【試乗記】日産ノートe-POWER NISMO S(FF)

日産ノートe-POWER NISMO S(FF)【試乗記】
日産ノートe-POWER NISMO S(FF)

うま味たっぷりスパイシー

「日産ノートe-POWER NISMO」のハイパフォーマンスバージョンとして登場した「NISMO S」。ベースモデルの109psに対し、136psに出力を向上させた電動パワーユニットと専用開発されたドライビングモードがもたらす走りを確かめるために、富士山麓のワインディングロードを目指した。

パワーとトルクを大幅に増量

「ノートe-POWER NISMO」の最高出力109psに対して、同136psにパワーアップした「ノートe-POWER NISMO S」。ガソリンエンジン搭載モデルと同様に、車名末尾の「S」がハイパワーバージョンを示している。
「ノートe-POWER NISMO」の最高出力109psに対して、同136psにパワーアップした「ノートe-POWER NISMO S」。ガソリンエンジン搭載モデルと同様に、車名末尾の「S」がハイパワーバージョンを示している。
「e-POWER NISMO S」では、「インテリジェントオートライトシステム」付きLEDヘッドランプが標準装備されている。先に登場した「e-POWER NISMO」ではメーカーオプションという設定だった。
「e-POWER NISMO S」では、「インテリジェントオートライトシステム」付きLEDヘッドランプが標準装備されている。先に登場した「e-POWER NISMO」ではメーカーオプションという設定だった。
リアフォグランプ付きのバンパーとルーフスポイラーは、「ノートNISMO」シリーズに共通するエクステリアパーツ。
リアフォグランプ付きのバンパーとルーフスポイラーは、「ノートNISMO」シリーズに共通するエクステリアパーツ。
ヘッドレスト一体型のシートバックを採用するツートンカラーのレカロシートは、オプションアイテム。「RECARO」と「nismo」のダブルネームで、それぞれのロゴが入っている。
ヘッドレスト一体型のシートバックを採用するツートンカラーのレカロシートは、オプションアイテム。「RECARO」と「nismo」のダブルネームで、それぞれのロゴが入っている。
「e-POWER NISMO S」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4165×1695×1535mm、ホイールベース=2600mm。この数値は109ps仕様の「e-POWER NISMO」と同一となっている。
「e-POWER NISMO S」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4165×1695×1535mm、ホイールベース=2600mm。この数値は109ps仕様の「e-POWER NISMO」と同一となっている。
日産ノートe-Power NISMO Sで走りだしてすぐに、ビシッと引き締まった乗り心地に身が引き締まった。すっかり油断していた。日産ノートといえば、2018年のベストセラー。1年で13万6324台を売り、軽自動車を除く、いわゆる登録車の年間販売台数ナンバーワンに輝いたモデルだ。

2位の「トヨタ・アクア」には約1万台の差をつけており、国民車というのは大げさにしても、いまの日本人がクルマに求める要素の最大公約数的なモデルだと言っても間違いじゃないだろう。

ちなみに日産にとって登録車の年間販売台数1位は初めてで、「マーチ」でも「サニー」でも「パルサー」でも成し得なかった偉業をノートが達成したということになる。その日産ノートが、ここまでスパルタンな味付けになっているとは……。正直、毎日食べる白いご飯に激辛スパイスを振りかけたような、ちょっとした違和感を覚える。

それにしても日産ノートe-Power NISMO Sとは、たくさんの“役”がついたモデル名だ。ノートのe-Power搭載モデルで、NISMO仕様、しかもNISMO仕様の中でもよりスポーティーなSグレードと、声に出して読んでみると、「メン・タン・ピン・ドラ・ドラ」で満貫のようだ。その成り立ちは、以下のようになる。

まず日産ノートの売り上げ躍進の原動力となったのが、エンジンで発電して駆動は100%モーターで行う、e-Powerという仕組みだ。これは、システムとしてはシリーズ式のハイブリッドであるけれど、モーターだけで走る感覚はEVに近いというもの。34.0km/リッター(e-Power Sは37.2km/リッター)という優れたJC08モード燃費と、モーターによる新鮮な走行フィーリングが受けて日産ノートの販売を押し上げたのだ。

そしてボディーと足まわりを強化した日産ノートe-Power NISMOが生まれ、その上にモーターの出力を高め、シャシーにもさらなるチューニングを施した日産ノートe-Power NISMO Sが君臨する形になっている。標準の日産ノートe-Powerとノートe-Power NISMOの最高出力が109ps、最大トルクが254Nm。一方のノートe-Power NISMO Sが136psと320Nmだから、パワーとトルクは約25%の増量ということになる。

特に市街地ではトルクが厚くなったことの恩恵は明らかで、ノートの軽量コンパクトなボディーもあって、ストップ&ゴーの連続でもスーッと前に出るからストレスは感じない。

「ノートe-POWER NISMO」の最高出力109psに対して、同136psにパワーアップした「ノートe-POWER NISMO S」。ガソリンエンジン搭載モデルと同様に、車名末尾の「S」がハイパワーバージョンを示している。
「ノートe-POWER NISMO」の最高出力109psに対して、同136psにパワーアップした「ノートe-POWER NISMO S」。ガソリンエンジン搭載モデルと同様に、車名末尾の「S」がハイパワーバージョンを示している。
「e-POWER NISMO S」では、「インテリジェントオートライトシステム」付きLEDヘッドランプが標準装備されている。先に登場した「e-POWER NISMO」ではメーカーオプションという設定だった。
「e-POWER NISMO S」では、「インテリジェントオートライトシステム」付きLEDヘッドランプが標準装備されている。先に登場した「e-POWER NISMO」ではメーカーオプションという設定だった。
リアフォグランプ付きのバンパーとルーフスポイラーは、「ノートNISMO」シリーズに共通するエクステリアパーツ。
リアフォグランプ付きのバンパーとルーフスポイラーは、「ノートNISMO」シリーズに共通するエクステリアパーツ。
ヘッドレスト一体型のシートバックを採用するツートンカラーのレカロシートは、オプションアイテム。「RECARO」と「nismo」のダブルネームで、それぞれのロゴが入っている。
ヘッドレスト一体型のシートバックを採用するツートンカラーのレカロシートは、オプションアイテム。「RECARO」と「nismo」のダブルネームで、それぞれのロゴが入っている。
「e-POWER NISMO S」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4165×1695×1535mm、ホイールベース=2600mm。この数値は109ps仕様の「e-POWER NISMO」と同一となっている。
「e-POWER NISMO S」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4165×1695×1535mm、ホイールベース=2600mm。この数値は109ps仕様の「e-POWER NISMO」と同一となっている。

内燃機関とは違うファン・トゥ・ドライブ

ボディーサイドに「e-POWER」のエンブレムを装着。赤く塗られたサイドシルプロテクターは「ノート」の「NISMO」シリーズに共通するアイテムで、前後のバンパーデザインとの統一性を図ったデザインになっている。
ボディーサイドに「e-POWER」のエンブレムを装着。赤く塗られたサイドシルプロテクターは「ノート」の「NISMO」シリーズに共通するアイテムで、前後のバンパーデザインとの統一性を図ったデザインになっている。
発電用の1.2リッター直3 DOHC 12バルブエンジン。エンジン自体もベースとなった「e-POWER NISMO」より4psパワーアップされ、最高出力は83psとなる。
発電用の1.2リッター直3 DOHC 12バルブエンジン。エンジン自体もベースとなった「e-POWER NISMO」より4psパワーアップされ、最高出力は83psとなる。
「ノートe-POWER NISMO/NISMO S」用として開発された195/55R16サイズの「ヨコハマDNA S.drive」タイヤと、10本スポークデザインの16インチアルミホイールが装着される。
「ノートe-POWER NISMO/NISMO S」用として開発された195/55R16サイズの「ヨコハマDNA S.drive」タイヤと、10本スポークデザインの16インチアルミホイールが装着される。
エンジンは発電用だが、スポーティーなリアビューを印象付けるφ85のエキゾーストテールエンドを装備している。
エンジンは発電用だが、スポーティーなリアビューを印象付けるφ85のエキゾーストテールエンドを装備している。
スパルタンな乗り心地はひとまずおくとして、市街地を流しているとe-Powerが支持されてノートを日本一へ導いた理由がわかる。第一に、静かだ。エンジンは発電に徹しているから、アクセルペダルを踏み込んでも急に回転を上げることはない。充電が不足するとエンジンが始動するけれど、基本的には最も効率のいい回転域で一定の回転数を保つから、「エンジン積んでるんだっけ?」と、その存在感は次第に薄れていく。

それから、楽しい。回転を上げることでパワーを高める内燃機関と違って、電気が流れた瞬間に最大の力を発揮できるモーターは、アクセル操作に対するレスポンスが鋭い。エンジンとモーターは、手紙とEメールのように違う。もちろん、手紙のほうが味はあるというご意見もありましょうが、もしディーラーでエンジンとe-Powerのノートを乗り比べたら、多くの方の心はe-Powerに傾くはずだ。

e-Powerは運転の疲労低減に効果があることもあらためて感じた。アクセルペダルを戻せばブレーキペダルを踏まずともしっかり減速するから、ペダルを踏みかえずにドライブすることができる。いわゆるワンペダル走行だ。ノートe-Power NISMO Sには「NORMAL」「S」「ECO」の3つの走行モードがあり、すべてのモードで減速感を強める「B」レンジを選ぶことができる(ノートe-Power NISIMOでは「NORMAL」でしか「B」レンジを選べない)。

ワンペダル走行は疲れないだけでなく、次第にブレーキを使わずに滑らかかつ確実に減速できるようになるという、運転が上達する喜びもある。回生ブレーキによる発電量が大きいけれど減速がかなり急激になる「S」モードの「B」レンジを選び、スムーズかつ力強く走らせるコツをつかむと、内燃機関車とはまた違うファン・トゥ・ドライブを味わえる。

そして、いざとなればガソリンスタンドでガソリンを入れればいいわけだから、遠くを目指してもピュアEVのように充電スポットや航続距離を気にする必要はない。NISMOうんぬんの前に、ノートにおいては販売台数の約7割を占めるという、e-Powerの魅力を再確認した。

ボディーサイドに「e-POWER」のエンブレムを装着。赤く塗られたサイドシルプロテクターは「ノート」の「NISMO」シリーズに共通するアイテムで、前後のバンパーデザインとの統一性を図ったデザインになっている。
ボディーサイドに「e-POWER」のエンブレムを装着。赤く塗られたサイドシルプロテクターは「ノート」の「NISMO」シリーズに共通するアイテムで、前後のバンパーデザインとの統一性を図ったデザインになっている。
発電用の1.2リッター直3 DOHC 12バルブエンジン。エンジン自体もベースとなった「e-POWER NISMO」より4psパワーアップされ、最高出力は83psとなる。
発電用の1.2リッター直3 DOHC 12バルブエンジン。エンジン自体もベースとなった「e-POWER NISMO」より4psパワーアップされ、最高出力は83psとなる。
「ノートe-POWER NISMO/NISMO S」用として開発された195/55R16サイズの「ヨコハマDNA S.drive」タイヤと、10本スポークデザインの16インチアルミホイールが装着される。
「ノートe-POWER NISMO/NISMO S」用として開発された195/55R16サイズの「ヨコハマDNA S.drive」タイヤと、10本スポークデザインの16インチアルミホイールが装着される。
エンジンは発電用だが、スポーティーなリアビューを印象付けるφ85のエキゾーストテールエンドを装備している。
エンジンは発電用だが、スポーティーなリアビューを印象付けるφ85のエキゾーストテールエンドを装備している。

未体験のスポーツドライビング

「e-POWER NISMO S」では、KYB製のダンパーを採用。サスペンションは、ガソリンエンジンを搭載する「NISMO S」と異なった、それぞれの装着タイヤに合わせたチューニングになっているという。
「e-POWER NISMO S」では、KYB製のダンパーを採用。サスペンションは、ガソリンエンジンを搭載する「NISMO S」と異なった、それぞれの装着タイヤに合わせたチューニングになっているという。
インテリアデザインは標準モデルと大きく変わらないが、エアコンの吹き出し口やシフトベースに赤の加飾が施されレーシーな雰囲気に。車速感応式電動パワーステアリングは、専用チューンされている。
インテリアデザインは標準モデルと大きく変わらないが、エアコンの吹き出し口やシフトベースに赤の加飾が施されレーシーな雰囲気に。車速感応式電動パワーステアリングは、専用チューンされている。
「e-POWER NISMO」専用となるファインビジョンメーターを採用。従来「km/h」の文字があった位置に入れられた「nismo」のロゴと、赤い加飾のメーターリングが、ノーマルモデルとの差異点となる。
「e-POWER NISMO」専用となるファインビジョンメーターを採用。従来「km/h」の文字があった位置に入れられた「nismo」のロゴと、赤い加飾のメーターリングが、ノーマルモデルとの差異点となる。
荷室床面は、2段階に調整可能。フロアボードを開口部と同じ高さ、または一段低く(写真の状態)設定できる。荷室床下には通常の12Vバッテリーが収容されている。
荷室床面は、2段階に調整可能。フロアボードを開口部と同じ高さ、または一段低く(写真の状態)設定できる。荷室床下には通常の12Vバッテリーが収容されている。
といった具合に、e-Powerに感心するほどに、このハードコアなNISMO S仕様はどうなの、というギモンが湧くのだった。シームレスに加速して、静かに走るんだから、もっとしなやかな足を与えて“小さな高級車”を目指したほうがおもしろいのではないか……。

という思いは、ちょっとしたワインディングロードに入った途端に霧散した。これは楽しい!

コーナーに進入すると、強化されたスタビライザーや専用サスペンションのおかげで安定した姿勢をキープ、そしてコーナー出口でアクセルペダルを踏むと、「パチン!」と間髪入れずに前輪にトルクが伝わり、まさに電光石火のレスポンスを味わえる。出口からの加速は、「ズリッ!」と一瞬ホイールスピンをするほど強烈で、しかもトランスミッション不要のモーターならではの段差のないもの。前述したように静かだからこれまでに経験したことのないスポーツドライビングとなる。

ワインディングロードの連続ではNISMOが入念にボディーを強化したことの効果が確認できる。ハードなコーナリングでもボディーがカチッとしていてねじれない、歪(ゆが)まない。だから、サスペンションが正確に機能して、4本のタイヤが正しく地面と接している様子が伝わってくる。

コーナー進入時、「S」モードと「B」レンジの組み合わせはエンジンブレーキならぬモーターブレーキの減速力がかなりのもので、これとフットブレーキを連携させながら最大かつ滑らかなブレーキングにするのはちょっとした知的なゲームだ。そしてコーナーの脱出では再び電光石火のレスポンスと段差のない新幹線のような加速感——。

エンジン車のスポーツドライビングがスーパーファミコンだとしたら、こっちはプレステ4ぐらいか。それくらい、レスポンスが素早いと感じる。白いご飯に激辛スパイス、なかなかいいじゃないか。

「e-POWER NISMO S」では、KYB製のダンパーを採用。サスペンションは、ガソリンエンジンを搭載する「NISMO S」と異なった、それぞれの装着タイヤに合わせたチューニングになっているという。
「e-POWER NISMO S」では、KYB製のダンパーを採用。サスペンションは、ガソリンエンジンを搭載する「NISMO S」と異なった、それぞれの装着タイヤに合わせたチューニングになっているという。
インテリアデザインは標準モデルと大きく変わらないが、エアコンの吹き出し口やシフトベースに赤の加飾が施されレーシーな雰囲気に。車速感応式電動パワーステアリングは、専用チューンされている。
インテリアデザインは標準モデルと大きく変わらないが、エアコンの吹き出し口やシフトベースに赤の加飾が施されレーシーな雰囲気に。車速感応式電動パワーステアリングは、専用チューンされている。
「e-POWER NISMO」専用となるファインビジョンメーターを採用。従来「km/h」の文字があった位置に入れられた「nismo」のロゴと、赤い加飾のメーターリングが、ノーマルモデルとの差異点となる。
「e-POWER NISMO」専用となるファインビジョンメーターを採用。従来「km/h」の文字があった位置に入れられた「nismo」のロゴと、赤い加飾のメーターリングが、ノーマルモデルとの差異点となる。
荷室床面は、2段階に調整可能。フロアボードを開口部と同じ高さ、または一段低く(写真の状態)設定できる。荷室床下には通常の12Vバッテリーが収容されている。
荷室床面は、2段階に調整可能。フロアボードを開口部と同じ高さ、または一段低く(写真の状態)設定できる。荷室床下には通常の12Vバッテリーが収容されている。

美味なるスパイス

撮影車両は「ブリリアントホワイトパール」と呼ばれる特別塗装色。「ノート」の「NISMO S」シリーズには、全5色のボディーカラーがラインナップされている。
撮影車両は「ブリリアントホワイトパール」と呼ばれる特別塗装色。「ノート」の「NISMO S」シリーズには、全5色のボディーカラーがラインナップされている。
前席用のレカロシート(オプション)。ヘッドレストやサイドサポート部分に、NISMOのイメージカラーであるレッドを採用している。スエード調のシート表皮は見た目だけではなく、体の滑りを防止する役割も担っている。
前席用のレカロシート(オプション)。ヘッドレストやサイドサポート部分に、NISMOのイメージカラーであるレッドを採用している。スエード調のシート表皮は見た目だけではなく、体の滑りを防止する役割も担っている。
フロントシートに合わせ、赤いステッチを用いたスエード調のシート表皮が採用されるリアシート。バックレストは6:4分割可倒式で、荷物に合わせてアレンジが可能だ。
フロントシートに合わせ、赤いステッチを用いたスエード調のシート表皮が採用されるリアシート。バックレストは6:4分割可倒式で、荷物に合わせてアレンジが可能だ。
ボディー剛性を引き上げるため、アンダーパネルにクロスメンバーやステーなどを追加し補強。ガソリンエンジン搭載の「NISMO」シリーズよりも「e-POWER NISMO/NISMO S」のほうが強化されたパートは多いのだという。
ボディー剛性を引き上げるため、アンダーパネルにクロスメンバーやステーなどを追加し補強。ガソリンエンジン搭載の「NISMO」シリーズよりも「e-POWER NISMO/NISMO S」のほうが強化されたパートは多いのだという。
このクルマは新しい時代のホットハッチだ、とほくほくしながら帰路につく。落ち着いて高速道路を走りながら感じるのは、やっぱり丁寧に仕立てられたクルマは、運転のしがいがあるということだ。

ノートe-Power NISMO Sは、出力アップのためにコンピューターに専用チューニングが施されているほか、フロントとリアのクロスバー設置などのボディー補強、専用サスペンションに電動パワステの専用チューニングなど、手がかかっている。ただパワーを上げて足を固めただけでなく、クルマ全体が同じ方向を目指しているから、スパルタンな乗り心地も納得できる。

なんというか、クルマとドライビングを知り尽くした匠(たくみ)の技を、あちこちに感じることができる。このシートも掛け心地とホールド性がいいな、と思ったら運転席・助手席セットで27万円なりのオプションのレカロ製だった。ただの激辛スパイスではなく、一流の職人が腕によりをかけたスパイスだから美味なのだ。

面白いのは、試乗車に付いていたオプションのインテリジェントクルーズコントロールだ。車速をセットして先行する車両の追従を始めると、エンジン車より明らかにキメ細やかに、スムーズについていく。運転する楽しさといい、自動運転のアドバンテージといい、モーターが有利なんだな、とエンジン車育ちとしてはしみじみした。

同時に、モーターで走る時代になっても、人の手によるチューニングは大事だということも痛感した。モーターとバッテリーで走るEVの時代になるとだれでもクルマをつくれるようになるなんて言説もあるけれど、とんでもない。

NISMOにはぜひAMGやBMW M社のように、楽しいクルマをばんばんつくってもらいたい。

(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

撮影車両は「ブリリアントホワイトパール」と呼ばれる特別塗装色。「ノート」の「NISMO S」シリーズには、全5色のボディーカラーがラインナップされている。
撮影車両は「ブリリアントホワイトパール」と呼ばれる特別塗装色。「ノート」の「NISMO S」シリーズには、全5色のボディーカラーがラインナップされている。
前席用のレカロシート(オプション)。ヘッドレストやサイドサポート部分に、NISMOのイメージカラーであるレッドを採用している。スエード調のシート表皮は見た目だけではなく、体の滑りを防止する役割も担っている。
前席用のレカロシート(オプション)。ヘッドレストやサイドサポート部分に、NISMOのイメージカラーであるレッドを採用している。スエード調のシート表皮は見た目だけではなく、体の滑りを防止する役割も担っている。
フロントシートに合わせ、赤いステッチを用いたスエード調のシート表皮が採用されるリアシート。バックレストは6:4分割可倒式で、荷物に合わせてアレンジが可能だ。
フロントシートに合わせ、赤いステッチを用いたスエード調のシート表皮が採用されるリアシート。バックレストは6:4分割可倒式で、荷物に合わせてアレンジが可能だ。
ボディー剛性を引き上げるため、アンダーパネルにクロスメンバーやステーなどを追加し補強。ガソリンエンジン搭載の「NISMO」シリーズよりも「e-POWER NISMO/NISMO S」のほうが強化されたパートは多いのだという。
ボディー剛性を引き上げるため、アンダーパネルにクロスメンバーやステーなどを追加し補強。ガソリンエンジン搭載の「NISMO」シリーズよりも「e-POWER NISMO/NISMO S」のほうが強化されたパートは多いのだという。

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