしまうのだ。もう少しトルクに余裕があるか、あるいは8段くらいのATがあれば……。

2リッターのスカイアクティブX搭載車は、同排気量のスカイアクティブG搭載車を24psと25Nm上回る、最高出力180ps、最大トルク224Nmを発生する。
2リッターのスカイアクティブX搭載車は、同排気量のスカイアクティブG搭載車を24psと25Nm上回る、最高出力180ps、最大トルク224Nmを発生する。
スカイアクティブXユニットの単体イメージ。写真手前がフロント側で、空気を多く採り入れるための「高応答エアサプライ」(写真上部手前)やマイルドハイブリッドシステムのISG(中央手前)が装着されている。
スカイアクティブXユニットの単体イメージ。写真手前がフロント側で、空気を多く採り入れるための「高応答エアサプライ」(写真上部手前)やマイルドハイブリッドシステムのISG(中央手前)が装着されている。
フロントシートは、骨盤を立てたうえで脊柱のS字カーブを維持するという、理想的な運転姿勢が取れるようデザインされている。
フロントシートは、骨盤を立てたうえで脊柱のS字カーブを維持するという、理想的な運転姿勢が取れるようデザインされている。

あとはフィーリングの問題

「マツダ3ファストバック」のボディーカラーは、写真の「ソウルレッドクリスタルメタリック」を含む全8色が用意される。
「マツダ3ファストバック」のボディーカラーは、写真の「ソウルレッドクリスタルメタリック」を含む全8色が用意される。
コックピットの操作機器は、人とクルマの一体感を向上させるべく、ドライバーを中心に左右対称に配置される。
コックピットの操作機器は、人とクルマの一体感を向上させるべく、ドライバーを中心に左右対称に配置される。
後席は、後方に向かって切れ上がるドアパネルの形状により、包まれ感のある空間となっている。
後席は、後方に向かって切れ上がるドアパネルの形状により、包まれ感のある空間となっている。
2019年10月に国内で販売される「マツダ3ファストバック」スカイアクティブX搭載車の価格は、310万円台から360万円台。スカイアクティブG 2.0搭載車の同じグレードに比べ、およそ70万円高く設定されている。
2019年10月に国内で販売される「マツダ3ファストバック」スカイアクティブX搭載車の価格は、310万円台から360万円台。スカイアクティブG 2.0搭載車の同じグレードに比べ、およそ70万円高く設定されている。
実際、それは6段MT仕様でも言えることではあり、とても良いガソリンエンジンだとは思う一方、新鮮味には乏しい。特にダウンサイジングターボ、ハイブリッド、EVにe-POWERなどを知る人にとっては、それこそ夢のような感動をもたらすとまでは言えないだろうというのも、また正直な印象なのだ。

そんなわけで、おそらくスカイアクティブXにササるのは、クルマに関して相当マニアックな人か、あるいはしっかり良いモノに触れてきて、ドライバビリティーに一家言ある人だろう。それこそ輸入車ばかり乗り継いできたような人などが、それに当たるのかもしれない。

実際、プレミアム路線をひた走る最近のマツダだけに、おそらくライバルと見据えられているのはその辺りなのだろう。何しろスカイアクティブX搭載車の価格は従来型ガソリン2リッターの、ざっと70万円高。例えば「フォルクスワーゲン・ゴルフTSIハイライン」などと、ほぼ同等なのだ。マツダのブランド力についてはそれぞれの判断にお任せするとして、確かにパワートレインだけでなく、それを含むハードウエアの完成度はマツダ3、十分戦えるレベルにあるというのも本当のところだ。実際、ふとそう思って以来、マツダ3に乗るならスカイアクティブXで、と筆者も思いを改めたところである。

そうは言いつつも、マツダが信じる内燃機関の究極なのだから、技術だけでなく性能でも、フィーリングでも、ほかのどのパワートレインより強い説得力を持つものを、この現実の世界で見せてほしいとも思う。ついに実用化された夢の技術の、さらにその先の進化に前向きに期待したい。

(文=島下泰久/写真=マツダ/編集=関 顕也)

「マツダ3ファストバック」のボディーカラーは、写真の「ソウルレッドクリスタルメタリック」を含む全8色が用意される。
「マツダ3ファストバック」のボディーカラーは、写真の「ソウルレッドクリスタルメタリック」を含む全8色が用意される。
コックピットの操作機器は、人とクルマの一体感を向上させるべく、ドライバーを中心に左右対称に配置される。
コックピットの操作機器は、人とクルマの一体感を向上させるべく、ドライバーを中心に左右対称に配置される。
後席は、後方に向かって切れ上がるドアパネルの形状により、包まれ感のある空間となっている。
後席は、後方に向かって切れ上がるドアパネルの形状により、包まれ感のある空間となっている。
2019年10月に国内で販売される「マツダ3ファストバック」スカイアクティブX搭載車の価格は、310万円台から360万円台。スカイアクティブG 2.0搭載車の同じグレードに比べ、およそ70万円高く設定されている。
2019年10月に国内で販売される「マツダ3ファストバック」スカイアクティブX搭載車の価格は、310万円台から360万円台。スカイアクティブG 2.0搭載車の同じグレードに比べ、およそ70万円高く設定されている。

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