【試乗記】ミツオカ・バディ20ST(FF/CVT)
もはやオリジナル
何かのレプリカにはあらず
ミツオカといえば「ゼロワン」や「オロチ」など、車体から自社開発できる日本最小の自動車メーカーでもある。ただ、今回のバディは、既存の量産車をベースに主にエクステリアをモディファイ……という「ヒミコ」「ビュート」「ガリュー」などの現行商品と同様の、おなじみの手法でつくられるミツオカである。
バディのベースとなったのは「トヨタRAV4」で、いつものように前後エンドを中心に再デザインされている。モチーフは「1970〜1980年代のアメリカンSUV」だそうだ。上下2階建てヘッドライトやグリルはいかにもシボレーっぽく、同社の「ブレイザー」に似ているとの声が多い。しかし、中央が盛り上がったボンネットや逆スラントノーズの造形は「フォード・ブロンコ」風でもあり、ウッドパネルを貼ったようなリアゲートや縦長のテールランプは「ジープ・グランドワゴニア」に見えなくもない。バディのデザインは特定のモデルを想定した“レプリカ”ではなく、いわば“あるあるモノマネ”かもしれない。
機能的な損失は皆無
そんなバディは、メカニズム方面ではなんら手が加えられておらず、内装もツルシ状態ではステアリングホイール中央やドアスピーカー部分のロゴが「MITSUOKA」や「Buddy」に変わるくらいだ。つまりは、事実上エクステリアデザインのみで190万円前後のエクストラをどう捉えるか……は人それぞれだろう。ただ、前記のように増産しないとバックオーダーリストが伸びるばかりなのは事実だし、カスタマイズカーあるいはドレスアップカーとして見ると、その仕上がり品質はすこぶる高い。それは間違いない。
バディのフロントセクションはグリルバンパーや灯火類を含めて、ボンネットからサイドフェンダーまですべてがゴッソリと専用部品に取り換えられている。それでも、RAV4にもともと備わっていたミリ波レーダーやソナーセンサーはきちんと移設されており、緊急自動ブレーキやレーントレースアシスト、アダプティブクルーズコントロール、道路標識認識といった「トヨタセーフティセンス」の機能や、クリアランスソナーによる運転支援機能はなんら損なわれていない。
また、クローム仕上げのグリルやバンパーはABSの、リアゲート外板はポリプロピレンのインジェクション成型品で、いい意味で手づくり感とは一線を画す量産品的な質感を醸している。量産品と職人技のイイトコ取り的なミツオカ独特のオーラは、こういう細部の蓄積から生まれている。
悩ましい16インチタイヤ
ただ、これはバディだから……とかではなく、もっぱら16インチのオールテレインタイヤによるものだ。これはミツオカがバディ専用に用意したオプションで、標準ではタイヤもベースのRAV4そのままである。基本的に舗装路のみを走行という一般的なマイカーの使い方なら、標準タイヤのまま乗るのがベターだろう。
ただ、有名ホイールメーカーであるクリムソンが手がける「ディーン・クロスカントリー」のクラシカルな意匠、インチダウンとなるサイズ設定、それに組み合わせられるオールテレインタイヤで構成されるオプションは、ビジュアル的には絶妙というほかない。操縦性という意味ではちょっと後退感があるのは否めないが、それとて微妙といえる程度だし、荒れた路面のアタリなどではオールテレインに分があるシーンもなくはない。せっかくのバディである。予算があるなら、この16インチもぜひ選びたいオプションのひとつだろう。
オプションといえば、ていねいに合皮が張られたシートやドアトリムもオプションである。ブラックベースで車体色に合わせた有彩色がアクセントとなるのはバディのみならず、ミツオカではおなじみのデザインである。
さすがの職人技
さらに、高速で前を向いて走っていても、目前のボンネットフードが無粋に振動するようなことがないのは、バディのボンネット素材がカスタマイズカーにありがちな複合樹脂や薄肉のアルミではなく、頑丈なプレススチールパネル製だからだろう。少量生産品なのに、こういう本格的なスチール部品を使う(使える?)のもミツオカらしいところだ。そのスチールボンネットを中心に、バンパーやフェンダーなどの樹脂部品、そしてRAV4からそのまま受け継いだルーフやドアにいたる全体のチリ合わせや塗装の統一感はさすがである。このあたりは、ミツオカの職人技が炸裂している領域である。
バディはいわば、あるあるモノマネ……と最初に書いた。確かにそのとおりなのだが、もとからあるRAV4の部分とミツオカが新たにデザインした部分との造形的なマッチングは、もはや“芸”と呼びたくなるほど手だれ感にあふれる。また、繰り返しになるが、その仕上げ品質が異様に高い。モノマネ芸もきわめれば、もはやオリジナル芸として、ある意味で本物以上の価値が出ることもあるのだ。
そんなバディはあまりの人気ゆえに増産が決まったのは冒頭のとおりだが、ライン生産への完全移行は2022年以降になるそうだ。今すぐに注文しても生産割り当てはすでに2023年分らしい。ほしいなら、ひとまず急いだほうがいい。
(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1865×1685mm
ホイールベース:2690mm
車重:1560kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:171PS(126kW)/6600rpm
最大トルク:207N・m(21.1kgf・m)/4800rpm
タイヤ:(前)LT225/70R16 102/99R M+S/(後)LT225/70R16 102/99R M+S(BFグッドリッチ・オールテレインT/A)
燃費:15.2km/リッター(WLTCモード)
価格:469万7000円/テスト車=608万6850円
オプション装備:ボディーカラー<グローブワンホワイトパール>(8万8000円)/225/70R16オールテレインタイヤ&16×6.5Jディーン・クロスカントリーアルミホイール<シルバー>(26万4000円)/スペアタイヤ<応急用>(1万1000円)/サイドメッキモールセット<フロント&リア>(19万8000円)/「Buddy」バックドアエンブレムスペシャルタイプ<サーフロゴ>(1万9800円)/バックドアエンブレム七宝焼カラー<ブラック>(2万2000円)/チルト&スライド電動ムーンルーフ<挟み込み防止機能付き>(11万円)/バックガイドモニター(8万4700円)/専用レザーシート&トリムセット<全席・合成皮革+ステッチ付き>(43万7800円) ※以下、販売店オプション エントリーナビキット(6万6000円)/カメラ別体ドライブレコーダー(6万3250円)/ビルトインETC車載器<ボイスタイプ>(2万5300円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1404km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:281.2km
使用燃料:28.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.0km/リッター(満タン法)/10.4km/リッター(車載燃費計計測値)
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