【試乗記】日産スカイラインGT Type SP(ハイブリッド) /スカイラインGT Type P(V6ターボ)
- 日産スカイラインGT Type SP(ハイブリッド)(FR/7AT) /スカイラインGT Type P(V6ターボ)(FR/7AT)
存在感はある
マイナーチェンジを受けた「日産スカイライン」のハイブリッドモデルと、日本初導入の3リッターV6ターボモデルに試乗。前者に国産市販車として初めて搭載された、同一車線内での“ハンズオフ”走行を実現する運転支援システム「プロパイロット2.0」の実用性や使い勝手を確かめてみた。
本物のスカイラインはR34まで?
いささか旧聞に属するが、数年前のとある日、近所を通過する所用が発生したことに乗じて、かねて念願だった長野県は岡谷市の自動車博物館を訪れた。その名は「スカイラインミュウジアム」。
運営に日産自動車はノータッチ。しかも単一車種のみの扱いということから、「展示規模はせいぜい10台程度か」とそんなことを思いつつ訪れてみれば、そもそもが想像していたよりはるかに立派な建屋の、複数のフロアに整然とレイアウトされた車両の数は30台以上!
正式名称が「プリンス&スカイラインミュウジアム」ということから、中にはかつて同じプリンス社で造られたトラックや、後に「セドリック」との双子モデルとなった「グロリア」の姿も交じってはいたものの、ディスプレイ車両の大半は丸型テールランプや直列6気筒エンジンがトレードマークだった、いわゆる“スカG”と呼ばれていたモデル。あらためて、往年のスカイライン人気の高さを教えられた。
一方、少なくとも自身が訪れたこのタイミングでは、2001年デビューのV35型以降の姿を見掛けなかったことが「さもありなん」と思えたのも事実。販売の軸足をアメリカをはじめとする海外の市場に移し、拡大されたボディーに大排気量のV型6気筒エンジンを搭載した新世代のモデルを“スカイライン”と認めようとしないファンは、やはり決して少なくないということなのだろう。
いずれにしても、今へと至るスカイラインの歴史のターニングポイントは、間違いなくR34型からV35型へと切り替わったこの2001年にあったということだ。
運営に日産自動車はノータッチ。しかも単一車種のみの扱いということから、「展示規模はせいぜい10台程度か」とそんなことを思いつつ訪れてみれば、そもそもが想像していたよりはるかに立派な建屋の、複数のフロアに整然とレイアウトされた車両の数は30台以上!
正式名称が「プリンス&スカイラインミュウジアム」ということから、中にはかつて同じプリンス社で造られたトラックや、後に「セドリック」との双子モデルとなった「グロリア」の姿も交じってはいたものの、ディスプレイ車両の大半は丸型テールランプや直列6気筒エンジンがトレードマークだった、いわゆる“スカG”と呼ばれていたモデル。あらためて、往年のスカイライン人気の高さを教えられた。
一方、少なくとも自身が訪れたこのタイミングでは、2001年デビューのV35型以降の姿を見掛けなかったことが「さもありなん」と思えたのも事実。販売の軸足をアメリカをはじめとする海外の市場に移し、拡大されたボディーに大排気量のV型6気筒エンジンを搭載した新世代のモデルを“スカイライン”と認めようとしないファンは、やはり決して少なくないということなのだろう。
いずれにしても、今へと至るスカイラインの歴史のターニングポイントは、間違いなくR34型からV35型へと切り替わったこの2001年にあったということだ。
マイナーチェンジで日産顔に
と、“そこの話題”は取りあえず置いて、今回ここに紹介するのは、2014年にバトンがつながれ13代目となったV37型と呼ばれるモデルが、さらに2019年7月にマイナーチェンジを受けた最新のスカイラインだ。まず一見して印象的なのは、フロントマスクに昨今の日産車に共通する“Vモーション”のモチーフが新採用され、同時にフロントグリル中央のエンブレムも、従来のインフィニティバッジからあらためて日産バッジへと変更された点である。
そもそも現行型スカイラインには、「インフィニティの一員」を意識したデザインが採用され、フロントグリルの意匠も同様のスタンスで開発されたことは、かねて日産自身も認めていた事柄。
ところが、そんなモデルに突然“日産の顔”をはめ込み、「無理が通れば道理引っ込む」を地で行くところが、昨今のスカイラインにおいて囁(ささや)かれるブランド力凋落(ちょうらく)の遠因でもあることは、誰もが認めざるを得ないのではないだろうか。
ともあれ“そんな話題”も取りあえずは置きざりにして(?)、目の前に用意された試乗車へと乗り込んでみる。
最初にステアリングを握ったハイブリッドモデルの「GT Type SP」に搭載されるパワーパックは、1モーター/2クラッチ式の7段ステップATを3.5リッターのV6エンジンと組み合わせるという、改良前モデルからキャリーオーバーされた電動化ユニット。
そして、そんなハイブリッドモデルに標準装備とされる最新スカイラインでの目玉アイテムこそが、プロパイロット2.0を名乗る、特定の条件がそろった高速道路/自動車専用道路で作動する、ハンズオフ機能付きの運転支援システムである。
何はともあれそんな新機軸を試すべく、試乗会場最寄りのインターからいざ高速道路へと乗り込んだ。
そもそも現行型スカイラインには、「インフィニティの一員」を意識したデザインが採用され、フロントグリルの意匠も同様のスタンスで開発されたことは、かねて日産自身も認めていた事柄。
ところが、そんなモデルに突然“日産の顔”をはめ込み、「無理が通れば道理引っ込む」を地で行くところが、昨今のスカイラインにおいて囁(ささや)かれるブランド力凋落(ちょうらく)の遠因でもあることは、誰もが認めざるを得ないのではないだろうか。
ともあれ“そんな話題”も取りあえずは置きざりにして(?)、目の前に用意された試乗車へと乗り込んでみる。
最初にステアリングを握ったハイブリッドモデルの「GT Type SP」に搭載されるパワーパックは、1モーター/2クラッチ式の7段ステップATを3.5リッターのV6エンジンと組み合わせるという、改良前モデルからキャリーオーバーされた電動化ユニット。
そして、そんなハイブリッドモデルに標準装備とされる最新スカイラインでの目玉アイテムこそが、プロパイロット2.0を名乗る、特定の条件がそろった高速道路/自動車専用道路で作動する、ハンズオフ機能付きの運転支援システムである。
何はともあれそんな新機軸を試すべく、試乗会場最寄りのインターからいざ高速道路へと乗り込んだ。
かつてない“自動運転感”
プロパイロット2.0の起動には、ナビゲーションシステムに目的地設定を行った上で、ステアリングホイールの右側スポーク上にレイアウトされた、青いアイコンが描かれたスイッチをプッシュするという操作が必要。これで「条件が整えば」前車追従機能付きのクルーズコントロールと同一車線内走行を行うレーンキープアシスト機能が同時に動作し、運転支援が始まることになる。
スカイラインのデバイスが注目を浴びるのは、ひとえにそんなサポート走行時に“ハンズオフ”、すなわち手放し運転が許容された点にある。
「条件が整えば」と前述したように、そんなハンズオフでの走行機能は対面通行やトンネル区間、合流地点などではカットされる。そもそも、「路面の傾斜や車線の色など、さまざまな道路情報が必要」という点からゼンリンが開発した「3D高精度地図データ」が必須とされ、この機能を利用するためには最新のデータを維持するために年間2万2000円(税別)で提供される「プロパイロットプラン」と呼ばれるサービスプランに加入することも必要になるという。
また、ハンズオフ走行中でも運転操作にまつわる全責任はドライバーに委ねられ、スマホ操作のような“セカンドタスク”が許されるわけではない点にも、注意が必要だ。
正直なところ、ちょっとばかり面倒なそんなもろもろの条件を承知の上で実際に使ってみると、なるほど高精度地図を利用したことによる精密な支援も効果を発揮してか、車線の中央付近をターゲットとしたセンタリング機能がしっかり働いて、思いのほか安心感の高い走りが実現されていた。速度標識を読み取り、目標速度をその表示に沿わせる設定とすることで、かつてない“自動運転感”が味わえたことも事実だった。
ただし、ディスプレイに表示された“提案”を確認の後、ステアリングスイッチを押すことによって動作を開始する“車線変更支援”は、仮に自分のクルマに装備されていても「一生使う機会はないだろうナ」と思わせる機能でもあった。なぜならば、こればかりは「自分でやった方が確実で、スピーディーに車線変更が行える」と思えたからだ。端的に言って、安全を確認の後にボタンを押すという動作が必要であるならば、自身でステアリングを切った方がはるかに早い。ここをあえて機械任せにする理由とメリットが、全く不明なのである。
一方で、“仕事”を失ったドライバーの両手は、まさに手持ち無沙汰な状況に。こうなるとダメと言われても行う人が現れそうなのが、前出したセカンドタスクの問題である。ドライバーのよそ見を検知するための新たなカメラがダッシュボード上に設置されたが、果たしてそれが正面を向いたままでのスマホ操作などを判定できる機能を備えているのかは、今回は確認のしようがなかった。
スカイラインのデバイスが注目を浴びるのは、ひとえにそんなサポート走行時に“ハンズオフ”、すなわち手放し運転が許容された点にある。
「条件が整えば」と前述したように、そんなハンズオフでの走行機能は対面通行やトンネル区間、合流地点などではカットされる。そもそも、「路面の傾斜や車線の色など、さまざまな道路情報が必要」という点からゼンリンが開発した「3D高精度地図データ」が必須とされ、この機能を利用するためには最新のデータを維持するために年間2万2000円(税別)で提供される「プロパイロットプラン」と呼ばれるサービスプランに加入することも必要になるという。
また、ハンズオフ走行中でも運転操作にまつわる全責任はドライバーに委ねられ、スマホ操作のような“セカンドタスク”が許されるわけではない点にも、注意が必要だ。
正直なところ、ちょっとばかり面倒なそんなもろもろの条件を承知の上で実際に使ってみると、なるほど高精度地図を利用したことによる精密な支援も効果を発揮してか、車線の中央付近をターゲットとしたセンタリング機能がしっかり働いて、思いのほか安心感の高い走りが実現されていた。速度標識を読み取り、目標速度をその表示に沿わせる設定とすることで、かつてない“自動運転感”が味わえたことも事実だった。
ただし、ディスプレイに表示された“提案”を確認の後、ステアリングスイッチを押すことによって動作を開始する“車線変更支援”は、仮に自分のクルマに装備されていても「一生使う機会はないだろうナ」と思わせる機能でもあった。なぜならば、こればかりは「自分でやった方が確実で、スピーディーに車線変更が行える」と思えたからだ。端的に言って、安全を確認の後にボタンを押すという動作が必要であるならば、自身でステアリングを切った方がはるかに早い。ここをあえて機械任せにする理由とメリットが、全く不明なのである。
一方で、“仕事”を失ったドライバーの両手は、まさに手持ち無沙汰な状況に。こうなるとダメと言われても行う人が現れそうなのが、前出したセカンドタスクの問題である。ドライバーのよそ見を検知するための新たなカメラがダッシュボード上に設置されたが、果たしてそれが正面を向いたままでのスマホ操作などを判定できる機能を備えているのかは、今回は確認のしようがなかった。
日本初登場のV6ターボ
一方、そんなプロパイロット2.0の陰に隠れがちであるものの、今度のマイナーチェンジではV6に“純エンジン仕様”のモデルが設定されたことも見どころのひとつ。今回は、最高304PSを発生するその新しいV6ツインターボを搭載した「GT Type P」を、短時間ながらテストドライブすることができた。
プロパイロット2.0の採用とともに電動化が図られたハイブリッドモデルのパーキングブレーキに対し、こちらはこの期に及んでの足踏み式を踏襲。同クラスのモデルとしてはもはやありえない(!)旧態依然たる方式に走り始める以前の段階でガッカリさせられたものの、いざスタートするとびっくりするほどの好印象に気を取り直すこととなったのが、パワフルかつ、全域でレスポンスに優れた新エンジンのキャラクターだった。
同様のアクセル操作を繰り返しても、時に異なる反応を返してきて「リニアリティーに問題アリ」と思えたハイブリッドモデルに比べると、動力性能面での印象がはるかに優れるのがこちら。特に、スタートの瞬間の素早いトルクの立ち上がりは「まるで電気モーターを備えているかのごとくシャープで強力」で、発進加速を行うたびにウットリ(?)させられることになったのだ。
「せっかくこんなに良いモノをつくったならば、もっと早く日本仕様にも載せてくれればよかったのに!」と感じられたのが、電動式の可変バルブタイミング機構や水冷式インタークーラーを備えたツインターボチャージャー付きのこのエンジンであったのだ。
ランフラットタイヤが拾った路面の凹凸を直接的に伝えてくるなど、時にちょっとばかり骨格の古さを連想させられる場面もあったが、総じて「よくできたFRモデル」と実感できる走りを味わわせてくれた。
結局のところ、終わってみれば「これがスカイラインなの!?」という思いはやっぱり消えず、プロパイロットの進化版よりも、むしろ新エンジンの素性の良さが心に残ることとなった日産の最新セダンだったのである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
プロパイロット2.0の採用とともに電動化が図られたハイブリッドモデルのパーキングブレーキに対し、こちらはこの期に及んでの足踏み式を踏襲。同クラスのモデルとしてはもはやありえない(!)旧態依然たる方式に走り始める以前の段階でガッカリさせられたものの、いざスタートするとびっくりするほどの好印象に気を取り直すこととなったのが、パワフルかつ、全域でレスポンスに優れた新エンジンのキャラクターだった。
同様のアクセル操作を繰り返しても、時に異なる反応を返してきて「リニアリティーに問題アリ」と思えたハイブリッドモデルに比べると、動力性能面での印象がはるかに優れるのがこちら。特に、
「せっかくこんなに良いモノをつくったならば、もっと早く日本仕様にも載せてくれればよかったのに!」と感じられたのが、電動式の可変バルブタイミング機構や水冷式インタークーラーを備えたツインターボチャージャー付きのこのエンジンであったのだ。
ランフラットタイヤが拾った路面の凹凸を直接的に伝えてくるなど、時にちょっとばかり骨格の古さを連想させられる場面もあったが、総じて「よくできたFRモデル」と実感できる走りを味わわせてくれた。
結局のところ、終わってみれば「これがスカイラインなの!?」という思いはやっぱり消えず、プロパイロットの進化版よりも、むしろ新エンジンの素性の良さが心に残ることとなった日産の最新セダンだったのである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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