【試乗記】トヨタ・ライズZ(FF/CVT)

トヨタ・ライズZ(FF/CVT)
トヨタ・ライズZ(FF/CVT)

軽いはただしい

トヨタの新型SUV「ライズ」に試乗。全長4m以下のコンパクトなボディーに広い室内、そしてパワフルな1リッターエンジンなどさまざまな魅力を備えた同車だが、リポーターが何よりもしびれたのはその“軽さ”だった。

スペックシートに驚く

トヨタがダイハツからOEM供給を受けて販売する「ライズ」。姉妹車の「ロッキー」が六角形のフロントグリルを採用するのに対し、ライズは台形のグリルとなる。
トヨタがダイハツからOEM供給を受けて販売する「ライズ」。姉妹車の「ロッキー」が六角形のフロントグリルを採用するのに対し、ライズは台形のグリルとなる。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1695×1620mm。5ナンバー規格におさまっている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1695×1620mm。5ナンバー規格におさまっている。
スパッと切り落としたように平面的なリアデザインが特徴的だ。
スパッと切り落としたように平面的なリアデザインが特徴的だ。
テスト車は最上級グレード「Z」のFF車。専用デザインの17インチタイヤ&ホイールが標準装備となる(他グレードは16インチが標準)。
テスト車は最上級グレード「Z」のFF車。専用デザインの17インチタイヤ&ホイールが標準装備となる(他グレードは16インチが標準)。
ダイハツがつくり、トヨタでも売るのが1リッターのコンパクトSUV、「ダイハツ・ロッキー」とトヨタ・ライズである。フロントグリルなどの意匠は異なるが、いちばん違うのが月販目標台数だ。ロッキーの2000台に対して、ライズは倍以上の4100台を掲げる。トヨタがそれだけ売ってくれるからこそ、製造メーカーとしてはすっかり軽専門になっていたダイハツも安心してつくれたともいえる。

2019年の師走に入ってすぐ、トヨタの広報車デポに試乗車を取りに行く。FFの最上級モデル「Z」(206万円)。隣には「センチュリー」が黒い巨体を休めていた。この日は朝から妙に暖かく湿気があり、激しい雨が降っていた。かつてユーミンが歌った『12月の雨』とは違うゲリラ豪雨みたいな降りかただ。

こういう天気だと、SUVは心の“保険”かもなあと走りだしての第一印象。白ナンバーの車としてはちょっと軽っぽいなと思った。3気筒サウンドのせいもあるし、フロアまわりの剛性感を含む乗り心地も「RAV4」のようにはしっかりしていない。

しかし、あらためてスペックを見て驚いた。このクルマ、980kgしかないのだ。以前試乗した「ダイハツ・タントカスタムRS」より60kg重いだけ。1t以下だから、重量税は白ナンバー最安。押し出しのきくマスクと彫りの深いサイドパネルのおかげで、けっこう大きく見えるが、全長はぎり4m以下。佐渡や桜島のフェリーなら軽自動車と同じ運賃ですむ。

トヨタがダイハツからOEM供給を受けて販売する「ライズ」。姉妹車の「ロッキー」が六角形のフロントグリルを採用するのに対し、ライズは台形のグリルとなる。
トヨタがダイハツからOEM供給を受けて販売する「ライズ」。姉妹車の「ロッキー」が六角形のフロントグリルを採用するのに対し、ライズは台形のグリルとなる。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1695×1620mm。5ナンバー規格におさまっている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1695×1620mm。5ナンバー規格におさまっている。
スパッと切り落としたように平面的なリアデザインが特徴的だ。
スパッと切り落としたように平面的なリアデザインが特徴的だ。
テスト車は最上級グレード「Z」のFF車。専用デザインの17インチタイヤ&ホイールが標準装備となる(他グレードは16インチが標準)。
テスト車は最上級グレード「Z」のFF車。専用デザインの17インチタイヤ&ホイールが標準装備となる(他グレードは16インチが標準)。

軽快な加速が楽しい

パワーユニットは最高出力98PS、最大トルク140N・mの1リッター直3ターボエンジン。軽量なボディーも相まって加速は軽快だ。
パワーユニットは最高出力98PS、最大トルク140N・mの1リッター直3ターボエンジン。軽量なボディーも相まって加速は軽快だ。
ドアハンドルやエアコンの吹き出し口などを角張ったデザインにすることで“ギア感”を演出している。
ドアハンドルやエアコンの吹き出し口などを角張ったデザインにすることで“ギア感”を演出している。
「Z」には本革巻きのステアリングホイールが標準装備。右スポーク上の「PWR」ボタンを押すとエンジン回転数が高く保たれるようになる。
「Z」には本革巻きのステアリングホイールが標準装備。右スポーク上の「PWR」ボタンを押すとエンジン回転数が高く保たれるようになる。
トランスミッションはベルト式のCVTとギア駆動を組み合わせた「D-CVT」。シフトセレクターはセンターコンソールよりも一段高いところにレイアウトされる。
トランスミッションはベルト式のCVTとギア駆動を組み合わせた「D-CVT」。シフトセレクターはセンターコンソールよりも一段高いところにレイアウトされる。
走り進むうちに、ライズの印象は右肩上がりによくなった。まずこのパワートレインがいい。98PSのエンジンはトヨタ製996cc 3気筒ターボをブラッシュアップしたもの。変速機はタント初出の「D-CVT」。ベルト駆動のCVTにギア駆動を組み合わせたハイブリッド変速機で、ワイドレシオ化による高速域でのエンジン回転低減など、これまでのCVTにあった弱点をカバーしたとされる。

加速は軽快だ。最初のひと踏みが気持ちよく速い。ターボらしい伸びも味わえる。7段のステップがきられているので、高回転にずっと張りつくラバーバンド現象もない。そのため、回しても不当にうるさくなることはない。

ハンドル右スポークの「PWR(パワー)」ボタンを押すと、アクセル踏み込みに対する実入りが大きくなる。使いやすいところにあるので、一定スロットルの巡航中に押すと、ツーッと余計に加速する。ハンドスロットルとして使えておもしろい。

デジタルメーターの表示はデフォルトの円盤型を含めて4種類あるが、どれを選んでもタコメーターのアピール度が高い。いまどきタコそんな見ますか? という気もするが、見てもらいたいというなら、パドルシフトを用意してもいいのではと思う。

パワーユニットは最高出力98PS、最大トルク140N・mの1リッター直3ターボエンジン。軽量なボディーも相まって加速は軽快だ。
パワーユニットは最高出力98PS、最大トルク140N・mの1リッター直3ターボエンジン。軽量なボディーも相まって加速は軽快だ。
ドアハンドルやエアコンの吹き出し口などを角張ったデザインにすることで“ギア感”を演出している。
ドアハンドルやエアコンの吹き出し口などを角張ったデザインにすることで“ギア感”を演出している。
「Z」には本革巻きのステアリングホイールが標準装備。右スポーク上の「PWR」ボタンを押すとエンジン回転数が高く保たれるようになる。
「Z」には本革巻きのステアリングホイールが標準装備。右スポーク上の「PWR」ボタンを押すとエンジン回転数が高く保たれるようになる。
トランスミッションはベルト式のCVTとギア駆動を組み合わせた「D-CVT」。シフトセレクターはセンターコンソールよりも一段高いところにレイアウトされる。
トランスミッションはベルト式のCVTとギア駆動を組み合わせた「D-CVT」。シフトセレクターはセンターコンソールよりも一段高いところにレイアウトされる。

ワインディングロードでも楽しめる

全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロールは「Z」のみに設定されている。
全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロールは「Z」のみに設定されている。
メーターパネルはフル液晶タイプ。表示パターンはさまざまに変更できるが、右側の速度計と燃料系の部分は固定表示となっている。
メーターパネルはフル液晶タイプ。表示パターンはさまざまに変更できるが、右側の速度計と燃料系の部分は固定表示となっている。
メーターパネルにアナログ時計を表示したところ。上の写真ではデジタル時計だった部分が日付表示に変わっているところが親切だ。
メーターパネルにアナログ時計を表示したところ。上の写真ではデジタル時計だった部分が日付表示に変わっているところが親切だ。
ロッキー/ライズは、タントで初採用された、DNGAに基づく新世代プラットフォームの小型車用で構築されている。前述したとおり、荒れ気味の舗装路や高速道路の継ぎ目などでときにタイヤのドタバタ感を伝えるなど、乗り心地はもうひとつだ。

だが、雨上がりのワインディングロードを走ってみると、そんなネガは帳消しになった。そういうところでSUVに乗って珍しく楽しいと思った。ノーズは軽いし、バカヂカラはないものの、パワートレインはレスポンシブで意のまま感にあふれる。なんといってもライザップに行ったような軽量がきいているのだ。完全無欠ではないけれど、走ると楽しいキャラクターはどこかコンパクトフィアットっぽいなあと思った。よく見ると、リアドアとリアクオーターパネルのチリ(パネルギャップ)が合っていない、なんてところも含めて。

約270kmを走って、燃費は13.2km/リッター(満タン法)だった。このスペックだともう少し伸びてもよさそうだが、658cc 3気筒ターボのタントカスタムRSも13km/リッター台だった。

全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロールは「Z」のみに設定されている。
全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロールは「Z」のみに設定されている。
メーターパネルはフル液晶タイプ。表示パターンはさまざまに変更できるが、右側の速度計と燃料系の部分は固定表示となっている。
メーターパネルはフル液晶タイプ。表示パターンはさまざまに変更できるが、右側の速度計と燃料系の部分は固定表示となっている。
メーターパネルにアナログ時計を表示したところ。上の写真ではデジタル時計だった部分が日付表示に変わっているところが親切だ。
メーターパネルにアナログ時計を表示したところ。上の写真ではデジタル時計だった部分が日付表示に変わっているところが親切だ。

これは好感度カー・オブ・ザ・イヤーだ!

テスト車のボディーカラーは「ダイハツ・ロッキー」には設定のない(=「ライズ」専用色)「ターコイズブルーマイカメタリック」と、「ブラックマイカメタリック」ルーフのツートン。
テスト車のボディーカラーは「ダイハツ・ロッキー」には設定のない(=「ライズ」専用色)「ターコイズブルーマイカメタリック」と、「ブラックマイカメタリック」ルーフのツートン。
「Z」には赤のパイピング入りのシート表皮が標準装備となる。
「Z」には赤のパイピング入りのシート表皮が標準装備となる。
リアシートの足元空間はご覧のとおりの広さ。背もたれには2段階の角度調整機構が備わる。
リアシートの足元空間はご覧のとおりの広さ。背もたれには2段階の角度調整機構が備わる。
荷室の容量は369リッター。床下には80リッター(FF車の場合。4WD車は38リッター)の収納スペースが備わっている。
荷室の容量は369リッター。床下には80リッター(FF車の場合。4WD車は38リッター)の収納スペースが備わっている。
考えてみると、全長4mの1リッターSUVというコンセプトが新しい。ただのハッチバックよりカロリーが高そうなSUVでも、軽いからキビキビ走るし、コンパクトな外寸は狭い町なかでの取り回しで実感する。

そのくせ室内、とくにリアシートはギャッと驚くほど広い。1リッターだが4.2mある「アウディQ2」なんかハダシで逃げ出す。フルサイズのファミリーセダンとして使えるクルマだ。この全長の、しかもノーズの長い2ボックスボディーでこれだけ広い後席がつくれたのは、やはり基礎から新しいプラットフォームのおかげかもしれない。

後席を畳んでフル荷室にすると、大きなMTBも意外と積みやすかった。テールゲートの開口部や荷室側壁に出っ張りが少ないため、車体を寝かせたまま出し入れするときも苦労しない。正味で広く使えるのだ。

FF車には全部で4グレードあるが、唯一17インチタイヤを履く「Z」以外は200万円をきるという価格設定も魅力だ。上にも下にもSUVが広がるなか、これからリッターSUVがくる予感を覚えたし、個人的には“2019乗ったら好感度高かったカー・オブ・ザ・イヤー”だった。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

テスト車のボディーカラーは「ダイハツ・ロッキー」には設定のない(=「ライズ」専用色)「ターコイズブルーマイカメタリック」と、「ブラックマイカメタリック」ルーフのツートン。
テスト車のボディーカラーは「ダイハツ・ロッキー」には設定のない(=「ライズ」専用色)「ターコイズブルーマイカメタリック」と、「ブラックマイカメタリック」ルーフのツートン。
「Z」には赤のパイピング入りのシート表皮が標準装備となる。
「Z」には赤のパイピング入りのシート表皮が標準装備となる。
リアシートの足元空間はご覧のとおりの広さ。背もたれには2段階の角度調整機構が備わる。
リアシートの足元空間はご覧のとおりの広さ。背もたれには2段階の角度調整機構が備わる。
荷室の容量は369リッター。床下には80リッター(FF車の場合。4WD車は38リッター)の収納スペースが備わっている。
荷室の容量は369リッター。床下には80リッター(FF車の場合。4WD車は38リッター)の収納スペースが備わっている。

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