【試乗記】マツダCX-80 XDエクスクルーシブモード/CX-80 XDハイブリッド プレミアムモダン
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マツダCX-80 XDエクスクルーシブモード 6人乗り(4WD/8AT)/CX-80 XDハイブリッド プレミアムモダン(4WD/8AT)
不動の4番
期待と不安がせめぎ合う
ただし試乗にあたっては、一抹の不安があったことを告白しなければならない。今からおよそ2年前、2022年6月に登場した弟分の「マツダCX-60」が、物議を醸したからだ。いや、CX-80より全長が250mm短いからCX-60を弟分としたけれど、早く生まれたわけだから兄貴分なのか?
そんなことはどうでもいいとして、このマツダCX-60は、コーナーでツボにはまった時には快感が脳天を直撃するような気持ちのいいコーナリングを披露するいっぽうで、ちょっとした路面の凹凸でも脳天を直撃するようなハーシュネスを伝えた。
言ってみれば広島からやってきたゴーカートフィーリングで、その得手と不得手の落差の大きさは、漫画『ドカベン』に登場する“花は桜木、男は岩鬼”の岩鬼正美を思わせた。とんでもない悪球をホームランにするクセに、ド真ん中の絶好球を空振りする。漫画だったらキャラが立っていておもしろいけれど、400万円、500万円の買い物なんだからもうちょっと洗練されていてしかるべきではないか、というのが物議を醸した理由だ。
というわけで、期待と不安を胸に、試乗を開始する。マツダCX-80には3.3リッター直列6気筒ディーゼルターボ、この直6ディーゼルを軸としたマイルドハイブリッド、そして2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジンを軸としたプラグインハイブリッドの、3つのパワートレインが用意される。このうち、今回試乗できたのは直6ディーゼルターボとマイルドハイブリッドの2種類。まず試したのは、素のディーゼルだ。
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新世代のFR系プラットフォームを用いた「ラージ商品群」の、トリを飾るモデルとして登場した「CX-80」。日本ではこれがマツダの最上級モデルとなる。
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中間グレード「エクスクルーシブモード」のインストゥルメントパネルまわり。インテリアの意匠は基本的に「CX-60」のものを踏襲。マテリアルや色のセンスのよさ、各部の組付けの精緻さは、欧州のプレミアムモデルに勝るとも劣らない。
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シート表皮はグレードによって異なり、「エクスクルーシブモード」から上のグレードでは、いずれも上質なナッパレザーが用いられる。
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パワーユニットは3.3リッターディーゼルと同エンジンをベースとしたマイルドハイブリッド、2.5リッターガソリンをベースに電動化したプラグインハイブリッドの3種類。「CX-60」とは異なり、2.5リッターの純ガソリンエンジンは用意されない。
快適でありながら、運転している実感が持てる
でも、このクルマがカッコいいことはすでに知っている。問題は乗り心地だ。マツダの回し者ではないし、1円たりともマツダからもらっていないけれど、20代の頃に「ロードスター(NA)」にクルマの楽しさを教えてもらった者として、マツダに感謝はしている。祈るような気持ちでステアリングホイールを握り、海辺のワインディングロードにCX-80を連れ出した。
するとどうでしょう。ところどころに補修の跡が残り、洗濯板状のうねりも放置された、あまりコンディションがよいとはいえない海沿いの道を、マツダCX-80はスマートに駆け抜けた。
乗り心地がいいといっても、路面の不整をなかったことにするボヨヨン系やふわふわ系の乗り心地のよさではない。凹凸をしっかりとトレースして、「ここに路面コンディションの悪い箇所がありますよ」とドライバーに伝えつつ、そこを乗り越える瞬間に発生する衝撃の角を丸めてくれるタイプの乗り心地のよさだ。
だから、運転しているという実感はありながら、快適な乗り心地に身を委ねることができる。ファン・トゥ・ドライブと快適性が、いいあんばいでバランスしている。
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試乗コースには写真のように道のうねったワインディングロードも含まれていたが、「CX-80」はそうした場所も軽快かつ快適に走ってくれた。
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タイヤの形状は細身・大径で、そのサイズは「XD/Sパッケージ」が235/60R18、他のグレードは235/50R20となる。
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「XD/Sパッケージ」以外のグレードに装備される、12.3インチのフル液晶メーター。「XD」以外のグレードでは、フロントガラス照射タイプのカラーヘッドアップディスプレイも装備される。
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中・上位グレードに装備される12.3インチのセンターディスプレイ。新たにコネクテッドナビが採用されたほか、「Alexa(アレクサ)」による音声操作機能が搭載された。
上級モデルならではの静粛性へのこだわり
ここで運転を交代して、後席の乗り心地を試す。率直に言って、前席に比べるとやや路面からの突き上げがキツくなるから、前席が特等席ではあるのだけれど、その差は小さい。2列目シートにはリクライニングやスライド機構が備わることもあって、快適に過ごすことができる。
感心したのは静粛性の高さで、後輪のホイールハウスに近いはずの2列目シートに腰掛けても、声を高めることなく前席の人と会話ができる。確認したところ、インストゥルメントパネルの奥に位置するインシュレーターやリアホイールハウスの遮音材を増し、やはり遮音材の役割を果たすフロアカーペットを厚くし、トランスミッションもノイズを抑えるべく制御を変えるなど、静粛性の確保には万全を期したとのことだった。ちなみに、これだとエンジンの音が聞こえなくて物足りなくなるので、気持ちのいい周波数では音を盛っているとのこと。
3列目シートに座ったホッタ編集部員からは、スペース的には身長170cmくらいの人なら問題ナシとの報告を受けた。話は飛ぶけれど、CX-80の先代にあたる「CX-8」は隠れた名車で、街でこのクルマを見かけると、「いいのに乗られていますね」と声をかける……とアヤシイ人になってしまうので、心の中でひそかにつぶやいていた。CX-80とCX-8の違いはいくつもあるけれど、3列目のスペースは圧倒的に違う。3列目の頭上空間は、CX-80のほうが30mmも余裕があることを記しておきたい。
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四国を出て、淡路島に渡る。「CX-80」は予防安全システムも充実しており、ドライバーの異常を検知して車両を自動停車(自動車専用道路では路肩に寄せて停車)させる「ドライバー異常時対応システム」も装備される。
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シートレイアウトに関しては、3列6人乗りと同7人乗りをグレードに応じて設定。「エクスクルーシブモード」と「エクスクルーシブスポーツ」のみ、2列目ベンチシートの7人乗りと同セパレートシート(写真)の6人乗りの両方が用意される。
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3列目シートは身長167cmのwebCG堀田が乗った場合、頭上にこぶしひとつ分(ただし横向き)のゆとりがある。足はやや体育座りとなるが、2列目席と空間をシェアすれば、そこそこ快適といえる。
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荷室容量は、3列目シート使用時で258リッター、3列目シート格納時で687リッター、2・3列目シート格納時で1221リッターとされている(床下収納含む)。
エンジニアの努力のたまもの
今回はメーカー主催の試乗会だったので、厳密に燃費を計測することはできなかったのだが、燃費を気にせずドライブする限り、マイルドハイブリッドは環境技術というより、上質で楽しいドライブフィールを提供する技術という印象を受けた。
山あいのワインディングロードでは、どちらのパワートレインも気持ちよく曲がってくれる。ノーズが素直にインを向き、シームレスにロールを深めながら、きれいなフォームでコーナーをクリアする。ゴーカートフィーリングはなく、フィギュアスケートフィーリングだ。
この身のこなしと乗り心地のよさを両立したことについてエンジニアに話を聞くと、やはり開発陣もマツダCX-60での評価を気にしていたようで、通常なら日本とヨーロッパで同じ足まわりのセッティングにするところを、CX-80は日欧それぞれでチューニングをつくり分けたのだという。具体的には、日本仕様はリアのスプリングレートを下げて乗り心地の改善を図りつつ、ダンパーの減衰力を上げてハンドリングを担保したそうだ。
ほかにも、CX-80ではリアのスタビライザーを廃止したり、ややアンダーステア方向の味つけにしたりするなど、快適性を確保するための変更がなされている。おおらかな乗り心地と軽快なドライブフィールを両立するという難題は、こうしたエンジニアの努力によって解決したのだ。
参考までに、先代のマツダCX-8のサスペンション形式は、フロントがストラットでリアがマルチリンク。CX-60/CX-80といった新しいラージ商品群は、フロントがダブルウィッシュボーンでリアがマルチリンク。こうした変化にCX-60はややついていけなかったけれど、時間的に余裕があったCX-80はしっかり対応したということだろう。CX-80に施された改善策は、やがて兄弟車のCX-60にも水平展開されるはずだ。
CX-60を岩鬼正美のようだと書いたけれど、CX-80はまるで違った。気はやさしくて力持ちの山田太郎だ。山田太郎にしては、メルティングカッパーメタリックのボディーカラーや「プレミアムモダン」の内装はカッコよすぎるかもしれない。けれど、ヨーロッパで列強と戦うわけだから、これくらいのおしゃれは必要だろう。
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2日目に試乗した「CX-80 XDハイブリッド プレミアムモダン」。「プレミアムスポーツ」と並ぶCX-80の最上級グレードだ。
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和の美感を取り入れたという「プレミアムモダン」のインテリア。ダッシュボードなどの表皮には、ホワイトの織物が用いられている。
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センターコンソールなどには本杢(メープル)のウッドパネルを採用。各所に用いられたクロームメッキの装飾も目を引く。
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「エクスクルーシブモダン」と「プレミアムモダン」には、ピュアホワイトのナッパレザーシートが装備される。
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車内に開放感をもたらすパノラマサンルーフ。上級グレードの「プレミアムモダン」「プレミアムスポーツ」には標準で装備される。
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試乗を通して高い完成度が感じられた「マツダCX-80」。先達にあたる「CX-8」とは異なり、欧州市場にもマツダの最上級モデルとして投入される予定だ。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4990×1890×1710mm
ホイールベース:3120mm
車重:2070kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:231PS(170kW)/4000-4200rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1500-3000rpm
タイヤ:(前)235/50R20 104W/(後)235/50R20 104W(トーヨー・プロクセス スポーツ)
燃費:16.7km/リッター(WLTCモード)
価格:545万0500円/テスト車=557万1500円
オプション装備:電動パノラマサンルーフ<チルトアップ機構付き>(12万1000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:5519km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
マツダCX-80 XDハイブリッド プレミアムモダン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4990×1890×1710mm
ホイールベース:3120mm
車重:2120kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:254PS(187kW)/3750rpm
エンジン最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)/1500-2400rpm
モーター最高出力:16.3PS(12kW)/900rpm
モーター最大トルク:153N・m(15.6kgf・m)/200rpm
タイヤ:(前)235/50R20 104W XL/(後)235/50R20 104W XL(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンスSUV)
燃費:19.0km/リッター(WLTCモード)
価格:632万5000円/テスト車=640万2000円
オプション装備:ボディーカラー<アーティザンレッドプレミアムメタリック>(7万7000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2825km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
マツダ CX-80に関する情報
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