【試乗記】スバル・フォレスターSTI Sport(4WD/CVT)
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スバル・フォレスターSTI Sport(4WD/CVT)
STIの面目躍如
最大の特徴はやっぱり“アシ”
STI Sportの意匠的な特徴は、モデルごとに統一された共通項がなく示すのが難しい。強いて言えばグリルやモールなどの加飾類が黒フィニッシュであること、前後にチェリーレッドのSTIエンブレムが配されることくらいだろうか。対して内装には、シート表皮やオーナメント、メーターなどに赤系の差し色が用いられている。
共通項として乗り味に直結するのは、専用セッティングのサスペンションだ。レヴォーグとWRX S4はZF製の電子制御可変ダンパーを用いて統合的にチューニングが施される。インプレッサは前側に機械式の「SFRDダンパー」を用い、後ろ側はそれに減衰特性が合わせ込まれている。フォレスターの場合もインプレッサと同じで、電子制御可変機能は持ち合わせていない。低コストでシンプルな構造というところが、フォレスターの用途と相性がいいという判断だったのだろう。
SFRDダンパーはホンダ系サプライヤーの旧ショーワが開発したもので、現在はケーヒンやニッシンと統合されてできた日立アステモが供給している。小さなストローク用と大きなストローク用に別々の油圧経路を持っていて、それを入力時のオイル流量によって切り替えながら作動させるという仕組みだ。大入力時にはしっかり姿勢を抑え、少入力時には細かな上下動にもしっかり応答する……と、2つの顔を使い分ける。
キャパ不足の1.8リッターターボに物申す
個人的にはスバルのなかで最もSUV色の強い銘柄であるフォレスターに、STI絡みのグレードなんかいるわけ? という気はしなくもない。が、パイの大きな車種ゆえ、なかにはオンロード志向のユーザーもいるのだろう。それでも最低地上高は他グレードと同じ220mmが確保されているあたりにスバルの意地も見え隠れする。単純に大径タイヤのシャコタンでお手盛りにスポーツ感を演じるのではなく、フォレスターの素性をゆがめることなくスポーティネスを高めようということだろう。
フォレスターSTI Sportの価格は363万円。同じ1.8リッター直噴ターボを搭載する「スポーツ」に対して27万5000円高い。それでくだんの専用チューニングダンパーやナッパレザーを用いた本革シートなどが付いてくるとあらば、パワー&ドライブトレインはツルシのまんまといえども仕方ないかとは思う。
が、やっぱりケチをつけてしまうのはそのフィーリングだ。エンジンは低回転域からしっかりトルクが立ち上がりCVTの食いつきもよく、走り始めにはおっと思わせる余裕と質感を感じさせてくれた。が、そこからちょっと力強い加速を得ようとすると、エンジンの回転数がせわしなく跳ね上がる。スバルのCVTは熟成を重ねていわゆるラバーバンド感を苦心して抑えてきたが、いかんせん主力の1.8リッター直噴ターボは、アウトバックやフォレスターとの組み合わせではさすがにキャパ不足の感がある。アメリカでは2.5リッター自然吸気ユニットが主力となっているが、出力特性的にも燃費的にも、そちらのほうがフォレスターとは相性がいいのではないかと思う。
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外装ではフロントグリルやバンパーガード、ガーニッシュなど、各部のパーツをブラックで統一。ルーフレールは装備されず、サンルーフも選択不可となる。
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フロントサスペンションに装備される「SFRDダンパー」。シリンダー内部に高周波振動用と低周波振動用の2つの油圧経路が備わっており、ストローク量によって減衰力が変化する。
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ダンパーを除くと足まわりの仕様は「スポーツ」グレードと共通。スーパーブラックハイラスター塗装のホイールは「STI Sport」専用だが、組み合わされるのは他のグレードと同じオールシーズンタイヤである。
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エンジンは「スポーツ」グレードと同じ1.8リッター水平対向4気筒ターボ。最高出力177PS、最大トルク300N・mというスペックにも変更はない。
現行フォレスターのベストバイ
この低中速域での上質感が、高速・高負荷域にシームレスに受け継がれているのもフォレスターSTI Sportの美点だ。巡航時には四肢をしっかり路面につけた接地感の高い乗り味が頼もしく、山岳路のワインディングではロールを適切に抑えつつも突っ張り感はない、きちんと操縦実感を伝えてくるハンドリングが印象的だ。タイヤがオールシーズンということで過信は禁物だが、急な腰砕けや滑り出しといったクセもなく、誰もが安心して気持ちよく走れる仕立てになっていると思う。
ともあれ、ダンパー構造とそのチューニングだけでよくここまで動的質感を引っ張り上げたものだと思う。恐らくは悪路走破性や耐久性への影響もなし……という前提ならば、あるいは無彩色しか用意されていないボディーカラーが我慢できるなら、フォレスターのベストグレードは間違いなくこれだろう。
そして今回思わぬ気づきとなったのは、アイサイトの追従クルーズコントロールの出来のよさだ。単に「タイムラグを極力抑えて前走車にきっちりついていく」というだけではなく、前方の微妙な速度変化に応じて、なるべくテールランプをともさないようにギリギリの減速Gを保ちながら車間を制御している。作動の確実性という領域はもちろん、作動の質感や周囲への影響というステップですでにスバルが鍛磨していることが伝わってくる、お見事な仕事ぶりだった。
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他のグレードとは異なり、ボディーカラーは試乗車の「クリスタルホワイト・パール」や「クリスタルブラック・シリカ」など、無彩色のみ4種類の設定となる。
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パワートレインの制御系も「スポーツ」から変更はない。「SI-DRIVE」に加えてオフロード走行をアシストする「X-MODE」も備わるが、燃料消費を抑制する「e-アクティブシフトコントロール」は搭載されない。
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ステレオカメラを用いた運転支援システム「アイサイト」の制御はやはり優秀。スバルでは側方の巻き込み事故などにも対応する、より進化したアイサイトの導入も予定している。
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フットワークに関する「フォレスター」の弱点を見事に解消していた「STI Sport」。現行ラインナップにおけるベストバイと言って差し支えないだろう。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1815×1715mm
ホイールベース:2670mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:177PS(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1600-3600rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98H M+S/(後)225/55R18 98H M+S(ファルケン・ジークスZE001 A/S)
燃費:13.6km/リッター(WLTCモード)/16.5km/リッター(JC08モード)
価格:363万円/テスト車=378万4000円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルホワイト・パール>(3万3000円)/アイサイトセイフティプラス(6万6000円)/パワーリアゲート(5万5000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1147km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:281.5km
使用燃料:26.8リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.5km/リッター(満タン法)/11.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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