【試乗記】ホンダ・フィットe:HEVベーシック(FF)

ホンダ・フィットe:HEVベーシック(FF)
ホンダ・フィットe:HEVベーシック(FF)

“機能”を追わない勇気

いよいよデビューした新型「ホンダ・フィット」。従来のホンダ車とはひと味違う価値観のもとに開発されたという4代目は、どんなクルマに仕上がっているのだろうか。ハイブリッドの最廉価グレードを連れ出して確かめた。

市場を問わない共通ニーズ

今回のテスト車は「フィット ベーシック」のハイブリッド車。全5種類ある仕様の中でも親しみを感じさせるシンプルなデザインが特徴となる。
今回のテスト車は「フィット ベーシック」のハイブリッド車。全5種類ある仕様の中でも親しみを感じさせるシンプルなデザインが特徴となる。
プラットフォームを継承しているだけあって、全長×全幅×全高=3995×1695×1515mmのボディーサイズは先代モデルと事実上同じ。2530mmのホイールベースも同寸。
プラットフォームを継承しているだけあって、全長×全幅×全高=3995×1695×1515mmのボディーサイズは先代モデルと事実上同じ。2530mmのホイールベースも同寸。
柴犬をイメージしたというフロントマスクにはグリルレスデザインを採用。シンプルながらLEDのデイタイムライトには“目力”がある。
柴犬をイメージしたというフロントマスクにはグリルレスデザインを採用。シンプルながらLEDのデイタイムライトには“目力”がある。
パワートレインは「e:HEV」と名付けられたハイブリッド。発電用と走行用の計2基のモーターと、1.5リッター直4エンジンとで構成されている。
パワートレインは「e:HEV」と名付けられたハイブリッド。発電用と走行用の計2基のモーターと、1.5リッター直4エンジンとで構成されている。
フィットは通算4世代目となる新型で初めて、プラットフォームの新開発をしなかったという。そして“心地よい”という開発キーワードが、スミズミにまで行き届いたクルマである。場合によっては“やりすぎ?”の技術開発もいとわないイケイケの技術者が多く、負けず嫌いで“世界一”が大好きで、モータースポーツでの自分たちの輝く歴史に誇りを持つホンダとしては異例のユルさ(?)だが、それこそが新型フィット最大の特徴だ。

「低燃費、広い室内、バリューフォーマネーなどの“機能的価値“が歴代フィット最大の価値でした。しかし、それらは今や当たり前で、積極的に選ばれる“付加価値”になりません。じゃあ、新しい付加価値とは……を考えて、われわれ本田技術研究所内の“ヒト研”というグループが開発した“画像を用いた潜在的ニーズ調査”を実施しました。そこから導き出した、日本やタイ、インドなどの先進国、新興国を問わない共通のニーズが“心地よさ”だったんです。

当初はプラットフォームを新開発するつもりでしたが、そうやって、さらに軽量化したり室内を広くしたりするのは、それこそ従来の機能的価値を伸ばすことでしかない。そこで、今回は既存のプラットフォームのポテンシャルを突き詰めて、熟成してみることにしました。

開発中は“資源の再配分”という表現をよく使いました。これまでなら機能的価値の進化のために使っていた資源を、今回は心地よさのために投入することにしたのです。現場にも“カタログ燃費は上げない”とか“広くしない”とあえて言明して、かわりに心地よさを徹底的に追求しました。プラットフォームこそ新開発せずとも、そのぶん、心地よさを実現する部分は遠慮なく新設計したり、新しい部品を惜しみなく入れたりしました」

……とは、新型フィット開発責任者の言葉だ。こう聞くと、新型フィットがなぜこういうクルマになったかが少し理解できる。

今回のテスト車は「フィット ベーシック」のハイブリッド車。全5種類ある仕様の中でも親しみを感じさせるシンプルなデザインが特徴となる。
今回のテスト車は「フィット ベーシック」のハイブリッド車。全5種類ある仕様の中でも親しみを感じさせるシンプルなデザインが特徴となる。
プラットフォームを継承しているだけあって、全長×全幅×全高=3995×1695×1515mmのボディーサイズは先代モデルと事実上同じ。2530mmのホイールベースも同寸。
プラットフォームを継承しているだけあって、全長×全幅×全高=3995×1695×1515mmのボディーサイズは先代モデルと事実上同じ。2530mmのホイールベースも同寸。
柴犬をイメージしたというフロントマスクにはグリルレスデザインを採用。シンプルながらLEDのデイタイムライトには“目力”がある。
柴犬をイメージしたというフロントマスクにはグリルレスデザインを採用。シンプルながらLEDのデイタイムライトには“目力”がある。
パワートレインは「e:HEV」と名付けられたハイブリッド。発電用と走行用の計2基のモーターと、1.5リッター直4エンジンとで構成されている。
パワートレインは「e:HEV」と名付けられたハイブリッド。発電用と走行用の計2基のモーターと、1.5リッター直4エンジンとで構成されている。

従来のホンダ車とはひと味ちがう

ホワイトを多用したキャビンは明るく開放感にあふれている。最廉価グレードとなる「ベーシック」でもドアアームレストまわりにはファブリックがあしらわれている。
ホワイトを多用したキャビンは明るく開放感にあふれている。最廉価グレードとなる「ベーシック」でもドアアームレストまわりにはファブリックがあしらわれている。
ステアリングホイールは懐かしさ漂う2本スポークタイプ。「ベーシック」ではウレタン巻きを装備する。
ステアリングホイールは懐かしさ漂う2本スポークタイプ。「ベーシック」ではウレタン巻きを装備する。
アダプティブクルーズコントロール(ACC)や車線維持支援システムなどで構成される「ホンダセンシング」は全車に標準装備。ACCはステアリングスイッチを介して操作する。
アダプティブクルーズコントロール(ACC)や車線維持支援システムなどで構成される「ホンダセンシング」は全車に標準装備。ACCはステアリングスイッチを介して操作する。
メーターパネルは7インチの液晶タイプ。表面部分に反射しづらい素材を採用することでバイザーを廃しているのが特徴だ。
メーターパネルは7インチの液晶タイプ。表面部分に反射しづらい素材を採用することでバイザーを廃しているのが特徴だ。
今回の試乗車はハイブリッドの「ベーシック」だった。新型フィットでは各グレードにも“心地よいクルマ選び”のためか、ユルめの呼称が冠される。そして各グレードの装備内容についても、開発陣は「いわば洋服のコーディネートのようなもの。優劣はない」と語る。

ただ、ベーシックが新型フィットで最安価な入門グレードであることも事実。そんなベーシックでも、カラーTFT液晶メーターやオートエアコン、LEDヘッドライト、先進安全運転支援システムの「ホンダセンシング」など標準装備が充実している(ただ、ベーシックにのみホンダセンシングレス仕様も用意)のも新型フィットの売りだ。グレードによってレザーやクッションがあしらわれるセンターコンソールやダッシュパネルも、ベーシックではすべて樹脂成型品になる。ただ、ドアアームレストとその周辺部の体が触れる部分だけはファブリックをあしらうなど、心地よさへの工夫は細やかだ。

新型フィットの運転席に座ると、今どきめずらしい2本スポークのステアリングホイールがイヤでも目につく。これは近日登場予定の電気自動車「ホンダe」との共通部品で、これだけで開放感が増す“心地よい”調度品である。「ステアリング自体の強度や剛性に問題ない?」と思ったら、今どきのステアリングの大半は、見た目は3スポークでも中央の1本は剛性を担わない“飾り”なのだそうだ。へぇー。

従来品を改良したプラットフォームでホイールベースも先代と変わりないが、シートは前後とも新設計で、分厚くて“心地よい”ものになった。そのぶん、ヘッドルームがわずかに削られて、後席可倒時の荷室がフラットになりきらない……など、機能価値的に後退した面も少しあるが、それでよしとするのが新型フィットである。ほかにも空調吹き出し口やドアインナーハンドルがメッキではなく、アイボリー風の樹脂部品なのも、従来のホンダとは少しちがうセンスだ。

ホワイトを多用したキャビンは明るく開放感にあふれている。最廉価グレードとなる「ベーシック」でもドアアームレストまわりにはファブリックがあしらわれている。
ホワイトを多用したキャビンは明るく開放感にあふれている。最廉価グレードとなる「ベーシック」でもドアアームレストまわりにはファブリックがあしらわれている。
ステアリングホイールは懐かしさ漂う2本スポークタイプ。「ベーシック」ではウレタン巻きを装備する。
ステアリングホイールは懐かしさ漂う2本スポークタイプ。「ベーシック」ではウレタン巻きを装備する。
アダプティブクルーズコントロール(ACC)や車線維持支援システムなどで構成される「ホンダセンシング」は全車に標準装備。ACCはステアリングスイッチを介して操作する。
アダプティブクルーズコントロール(ACC)や車線維持支援システムなどで構成される「ホンダセンシング」は全車に標準装備。ACCはステアリングスイッチを介して操作する。
メーターパネルは7インチの液晶タイプ。表面部分に反射しづらい素材を採用することでバイザーを廃しているのが特徴だ。
メーターパネルは7インチの液晶タイプ。表面部分に反射しづらい素材を採用することでバイザーを廃しているのが特徴だ。

55mmにこだわったAピラー

「e:HEV」はほとんどの走行領域でモータードライブとなるシリーズハイブリッドであることが特徴。エンジンの動力が直接駆動系に伝わるのは高速巡行時などに限られている。
「e:HEV」はほとんどの走行領域でモータードライブとなるシリーズハイブリッドであることが特徴。エンジンの動力が直接駆動系に伝わるのは高速巡行時などに限られている。
前方視界のよさを可能にしたのは2本に分割されたフロントピラーだ。前方の細いほうはフロントウィンドウと三角窓との継ぎ目の役割を持たされている。
前方視界のよさを可能にしたのは2本に分割されたフロントピラーだ。前方の細いほうはフロントウィンドウと三角窓との継ぎ目の役割を持たされている。
グローブボックスとは別に、助手席前方にインパネアッパーボックスが設けられている。
グローブボックスとは別に、助手席前方にインパネアッパーボックスが設けられている。
センターコンソールには滑り止め加工が施された大型トレーが備わる。
センターコンソールには滑り止め加工が施された大型トレーが備わる。
新型フィットの運転席に座ると、なるほど居心地は悪くない。フランス車的に体を包み込むシートは、硬めのクッションでガッチリ支える系だった従来のホンダ車のそれとはちょっと趣が異なる。

そして、驚くほど開けた視界は、かつてFF車としては異例に低いボンネットとダッシュボードを売りとしていた1980~90年代のホンダを肌で知る中高年にとって、心地よいと同時に懐かしくもある。新型フィットのダッシュボードは特別に低いわけではないのだが、不要な凹凸を排した視界優先の造形に気づく。

さらに、最前列のAピラーはフロントウィンドウと三角窓との“継ぎ目”の機能を果たすだけ(車体剛性は分担しない)で、その太さは55mmという。これは「左右の瞳孔間隔より細いものは死角にならない」という理屈から導き出された寸法だ。小柄な日本人女性の瞳孔間隔がおよそ57mmだそうで、それより細い新型フィットのAピラーは、ほぼどんな日本人ドライバーにも邪魔にならないのだそうだ。

実際、その視界はまさしくパノラマビュー。Aピラーはもちろん目には入っているのだが、その存在はまるで気にならない。筆者の日本人としては大きめの瞳孔間隔(=顔がデカい)を差し引くにしても、この瞳孔間隔のハナシは今回2つ目のへぇーである。

今回の試乗車にも搭載されるハイブリッドの「e:HEV」は“基本シリーズハイブリッド、ときどきエンジン直結”で走るホンダ独自の2モーター型だ。以前は「i-MMD」の名で「アコード」「オデッセイ」「ステップワゴン」「インサイト」などに搭載されていたタイプの最新・最小版である。これで、先代フィットで初登場したツインクラッチ+1モータータイプの「i-DCD」はフェードアウト路線に入ったことになる。

「e:HEV」はほとんどの走行領域でモータードライブとなるシリーズハイブリッドであることが特徴。エンジンの動力が直接駆動系に伝わるのは高速巡行時などに限られている。
「e:HEV」はほとんどの走行領域でモータードライブとなるシリーズハイブリッドであることが特徴。エンジンの動力が直接駆動系に伝わるのは高速巡行時などに限られている。
前方視界のよさを可能にしたのは2本に分割されたフロントピラーだ。前方の細いほうはフロントウィンドウと三角窓との継ぎ目の役割を持たされている。
前方視界のよさを可能にしたのは2本に分割されたフロントピラーだ。前方の細いほうはフロントウィンドウと三角窓との継ぎ目の役割を持たされている。
グローブボックスとは別に、助手席前方にインパネアッパーボックスが設けられている。
グローブボックスとは別に、助手席前方にインパネアッパーボックスが設けられている。
センターコンソールには滑り止め加工が施された大型トレーが備わる。
センターコンソールには滑り止め加工が施された大型トレーが備わる。

燃費よりも心地よさ

シートは座りやすさと運転しやすさ、疲れにくさを念頭にフレームから新設計。表皮は柔らかく、包み込まれるような座り心地だ。
シートは座りやすさと運転しやすさ、疲れにくさを念頭にフレームから新設計。表皮は柔らかく、包み込まれるような座り心地だ。
リアシートもまたフレームから新設計したという。座面のウレタンが先代モデルよりも厚くなっている。
リアシートもまたフレームから新設計したという。座面のウレタンが先代モデルよりも厚くなっている。
座面の厚みが増した分、先代モデルよりも後席のヘッドルームが狭くなっているというが、身長178cmの筆者が乗り込んでもまだ余裕がある。
座面の厚みが増した分、先代モデルよりも後席のヘッドルームが狭くなっているというが、身長178cmの筆者が乗り込んでもまだ余裕がある。
センタータンクレイアウトならではの後席跳ね上げ機構は、先代モデルから受け継いだ美点のひとつだ。
センタータンクレイアウトならではの後席跳ね上げ機構は、先代モデルから受け継いだ美点のひとつだ。
ホンダなのにMTのスポーツモデルがない……という点を好事家にツッコまれるなどしている新型フィットだが、そこには厳しいCO2排出規制が課せられる欧州向けが、すべてe:HEVになるということも無関係ではないだろう。新型フィットにMTを用意するなら事実上の日本専用車に近くなるわけで、その収益性のハードルは一気に上がるのだ。

フィットのハイブリッドが欧州で販売されるのも今回が初。高速性能にうるさく、CVT的なパワートレインの所作(いわゆるラバーバンドフィール)をとことん嫌う欧州市場をおおいに意識して、新型フィットのe:HEVはパワフルかつリニアである。

新型フィットの(i-MMDあらため)e:HEVは、フルパワー時も最高速時も、エンジンは発電に徹して、モーターのみで駆動するシリーズハイブリッド状態が基本だ。だから、加速時は発電機(=エンジン)を一定回転数に張りつけるのが本来効率的なのだが、絶対的な燃費より心地よさを重視した新型フィットはちがう。まるで多段変速機のようにエンジン回転をリズミカルに上下させる。

その純粋なパワーフィールが圧倒的にリニアでパンチがあるのは電動だから当然として、アクセル操作に対して素直にエンジンが反応するe:HEVは心理的・体感的なリニア感の高さが大きな武器といえる。さらに、そうやって回したときのサウンドもエコーが効いていて、けっこうエンスーなホンダミュージック風に調律されている。そのぶん、燃費が物足りないのは(「トヨタ・ヤリス」と比較すると、なおのこと)否めないが、しつこいようだが、新型フィットの最優先は心地よさなのだ。

シートは座りやすさと運転しやすさ、疲れにくさを念頭にフレームから新設計。表皮は柔らかく、包み込まれるような座り心地だ。
シートは座りやすさと運転しやすさ、疲れにくさを念頭にフレームから新設計。表皮は柔らかく、包み込まれるような座り心地だ。
リアシートもまたフレームから新設計したという。座面のウレタンが先代モデルよりも厚くなっている。
リアシートもまたフレームから新設計したという。座面のウレタンが先代モデルよりも厚くなっている。
座面の厚みが増した分、先代モデルよりも後席のヘッドルームが狭くなっているというが、身長178cmの筆者が乗り込んでもまだ余裕がある。
座面の厚みが増した分、先代モデルよりも後席のヘッドルームが狭くなっているというが、身長178cmの筆者が乗り込んでもまだ余裕がある。
センタータンクレイアウトならではの後席跳ね上げ機構は、先代モデルから受け継いだ美点のひとつだ。
センタータンクレイアウトならではの後席跳ね上げ機構は、先代モデルから受け継いだ美点のひとつだ。

運転上手のACC

テスト車のボディーカラーは「エアーライトブルーメタリック」。他グレードとは異なり、ツートンカラーが選べないのは最廉価グレードゆえか。
テスト車のボディーカラーは「エアーライトブルーメタリック」。他グレードとは異なり、ツートンカラーが選べないのは最廉価グレードゆえか。
静粛性へのこだわりも新型「フィット」の特徴のひとつ。写真のリアドア下部にはシールストリップが二重に施されている。
静粛性へのこだわりも新型「フィット」の特徴のひとつ。写真のリアドア下部にはシールストリップが二重に施されている。
開口部が低く広々としたラゲッジスペースは先代譲り。後席の座面の厚みが増したため、背もたれを倒したときの床面が完全にフラットにはならなくなっている。
開口部が低く広々としたラゲッジスペースは先代譲り。後席の座面の厚みが増したため、背もたれを倒したときの床面が完全にフラットにはならなくなっている。
「ベーシック」では15インチのタイヤ&ホイールが標準装備。スチールホイールには10スポークデザインのキャップが備わる。
「ベーシック」では15インチのタイヤ&ホイールが標準装備。スチールホイールには10スポークデザインのキャップが備わる。
いわゆるシフトレバーが純エンジン車とe:HEVとで共通になったのも新型フィットの特徴だ。マニュアルモード的なものは用意されないが、Bレンジは“隠れスポーツモード”としてもけっこう使えるのは覚えておきたい。

Bレンジは下り坂などでエンジンブレーキを強めるのが本来の目的である。ただ、そのためにエンジンが高回転気味に維持されるので加速側の反応も良くなり、結果的に加減速でメリハリが出る。そして、右足とエンジン回転のリンク感もさらに上がるのだ。

心地よさを目指したシャシーのキモは、開発陣によると「荷重移動と接地感」という。先代ではどちらかというと剛性感や姿勢変化の小ささに軸足を置いていた印象のフィット(というか、ホンダ)だが、新型の操縦性や乗り心地の方向性は明らかにちがう。上屋を前後左右にほどよくゆったりと動かして、うまくタイヤに荷重をのせられる所作が心地よい。こういう荷重移動を積極的に使えるシャシーには、Bレンジのメリハリがとくに効果を発揮する。

別の機会に16インチタイヤの新型フィットにも乗ることができたが、山坂道での走りも含めて、今回の15インチのほうがマッチングがよく好印象なのは、こういう新しいシャシー思想によるところが大きい。また、新型フィットはe:HEVの16インチ車のみ、大舵角時ほどステアリングがクイックになるバリアブルレシオとなるので、e:HEVではその乗り味の差がさらに開く。個人的にはバリアブルレシオがないほうが、反応が素直で明らかに心地よいと思う。

新型フィットは電動パーキングブレーキが全車標準装備で、アダプティブクルーズコントロール(ACC)が全車速対応かつ渋滞追従可能なのが大きな売りだが、これはお世辞ぬきでこのクラスではぜいたくな装備である。

今回はそんなACCでも心地よさを求めたそうで、開発陣によると「渋滞に追いついて完全停止する直前の“ぬきブレーキ”には自信あり」という。で、実際にも、そのACCはなかなかに運転がうまい。ちなみに、その新型フィットのACC開発当時、加減速やブレーキ制御が世界一うまい……と開発陣が参考にしたのはBMWの「5シリーズ」だそうである。今回3つ目のへぇーである。

(文=佐野弘宗/写真=峰 昌弘/編集=藤沢 勝)

テスト車のボディーカラーは「エアーライトブルーメタリック」。他グレードとは異なり、ツートンカラーが選べないのは最廉価グレードゆえか。
テスト車のボディーカラーは「エアーライトブルーメタリック」。他グレードとは異なり、ツートンカラーが選べないのは最廉価グレードゆえか。
静粛性へのこだわりも新型「フィット」の特徴のひとつ。写真のリアドア下部にはシールストリップが二重に施されている。
静粛性へのこだわりも新型「フィット」の特徴のひとつ。写真のリアドア下部にはシールストリップが二重に施されている。
開口部が低く広々としたラゲッジスペースは先代譲り。後席の座面の厚みが増したため、背もたれを倒したときの床面が完全にフラットにはならなくなっている。
開口部が低く広々としたラゲッジスペースは先代譲り。後席の座面の厚みが増したため、背もたれを倒したときの床面が完全にフラットにはならなくなっている。
「ベーシック」では15インチのタイヤ&ホイールが標準装備。スチールホイールには10スポークデザインのキャップが備わる。
「ベーシック」では15インチのタイヤ&ホイールが標準装備。スチールホイールには10スポークデザインのキャップが備わる。

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