【試乗記】スバル・インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight(4WD/CVT)
- スバル・インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight(4WD/CVT)
あとはデザインだけ
登場から3年、マイナーチェンジされた「スバル・インプレッサスポーツ」に試乗。内外装の仕様変更や足まわりの見直し、そしてスバル自慢の運転支援システム「アイサイト」への機能追加と、多岐にわたる改良が施された最新モデルの仕上がりをリポートする。
マイナーチェンジで競争力をアップ
スバルで最初に新世代プラットフォームである「SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)」が採用された5代目インプレッサも登場から3年。今回、マイナーチェンジが実施された。以前クローズドコースで、現行モデルの発売前に先代となる4代目モデルと乗り比べをしたことがある。まず先代インプレッサに乗ったのだが、そのマイルドな乗り味は、モデル末期ながら「なかなかいいじゃないか」と思わせるものだった。
そこから現行インプレッサに乗り換えて最初に強い印象を受けたのが、より引き締められたサスペンションと、それにもかかわらず不快なショックを伝えてこない、剛性の高いボディーの感触だ。優しい先代モデルの乗り味も捨てがたかったが、それをあっさり上書きする新世代のクルマが登場したと感じた。国産車では初めて採用した歩行者用エアバッグの搭載も相まって、ついに欧州のCセグメント車と同列で比較できるレベルのクルマが国内メーカーからも登場したと思ったものだ。
しかし、現行インプレッサが登場してから3年が経過し、トヨタの「カローラ」や、マツダの「マツダ3」といった強力なライバル車が国内のメーカーからも相次いで登場し、インプレッサの優位を脅かし始めた。こうしたライバル車に対して再び競争力を回復しようというのが今回のマイナーチェンジの狙いだ。
具体的には、スバル独自の運転支援システムである「アイサイト・ツーリングアシスト」(後述)を全車に標準装備するとともに、前方車両に当たる部分だけハイビームを遮光する「アダプティブドライビングビーム」などの先進安全技術を採用し、安全性能を進化させた。また、サスペンションのセッティングを見直し、ハンドリング性能を向上。外観もフロントグリルやバンパー、アルミホイールのデザインなどを刷新している。果たして進化したインプレッサの競争力は? 試乗で確認してみた。
そこから現行インプレッサに乗り換えて最初に強い印象を受けたのが、より引き締められたサスペンションと、それにもかかわらず不快なショックを伝えてこない、剛性の高いボディーの感触だ。優しい先代モデルの乗り味も捨てがたかったが、それをあっさり上書きする新世代のクルマが登場したと感じた。国産車では初めて採用した歩行者用エアバッグの搭載も相まって、ついに欧州のCセグメント車と同列で比較できるレベルのクルマが国内メーカーからも登場したと思ったものだ。
しかし、現行インプレッサが登場してから3年が経過し、トヨタの「カローラ」や、マツダの「マツダ3」といった強力なライバル車が国内のメーカーからも相次いで登場し、インプレッサの優位を脅かし始めた。こうしたライバル車に対して再び競争力を回復しようというのが今回のマイナーチェンジの狙いだ。
具体的には、スバル独自の運転支援システムである「アイサイト・ツーリングアシスト」(後述)を全車に標準装備するとともに、前方車両に当たる部分だけハイビームを遮光する「アダプティブドライビングビーム」などの先進安全技術を採用し、安全性能を進化させた。また、サスペンションのセッティングを見直し、ハンドリング性能を向上。外観もフロントグリルやバンパー、アルミホイールのデザインなどを刷新している。果たして進化したインプレッサの競争力は? 試乗で確認してみた。
滑らかな水平対向エンジン
試乗したのは2リッターエンジンを搭載するAWD(全輪駆動)の「インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight」である。走りだしてあらためて感じたのが水平対向エンジンの滑らかさだ。アクセルを踏み込むと、まるでモーターのようにスムーズに回転が上昇し、苦しげな感じが一切ない。というのも水平対向エンジンはピストンが向かい合わせに動き、お互いの振動を打ち消し合うため、エンジンの構造上、低振動にできるからだ。
これに組み合わされるCVT(無段変速機)の「リニアトロニック」は、他社が主に金属ベルトを使うのに対してチェーンを使う独自のものだが、伝達効率の高さと引き換えに騒音が大きいというチェーンの欠点を感じさせず、パワートレインの静粛性は非常に高い。
最近はCセグメント車の静粛性も向上しているのだが、その中にあっても新型インプレッサは競合車種にひけをとらない水準を実現していると感じる。パワートレインには今回のマイナーチェンジでは手を入れられていないのだが、依然としてその競争力は衰えていない。スバルはいまや世界で唯一、水平対向エンジンを量産乗用車に搭載しているメーカーだが(ポルシェのような高級スポーツカーは除く)、そのこだわりは十分商品力に反映されている。
一方、部分改良で手を加えられたのがサスペンション。そのセッティングはどうか。今回の改良でスバルが目指したのが「WRX STI」に近い操舵応答性を実現することだったという。操舵応答性とは、ステアリングを切ってから実際に車両が旋回を始めるまでの特性のことで、この応答性が高ければ、ステアリングを動かした結果がすぐにドライバーに分かるため、必要な修正もすばやくできる。もし応答が遅ければ、操舵した結果を知るのが遅れ、そのための修正も遅くなり、さらなる修正が必要になる場合もある。この積み重ねがドライバーの疲労につながる。操舵応答性の向上はスポーツ走行のためではなく、日常的な運転でも重要な要素ということになる。
これに組み合わされるCVT(無段変速機)の「リニアトロニック」は、他社が主に金属ベルトを使うのに対してチェーンを使う独自のものだが、伝達効率の高さと引き換えに騒音が大きいというチェーンの欠点を感じさせず、パワートレインの静粛性は非常に高い。
最近はCセグメント車の静粛性も向上しているのだが、その中にあっても新型インプレッサは競合車種にひけをとらない水準を実現していると感じる。パワートレインには今回のマイナーチェンジでは手を入れられていないのだが、依然としてその競争力は衰えていない。スバルはいまや世界で唯一、水平対向エンジンを量産乗用車に搭載しているメーカーだが(ポルシェのような高級スポーツカーは除く)、そのこだわりは十分商品力に反映されている。
一方、部分改良で手を加えられたのがサスペンション。そのセッティングはどうか。今回の改良でスバルが目指したのが「WRX STI」に近い操舵応答性を実現することだったという。操舵応答性とは、ステアリングを切ってから実際に車両が旋回を始めるまでの特性のことで、この応答性が高ければ、ステアリングを動かした結果がすぐにドライバーに分かるため、必要な修正もすばやくできる。もし応答が遅ければ、操舵した結果を知るのが遅れ、そのための修正も遅くなり、さらなる修正が必要になる場合もある。この積み重ねがドライバーの疲労につながる。操舵応答性の向上はスポーツ走行のためではなく、日常的な運転でも重要な要素ということになる。
足まわりの改良はSTIとの共同作業
現行インプレッサの開発でも操舵応答性を重視した開発が行われてきたが、今回さらにその性能を高めるために、WRX STIを開発したスバルテクニカインターナショナル(STI)がサスペンションのセッティングを担当した。今回の試乗会には、STIで実際にサスペンションの開発を担当したエンジニアも参加しており、聞くと変更しているのはダンパーのセッティングだけだという。具体的には、従来よりもダンパーの減衰力を高めている。これによりステアリングを切ったときの車両の応答性が向上し、ロールも抑えられている。
今回の試乗では主に高速道路を走行した。確かに段差を乗り越えたときの衝撃が従来よりも大きめに伝わってくる感じはするものの、その角が丸められているうえに振動もすぐに収束するため、不快感はない。ひとことで表現すると「コシのある乗り心地」ということになるだろうか。STIの開発担当者も「SGPの車体剛性の高さがあったからこそ、ダンパーの減衰力を高めても乗り心地が悪化しなかった」と語っていた。
そして肝心のステアリングの応答性だが、マイナーチェンジ前後のモデルで乗り比べをしたわけではないので直接の比較はできないものの、コーナリング時よりも、むしろ直進時にそのハンドリングの良さを感じた。実は直進時でも、ドライバーは微妙な軌道修正を繰り返しながら走行する。最新型ではステアリングの応答性が高い一方で、直進安定性がいいので修正舵が少なくてすむ。操作自体がラクなだけなく、走行していて安心感がある。これなら高速道路のロングツーリングも快適にこなせそうだ。
今回全グレードに標準装備になったアイサイト・ツーリングアシストも、あらためてその動作を体感してみた。念のためおさらいすると、最新のアイサイトは以前のシステムに対して、大きく改良されている。従来のアイサイトの主な機能は「プリクラッシュブレーキ」「全車速追従機能付きクルーズコントロール(ACC)」「アクティブレーンキープ」「AT誤発進・誤後進抑制制御」、安全運転をサポートする「警報&お知らせ機能」の5つだったが、このうち車線内の中央付近を走行するアクティブレーンキープは作動領域が拡大され、さらにステアリング制御には「先行車追従操舵機能」が追加された。ACCにアクティブレーンキープと先行車追従操舵機能を加えた運転負荷軽減システムを、スバルではツーリングアシストと呼んでいる。
今回の試乗では主に高速道路を走行した。確かに段差を乗り越えたときの衝撃が従来よりも大きめに伝わってくる感じはするものの、その角が丸められているうえに振動もすぐに収束するため、不快感はない。ひとことで表現すると「コシのある乗り心地」ということになるだろうか。STIの開発担当者も「SGPの車体剛性の高さがあったからこそ、ダンパーの減衰力を高めても乗り心地が悪化しなかった」と語っていた。
そして肝心のステアリングの応答性だが、マイナーチェンジ前後のモデルで乗り比べをしたわけではないので直接の比較はできないものの、コーナリング時よりも、むしろ直進時にそのハンドリングの良さを感じた。実は直進時でも、ドライバーは微妙な軌道修正を繰り返しながら走行する。最新型ではステアリングの応答性が高い一方で、直進安定性がいいので修正舵が少なくてすむ。操作自体がラクなだけなく、走行していて安心感がある。これなら高速道路のロングツーリングも快適にこなせそうだ。
今回全グレードに標準装備になったアイサイト・ツーリングアシストも、あらためてその動作を体感してみた。念のためおさらいすると、最新のアイサイトは以前のシステムに対して、大きく改良されている。従来のアイサイトの主な機能は「プリクラッシュブレーキ」「全車速追従機能付きクルーズコントロール(ACC)」「アクティブレーンキープ」「AT誤発進・誤後進抑制制御」、安全運転をサポートする「警報&お知らせ機能」の5つだったが、このうち車線内の中央付近を走行するアクティブレーンキープは作動領域が拡大され、さらにステアリング制御には「先行車追従操舵機能」が追加された。ACCにアクティブレーンキープと先行車追従操舵機能を加えた運転負荷軽減システムを、スバルではツーリングアシストと呼んでいる。
自動ブレーキは優秀だが……
従来型インプレッサのアイサイトでは、ACCの上限速度が100km/hだったのに対して、ツーリングアシストでは120km/hに引き上げられた。車線中央維持機能は、従来の60km/h以上から0km/h以上での作動とし、ACCと同様に全車速対応になった。これによって、渋滞時の一時停止から高速走行まで全車速域でアクセル、ブレーキに加えて車線中央維持機能も自動制御(手放し運転ができるという完全自動ではない)されたことになる。
今回、ツーリングアシストを首都高速道路の横羽線において試すことができた。ほとんどの走行条件では問題ないものの、やや急なカーブではステアリングの操舵アシストの介入が遅く感じられることもあった。自動ブレーキに関しては、先行車と距離があっても、先行車のブレーキランプが点滅すると弱い減速動作があり、クルマが「ちゃんと分かってますよ」という意思表示をしてくれるので安心していられるのだが、車線維持(車線内中央付近走行)に関しても弱い操舵動作を早めに開始してくれると安心感が増すと思う。
発売から3年を経過したインプレッサだが、こと走りの性能や安全面に関しては、カローラや、マツダ3といった競合他車に対して負けない実力を備えていることをあらためて確認した。加えて後席の広さ、斜め後方の視界などは競合車に対して明確なアドバンテージがある。
一方で、競合車種が急速に高めている室内装備の質感ではやや後れを取った感が否めない。また外観ではバンパーやフロントグリルのデザインが変更されているが、従来はあったグリルの明確な縁取りが最新型ではなくなり、ややぼんやりとしたイメージになってしまった。せっかく走りがいいのに、それがデザインでは十分に表現されていないのが残念だ。
(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=花村英典、スバル/編集=櫻井健一)
今回、ツーリングアシストを首都高速道路の横羽線において試すことができた。ほとんどの走行条件では問題ないものの、やや急なカーブではステアリングの操舵アシストの介入が遅く感じられることもあった。自動ブレーキに関しては、先行車と距離があっても、先行車のブレーキランプが点滅すると弱い減速動作があり、クルマが「ちゃんと分かってますよ」という意思表示をしてくれるので安心していられるのだが、車線維持(車線内中央付近走行)に関しても弱い操舵動作を早めに開始してくれると安心感が増すと思う。
発売から3年を経過したインプレッサだが、こと走りの性能や安全面に関しては、カローラや、マツダ3といった競合他車に対して負けない実力を備えていることをあらためて確認した。加えて後席の広さ、斜め後方の視界などは競合車に対して明確なアドバンテージがある。
一方で、競合車種が急速に高めている室内装備の質感ではやや後れを取った感が否めない。また外観ではバンパーやフロントグリルのデザインが変更されているが、従来はあったグリルの明確な縁取りが最新型ではなくなり、ややぼんやりとしたイメージになってしまった。せっかく走りがいいのに、それがデザインでは十分に表現されていないのが残念だ。
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