【試乗記】メルセデス・ベンツB200d(FF/8AT)

メルセデス・ベンツB200d(FF/8AT)
メルセデス・ベンツB200d(FF/8AT)

本命あらわる

メルセデスのルーミーなコンパクトモデル「Bクラス」に、クリーンディーゼル搭載モデルが登場。とことん家庭的なクルマかと思いきや、そのスポーティーな走りとデザインは、筆者の予想を大きく上回っていた。

奥さんもニッコリ

日本では2019年6月にデビューした新型「メルセデス・ベンツBクラス」。ガソリン車「B180」は同年7月、ディーゼル車「B200d」は同年10月にデリバリーが開始された。
日本では2019年6月にデビューした新型「メルセデス・ベンツBクラス」。ガソリン車「B180」は同年7月、ディーゼル車「B200d」は同年10月にデリバリーが開始された。
1400rpmという低回転域から320N・mの最大トルクを発生する2リッターのディーゼルエンジン。軽量化のためアルミ製のシリンダーブロックが採用されている。
1400rpmという低回転域から320N・mの最大トルクを発生する2リッターのディーゼルエンジン。軽量化のためアルミ製のシリンダーブロックが採用されている。
燃料(軽油)の容量は43リッター。給油口の隣には、排ガスを浄化するためのAdBlue(アドブルー)の注入口も。
燃料(軽油)の容量は43リッター。給油口の隣には、排ガスを浄化するためのAdBlue(アドブルー)の注入口も。
知り合いが国産ワゴンから欧州メーカーのハッチバックに買い替えた。しかもディーゼル車だ。特にクルマ好きというわけでもないから、「ずいぶんツウなクルマを選んだな」と思ったが、聞けば購入の決め手は、奥さんが「ディーゼルがいい」と言ったからだという。奥さん同士の会話の中で「ディーゼルって、燃費がいいんですって」という話が出たそうだ。

たしかにいま日本は、「遅れてきたディーゼルブーム」という感がなきにしもあらず、だ。国産メーカーではマツダが積極的にディーゼルモデルを投入しているし、輸入車でもよく売れていると聞く。クルマの世界がおしなべて“電動化”に向かっているのは確かだとしても、充電施設などインフラを考えれば、世のクルマが一足飛びにEVやプラグインハイブリッド車ばかりになるとは考えられない。将来へのブリッジとして、いまディーゼルが注目されているのだ。

2019年の夏に日本で発売された新型メルセデス・ベンツBクラスに、その秋、ディーゼルの「B200d」が追加された。ご存じのとおり、Bクラスはコンパクトハッチバックの「Aクラス」をベースに、背を高くしてユーティリティー性を向上させたコンパクトカーだ。ファミリーカーのニーズが高いこのクラスだけに、まさにディーゼルモデルの登場を待ち望んでいたクルマ好き、そして奥さんは多いのではないか。

日本では2019年6月にデビューした新型「メルセデス・ベンツBクラス」。ガソリン車「B180」は同年7月、ディーゼル車「B200d」は同年10月にデリバリーが開始された。
日本では2019年6月にデビューした新型「メルセデス・ベンツBクラス」。ガソリン車「B180」は同年7月、ディーゼル車「B200d」は同年10月にデリバリーが開始された。
1400rpmという低回転域から320N・mの最大トルクを発生する2リッターのディーゼルエンジン。軽量化のためアルミ製のシリンダーブロックが採用されている。
1400rpmという低回転域から320N・mの最大トルクを発生する2リッターのディーゼルエンジン。軽量化のためアルミ製のシリンダーブロックが採用されている。
燃料(軽油)の容量は43リッター。給油口の隣には、排ガスを浄化するためのAdBlue(アドブルー)の注入口も。
燃料(軽油)の容量は43リッター。給油口の隣には、排ガスを浄化するためのAdBlue(アドブルー)の注入口も。

ファミリーカーっぽくはない

やや背が高めの「Bクラス」。オプションの「AMGライン」を選ぶと全高が標準車の1565mmから15mm下がり、多くの機械式駐車場が上限としている1550mmをクリアできるようになる。
やや背が高めの「Bクラス」。オプションの「AMGライン」を選ぶと全高が標準車の1565mmから15mm下がり、多くの機械式駐車場が上限としている1550mmをクリアできるようになる。
オプション「AMGライン」を選択した試乗車のフロントまわり。専用のスポイラーが装着されている。
オプション「AMGライン」を選択した試乗車のフロントまわり。専用のスポイラーが装着されている。
カーボン調のパネルやシルバーの加飾が目を引くインテリア。ハンドル位置は右のみとなる。
カーボン調のパネルやシルバーの加飾が目を引くインテリア。ハンドル位置は右のみとなる。
インフォテインメントシステムは、AI技術を生かした音声操作が可能。
インフォテインメントシステムは、AI技術を生かした音声操作が可能。
3代目となった新型Bクラスは、従来よりかなりスポーティーな印象になった。ミニ・ミニバンと呼びたくなるシルエットではあるものの、ボディーサイズで見れば全長×全幅×全高=4430mm×1795mm×1550mmと、130mm背が高いこと以外はAクラスとほぼ同じだ。デザイン的にも、顔つきはAクラスと同意匠の、離れた目と目がにらみを利かせる“サメ顔”で、いかにも“ファミリー向け”という印象だった先代と比べるとずいぶんアグレッシブだ。

Aクラスより90mm着座位置の高いシートはとても乗り込みやすい。室内空間は高さがあり開放的だ。これはBクラス最大の美点といえるだろう。

いっぽうルーミーな室内がいかにもファミリーカー的か? というと実はそうではない。エアコンの吹き出し口には「CLS」などと同じジェットタービン風デザインが採用されていたり、セットオプション「AMGライン」をチョイスした試乗車ではカーボン風の加飾パネルが多用されていたりと、上級モデルのセダンやクーペと比べても遜色ないプレミアムなインテリアに仕立てられている。

2枚の10.25インチ液晶画面が連なるワイドスクリーン、ボイスコマンドで操作するMBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)など、最新のインフォテインメントシステムが搭載されているのはAクラスと同様だ。

やや背が高めの「Bクラス」。オプションの「AMGライン」を選ぶと全高が標準車の1565mmから15mm下がり、多くの機械式駐車場が上限としている1550mmをクリアできるようになる。
やや背が高めの「Bクラス」。オプションの「AMGライン」を選ぶと全高が標準車の1565mmから15mm下がり、多くの機械式駐車場が上限としている1550mmをクリアできるようになる。
オプション「AMGライン」を選択した試乗車のフロントまわり。専用のスポイラーが装着されている。
オプション「AMGライン」を選択した試乗車のフロントまわり。専用のスポイラーが装着されている。
カーボン調のパネルやシルバーの加飾が目を引くインテリア。ハンドル位置は右のみとなる。
カーボン調のパネルやシルバーの加飾が目を引くインテリア。ハンドル位置は右のみとなる。
インフォテインメントシステムは、AI技術を生かした音声操作が可能。
インフォテインメントシステムは、AI技術を生かした音声操作が可能。

予想外の身のこなし

全幅が1800mmに迫るものの、メルセデスの中ではコンパクトな「Bクラス」。最小回転半径は5.0mと公表される。
全幅が1800mmに迫るものの、メルセデスの中ではコンパクトな「Bクラス」。最小回転半径は5.0mと公表される。
「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」装着車のシートは2トーンカラーの本革仕立て。64色のアンビエントライトと相まって上質な室内を演出する。
「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」装着車のシートは2トーンカラーの本革仕立て。64色のアンビエントライトと相まって上質な室内を演出する。
液晶タイプのメーターパネルは、左右および中央の表示内容を個別に変更できる。
液晶タイプのメーターパネルは、左右および中央の表示内容を個別に変更できる。
「B200d」のホイールサイズは17インチ。試乗車はオプションの「18インチAMG 5ツインスポークアルミホイール」(写真)を装着していた。
「B200d」のホイールサイズは17インチ。試乗車はオプションの「18インチAMG 5ツインスポークアルミホイール」(写真)を装着していた。
スターターボタンを押し、エンジンを始動させる。ディーゼルエンジン特有のノイズは、車外に出て聞いてみるとそれなりにガラガラといっているのだが、室内に乗り込んでしまうとほとんど気にならない。遮音がしっかり効いているのだ。

軽くアクセルを踏み込むと、ぐぐっと車体を押し出す、力強いトルクに驚かされる。んー、速い……。2リッター4気筒ディーゼルターボエンジンは最高出力150PSと、1.3リッターガソリンターボの「B180」(同136PS)より多少パワーがある程度だが、いっぽう最大トルクは320N・mと1.5倍以上(B180は200N・m)ある。体形は少々太めだが、走りは俊敏な“動けるデブ”……いやいや、がっちりボディーで鋭いタックルを決めるラガーマン、と言うべきか。

トランスミッションはガソリンモデルより1段多い、デュアルクラッチの8段ATが組み合わされる。ごく低速でアクセルオン/オフすると、少しガクガクすることもあるが、走りだして速度がのれば気にならなくなる。試乗車はAMGライン装着車ゆえ、スタンダードモデルより1インチ大きい18インチホイールを履いていた。足まわりのセッティングは硬めだが、乗り心地はしなやかといっていいレベルで、悪くない。ハンドリングはスポーティーな味付けで、コーナリングの安定感も高く、背の高いクルマを操っているという感じはしない。

全幅が1800mmに迫るものの、メルセデスの中ではコンパクトな「Bクラス」。最小回転半径は5.0mと公表される。
全幅が1800mmに迫るものの、メルセデスの中ではコンパクトな「Bクラス」。最小回転半径は5.0mと公表される。
「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」装着車のシートは2トーンカラーの本革仕立て。64色のアンビエントライトと相まって上質な室内を演出する。
「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」装着車のシートは2トーンカラーの本革仕立て。64色のアンビエントライトと相まって上質な室内を演出する。
液晶タイプのメーターパネルは、左右および中央の表示内容を個別に変更できる。
液晶タイプのメーターパネルは、左右および中央の表示内容を個別に変更できる。
「B200d」のホイールサイズは17インチ。試乗車はオプションの「18インチAMG 5ツインスポークアルミホイール」(写真)を装着していた。
「B200d」のホイールサイズは17インチ。試乗車はオプションの「18インチAMG 5ツインスポークアルミホイール」(写真)を装着していた。

プライスだけが悩ましい

今回は高速道路を中心に約140kmを走行。燃費は満タン法で11.6km/リッター、車載の燃費計で13.2km/リッターを記録した。
今回は高速道路を中心に約140kmを走行。燃費は満タン法で11.6km/リッター、車載の燃費計で13.2km/リッターを記録した。
前席同様、後席(写真)も2トーンカラー。中央席の背もたれは、左右席のアームレスト(カップホルダー付き)を兼ねる。
前席同様、後席(写真)も2トーンカラー。中央席の背もたれは、左右席のアームレスト(カップホルダー付き)を兼ねる。
後席用のエアコン吹き出し口もタービン型。その下方には小物入れやUSBソケットが配される。
後席用のエアコン吹き出し口もタービン型。その下方には小物入れやUSBソケットが配される。
3分割の後席を倒した状態のラゲッジスペース。積載容量は最大で1540リッターとなっている。
3分割の後席を倒した状態のラゲッジスペース。積載容量は最大で1540リッターとなっている。
以前、1.3リッターガソリンターボのB180に試乗したときは、なかなかよく走るな、と思ったものの、高速道路での加速や山道などでは“線の細さ”を感じる場面もあった。Aクラスより80kgほど重い車重の影響かと感じたのだが、このB200dではB180よりさらに110kg重い1550kg(オプション非装着車)の車重を補って余りあるパワーとトルクの恩恵で、痛痒(つうよう)を感じることはまったくなかった。

一般道を走行しているかぎり、エンジン回転が2000rpmを超える場面はほぼない。これは燃費にも効くはずで、カタログ値によればWLTCモードで18.4km/リッターと、B180の15.0km/リッターに比べ向上している。そう考えると、Bクラス+ディーゼルという組み合わせは、まさにBクラスをファミリーカー候補として考えている人にとっては本命といえるだろう。

ちなみに価格はガソリン車より30万円高い426万円。運転支援系やインフォテインメントシステムなどのオプションを加えると、ヨユーで500万を超えてしまう。もう「Cクラス」が買えるじゃん……と思うと少しフクザツではあるが、実際にはCクラスを凌駕(りょうが)し「Eクラス」にも負けない室内空間とユーティリティーを備え、運転支援システムやインフォテインメントの装備は上級モデルと同等。さらにこの走りっぷりを考えれば、それも仕方なしか。まあ、そのあたりのジャッジは世の奥さまにお任せしたほうが確か……なのかもしれませんが。

(文=河西啓介/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)

今回は高速道路を中心に約140kmを走行。燃費は満タン法で11.6km/リッター、車載の燃費計で13.2km/リッターを記録した。
今回は高速道路を中心に約140kmを走行。燃費は満タン法で11.6km/リッター、車載の燃費計で13.2km/リッターを記録した。
前席同様、後席(写真)も2トーンカラー。中央席の背もたれは、左右席のアームレスト(カップホルダー付き)を兼ねる。
前席同様、後席(写真)も2トーンカラー。中央席の背もたれは、左右席のアームレスト(カップホルダー付き)を兼ねる。
後席用のエアコン吹き出し口もタービン型。その下方には小物入れやUSBソケットが配される。
後席用のエアコン吹き出し口もタービン型。その下方には小物入れやUSBソケットが配される。
3分割の後席を倒した状態のラゲッジスペース。積載容量は最大で1540リッターとなっている。
3分割の後席を倒した状態のラゲッジスペース。積載容量は最大で1540リッターとなっている。

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