【試乗記】フィアット500eアイコン(FWD)/ホンダeアドバンス(RWD)(前編)
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フィアット500eアイコン(FWD)/ホンダeアドバンス(RWD)
笑顔が未来を切り開く
街に映えるラブリーなデザイン
電気ですか〜。電気があれば、なんでもできる。いくぞ〜っ。1、2、3、ダーっ!!
またバブル期の「日産セフィーロ」に、助手席の井上陽水が窓ガラスをスーッと開けて、テレビの視聴者に向かって話しかけるCMがあったことをご記憶でしょうか? そのセリフのもじりで「みなさん、お電気ですか」というのも思いついたので、つい書いてしまいました。失礼しま〜す。
ともかく、この2台のEVコミューターの比較試乗を筆者は1カ月前から楽しみにしていた。ホンダeは以前から好ましく思っていたし、フィアット500eは未試乗ながら、そのラブリーなデザインでもって、気になる存在になっていたからだ。
“同い年”なのは偶然ではない
一方のフィアット500eも、その名前が示すごとく、1957年登場の“ヌオーヴァ500”の生まれ変わりとして2007年に発表されたフィアット500の新型として(うーん。ややこしい)、本国では2020年3月に登場している。ガソリン仕様も早晩出るという説もあるみたいだけれど、いまのところパワートレインは電気のみ。デザインの系譜としてはヌオーヴァ500から数えて3代目のチンクエチェントである。どちらもそれぞれのブランドを代表する象徴的な存在なのだ。
ワールドデビューが同じ2020年の同期生で、これには理由がある。欧州でこの年から、かなり厳しいCO2の規制が始まり、そのなかに「メーカーごとの平均排出量を計算する際、50g/km未満のクルマ(実質、EVや燃料電池車などに限られた)は1台を2台として計上する」という一文があった。ホンダeも新型フィアット500eも、この優遇策を使ってCAFE(企業平均燃費)をパスする、という共通の目的があったのだ。
温和なデザインに心が安らぐ
一方の新型フィアット500eは、オールニューだというのに、2007年登場の先代500と驚くほど変わっていない。デザインを変えないことによってブランドを確立しよう。という「ポルシェ911」や「MINI」に代表されるデザイン戦略である。
いずれにしても、ホンダeもフィアット500eも、先行車を威嚇するようなデザインが目立つ昨今にあって、そうではない顔つきが与えられていることは大いに喜ばしい。そもそも他者と動力性能で競うタイプのクルマではない。ということもある。どう喝ではない、平和的解決を図るデザインというものが、こんにち、もっと注目されてしかるべきでありましょう。
シンプルな2ボックスで、ボディー全体に丸みを帯びたホンダeは表情が柔らかい。笑顔は外交の基本だ。2灯の丸型ヘッドライトのサイズと、やや寄り目の装着位置、グリルにあたる黒い部分とボディーのバランスやプロポーション(調和)のなせるわざだろう。ホンダのロボット「アシモ」を思わせもする。温和で柔和、すっとぼけた顔にも見えてホッとする。
500eは先述したように、ヘッドライト以外、いまも継続して生産・販売されている先代フィアット500と寸分違わないように見えるけれど、そうではない。ホイールベースが従来比で20mm延長され、3サイズがちょっとずつ大きくなっている。プラットフォームから一新したオールニューなのに、デザインはほとんどそっくりそのまま、のように筆者には思える。
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丸みのあるフォルムと、タヌキを思わせる“くま取り”がユニークな「ホンダe」のデザイン。歩行者などの邪魔にならないよう、デジタルサイドミラーのカメラは車体の全幅からはみ出ないサイズで、かつ角のない形状となっている。
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インフォテインメントシステムについては、機能の多さはもちろん操作性のよさも追求。左右の画面に別々の機能を表示させられるほか、前に使っていたアプリケーションを探すのに重宝する、履歴検索機能なども用意されている。
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上級グレード「アドバンス」には自動駐車機能「Hondaパーキングパイロット」も搭載。操舵、アクセル/ブレーキ、前進/後退の切り替えと、すべての操作をシステムがこなしてくれる。
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Bピラーの「NFC」マーク。「ホンダe」はNFC通信に対応しており、アプリの入ったスマートフォンを所持していれば、リモコンキーを使わなくともドアを開け、車両を始動できる。
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ダッシュボードの端に備わるデジタルサイドミラー。取材日は雨天だったので、非常に重宝した。
いまだに古臭さを感じさせない意匠
新型「日産フェアレディZ」にも似た「こ」の字型のLEDヘッドライトと、ボンネットの真っすぐのラインによって、500eはいろんな表情を見せる。「こ」の字の上の部分を眉毛だと意識するとやさしげだし、ボンネットとボディーの間の分割線をまなじりだととらえると、激おこ、ではないにしても、果敢に立ち向かう勇者の目のようにも見える。気分によって表情が変わる。そこがオモシロイ。
登場以来、すでに15年を経ているのに、いまもフレッシュで新鮮、って同じ意味ですけれど、さかのぼればヌオーヴァ500に至るこのデザインの寿命の長さに嘆息を禁じ得ない。禁じる必要もないのだから、おお。と漏らします。造形まで手がけた天才エンジニア、ダンテ・ジアコーサに、シクラメンテ、ベラメンテである。イタリア人がよく使うこのフレーズ、知ったことかい、べらんめえ、ただの雰囲気でぇ、という感じで使っております。グラッツェ。
日伊のEVコミューターのこの2台。このように外から見ているだけだと、似ているように感じる。ところが、比較試乗してみたら、その違いは思った以上に大きかった。サイズだってひとクラス違う。そのことにようやく気づいたのは、じつは木更津に到着してステキなケーキ屋さんの庭の前に2台を並べたときのことだった。というお話のつづきは後編で。
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「フィアット500e」は、一見すると従来型の「フィアット500」と変わらないように見えるが、じつはプラットフォームから全面刷新されており、ボディーサイズも全長×全幅×全高=3630×1685×1530mm(従来型は3570×1625×1515mm)と、ひとまわり大きくなっている。
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ボディーカラーは全5種類だが、試乗車の「オーシャングリーン」を含む4色は、5万5000円から11万円の有償オプションだ。
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「フィアット500e」の大きな特徴となっている、上下2分割のヘッドランプ。「ポップ」以外のグレードはLED式で、オートハイビームなどの機能が標準装備される。
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似たような動機のもと、似たようなコンセプトで登場した「フィアット500e」(左)と「ホンダe」(右)だが、両車のドライブフィールには大きな違いがあった。後編ではその差異をリポートする。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3630×1685×1530mm
ホイールベース:2320mm
車重:1330kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:118PS(87kW)/4000rpm
最大トルク:220N・m(22.4kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88V/(後)205/45R17 88V(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス)
一充電走行距離:335km(WLTCモード)
交流電力量消費率:128Wh/km(約7.8km/KWh、WLTCモード)
価格:485万円/テスト車=493万8000円
オプション装備:ボディーカラー<オーシャングリーン[メタリック]>(5万5000円)/フロアマット プレミアム(3万3000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1655km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:177.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.7km/kWh(車載電費計計測値)
ホンダeアドバンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3895×1750×1510mm
ホイールベース:2530mm
車重:1540kg
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:154PS(113kW)/3497-1万rpm
最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)205/45ZR17 88Y XL/(後)225/45ZR17 94Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
一充電走行距離:259km(WLTCモード)
交流電力量消費率:138Wh/km(約7.2km/kWh、WLTCモード)
価格:495万円/テスト車=502万7814円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(3万3000円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ>(3万8500円)/工賃(6314円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:7751km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:179.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.7km/kWh(車載電費計計測値)
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