【試乗記】ホンダe(RWD)
エコよりワクワク
果たしてどちらがいいのか?
そのベースモデルとアドバンスはどっちがいいのか? 前者は最高出力136PSで、タイヤ&ホイールが16インチ。後者は154PSで17インチ。WLTCモードの航続距離は前者が283km、後者が259km。価格は前者が451万円、後者は495万円。
ベースモデルはアドバンスより、最高出力は18PS低いけれど、315N・mの最大トルクは同じで、航続可能距離は24km長く、44万円もお求めやすい。
国の補助金を入れると、この差はさらに広がる。航続距離によって補助金額が異なり、前者が23万6000円もらえるのに対して、後者は16万8000円にとどまるからだ。つまり、国からの補助を受けたうえでの支払額はベースモデルが427万4000円、アドバンスが478万2000円ということになる。
ちなみに東京都在住の方であれば都から一律30万円が、さらに江東区にお住まいであれば区から10万円が助成されるなど、自治体からの補助も大きいし、自治体によって補助の内容が異なるので注意ください。
いずれにしても、日本国在住の方が等しく受けられる補助金を加味すると、その差は50万8000円。これだけあったら、なにが買えますか? もちろん、いろいろ買えます。おまけに16インチと17インチである。カッコいいのは17インチだろうけれど、乗り心地がいいのは16インチにちがいない。と、筆者は試乗前に予想した。
間違っておりました、筆者の予想。今回ホンダeのベースモデルに都内で初めて試乗し、横浜で試乗した記憶のなかのホンダeアドバンスと比べてみて思った。
やっぱり、自動車は乗ってみないとわからない。
充電器の空き情報もわかる
そう。ホンダeはダッシュボードのスターターの丸いボタンを押した瞬間からワクワクする。パソコンのスイッチをオンにしたときよりも、もうちょっとエンターテインメント色の濃い電子音がとどろき、初代「シビック」をちょっと思わせるレトロなダッシュボード上に並んだ、モダンな5つのスクリーンが明るくなって、ちょっと先の未来へと連れていってくれる。
バッテリー残量は55%。ちょっと心もとないので、まずは充電しよう。ホンダeの車載システムで検索すると、現在地の東京・丸の内から3kmほど離れた文京区役所近くに1カ所、EV充電スタンドがある。しかもいま空いている。空きかどうかもわかるのだ。
ホンダeは、リアモーター/リア駆動のRRで、キビキビしていて、運転していて誠に楽しい。前述したように、315N・mの最大トルクは同一で、1510kgの車重はアドバンスより30kg軽い。だから、速さ的にはほとんど不満がない。「ポルシェ911」みたいに、とはいかないにせよ、「ルノー・トゥインゴ」よりは後ろから蹴り出されている感があって、アクセルを深く踏み込むと、ひゅい~ん、というモーターだかギアだかの音が聞こえてくる。
充電したら、首都高速に上がってみよう。と思いつつ、車載ナビゲーションにしたがって文京区役所近くにやってきたけれど、目当てのスポットが見当たらない。区役所のまわりを2周し、東京メトロ丸の内線のガード下でブルー地に白抜き文字の「EV QUICK」の看板を見つけた。そして、その1台ぽっきり用の充電スタンドにはすでに土浦ナンバーの白い「リーフ」が止まっていた……。
遅かりし由良之助。
日本にはちょっと早かった?
ホンダeが悪いわけではない。EVのインフラが整っていないことが問題なのだ。ホンダeはもともとEUのCAFE(企業別平均燃費)対策で構想された、「街なかベスト」を目指した都市型コミューターである。ヨーロッパではたぶん、EV用の充電スポットとか、日本の都市より普及が進んでいるのだろう。正直、よく知りませんけれど、でないと成り立たない。
そういう意味では、ホンダeは日本にはちょっと早すぎた。だからこそ、ホンダは国内での販売台数を年間1000台に絞っているのだろう。EVのパイオニアである「三菱i-MiEV」とか日産リーフとかはだいぶ早すぎた……ということになるわけですけれど、世界にはパイオニアと呼ばれる存在が必要だということもまた確かである。
ホンダeのような都市型コミューターを自称するEVは、往復40km程度の通勤・通学等、毎日のルーティーンに使うべきで、筆者のように気ままにどこかへ走りに行く、なんてのは使用方法として間違っているのである。
だけど、自動車の魅力というのは、いつ、どこへでも、たとえコロナ禍であっても、自由に行けるところにあるはずで、その自動車本来の魅力が「街なかベスト」の都市型コミューターには欠けている、とまではいえないにせよ、現時点ではいささか制約があるということはいえる。
いや、これが現代における「日常生活の冒険」なのだ。そう捉え直したらどうだろう。
たかが24kmじゃないですか!
対して、ホンダeアドバンスは前205/45、後225/45の、ともにZR17で、タイヤの銘柄は「ミシュラン・パイロットスポーツ4」。
サイズは1インチ大きいのに、ミシュランの高性能タイヤのほうがエコタイヤより乗り心地面でも優れている、と筆者は判断する。
さてそこで、問題は航続距離をとるか、乗り心地とグリップ力をとるか、である。
地球環境のことを考えれば、航続距離(=電力消費量の小さいほう)をとるべきでしょうけれど、その差24km。24kmは、筆者のような気まぐれなタイプにはどっちみち短い。だったら、短くてけっこう。「街なかベスト」のEVの航続距離は短くてもいい、という悟りをホンダは開いた。であれば、その悟りを筆者は尊重したい。ホンダeの強みは、その航続距離の短さにこそある、と。50万8000円のことは忘れよう。
なお、2050年までにカーボンニュートラル社会を目指すのはけっこうなことだけれど、EVがほんとうにエコなのかどうか検証するべきだという趣旨の、日本自動車工業会の豊田章男会長の提言に筆者もうなずきました。
ホンダeがいいと筆者が思うのは、運転してワクワクするからなのだ。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
最新ニュース
-
-
『フェアレディZ』の新たな姿「レジェンドパッケージ」を日産が公開…SEMAショー2024
2024.11.05
-
-
-
ホンダレーシングが一般車両向けパーツ開発にも注力、『パイロット』カスタムを初公開へ…SEMAショー2024
2024.11.05
-
-
-
トヨタ、『ランドクルーザー70』の40周年記念プロジェクト開始
2024.11.05
-
-
-
初代『ハイラックスサーフ』の再来か、トヨタ「4Runner TRDサーフコンセプト」公開へ…SEMAショー2024
2024.11.05
-
-
-
フォーミュラドリフトの名将、『ダルマセリカ』をレストア&カスタム…SEMAショー2024
2024.11.05
-
-
-
スズキ初のEV、『eビターラ』発表…2025年夏から日本など世界市場に投入へ
2024.11.05
-
-
-
『これはやらないと!』オートマティックフルード交換に革命! 過走行車も安心の最新メンテナンス術~カスタムHOW TO~
2024.11.05
-
最新ニュース
-
-
『フェアレディZ』の新たな姿「レジェンドパッケージ」を日産が公開…SEMAショー2024
2024.11.05
-
-
-
ホンダレーシングが一般車両向けパーツ開発にも注力、『パイロット』カスタムを初公開へ…SEMAショー2024
2024.11.05
-
-
-
トヨタ、『ランドクルーザー70』の40周年記念プロジェクト開始
2024.11.05
-
-
-
初代『ハイラックスサーフ』の再来か、トヨタ「4Runner TRDサーフコンセプト」公開へ…SEMAショー2024
2024.11.05
-
-
-
フォーミュラドリフトの名将、『ダルマセリカ』をレストア&カスタム…SEMAショー2024
2024.11.05
-
-
-
スズキ初のEV、『eビターラ』発表…2025年夏から日本など世界市場に投入へ
2024.11.05
-
MORIZO on the Road