【試乗記】ホンダ・シビックRS(FF/6MT)/シビックEX(FF/CVT)
納得の出来栄え
マイチェン前との実質的な価格差は?
外観で変わったのはセンターグリルとバンパーだ。従来はセンターグリルが上広がり、バンパーグリルが逆に下広がりで、上下グリルで、レクサスでいうスピンドル形状を形成していた。対して、今回の新フェイスはセンターグリルが下広がりで、バンパーグリルが上広がりとなった。で、上下グリルを合わせると、六角形というかダイヤモンド形状に見えるようになった。変更は最小限だがイメチェン効果は意外と大きい。
グレード構成については、1.5リッター直4直噴ターボ搭載車(以下、ガソリン車)の6段MTがRS一択となったほか、これまで1グレードだった2リッター直4ハイブリッド「e:HEV」は「LX」と「EX」の2グレードとされた。ガソリン車のCVTは2グレードのままだ。
また、前記の主要メニュー以外にも、先進運転支援システムの「Honda SENSING(ホンダセンシング)」のアップデートも実施。結果、新しいシビックの車両本体価格は、走行性能や装備に大きな変化のないCVTで、従来の約21万円高となった。e:HEVは上級のEX比だと額面上で約33万円の値上げとなるが、同グレードには新たに「電動パノラミックサンルーフ」が標準装備とされたので、マイチェン前との実質的な価格差は、やはり21万円前後という計算になりそうだ。
今回の取材は、東京のど真ん中の「明治記念館」を拠点としたメディア試乗会である。取材班に割り当てられた試乗車は、メダマであるRSとガソリン車のCVTという2台だった。
内外装にも専用アイテムを採用
新車市場全体のMT比率はどんどん下がっているが、それ以上にMT車の選択肢そのものの減少が急なので、今も残る貴重なMTに人気が集中するのだろう。今どきあえてシビックのMTを選ぶような人は間違いなく好事家であり、そういう人たちは“タイプRほどゴリゴリの硬派ではないスポーツテイストを求めている”との判断で、RSを用意した。
その判断がおそらく正しかったことは、先行受注の内訳からもすでに見て取れる。マイチェン版シビック発売段階での約2600台という先行受注のうち、じつに1800台がRSなのだそうだ。その比率は約7割。ちなみに新しいシビックの販売計画は月間500台で、うちRSは150台=3割ということだから、現時点ではその見込みを大きく超えている。
そんなRSの車両本体価格である419万8700円は、マイチェン前の6MT車(の上級EX)より約61万円高い。ただし、他グレードを例にとると、今回のシビックはベース価格として21万円ほどの価格上昇となっているので、軽量シングルフライホイールや「レブマッチシステム」を含めたエンジンの専用チューン、専用のサスペンションや大径ブレーキ、ドライブモードなど、RS化のためのコストは40万円弱といったところだ。
また、RSは内外装でも専用部分がいくつかある。外観ではアルミホイールとヘッドライトガーニッシュ、ドアミラー、シャークフィンアンテナなどがRS専用にブラック化される。内装ではステッチ類を含めて、各部にスポーツモデルのお約束ともいえる赤色をあしらう。
低速で出やすい運転技量の差
ただ、今回は市街地と首都高速での短時間試乗となった。よって、ワインディングロードでの味わいについては、以前のプロトタイプ試乗記(参照)をご覧いただければ幸いである。
しかし、新しい発見もあった。たとえば、フライホイールが大幅軽量化されたエンジンは、ワインディングロードでは文句なしだが、今回のような低速でのストップ&ゴーでは、少しだけ神経質になっているのも否定できない。もちろん現代のエンジンなので、アイドリングのままでも、ていねいにクラッチミートすれば不平もいわずに動き出す。けれども、半クラッチ状態でアクセルペダルを踏み込むと、予想以上に鋭く吹け上がってしまうので、慣れないとギクシャクしがちだ。
そんなことに文句をいうヤツはRSなんか選ぶな……という話かもしれないが、こうした低速での柔軟性は、より大排気量=2リッターのタイプRのほうが高いのも事実。クラッチのミートポイントもタイプRより分かりにくい。まあ、あらかた慣れが解決してくれるだろうが、RSはタイプRより低速で運転技量の差が出やすい。
ワインディングロードや高速道では姿勢変化の小ささを実感させるRSだが、今回のような市街地だと、同時に乗ったCVTと大差ない乗り心地に驚かされる。RSではコイルとスタビライザーを明確に締め上げたうえに、5mmほどローダウンしている。コイルのバネレートは従来比でフロントが2割、リアが3割ほど高く、減衰力も明確に上がっていることを考えると、その乗り心地は望外に快適といっていい。
RSのダンパーは本体からして大容量タイプとなっており、「動き出しから減衰がきっちり立ち上がるのが、段差の乗り越えなどで効いています」とは開発担当氏の弁である。
RSのシャシーは出色のデキ
従来型の車載ナビならGPSにジャイロを組み合わせて、位置検出はほぼ途切れることはない。聞けば、Googleマップにジャイロなどを組み合わせることも、技術的にはもちろん可能である。しかし、Googleがそれを許さないのだそうだ。
標準のGoogleマップを使うには基本的に通信契約が必要で、新車購入から1年間は通信料が無料となるが、2年目からはオーナーに課金される。そうなると「通信不要の従来型ナビがいい」というニーズも出てくるかもしれない。しかし、今のところは、アコードともども従来型ナビのオプション設定はない。
さて、プロトタイプでのワインディングロード試乗に加えて、今回のような市街地でも、RSのシャシーのデキには感心した。となれば、マイチェン前、もしくはCVTのシビックに、RSのサスペンションだけでも移植できないか……などという邪心もわくというものだが、前記のとおりダンパーも大容量タイプなので、そのままではつかないという(そりゃそうか)。
たとえば、フロントナックルは大容量ダンパー(や大径ブレーキ)に対応した専用品だそうだし、リアもトレーリングアーム以外の横置きアームはすべて、高剛性のタイプR用のものに置き換えられているんだとか……。これだけ手の込んだ内容であれば、40万円弱というRS化のコストも納得というか、逆に安いくらいではないかとも思ってしまう。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4560×1800×1410mm
ホイールベース:2735mm
車重:1350kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:182PS(134kW)
最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)
タイヤ:(前)235/40R18 95Y XL/(後)235/40R18 95Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック2)
燃費:15.3km/リッター(WLTCモード)
価格:419万8700円/テスト車=434万7200円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイト・パール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット(5万2800円)/ドライブレコーダー前後2カメラ(5万7200円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:890km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ホンダ・シビックEX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4560×1800×1415mm
ホイールベース:2735mm
車重:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:182PS(134kW)
最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)
タイヤ:(前)235/40R18 95Y XL/(後)235/40R18 95Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック2)
燃費:15.7km/リッター(WLTCモード)
価格:379万8300円/テスト車=396万8800円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムクリスタルレッド・メタリック>(6万0500円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット(5万2800円)/ドライブレコーダー前後2カメラ(5万7200円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:765km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
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