【試乗記】日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)

日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)

軽くない思いをのせて

フルモデルチェンジで「デイズ ルークス」から名前が変わった、日産の新型軽「ルークス」。200万円級のプライスタグを付けるそのトップグレードは、家庭のさまざまなニーズに応えてくれるであろう、驚くべき実用車だった。

あきれるほど広い

基本メカニズムを共有する「日産デイズ」との大きな違いは、背の高さと両側スライドドア。開口幅は650mmで、足先をドアの下にかざすだけで開閉できる。
基本メカニズムを共有する「日産デイズ」との大きな違いは、背の高さと両側スライドドア。開口幅は650mmで、足先をドアの下にかざすだけで開閉できる。
シートアレンジ次第では、車内を写真のようなくつろぎ空間にすることもできる。
シートアレンジ次第では、車内を写真のようなくつろぎ空間にすることもできる。
定員2人の後席は50:50の分割式で、前後に320mmもスライド可能。
定員2人の後席は50:50の分割式で、前後に320mmもスライド可能。
カップホルダー付きのテーブルは、セットオプションに含まれるもの。テーブルの下方にはUSBソケットも。
カップホルダー付きのテーブルは、セットオプションに含まれるもの。テーブルの下方にはUSBソケットも。
「ルークス」は、日産自動車と三菱自動車との合弁会社であるNMKVのマネジメントのもと、日産が企画・開発を主導した新世代軽乗用車。「デイズ ルークス」の後継となるモデルで、2020年3月19日に発売された。
「ルークス」は、日産自動車と三菱自動車との合弁会社であるNMKVのマネジメントのもと、日産が企画・開発を主導した新世代軽乗用車。「デイズ ルークス」の後継となるモデルで、2020年3月19日に発売された。
わかっちゃいるけど、それでも接するたびにビックリするのが、「軽スーパーハイトワゴン」の室内の広さである。「日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(2WD)」のスライドドアを開けたとたん、思わず「オオッ」と声が出た。余裕ある後席スペースもさることながら、天井の高さにあきれる。資料によると「後席の室内高は1400mmと、小さなお子さまであれば、立ったまま着替えることも可能です」とのこと。さもありなん。

自分の子供が活発に活動するようになって、あちらこちらと連れて行く羽目になって内心うれしい親御さんなどは、「野球やサッカー、キャンプに釣り、はたまた海水浴やスキーに行くたびに、ちゃっちゃと着替えや準備を済ませられますよ」なんて販売店のセールスパーソンに言われたら、思わず財布のひもを緩めてしまいそうだ。

……と考えていたら、背後から「こういうクルマ、欲しいんですよ!」と『webCG』エディターの声。最近、子宝に恵まれたばかりのSさんだ。「本気か、冗談か?」と振り返ると、至って真剣な表情で「これ、いいなぁ」と言いながら車内を観察している。

ためしに320mmものスライド量を誇るリアシートに座ってみると、意外に座面が高い。ルークスのベースにあたる「日産デイズ」では、後席クッションの位置をあえて低めに抑えて小さな子供でも座りやすいように配慮されたが、一方、ありあまる室内高を持つルークスでは、チャイルドシートを取り付けやすいよう高めに設定された。スライドドアの開口部の幅が650mmと大きく取られたのも、思いのほかかさばるチャイルドシートの出し入れを考慮したものだろう。

この手のクルマに乗ると、ついリアシートを一番後ろまでスライドさせて、「うーむ、広い!」と居住性のよさを満喫しがちだが、実際に子供を連れての移動では、チャイルドシートを付けた後席を前方に動かして、前席との距離を縮めた使い方が多いという。運転席にいても、ちょっと振り返れば子供のケアができるからだ。「それはどうなんですかねぇ?」と新米パパはいまひとつ納得していない様子だが、親子でドライブするようになったら、また違った発見があるかもしれない。報告を待ちたい。

基本メカニズムを共有する「日産デイズ」との大きな違いは、背の高さと両側スライドドア。開口幅は650mmで、足先をドアの下にかざすだけで開閉できる。
基本メカニズムを共有する「日産デイズ」との大きな違いは、背の高さと両側スライドドア。開口幅は650mmで、足先をドアの下にかざすだけで開閉できる。
シートアレンジ次第では、車内を写真のようなくつろぎ空間にすることもできる。
シートアレンジ次第では、車内を写真のようなくつろぎ空間にすることもできる。
定員2人の後席は50:50の分割式で、前後に320mmもスライド可能。
定員2人の後席は50:50の分割式で、前後に320mmもスライド可能。
カップホルダー付きのテーブルは、セットオプションに含まれるもの。テーブルの下方にはUSBソケットも。
カップホルダー付きのテーブルは、セットオプションに含まれるもの。テーブルの下方にはUSBソケットも。
「ルークス」は、日産自動車と三菱自動車との合弁会社であるNMKVのマネジメントのもと、日産が企画・開発を主導した新世代軽乗用車。「デイズ ルークス」の後継となるモデルで、2020年3月19日に発売された。
「ルークス」は、日産自動車と三菱自動車との合弁会社であるNMKVのマネジメントのもと、日産が企画・開発を主導した新世代軽乗用車。「デイズ ルークス」の後継となるモデルで、2020年3月19日に発売された。

徹底的にスペース重視

「スマートシンプルハイブリッド」と呼ばれるマイルドハイブリッドシステムを搭載する「ルークス」。減速時に蓄えた電力は、エンジンの補助駆動力やアイドリングストップシステムの動力として使われる。
「スマートシンプルハイブリッド」と呼ばれるマイルドハイブリッドシステムを搭載する「ルークス」。減速時に蓄えた電力は、エンジンの補助駆動力やアイドリングストップシステムの動力として使われる。
オプション「プレミアムグラデーションインテリア」を選択した試乗車のインテリア。ブラック&モカのグラデーションシートと相まって“洗練された大人のイメージ”を演出する。
オプション「プレミアムグラデーションインテリア」を選択した試乗車のインテリア。ブラック&モカのグラデーションシートと相まって“洗練された大人のイメージ”を演出する。
センターコンソールの下方には、引き出し式のトレー(収納可能なカップホルダー付き)が備わる。そのさらに下には格納式ボックスも。
センターコンソールの下方には、引き出し式のトレー(収納可能なカップホルダー付き)が備わる。そのさらに下には格納式ボックスも。
日産ルークスは、デイズ同様、日産と三菱が共同出資したNMKVがマネジメントした軽自動車。今回から日産主導で企画・開発が進められた。スリーダイヤモンドの姉妹車は「eKスペース」だが、むしろ「『ホンダN-BOX』がガチなライバル」と言った方がわかりやすいかもしれない。三菱にはeKスペースの“ヤンチャ版”として、人を脅す鬼面を備えた「eKクロス スペース」がラインナップするが、ルークスではターボエンジンを積む今回の試乗車、ハイウェイスターGターボがその役割を果たす。

厳しい寸法制限を受けながら、前輪の位置を旧型より65mm前方に押し出すことで、室内空間をさらに拡大。軽自動車の、後輪の後ろに薄いバンパーしかない姿はすっかり見慣れたが、ルークスの場合は、前輪の前にも薄いバンパーしかなくて、タイヤは文字通り四隅に追いやられたカタチだ。ホイールベースは2495mm。

前後席とも着座位置を上げて、足元の余裕を増している。運転席に座ると、ダッシュボードの低さもあって、パッと開けた前方視界が印象的だ。フロントスクリーン左右端とサイドウィンドウの間には、はめ殺しの三角窓ならぬ細長い台形窓が設けられる。Aピラー前の支柱をなくして、フロントスクリーンをグルリと左右にまわり込む形状にしたら「未来的でカッコいいのになァ」と夢想するが、さすがに無理か。

「スマートシンプルハイブリッド」と呼ばれるマイルドハイブリッドシステムを搭載する「ルークス」。減速時に蓄えた電力は、エンジンの補助駆動力やアイドリングストップシステムの動力として使われる。
「スマートシンプルハイブリッド」と呼ばれるマイルドハイブリッドシステムを搭載する「ルークス」。減速時に蓄えた電力は、エンジンの補助駆動力やアイドリングストップシステムの動力として使われる。
オプション「プレミアムグラデーションインテリア」を選択した試乗車のインテリア。ブラック&モカのグラデーションシートと相まって“洗練された大人のイメージ”を演出する。
オプション「プレミアムグラデーションインテリア」を選択した試乗車のインテリア。ブラック&モカのグラデーションシートと相まって“洗練された大人のイメージ”を演出する。
センターコンソールの下方には、引き出し式のトレー(収納可能なカップホルダー付き)が備わる。そのさらに下には格納式ボックスも。
センターコンソールの下方には、引き出し式のトレー(収納可能なカップホルダー付き)が備わる。そのさらに下には格納式ボックスも。

軽とは思えぬ装備の数々

180万円超の上級グレード「プロパイロットエディション」各車には、「セレナ」「リーフ」などにも採用されている運転支援システム「プロパイロット」が備わる。それ以外のグレードではオプションとしても選べない。
180万円超の上級グレード「プロパイロットエディション」各車には、「セレナ」「リーフ」などにも採用されている運転支援システム「プロパイロット」が備わる。それ以外のグレードではオプションとしても選べない。
メーターパネルは2眼式。中央には4.2インチのインフォメーションディスプレイがレイアウトされている。
メーターパネルは2眼式。中央には4.2インチのインフォメーションディスプレイがレイアウトされている。
前席はウオークスルーが可能なベンチタイプ。助手席の右側肩部には、運転席側から後席の子供をケアするためのリクライニングレバーが備わる。グラデーションのかかったシートカラーは、新たな試みのひとつ。
前席はウオークスルーが可能なベンチタイプ。助手席の右側肩部には、運転席側から後席の子供をケアするためのリクライニングレバーが備わる。グラデーションのかかったシートカラーは、新たな試みのひとつ。
ターボで過給される直3エンジンは、2400rpmから最大トルク100N・mを発生。試乗車の場合、WLTCモードの燃費値は18.8km/リッターとなっている。
ターボで過給される直3エンジンは、2400rpmから最大トルク100N・mを発生。試乗車の場合、WLTCモードの燃費値は18.8km/リッターとなっている。
今回のGターボ プロパイロットエディションは、最上級モデルだけに装備満載。高性能&高機能のクルーズコントロールたる「プロパイロット」をはじめ、衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱防止といった各種運転アシスト、自車をあたかも俯瞰(ふかん)で見ているかのように液晶画面に表示するアラウンドビューモニター、そして専門のオペレーターとつながるSOSコールなどを標準で備える。

驚いたのが、「プレミアムグラデーションインテリア+快適パックA」と呼ばれるセットオプション(7万1500円)に設定される人工皮革で、当初、「ついに“本革仕様の軽”が登場か!?」と勘違いさせられました。質感がスゴイ。照れ隠しにケチを付けると、ベースのままの樹脂部分との落差が大きくなるのが今後の課題ですね。

快適パックAには、後席用のテーブルやカップホルダーの増設に加え、いまどきの子供は片時も携帯やゲーム機を手放さないのを反映してか、助手席背面にUSBソケットが用意される。天井に設置されるシーリングファンはエアコンの利きを効率化させるだけでなく、昨今では、ウイルスの感染を抑制する効果も期待されるのでは? 祈 疫病退散。

動力系は、659cc直列3気筒ターボ(最高出力64PS、最大トルク100N・m)に、リチウムイオン電池を用いたいわゆるマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたもの。トランスミッションのCVTはデイズと同じモノだが、最終減速比を落として、100kgほどの重量増に対応している。

180万円超の上級グレード「プロパイロットエディション」各車には、「セレナ」「リーフ」などにも採用されている運転支援システム「プロパイロット」が備わる。それ以外のグレードではオプションとしても選べない。
180万円超の上級グレード「プロパイロットエディション」各車には、「セレナ」「リーフ」などにも採用されている運転支援システム「プロパイロット」が備わる。それ以外のグレードではオプションとしても選べない。
メーターパネルは2眼式。中央には4.2インチのインフォメーションディスプレイがレイアウトされている。
メーターパネルは2眼式。中央には4.2インチのインフォメーションディスプレイがレイアウトされている。
前席はウオークスルーが可能なベンチタイプ。助手席の右側肩部には、運転席側から後席の子供をケアするためのリクライニングレバーが備わる。グラデーションのかかったシートカラーは、新たな試みのひとつ。
前席はウオークスルーが可能なベンチタイプ。助手席の右側肩部には、運転席側から後席の子供をケアするためのリクライニングレバーが備わる。グラデーションのかかったシートカラーは、新たな試みのひとつ。
ターボで過給される直3エンジンは、2400rpmから最大トルク100N・mを発生。試乗車の場合、WLTCモードの燃費値は18.8km/リッターとなっている。
ターボで過給される直3エンジンは、2400rpmから最大トルク100N・mを発生。試乗車の場合、WLTCモードの燃費値は18.8km/リッターとなっている。

広さと走りはトレードオフ?

より背の低い「デイズ」に比べ「ルークス」は100kgほど車重が増しており、その影響は乗り心地の違いにも表れている。
より背の低い「デイズ」に比べ「ルークス」は100kgほど車重が増しており、その影響は乗り心地の違いにも表れている。
4人乗車時の荷室。後席を前後にスライドさせることで積載スペースを調節できる。奥行きは最長675mm。
4人乗車時の荷室。後席を前後にスライドさせることで積載スペースを調節できる。奥行きは最長675mm。
後席の背もたれを倒し、荷室容量を最大化した状態。前方には若干の傾斜と段差が残るが、27インチの自転車も積み込める。
後席の背もたれを倒し、荷室容量を最大化した状態。前方には若干の傾斜と段差が残るが、27インチの自転車も積み込める。
今回は200km強の距離を試乗し、燃費は満タン法で12.1km/リッター、車載の燃費計で13.2km/リッターを記録した。
今回は200km強の距離を試乗し、燃費は満タン法で12.1km/リッター、車載の燃費計で13.2km/リッターを記録した。
ステアリングホイールを握って走り始めれば、ターボらしいトルクの厚さ、出足の力強さが安心感につながる。1000kgの車重に十分なアウトプットで、パートナーや子供たちを乗せてドライブしても、非力でイライラするといったことはないだろう。

ただ、「リッターカーを凌駕(りょうが)した!」と確信させたデイズの素晴らしいドライブフィールと比較すると、特に乗り心地の面であまり感心しなかった。高く、重くなったボディーを支えるため足まわりのセッティングは硬めになっていて、路面が荒れた場所では時に左右に揺すられる。

ことに気になるのが後席に座った場合で、いい気になってシートを下げて足を伸ばしていると、後輪からの突き上げが直接的にお尻に伝わって不快な思いをする。小さな子供を乗せるときには、手が届きやすいと同時に多少なりともシートを前後の車軸間の中央に寄せるため、シートを前に出したほうがいいかもしれない。購入を検討する際の試乗では、走行中に、できれば大人だけでなく、子供にも携帯を眺めたりゲームをしながら後席に座ってもらうことをオススメします。

日本市場で特異な発達を見せる軽のスーパーハイトワゴン。3列シートのミニバンを買うまでもないし経済面でも節約したいけれど、限られたスペースはできるだけ活用したい。そんな切実な思いが詰まったクルマは、また、ニッポンの子育て世代の現状をストレートに反映させている。能天気なクルマ好きとしては、「どこかいびつな気がする」などと社会派ぶった懸念を抱くが、そんな段階はとっくに過ぎているのだろう。

(文=青木禎之/写真=田村 弥/編集=関 顕也)

より背の低い「デイズ」に比べ「ルークス」は100kgほど車重が増しており、その影響は乗り心地の違いにも表れている。
より背の低い「デイズ」に比べ「ルークス」は100kgほど車重が増しており、その影響は乗り心地の違いにも表れている。
4人乗車時の荷室。後席を前後にスライドさせることで積載スペースを調節できる。奥行きは最長675mm。
4人乗車時の荷室。後席を前後にスライドさせることで積載スペースを調節できる。奥行きは最長675mm。
後席の背もたれを倒し、荷室容量を最大化した状態。前方には若干の傾斜と段差が残るが、27インチの自転車も積み込める。
後席の背もたれを倒し、荷室容量を最大化した状態。前方には若干の傾斜と段差が残るが、27インチの自転車も積み込める。
今回は200km強の距離を試乗し、燃費は満タン法で12.1km/リッター、車載の燃費計で13.2km/リッターを記録した。
今回は200km強の距離を試乗し、燃費は満タン法で12.1km/リッター、車載の燃費計で13.2km/リッターを記録した。

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