【試乗記】スズキ・フロンクス プロトタイプ(FF/6AT)/フロンクス プロトタイプ(4WD/6AT)
期待の新星
想像以上にスタイリッシュ!
フロンクスは2023年1月にインド・デリーで開催された「オートエキスポ2023」で正式発表された。すでにインドをはじめ、中南米、中近東、アフリカなどで販売がスタートしていて、今回の日本仕様もインドからの輸入車だ。日本に導入されるインド生産のスズキ四輪車といえば、2016年〜2020年に国内販売された初代「バレーノ」に続いて2例目となる。
おそらく市販版とほぼ変わりないと思われるプロトタイプのスリーサイズは、全長×全幅×全高=3995×1765×1550mm。その全長はイグニス(3700mm)とエスクード(4175mm)の中間といえる。そもそも全長が4m未満のスモールSUVは貴重な存在で、イグニスが消えた今、日本で買える4m切りのSUVは、スズキの「ジムニーシエラ」と「クロスビー」、そして「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」くらいしかない。
いっぽうで、その全幅はグローバル商品らしく、堂々たる1765mmである。これほどの縦横比は日本車ではめずらしい。しかも、日本の立体駐車場を意識したと思われる1550mmという全高も、SUVとしてはかなり低い。……と“ショート&ワイド、そしてロー”という純粋にナイスなプロポーションは、フロンクスの大きな売りである。
実際、クルマを目前にすると、表層的なデザインの好き嫌いを横に置いても、フロンクスは単純にカッコいい。いや、そのナイスプロポーションを生かした立体的なフェンダーに、存在感のあるフェイス、後上がりのウエッジシェイプに見せるベルトラインなど、文句なしにスタイリッシュと申し上げたい。
質感は上々、装備も充実
ダッシュボードなどにコストがかさむソフトパッドなどは使われていないが、アームレストは合皮で柔らかい。ダッシュボードにあしらわれた大面積の金属調加飾は、下手をするとプラスチッキーな安っぽさを増長する可能性があり、コストがかぎられるクルマではけっこうリスキーな意匠だ。しかし、今回はそこも巧妙にこなしている印象で、結果的に、インテリアにほどよい質感と特別感を醸し出すことに成功している。
先進運転支援システムは、新型「スペーシア」や「スイフト」に続いて、ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせたスズキ最新の「デュアルセンサーブレーキサポートII」を標準装備とするという。日本でのグレード構成は不明だが、試乗車には電動パーキングブレーキにフルオートエアコン、ヘッドアップディスプレイ、そしてシートは合皮とファブリックのコンビ表皮……と、思いつく装備はほぼそろっていた。
また、同じインドで生産される「ホンダWR-V」には設定されないシートヒーターがきっちり用意されていたのも評価したい。最近すっかり冷えに弱くなった中高年の筆者には、シートヒーターは必須アイテムで、個人的には、それがないところがWR-V最大の欠点だと思っている(笑)。
“欧風スズキ”の魅力に快適な後席をプラス
このコンパクトサイズに1.5リッターだから、動力性能に不足がないのは当然だ。6段ATはスムーズさや効率でCVTにゆずる場面もあるが、今回のようなアップダウンのあるワインディングロードでは、CVTより小気味よく軽やかだ。センターコンソールの「スポーツモード」ボタンを押すと、パワートレインのレスポンスが少しだけ高まるほか、ステアリングも重くなる。
フロンクスの走りはパリッと俊敏系……といったところか。シャシーそのものが特別にスポーツ風味というほどではないが、スズキのグローバルカーならではの高い剛性感や正確なステアリング、そしてリアが粘りすぎない調律に加えて、ショート&ワイドなディメンションとSUVとしては低めの全高も効いている。また、試乗車が履いていたグッドイヤーの「アシュアランス トリプルマックス2」というタイヤも硬めの感触に思われた。
またリアの乗車空間については、広さだけでなく乗り心地や静粛性も強く意識して開発されたという。実際、スモールサイズのクルマとしては、フロンクスの静粛性は印象的なほど高く、リアサスペンションもしなやかだ。
同日に取材させていただいた開発者インタビューにも記したが、その理由はフロンクスの主要市場であるインド市場の志向によるところが大きい。インドで売るクルマの後席の重要性については、WR-Vの開発陣も似たようなことを語っておられたし……。
気になるのはやっぱり……
フロンクスの4WDシステムは、エスクードのような電子制御油圧多板クラッチ式ではなく、クロスビーと同じく、よりシンプルなビスカス式となる。よって、基本的にはFFで走って前輪がグリップを失ったときだけ後輪にトルク配分されるが、クロスビー同様にブレーキ制御を活用した「グリップコントロール」と「ヒルディセントコントロール」も備わる。
……ということなら、ドライ路面を「タイヤのスキール音禁止」というペースで走らせた今回の試乗では、その乗り味にFFとの大きな違いはないはずだが、実際にはFFより好印象だった。静粛性や乗り心地については「FFと遜色ない性能」を目標に、4WDならではの対策もいくつか施されているという。
さらにハンドリングでも、FFよりもリアがしっとりと落ち着いた感がある。さすがに大きな凹凸ではFFより強く突き上げられるが、安定感や接地感、コーナーを丸く走りやすいマイルド感は4WDのほうが総じて高い印象である。こうした傾向は開発陣も認識しているようで「4WDならではの重量配分が奏功しているようです」との見解だった。もちろん燃費や価格のデメリットがどれくらいかにもよるが、フロンクスの4WDは非積雪地域でも選ぶ価値があるかも……というのが、今回の感想だ。
さて、インド生産のコンパクトSUVということで、はれて発売されたときの価格はWR-Vと同様の200万円台前半か、車体サイズを考えればさらに手ごろなレベルも期待したくなる。しかし、スズキの担当者は「最近のルピー高を考えると、ホンダさんはすご〜く頑張られたと思いますよぉ」と苦笑する。また、装備もフロンクスはWR-Vより充実しているわけなので、はてさてどうなりますか……。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1765×1550mm
ホイールベース:2520mm
車重:1070kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:直流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:101PS(74kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:135N・m(13.8kgf・m)/4400rpm
モーター最高出力:3.1PS(2.3kW)/800-1500rpm
モーター最大トルク:60N・m(6.1kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)195/60R16 89H/(後)195/60R16 89H(グッドイヤー・アシュアランス トリプルマックス2)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:451km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スズキ・フロンクス プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1765×1550mm
ホイールベース:2520mm
車重:1130kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:直流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:101PS(74kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:134N・m(13.7kgf・m)/4400rpm
モーター最高出力:3.1PS(2.3kW)/800-1500rpm
モーター最大トルク:60N・m(6.1kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)195/60R16 89H/(後)195/60R16 89H(グッドイヤー・アシュアランス トリプルマックス2)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:380km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スズキの試乗記事
-
-
【スズキ フロンクス 新型試乗】有段ATはセールスポイントに、乗り心地は4WDに軍配か…諸星陽一
2024.11.19 クルマ情報
-
-
-
【スズキ フロンクス 新型試乗】まさに「バリューフォーマネー」、今スズキでイチバンいいクルマと断言できる…中村孝仁
2024.11.06 クルマ情報
-
-
-
【スズキ フロンクス 新型試乗】うまく行けばスズキの中核車種になれる…中村孝仁
2024.10.14 クルマ情報
-
-
-
【試乗記】スズキ・ハスラー タフワイルド ターボ(4WD/CVT)
2024.09.06 クルマ情報
-
-
-
【試乗記】スズキ・フロンクス プロトタイプ(FF/6AT)/フロンクス プロトタイプ(4WD/6AT)
2024.08.09 クルマ情報
-
-
-
【スズキ スイフト MT車 新型試乗】あの「スイスポ」で味わった走行感覚が忘れられない…中村孝仁
2024.07.21 クルマ情報
-
スズキに関する情報
-
-
スズキ『スイフト』新型のツートンカラーが「オートカラーアウォード2024」特別賞に
2024.12.21 ニュース
-
-
-
『フロンクス』がワイルドに変身!? “最後の“スイスポも登場、スズキ「東京オートサロン2025」出展
2024.12.20 ニュース
-
-
-
スズキ『スイフトスポーツ』生産終了を正式発表、特別装備の「ZC33S ファイナルエディション」を限定生産へ
2024.12.18 ニュース
-
-
-
スズキ「CES 2025」に初出展、軽トラック『スーパーキャリイ』や電動モビリティベースユニット展示
2024.12.17 ニュース
-
-
-
マツダ『CX-80』がオートカラーアウォード2024グランプリ受賞
2024.12.16 ニュース
-
-
-
ジムニー×沖縄=新たな発見の連続!スズキ・ジムニーは自分好みに遊べる
2024.12.15 愛車広場
-
-
-
ジムニーを極めたいと行き着いた「サムライ」。憧れだったクルマに乗って広がったライフワーク
2024.12.14 愛車広場
-
-
-
「可愛すぎる!」新フェイス&新カラー採用のスズキ『ワゴンR スマイル』にSNSのファンもニッコリ
2024.12.12 ニュース
-
-
-
スズキ『ワゴンR スマイル』、より可愛らしく内外装を一新…148万9400円から
2024.12.10 ニュース
-
最新ニュース
-
-
ホンダ『プレリュード』、米国でも25年ぶりに復活へ…次世代ハイブリッド車として2025年投入
2024.12.22
-
-
-
名機・A型エンジン搭載の歴代『サニー』が集結…オールサニーズ・ミーティング
2024.12.22
-
-
-
軽自動車サイズの布製タイヤチェーン「モビルシュシュ」が一般販売開始
2024.12.22
-
-
-
スバル「ゲレンデタクシー」5年ぶり開催へ、クロストレックHVが苗場を駆ける
2024.12.22
-
-
-
「カスタマイズは人生に彩りを与える」、東京オートサロン2025のブリッツは『MFゴースト』推し
2024.12.22
-
-
-
ヒョンデの新型EV『インスター』、東京オートサロン2025で日本初公開へ
2024.12.22
-
-
-
スズキ『スイフト』新型のツートンカラーが「オートカラーアウォード2024」特別賞に
2024.12.21
-
最新ニュース
-
-
ホンダ『プレリュード』、米国でも25年ぶりに復活へ…次世代ハイブリッド車として2025年投入
2024.12.22
-
-
-
名機・A型エンジン搭載の歴代『サニー』が集結…オールサニーズ・ミーティング
2024.12.22
-
-
-
軽自動車サイズの布製タイヤチェーン「モビルシュシュ」が一般販売開始
2024.12.22
-
-
-
スバル「ゲレンデタクシー」5年ぶり開催へ、クロストレックHVが苗場を駆ける
2024.12.22
-
-
-
「カスタマイズは人生に彩りを与える」、東京オートサロン2025のブリッツは『MFゴースト』推し
2024.12.22
-
-
-
ヒョンデの新型EV『インスター』、東京オートサロン2025で日本初公開へ
2024.12.22
-