【試乗記】マツダ3セダン20S Lパッケージ(FF/6AT)
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- マツダ3セダン20S Lパッケージ(FF/6AT)
カッコよければすべてよし
先代にあたる「アクセラ」からすべてを刷新したという「マツダ3」は、マツダの新世代商品群の第1弾、すなわち同社の行く末を占う一台だ。「ファストバック」に比べるとちょっと地味(?)な「セダン」を連れ出し、その出来栄えを確かめた。
かたまり感のかたまり
アクセラあらため、マツダ3。5月24日の発売から3カ月。都内ではチラホラ見かけるようになった。
カッコイイ! 先代「CX-5」以来のこのフロントマスクを最も高いレベルで昇華したように見えるボディーは、かたまり感のかたまりだ。やはり一番映えるのは、イメージカラーの「ソウルレッド」。2017年の東京モーターショーに出た“魁コンセプト”がほぼそのまま降臨したかのようである。
しかしそれは、ファストバック(5ドアハッチバック)の話。今回試乗したのは、セダンである。ノーズ部分は基本、同じだが、トランクリッドへ向けてのボディー後半部は、入魂のファストバックと見比べると、だいぶフツーだ。しかも試乗車は白。直射日光の下だと、映り込みも陰影も期待できないカメラマン泣かせの色である。
セダンの品ぞろえはファストバックより限られる。一番小さいガソリン1.5リッターはなく、MTも選べない。ただ、同一エンジンの同一グレードだと、価格はファストバックと同じだ。プラス20cmの全長と、そこにある独立したトランクルームを付加価値と捉えれば、セダンはお買い得かもしれない。
試乗車は「20S Lパッケージ」(264万9000円)。この12月に「スカイアクティブX」と呼ばれる新型ガソリン2リッターが追加されるが、「314万円より」という価格を考えると、こっちのほうが販売のメインになりそうな2リッター4気筒モデルである。
カッコイイ! 先代「CX-5」以来のこのフロントマスクを最も高いレベルで昇華したように見えるボディーは、かたまり感のかたまりだ。やはり一番映えるのは、イメージカラーの「ソウルレッド」。2017年の東京モーターショーに出た“魁コンセプト”がほぼそのまま降臨したかのようである。
しかしそれは、ファストバック(5ドアハッチバック)の話。今回試乗したのは、セダンである。ノーズ部分は基本、同じだが、トランクリッドへ向けてのボディー後半部は、入魂のファストバックと見比べると、だいぶフツーだ。しかも試乗車は白。直射日光の下だと、映り込みも陰影も期待できないカメラマン泣かせの色である。
セダンの品ぞろえはファストバックより限られる。一番小さいガソリン1.5リッターはなく、MTも選べない。ただ、同一エンジンの同一グレードだと、価格はファストバックと同じだ。プラス20cmの全長と、そこにある独立したトランクルームを付加価値と捉えれば、セダンはお買い得かもしれない。
試乗車は「20S Lパッケージ」(264万9000円)。この12月に「スカイアクティブX」と呼ばれる新型ガソリン2リッターが追加されるが、「314万円より」という価格を考えると、こっちのほうが販売のメインになりそうな2リッター4気筒モデルである。
実用性よりもデザイン優先
朝、あらためてガレージで見た3のセダンは、けっこう大きかった。それもそのはず、長さ4660mm、幅1795mm。新型プラットフォームで構築されたボディーのタテヨコは、アメリカ仕込みの「シビックセダン」と同じだ。クルマに近づくと、ドアロックがいい音で解錠される。ドアを開ける前から、計器盤では宇宙っぽいウエルカムイメージが動き出す。
運転席に座ってスタートスイッチを押すと、中央のデジタルメーターに“MAZDA 3”の文字が現れ、後ろ姿のイラストレーションが出る。ちゃんと3のセダンであるところが凝っている。起動したカーナビが女性の声で言った。「8月27日。今日は寅さんの日です」
だが、インテリアは、ひとくちにドイツ車的である。ダッシュボードやドア内張は合成皮革だが、ホンモノに見える。顔が映りそうなメッキパーツも金属に見える。試乗車はオプション込みでも280万円ちょっと。軽のスーパーハイトワゴンが200万円近くする時代、この価格でこれだけ内装を上質につくり込んだ2リッターセダンがほかにあるだろうか。
ほかにあるだろうかといえば、フロントピラーの“寝かた”もセダン離れしている。運転席から助手席のほうを見ると、小さな窓ガラスの形はまるで直角三角形だ。ドアの桟が低いので、長身者だと前席の出入りは窮屈だろう。海外市場では大丈夫だろうか、なんて心配をさせるくらい、実用性よりデザインを優先させている。
運転席に座ってスタートスイッチを押すと、中央のデジタルメーターに“MAZDA 3”の文字が現れ、後ろ姿のイラストレーションが出る。ちゃんと3のセダンであるところが凝っている。起動したカーナビが女性の声で言った。「8月27日。今日は寅さんの日です」
だが、インテリアは、ひとくちにドイツ車的である。ダッシュボードやドア内張は合成皮革だが、ホンモノに見える。顔が映りそうなメッキパーツも金属に見える。試乗車はオプション込みでも280万円ちょっと。軽のスーパーハイトワゴンが200万円近くする時代、この価格でこれだけ内装を上質につくり込んだ2リッターセダンがほかにあるだろうか。
ほかにあるだろうかといえば、フロントピラーの“寝かた”もセダン離れしている。運転席から助手席のほうを見ると、小さな窓ガラスの形はまるで直角三角形だ。ドアの桟が低いので、長身者だと前席の出入りは窮屈だろう。海外市場では大丈夫だろうか、なんて心配をさせるくらい、実用性よりデザインを優先させている。
さすがロードスターの血筋
走りだすと、マツダ3セダンはなかなかスポーティーで楽しい。6段ATと組み合わされるエンジンは、「マツダ6(旧アテンザ)」やCX-5にも使われている156PSの2リッター4気筒。6000rpmを超す高回転まで緻密に回り、1350kgの車重に対して、パワーは必要にして十分。“スポーツセダン”と呼びたくなるような豪快さはないものの、やはりBMWのMスポーツとかアウディSラインのテイストを彷彿させるアスリート系セダンである。
ワインディングロードでも、イイ。よく曲がるし、曲がって楽しい。重心感覚は低く、ペースを上げれば上げるほど、ボディーが小さく感じられる。親戚にマツダ・ロードスターがいる血は争えない。
ただし欠点もある。乗り心地がパーフェクトではない。平滑な路面では問題ないのだが、荒れた路面へ行くと、途端に悪くなる。特に苦手なのは、高速道路の継ぎ目や一般道にある路面の補修跡。概して段差に弱い。そういうところでは突き上げを食らい、フロアがブルンと震えて、走行品質を一気に落とす。乗り心地のフトコロが深くないのだ。もともとアクセラも乗り心地のいいクルマではなかったが、マルチリンクからトーションビームへのリアサスペンション変更は、少なくとも乗り心地には好影響を与えていないようだ。
ワインディングロードでも、イイ。よく曲がるし、曲がって楽しい。重心感覚は低く、ペースを上げれば上げるほど、ボディーが小さく感じられる。親戚にマツダ・ロードスターがいる血は争えない。
ただし欠点もある。乗り心地がパーフェクトではない。平滑な路面では問題ないのだが、荒れた路面へ行くと、途端に悪くなる。特に苦手なのは、高速道路の継ぎ目や一般道にある路面の補修跡。概して段差に弱い。そういうところでは突き上げを食らい、フロアがブルンと震えて、走行品質を一気に落とす。乗り心地のフトコロが深くないのだ。もともとアクセラも乗り心地のいいクルマではなかったが、マルチリンクからトーションビームへのリアサスペンション変更は、少なくとも乗り心地には好影響を与えていないようだ。
機能装備もよくできている
ロケからの帰路は、いつもの高速道路には乗らず、3ケタ国道の下道を走った。マツダのスローガン“Be a driver.”は意訳すると「運転しよう!」だと思うが、マツダ3もまさにそういうクルマだ。
とはいえ、時代の要請にももちろん応えている。最後の夏休みでにぎわうワインディングロードでアダプティブ・クルーズコントロールを効かせると、けっこううまいこと前走車についていった。“Be an auto driver.”もイケる。
速度標識をカメラで読み取って表示する機能はすでにおなじみだが、このクルマはそれに加えて、速度計の盤面でも教えてくれる。そのときの制限速度から超過する分をレッドゾーンで示す。飛ばす人はメーターの目盛りが真っ赤になる。“Be a safe driver.”
モーターショーのデザインスタディーから生まれたようなクルマだから、居住性最優先ではない。リアシートはシビックセダンや「インプレッサG4」のように広くはない。4ドアクーペと考えたほうがいいだろう。乗り心地にはリファインを望みたいが、マツダらしいドイツ車ラブにあふれた、カッコいのちのセダンである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
とはいえ、時代の要請にももちろん応えている。最後の夏休みでにぎわうワインディングロードでアダプティブ・クルーズコントロールを効かせると、けっこううまいこと前走車についていった。“Be an auto driver.”もイケる。
速度標識をカメラで読み取って表示する機能はすでにおなじみだが、このクルマはそれに加えて、速度計の盤面でも教えてくれる。そのときの制限速度から超過する分をレッドゾーンで示す。飛ばす人はメーターの目盛りが真っ赤になる。“Be a safe driver.”
モーターショーのデザインスタディーから生まれたようなクルマだから、居住性最優先ではない。リアシートはシビックセダンや「インプレッサG4」のように広くはない。4ドアクーペと考えたほうがいいだろう。乗り心地にはリファインを望みたいが、マツダらしいドイツ車ラブにあふれた、カッコいのちのセダンである。
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