トヨタ・ノア/ヴォクシー徹底ガイド 試乗インプレッション

  • 4代目ヴォクシー

新たなプラットフォームや新開発のハイブリッドシステムを搭載し、文字どおり生まれ変わった「トヨタノアヴォクシー」。一般道を中心にドライブした印象をリポートする。

落ち着かないほどの(?)開放感

新型ノア/ヴォクシーの運転席に座ると、最初に感銘を受けるのはその開放感だ。フロント三角窓の巨大さは開発陣の自慢だそうだが、なるほど、慣れないうちは落ち着かないほどに室内は明るい。さらに、別項でも記したが、収納の充実ぶりも特筆すべき点だ。シフトレバー脇の一等地にスマートフォンに最適なトレイが配されるのは、いかにも現代的である。しかも、そのトレイが2階建て構造となっており、いわゆる“床下”にはUSB接続端子とケーブルが収納できるようになっているのが、目からウロコの便利さである。

  • 4代目ヴォクシーのインパネ

自然なドライビングポジションがとれる

その次に気づかされるのは、乗用車として自然なドライビングポジション(ドラポジ)である。先代より明らかに低めで、そして手足を自然に前に伸ばした姿勢で落ち着く。この自然なドラポジは、新型ノア/ヴォクシーがTNGA思想で設計された「GA-C」プラットフォームを土台としているからだ。ちなみに、歴代ノア/ヴォクシーは2001年にデビューした初代から2021年まで販売された先代(3代目)までの約20年間、基本的に同じプラットフォームを改良しながら使っていた。広い室内空間を優先すべきミニバンでは、パッケージレイアウトの考え方も乗用車とは違っていたからだ。

  • 4代目ヴォクシーの運転席

長距離でも疲れにくいセカンドシート

フロントシートがGA-Cプラットフォーム由来の新世代になっているのに加えて、今回はセカンド&サードシートも新設計という。

セカンドシートは最近の主流である左右独立式キャプテンシート(7人乗り)とベンチシート(8人乗り)の両方とも座面長と座面幅が拡大されており、座り心地の向上も明らかである。床に対するシート高(専門用語で言うヒール段差)が大きめなのもノア/ヴォクシーの伝統的な美点で、ヒザが適度に曲がった健康的な着座姿勢になるので、長距離でも疲れにくい。

  • 4代目ヴォクシーのセカンドシート

大人がきちんと座れるサードシート

サードシートは収納性を考えて薄型軽量なネット式となったが、シート自体のサイズはほぼキープされており、大柄な成人男性にも必要十分なスペースと座り心地を提供してくれる。これより小さなミニバンや3列シートを持つSUVもこの世には存在しているが、成人男性がサードシートにまともに座れるクルマは、このクラスのミニバンが最低限であることを、あらためて痛感する。

繰り返しになるが、新型ノア/ヴォクシーは乗用車の「プリウス」や「カローラ」、あるいはSUVの「C-HR」などと同じGA-Cプラットフォームを採用したことで、乗用車的に自然なドラポジを得ただけでなく、サスペンションなどもよりポテンシャルの高いものになった。運転席がより低く後方に移動したほか、サスペンションなどのメカニズム用の空間も先代より増えているそうだが、セカンド&サードシートの居住空間が狭くなったようには感じない。

  • 4代目ヴォクシーのサードシート

先代よりも明らかにパワフル

そんなGA-Cプラットフォームに新開発パワートレインのおかげもあって、走りの進化は誰もが分かるくらいに如実である。全体に上下左右に動きの少ないフラットな姿勢が印象的だ。剛性感も高く、ちょっと身構えてしまうような大きな凹凸を乗り越えても、低級な突き上げやきしみ音は出ない。

1.8リッターのハイブリッドシステムは新開発で、初代プリウスから数えると第5世代にあたるという。8年前に発売された先代ノア/ヴォクシーのそれは第3世代であり、そこからの進化はけっこう飛躍的である。この第5世代ハイブリッドは小型軽量化や効率向上も自慢なのだが、走行性能における恩恵も大きい。まずは、これまでよりはっきりパワフルだ。さらに走行中にエンジンが止まったり始動したりするのがハイブリッドの特徴だが、そのエンジン駆動の出入りが、意識しないとほとんど気づかないくらいスムーズである。

運転が楽しい2リッターエンジン

また、アクセルペダルのオンオフに対して、加速側も減速側も滑らか、かつ正確にレスポンスしてくれるのもいい。同時にGA-Cプラットフォームの恩恵か、ステアリングやシートから伝わってくる接地感も濃厚。アクセルやステアリングの微妙な操作がピタリと決まるので、同乗者を不快にさせない運転がすこぶるやりやすい。また、2リッターガソリン車もこれまでどおり用意されるが、ハイブリッド以上に軽快で活発。運転するだけならハイブリッドよりも気持ちいいくらいである。

  • 4代目ノアの走行シーン

運転がうまくなったようだ

大幅に進化した予防安全装備の多くは、平時にはおいそれと試せないが、「トヨタセーフティセンス」の新機能といえる「プロアクティブドライビングアシスト(PDA)」の効能にはちょっと感心した。PDAは前走車やカーブを検知してアクセルやブレーキをさりげなくアシストする機能だが、実際にはドライバーにそれと意識させることなく、前走車の減速に合わせて優しいブレーキをかけたり、絶妙な加減速で車間距離を保ってくれたりするのだ。最初はまるで自分の運転が勝手にうまくなったような錯覚をしていたのが、途中でそれがPDAのおかげだと気づいて、驚いてしまった。

[GAZOO編集部]

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