独自の道を行く。 [13代目クラウン 寺師エグゼクティブチーフエンジニア](2/3)
アメリカで開発チームを創る。
- インタビュー中の寺師 茂樹氏
製品企画に異動して初めて担当したのは、2代目ウィンダム。 次に、北米向けカムリを担当していた2000年、アメリカ駐在になりました。その頃、北米専用車は企画から現地でおこなっていこうという動きになり、カムリをベースにしたクーペ『ソラーラ』をアメリカで開発することになったのです。
行ってみると、いろいろ大変なことがありました。一番の問題は、若いアメリカ人エンジニアたちの間にあった“困ったら最後は本社のエンジニアが助けてくれる”という甘えの構造。
私は、「NO EXCUSE」というスローガンを打ち出しました。若いエンジニアにも責任ある仕事を任せ、言い訳を許さず、チームとしての仕事のやり方をみんなで考えていったのです。
当初は混乱も出ましたが、彼らは徐々に変わっていきました。それまでは、どんなに忙しい時も定時になるとさっさと帰宅していた彼らが、自主的に残業や休日出勤をするようにもなったのも、その現れでした。
責任のある仕事はしんどい反面、ヤリガイが生まれます。ソラーラの開発チームは「自分たちの手でクルマを創り上げるんだ」という自覚を持ったチームに変わっていったのです。
日本に帰ってきた今も、当時の仲間とは、アメリカ人、日本人を問わず、同士という感じの良い付き合いが続いています。私にとっても、今につながる貴重な体験でしたね。
- インタビュー中の寺師 茂樹氏
名車『ZERO CROWN』をどう変えるか。
- 先代・『ZERO CROWN』こと12代目クラウン
※写真はクラウンアスリート
ソラーラの後、さらに『アバロン』の開発にも関わっていたのですが、2005年、日本に帰ることになりました。
「帰ったらクラウンを頼む」と言われて、プレッシャーを感じたのを憶えています。クラウンと言えば、長年トヨタを支えてきた、まさに真ん中にあるクルマ。それまで手掛けたクルマとは、社内外からの注目度がまったく違います。これは大変だぞ、と思いましたね。
帰ってきて、あらためて12代目クラウン、いわゆる『ZERO CROWN』に乗ってみて感心しました。それまで私は、クラウンは落ち着きすぎていて自分が乗るクルマではないと思っていたましたが、乗ってみたZERO CROWNは、本当に良いクルマだと思いました。迷わず自分で『アスリート』を購入して、通勤に使うことにしたほどです。
私が担当することになった時点で、13代目は、プラットフォーム、エンジンなどを先代ZERO CROWNから引き継ぐことが決まっていました。そうすると、目に見える特徴が出しにくいのです。なにせ先代は、主要コンポーネントをすべて一新し、外から見て分かる変革を遂げていましたからね。
一方、クルマを取り巻く環境は変化を続けており、なかでも安全や環境については、社会からの要望がどんどん高くなっています。そうした中で、クラウンというトヨタを代表するクルマをどういう想いで創るのかが問われていました。
私は、12代目が“外から変わった”のであれば、13代目は“中から変える”べきではないかと考えました。助手席や後席に大切な人を乗せるクルマとして、快適性、安全性を感動的なまでに高めたいと考えたのです。
- 先代・『ZERO CROWN』こと12代目クラウン
※写真はクラウンアスリート
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