【試乗記】スバル・インプレッサスポーツSTI Sport(FF/CVT)
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スバル・インプレッサスポーツSTI Sport(FF/CVT)
大人だったら響くはず
モータースポーツの頂点を極めたSTI
現在ではニュルブルクリンク24時間レースや日本のSUPER GTなどで活動を続けているSTIだが、モータースポーツで磨いてきたクルマづくりの技を、コンプリートカーやパフォーマンスパーツといったプロダクト開発にも生かしている。
なかでも「Sシリーズ」と呼ばれる究極のコンプリートカーは、STIが開発からパーツの装着までを担当し、エンジンのパワーアップと、それにふさわしいシャシー性能で得たエキサイティングな走りが、ファンの心をつかんできた。ただ、こだわりの詰まったSシリーズの開発や生産には多くの時間を要し、生産台数が限られるという悩みがあった。
そこで、より多くの人にSTIの魅力を届けるために生まれたのが「STI Sport」というコンプリートカーだ。開発はスバルとSTIが共同で進め、生産はスバルの工場で行われる。スバル車のいちグレードとして販売され、手の届きやすい価格設定も手伝って、より幅広いファンにアピールするモデルとなっているのだ。
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2020年9月17日に実施された「インプレッサスポーツ」の一部改良にあわせて、新しく同モデルのラインナップに加わった「STI Sport」。
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「インプレッサスポーツSTI Sport」には、車両本体価格292万6000円のAWDモデルと、同270万6000円のFFモデルがラインナップされる。今回試乗したのは後者。
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今回の試乗車は「アイスシルバーメタリック」と呼ばれるボディーカラーをまとっていた。「インプレッサスポーツSTI Sport」では、これを含む全6色からエクステリアカラーが選べる。
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インストゥルメントパネルやドアの内張り、エアコンの吹き出し口などにブラックの加飾パネルが用いられたインテリア。ダッシュボードやセンタコンソールに施されたレッドのステッチも、「STI Sport」専用のしつらえである。
FFモデルもラインナップ
初めて実車を目の当たりにした印象は、「派手さこそないものの、キリッと引き締まったクールなハッチバック」というものであった。明るいアイスシルバーメタリックのボディーに、ダークメタリックの18インチアルミホイールやブラックのエクステリアパーツが、精悍(せいかん)さを際立たせている。スポーツモデルでありながら、やりすぎ感のない、大人のコーディネートがうれしい。ブラックのフロントグリルに配されるチェリーレッドのSTIエンブレムがアクセントだ。
それに比べると、インテリアはわりと華やかだ。黒を基調としたインテリアは、落ち着いたレッドをあしらったシートをはじめ、レッドステッチが施されたステアリングホイールやダッシュボード、つやのあるブラックのパネルなどにより、グレードアップした印象だ。
もちろんSTI Sportをうたうだけに、走りにかかわる部分にも手が入れられている。目玉は、専用開発のフロントダンパー。ショーワ製のSFRD(Sensitive Frequency Response Damper=周波数応答型ダンパー)を、STIがこのクルマにあわせてチューニングしているのだ。さらにリアダンパーも専用のチューニングを施すことで、意のままのハンドリングと、滑らかで質感の高い乗り心地を目指したという。
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「インプレッサスポーツSTI Sport」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4475×1775×1480mm、ホイールベースは2670mm。FFモデルの車重は、AWDモデルよりも50kg軽い1350kgと発表されている。
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ブラックの加飾が施されたフロントグリル右側に「STI」のエンブレムを配置。標準モデルとは明確に異なるフロントマスクに仕上げられている。
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「STI Sport」では、シフトノブとシフトパネルの加飾がブラックに変更されている。シフトレバーブーツにはシートやインストゥルメントパネルなどと同じく、赤いステッチが入っている。
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今回の試乗車は、「STI Sport」専用となるダークメタリック塗装の18インチアルミホイールに225/40R18サイズの「ヨコハマ・アドバンスポーツV105」タイヤを組み合わせていた。
エンジンはノーマルのまま
それだけに、パワーアップを果たしたスポーツモデルのような期待を抱くのはお門違いということになるが、1350kgのボディーにこのパワーとこのトルクだから、冷静に考えれば十分なエンジン性能であるのは想像に難くない。
実際、CVTの「リニアトロニック」と組み合わされたフラット4は、低回転から余裕ある加速をみせる。パワーユニットの制御が切り替えられる「SIドライブ」は、燃費に配慮したという「インテリジェントモード(I)」ではややおとなしい印象だが、「スポーツモード(S)」を選ぶとエンジン回転が上がり、アクセルペダルに対するレスポンスも向上する。
アクセルペダルを踏み込むと、シャーというCVTからの金属音を控えめに発しながら、乾いたフラット4のサウンドを楽しめるのもうれしいところだ。154PSの“使い切れるパワー”は圧倒的な速さこそないが、このクルマを気持ちよく走らせるには十分な実力といえる。
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STIがチューニングを行ったというショーワ製のSFRD(Sensitive Frequency Response Damper=周波数応答型ダンパー)がフロントサスペンションに組み込まれた「STI Sport」。山岳路では、応答性に優れたハンドリングが味わえた。
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2リッター水平対向4気筒エンジンは最高出力154PS、最大トルク196N・mを発生。「リニアトラック」と呼ばれるCVTが組み合わされる。
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「I」と「S」の2種類からパワーユニットの制御が選べる「SIドライブ」を採用。スイッチはステアリングホイールの右スポーク下部に配置されている。
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荷室容量は、5人乗車の通常使用時で385リッター。これは、標準モデルの数値と変わらない。荷室床下にはサブトランクも設置されている。
珠玉のシャシー性能
この日は高速道路やワインディングロードのほか比較的荒れた舗装の一般道も走ったが、しなやかに動くサスペンションがフラットな姿勢を保ちながら、路面からの細かいショックをカットし、思いのほか乗り心地は快適。目地段差を越える際もショックを軽くいなしてくれる感じだ。前述のSFRDは、電子制御の力を借りずに、伝わる振動の周波数に応じて減衰力を自動的に調整するといい、路面からの微振動を感じさせないのはこのSFRDが貢献しているようである。
一方、ワインディングロードを走る場面では、ステアリング操作にすぐさま呼応して、すっと向きを変える軽快なハンドリングを示す。コーナーを通過する際のロールの動きはしっかり抑えられ、しなやかさが際立つサスペンションが路面をしっかりと捉えてくれる。その一連の動きは、ドライバーの意図したとおりのものだけに、運転がうまくなったような気にさせてくれるのだ。
乗り心地が快適なぶん、運転しても疲れ知らず。耐久レースで勝つには、楽に運転できるマシンづくりが不可欠といわれるが、そのノウハウは、STI Sportのそういう部分にも息づいているということだろう。
絶対的な速さではなく、操る楽しさを加速させるチューニングが気持ちいいSTI Sport。酸いも甘いもかみわける大人におすすめしたい一台である。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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シャークフィンアンテナとハイマウントストップランプ内蔵のルーフスポイラーは、ブラックにペイントされた「STI Sport」の専用アイテム。
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フロントシートには、8ウェイの電動調整機構が備わる。シート表皮はファブリックとトリコットのコンビネーションで、ブラックをベースにセンター部分にレッド、サイドにライトグレーを配置。レッドのステッチも目を引く。
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リアシートの表皮にも、フロントシートと同じくブラックとレッドのコンビネーションデザインが採用される。背もたれには60:40の分割可倒機構が備わる。
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今回の試乗では高速道路と山岳路をメインに約300kmを走行。燃費は満タン法で11.2km/リッターを記録した。
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