【試乗記】シトロエンC5エアクロスSUVシャイン(FF/8AT)

シトロエンC5エアクロスSUVシャイン(FF/8AT)
シトロエンC5エアクロスSUVシャイン(FF/8AT)

王道はふたつある

シトロエンの「C5エアクロスSUV」に1.6リッターガソリンターボ搭載モデルが追加された。先に導入された2リッターディーゼル車と比べると、最高出力は微増で最大トルクは大幅減、そして車両重量も大幅減。果たしてその仕上がりは?

ディーゼルよりも22.9万円安い

「シトロエンC5エアクロスSUV」の1.6リッターガソリンターボエンジン搭載車が発売されたのは2020年4月9日のこと。車両本体価格は409万円。
「シトロエンC5エアクロスSUV」の1.6リッターガソリンターボエンジン搭載車が発売されたのは2020年4月9日のこと。車両本体価格は409万円。
フロントに横置きされる1.6リッターターボエンジンは最高出力180PS/5500rpm、最大トルク250N・m/1650rpmを発生する。
フロントに横置きされる1.6リッターターボエンジンは最高出力180PS/5500rpm、最大トルク250N・m/1650rpmを発生する。
トランスミッションはアイシン・エィ・ダブリュ製の8段AT「EAT8」。ギアレシオはエンジン特性に合わせて相応に低められている。
トランスミッションはアイシン・エィ・ダブリュ製の8段AT「EAT8」。ギアレシオはエンジン特性に合わせて相応に低められている。
パワーユニットを示すバッジなどは備わらず、エクステリアデザインはガソリンモデルとディーゼルモデルで共通となっている。
パワーユニットを示すバッジなどは備わらず、エクステリアデザインはガソリンモデルとディーゼルモデルで共通となっている。
C5エアクロスSUV(以下、SUVは割愛)はシトロエンにおける現在のフラッグシップである。このクルマについては、2019年夏の日本上陸したてホヤホヤの時期にも、試乗記を書かせていただいた。当時の日本仕様は1種類のみで、現在のグループPSAではもっとも上級に位置づけられる177PS版の2リッターディーゼルエンジンを積んでいた。

そんなC5エアクロスに2020年春、もう少し手ごろなガソリンモデルが追加された。搭載されるガソリンエンジンは、プジョー・シトロエン(そしてDS)のマニアが即座に想像するとおり、1.6リッター4気筒ターボである。変速機も当然のごとく、ディーゼルと基本的に同じアイシン製の8段ATが使われる。

装備グレードについても、本国で上級にあたる「シャイン」が選ばれている点まで、既存のディーゼルと同じ。唯一、さらに上級の「ナッパレザーパッケージ」だけはガソリンでは選べないのだが、それ以外の装備内容、日本で選べるカラーバリエーションも両者で共通である。ただ、黒と赤のカラーについてはガソリンでのみ受注生産あつかいになっているので、そこだけは要注意だが……。このように、まったく同じ装備のエンジンちがいで、価格はディーゼルより22.9万円安い409万円となる。

ついでに書いておくと、地元フランスでの選択肢は、いうまでもなく日本よりずっと多い。日本で入手可能な2種類のパワートレイン以外に、より手ごろな1.5リッターディーゼルや1.2リッター3気筒ガソリンターボも選べて、すべてに6段MTの用意もある。また、日本で買える2種類よりさらに上級のトップエンド機種として、プラグインハイブリッドもある。それは1.6リッターターボをベースとして、最大で約55kmの電気走行が可能だそうだ。そして、装備グレードも大きく5種類ある。

「シトロエンC5エアクロスSUV」の1.6リッターガソリンターボエンジン搭載車が発売されたのは2020年4月9日のこと。車両本体価格は409万円。
「シトロエンC5エアクロスSUV」の1.6リッターガソリンターボエンジン搭載車が発売されたのは2020年4月9日のこと。車両本体価格は409万円。
フロントに横置きされる1.6リッターターボエンジンは最高出力180PS/5500rpm、最大トルク250N・m/1650rpmを発生する。
フロントに横置きされる1.6リッターターボエンジンは最高出力180PS/5500rpm、最大トルク250N・m/1650rpmを発生する。
トランスミッションはアイシン・エィ・ダブリュ製の8段AT「EAT8」。ギアレシオはエンジン特性に合わせて相応に低められている。
トランスミッションはアイシン・エィ・ダブリュ製の8段AT「EAT8」。ギアレシオはエンジン特性に合わせて相応に低められている。
パワーユニットを示すバッジなどは備わらず、エクステリアデザインはガソリンモデルとディーゼルモデルで共通となっている。
パワーユニットを示すバッジなどは備わらず、エクステリアデザインはガソリンモデルとディーゼルモデルで共通となっている。

ブランドごとのつくり分けの妙

サスペンションはバンプストップラバーの代わりにセカンダリーダンパーを使う「プログレッシブハイドローリッククッション(PHC)」。多くのブランドを擁するグループPSA内でも現状は「シトロエンC5エアクロスSUV」のみが採用するキラー装備となっている。
サスペンションはバンプストップラバーの代わりにセカンダリーダンパーを使う「プログレッシブハイドローリッククッション(PHC)」。多くのブランドを擁するグループPSA内でも現状は「シトロエンC5エアクロスSUV」のみが採用するキラー装備となっている。
インテリアは薄いグレーと濃いグレーとのバイカラー。シトロエンらしい明るくおしゃれな雰囲気だ。
インテリアは薄いグレーと濃いグレーとのバイカラー。シトロエンらしい明るくおしゃれな雰囲気だ。
フル液晶タイプのメーターパネルを採用。表示パターンは変更できるが、上部にあるボビン式の速度計は固定されている。
フル液晶タイプのメーターパネルを採用。表示パターンは変更できるが、上部にあるボビン式の速度計は固定されている。
メーターパネルにエンジン回転計を表示したところ。極めて簡素なデザインで読み取りづらいが、レッドゾーンは6800rpm(くらい)から。
メーターパネルにエンジン回転計を表示したところ。極めて簡素なデザインで読み取りづらいが、レッドゾーンは6800rpm(くらい)から。
現在多くのブランドを同時展開するグループPSAにおいて、シトロエン最大のキモは“コンフォート”とあらためて定義されている。そのために「アドバンストコンフォートプログラム」と銘打った技術群が開発されて、このC5エアクロスにフル採用されている。

たとえば、バンプストップ領域で作動するセカンダリーダンパーによって全域で快適な乗り心地を実現するという「プログレッシブハイドローリッククッション(PHC)」や、フワフワ触感の「アドバンストコンフォートシート」が、同プログラムの象徴的な成果物である。実際には、それ以外にもキャビンの空間設計や内外装素材、エアコン、静粛性など多岐にわたる技術開発がおこなわれているという。

本記事の撮影・取材は、先日試乗記をお送りした「プジョー・リフター」と同日におこなった。そこで気づいたのは、ステアリングホイールひとつとっても、プジョーの超小径タイプと大きさや形状が異なるだけでなく、じつは革のグリップ部分も、シトロエンのほうが明らかにしっとりと柔らかく潤いのある仕立てになっていることだ。こういう芸の細かさが昨今のPSAの得意技であり、同プログラムの真価でもあるのだろう。

また、ダッシュパネルも部品ひとつひとつの仕立てはさして高級ではない(失礼!)が、センターコンソールやアームレストなど乗員の体が当たる部分にだけは柔らか処理をするなど、“金より知恵”の仕立ても好印象である。

今回の試乗車は前回のナッパレザーパッケージとはちがい、シートがファブリックとレザーのコンビとなる標準仕様だった。こうしたコンビ表皮の場合、“中央部が布で周辺部が革”が一般的だが、C5エアクロスはいわばその逆。メイン部分がレザーで、クッションの先端部やヘッドレストがデニム風になっているが、実際に使うと、手や首、頭など体が直接触れやすい部分がファブリックになっているC5エアクロスのほうが、夏は涼しく、冬は暖かく、なんとなく癒やされることに気づいた。これも同プログラムの研究成果だろうか。

サスペンションはバンプストップラバーの代わりにセカンダリーダンパーを使う「プログレッシブハイドローリッククッション(PHC)」。多くのブランドを擁するグループPSA内でも現状は「シトロエンC5エアクロスSUV」のみが採用するキラー装備となっている。
サスペンションはバンプストップラバーの代わりにセカンダリーダンパーを使う「プログレッシブハイドローリッククッション(PHC)」。多くのブランドを擁するグループPSA内でも現状は「シトロエンC5エアクロスSUV」のみが採用するキラー装備となっている。
インテリアは薄いグレーと濃いグレーとのバイカラー。シトロエンらしい明るくおしゃれな雰囲気だ。
インテリアは薄いグレーと濃いグレーとのバイカラー。シトロエンらしい明るくおしゃれな雰囲気だ。
フル液晶タイプのメーターパネルを採用。表示パターンは変更できるが、上部にあるボビン式の速度計は固定されている。
フル液晶タイプのメーターパネルを採用。表示パターンは変更できるが、上部にあるボビン式の速度計は固定されている。
メーターパネルにエンジン回転計を表示したところ。極めて簡素なデザインで読み取りづらいが、レッドゾーンは6800rpm(くらい)から。
メーターパネルにエンジン回転計を表示したところ。極めて簡素なデザインで読み取りづらいが、レッドゾーンは6800rpm(くらい)から。

標準装着がサマータイヤに

WLTCモードの燃費値は13.8km/リッター。この点はディーゼルモデル(17.1km/リッター)に大きく譲るところだ。
WLTCモードの燃費値は13.8km/リッター。この点はディーゼルモデル(17.1km/リッター)に大きく譲るところだ。
ガソリンモデルの導入を機に、ディーゼルモデルも含めて、標準装着タイヤのサイズが225/55R18に変わり、カテゴリーもオールシーズンタイヤからサマータイヤに変更された。試乗車は「ミシュラン・プライマシー4」を履いていた。
ガソリンモデルの導入を機に、ディーゼルモデルも含めて、標準装着タイヤのサイズが225/55R18に変わり、カテゴリーもオールシーズンタイヤからサマータイヤに変更された。試乗車は「ミシュラン・プライマシー4」を履いていた。
ボディーサイドには赤のアクセントが入った「エアバンプ」が備わる。
ボディーサイドには赤のアクセントが入った「エアバンプ」が備わる。
最新のシトロエンに共通する個性的なフロントマスク。ダブルシェブロンエンブレムからデイタイムランニングライトにつながる部分には通風孔が開けられていない。
最新のシトロエンに共通する個性的なフロントマスク。ダブルシェブロンエンブレムからデイタイムランニングライトにつながる部分には通風孔が開けられていない。
走りだすと、1年前の記憶より明らかに静かになったことが分かる。二重ラミネートフロントガラスや入念なドアシールなどの騒音対策もC5エアクロスにおける独自のコンフォート技術群の一部であることは間違いなく、ディーゼルモデルもうるさいとは感じなかった。しかし、今回のガソリンは当たり前だが、それに輪をかけて静かなのだ。さらにロードノイズまで減ったのは、ディーゼルより120kg以上軽い車重の効果? ……とも思ったが、実際にはタイヤの影響が大きいようだ。

というのも、前回試乗したディーゼルは235/55R18サイズのオールシーズンタイヤだったのに対して、今回の試乗車は少しナローな225幅のサマータイヤ「ミシュラン・プライマシー4」を履いていたからである。ちなみに、これは今回のガソリンモデル追加を機にC5エアクロス全体で実施された仕様変更で、今後はディーゼルもこれと同じタイヤが履かされるとか。グループPSA側の主張によると、今回のタイヤ変更によって「一般路での快適性、静粛性、燃費性能がさらに向上しております」とのことである。

動力性能もディーゼルよりは控えめだが、グループPSAでは基本的に最上級のガソリンエンジンであり、普通に考えて不足があろうはずもない。不規則な荒っぽいスロットル操作になると、ディーゼルよりピーキーにトルクが立ち上がってしまうが、余裕たっぷりの足どりをことさら乱すほどではない。

センターコンソールの「スポーツ」ボタンを押すと、スロットルの勢いと変速のキレが高まるが、気にしない人は気づかないかも……程度の変化しかない。ただ、山坂道にもっていくと、スポーツにしたほうが荷重移動にもカツが入りやすく、操縦性も機敏になる。

WLTCモードの燃費値は13.8km/リッター。この点はディーゼルモデル(17.1km/リッター)に大きく譲るところだ。
WLTCモードの燃費値は13.8km/リッター。この点はディーゼルモデル(17.1km/リッター)に大きく譲るところだ。
ガソリンモデルの導入を機に、ディーゼルモデルも含めて、標準装着タイヤのサイズが225/55R18に変わり、カテゴリーもオールシーズンタイヤからサマータイヤに変更された。試乗車は「ミシュラン・プライマシー4」を履いていた。
ガソリンモデルの導入を機に、ディーゼルモデルも含めて、標準装着タイヤのサイズが225/55R18に変わり、カテゴリーもオールシーズンタイヤからサマータイヤに変更された。試乗車は「ミシュラン・プライマシー4」を履いていた。
ボディーサイドには赤のアクセントが入った「エアバンプ」が備わる。
ボディーサイドには赤のアクセントが入った「エアバンプ」が備わる。
最新のシトロエンに共通する個性的なフロントマスク。ダブルシェブロンエンブレムからデイタイムランニングライトにつながる部分には通風孔が開けられていない。
最新のシトロエンに共通する個性的なフロントマスク。ダブルシェブロンエンブレムからデイタイムランニングライトにつながる部分には通風孔が開けられていない。

すり足のような水平移動感

テスト車の車両重量は1520kg。筆者が以前に試乗したディーゼルモデルの個体と比べると、170kgも軽量だ。
テスト車の車両重量は1520kg。筆者が以前に試乗したディーゼルモデルの個体と比べると、170kgも軽量だ。
ガソリンモデルではナッパレザー表皮やシートヒーター、アルミペダルなどからなるセットオプション「ナッパレザーパッケージ」が選べない。シートはファブリックとレザーのコンビ表皮となる。
ガソリンモデルではナッパレザー表皮やシートヒーター、アルミペダルなどからなるセットオプション「ナッパレザーパッケージ」が選べない。シートはファブリックとレザーのコンビ表皮となる。
3座独立式のリアシートには、150mmの前後スライド機構と5段階のバックレスト調整機構が備わる。
3座独立式のリアシートには、150mmの前後スライド機構と5段階のバックレスト調整機構が備わる。
シフトセレクターの周辺には路面状況に合わせてトラクションコントロールの制御を変えられる「グリップコントロール」のダイヤルやドライブモードの切り替えスイッチがレイアウトされる。
シフトセレクターの周辺には路面状況に合わせてトラクションコントロールの制御を変えられる「グリップコントロール」のダイヤルやドライブモードの切り替えスイッチがレイアウトされる。
ディーゼルとの重量差は諸元表で見ると120kg~だが、昨年夏に試乗したディーゼルのナッパレザーパッケージ装着車と今回の試乗車の車検証を比較すると、その差はじつに170kgにもなる。前軸重量だけでも、今回のガソリンのほうが100kgも軽いのだ。さすがにこれだけの重量差があると、ディーゼルの試乗から1年弱の空白がある今回でも、タイヤが転がり出した瞬間に「うわっ軽う!」と驚くくらいに、その乗り味の差は大きい。

かつてのハイドロニューマチックの味わいを、通常の金属バネとアナログダンパーで再現したPHCは、相変わらずふんわりと柔らかなタッチが心地よい。しかし、以前のディーゼルが良くも悪くも演出過剰気味に、フワリフワリと上下動を繰り返したのに対して、今回のガソリンは明らかにフラットに落ち着きはらっている。とくに路面が荒れた古い市街地を40~50km/hで流すときの、すり足のように上屋がピタリと静止した水平移動感ある乗り心地は、個人的に絶品と思う。

といっても、速度や路面によっては今回のガソリンでもあえて大きめの上下動で凹凸を吸収するケースもあり、総合的にはフラットライドよりも柔らかさを優先するのがPHCの基本路線だ。とくに80km/hを超えたあたりからの、目地段差からの突きあげを1~2発でピタリと収めつつソフトな肌ざわりに徹し続ける疑似ハイドロな高速クルーズ……がPHCの真骨頂だろう。

いずれにしても、その基本的な身のこなしはどんなシーンでも、車重の軽いガソリンのほうが上下動が少ない。昔ながらの濃厚なハイドロ感がお好みなら、ふんわり上下動が多めのディーゼルをより心地よく思う向きもあろう。だが、冷静かつ客観的に評価を下せば、ガソリンのシャシーのほうが、より現代的で優秀な乗り心地というべきである。

テスト車の車両重量は1520kg。筆者が以前に試乗したディーゼルモデルの個体と比べると、170kgも軽量だ。
テスト車の車両重量は1520kg。筆者が以前に試乗したディーゼルモデルの個体と比べると、170kgも軽量だ。
ガソリンモデルではナッパレザー表皮やシートヒーター、アルミペダルなどからなるセットオプション「ナッパレザーパッケージ」が選べない。シートはファブリックとレザーのコンビ表皮となる。
ガソリンモデルではナッパレザー表皮やシートヒーター、アルミペダルなどからなるセットオプション「ナッパレザーパッケージ」が選べない。シートはファブリックとレザーのコンビ表皮となる。
3座独立式のリアシートには、150mmの前後スライド機構と5段階のバックレスト調整機構が備わる。
3座独立式のリアシートには、150mmの前後スライド機構と5段階のバックレスト調整機構が備わる。
シフトセレクターの周辺には路面状況に合わせてトラクションコントロールの制御を変えられる「グリップコントロール」のダイヤルやドライブモードの切り替えスイッチがレイアウトされる。
シフトセレクターの周辺には路面状況に合わせてトラクションコントロールの制御を変えられる「グリップコントロール」のダイヤルやドライブモードの切り替えスイッチがレイアウトされる。

つまりガソリンか ディーゼルか

ワインディングロードを行く「C5エアクロスSUV」。ディーゼルモデルと比べてとにかくハナ先が軽いのが印象的だ。
ワインディングロードを行く「C5エアクロスSUV」。ディーゼルモデルと比べてとにかくハナ先が軽いのが印象的だ。
ダッシュボードの中央には「Apple CarPlay」と「Android Auto」に対応した8インチのタッチスクリーンが備わる。
ダッシュボードの中央には「Apple CarPlay」と「Android Auto」に対応した8インチのタッチスクリーンが備わる。
ラゲッジスペースの容量はリアシートをもっとも後ろにスライドさせた場合(写真)が580リッターで、もっとも前にした場合が670リッター。さらに、背もたれをすべて倒せば1630リッターにまで拡大できる。
ラゲッジスペースの容量はリアシートをもっとも後ろにスライドさせた場合(写真)が580リッターで、もっとも前にした場合が670リッター。さらに、背もたれをすべて倒せば1630リッターにまで拡大できる。
荷室の床下にはテンポラリータイヤが収納されている。
荷室の床下にはテンポラリータイヤが収納されている。
せっかくなので休日のアウトドア旅行を想定した山坂道でも走ってみると、ディーゼルと比較すると、とにかくハナが軽い。格別に俊敏でもなく、パワステは相変わらず軽すぎの感はあるが、わずかな加減速や操舵でしかるべき車輪にスッと荷重が乗り、その後はヒタッと静止する。揺り戻すようなオーバーシュート感もほぼ皆無に近い。

このあたりの調律は、ディーゼルのC5エアクロスでも絶対的には優秀なものがあり、単独で走っているかぎりは特別に重さを感じさせるわけではない。しかし、こうして乗り比べてしまうと、ガソリンのほうがあらゆる動きの進行が軽やかで、反応が正確で余計な動きも少ないのだ。

C5エアクロスはステアリングもシートも、ひとつひとつの要素は悪くなくとも絶品とまではいかない……のが正直な印象なのだが、1台にまとめると、すべてがうまく釣り合っているのが美点である。しかし、今回のガソリンはとくに調律が見事で、五臓六腑に染みわたる超熟感がたまらない。まあ、実際にはサマータイヤを履かせたディーゼルもあらためて乗ってみないと不公平だろうけど……。

とはいえ、日常域での力強さは明確にディーゼルが上回るし、日々の燃料代のお得感も含めると、それが約23万円の差で手に入るディーゼルのほうが商品としては選びやすいかもしれない。それに、フランスは欧州でも屈指のディーゼル大国だから、マニア的見地でもディーゼルのほうがフランス車らしく見える。

ただ、今回の素晴らしい乗り心地と軽やかな操縦性の前では、それをおぎなってあまりある魅力を個人的に感じてしまう。フランスはディーゼル大国であると同時に、かつての自動車税制のなごりから「エンジンの遅さをシャシーの速さでおぎなう」のも伝統だ。その意味では、ガソリンのほうがフランス的という考えかたもできなくはないし、もっと控えめでさらに軽い3気筒ターボはどんなんだろう?

(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

ワインディングロードを行く「C5エアクロスSUV」。ディーゼルモデルと比べてとにかくハナ先が軽いのが印象的だ。
ワインディングロードを行く「C5エアクロスSUV」。ディーゼルモデルと比べてとにかくハナ先が軽いのが印象的だ。
ダッシュボードの中央には「Apple CarPlay」と「Android Auto」に対応した8インチのタッチスクリーンが備わる。
ダッシュボードの中央には「Apple CarPlay」と「Android Auto」に対応した8インチのタッチスクリーンが備わる。
ラゲッジスペースの容量はリアシートをもっとも後ろにスライドさせた場合(写真)が580リッターで、もっとも前にした場合が670リッター。さらに、背もたれをすべて倒せば1630リッターにまで拡大できる。
ラゲッジスペースの容量はリアシートをもっとも後ろにスライドさせた場合(写真)が580リッターで、もっとも前にした場合が670リッター。さらに、背もたれをすべて倒せば1630リッターにまで拡大できる。
荷室の床下にはテンポラリータイヤが収納されている。
荷室の床下にはテンポラリータイヤが収納されている。

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