思いやり運転のススメ…安東弘樹連載コラム
昨年の3月に退社し、それ以降、ほぼ毎日、仕事でもプライベートでもクルマに乗るようになりました(会社員時代も仕事以外で、ほぼ毎日運転してはいましたが…笑)。
ただ、残念ながら、それにともない、悲しい気持ちになることも増えたのです。どういうことかと申しますと、最近、マナーの悪いドライバーに遭遇することが増えたからです。
以前もコラムで書かせていただきましたが、ウィンカーを点滅させずに車線変更をするドライバーは激増し、合流時にわざと車間をつめて、合流を妨げたりするドライバーを目にすることも増えました。
また、これは何か流行りでもあるのか、2車線以上の道路において、追い越し車線を走っているクルマが、なぜかその車線の左側に極端に寄って、左側のタイヤが車線境界線(レーンマーク)を踏んでいる位置で走っていたり。
横断歩道で歩行者が立っていても止まらないクルマ、健常者なのにもかかわらず車椅子のマークが書かれた優先駐車場に停めるドライバ-も増えています。
そして、とにかく余裕が無くなってきている、というか攻撃的で敵意にも似た感情を他のクルマに向けるドライバーに出くわす機会が増えたと思うのは私だけでしょうか?
確かに最近の日本は不況も長引き、災害も頻発、格差も拡大していることで、不満や不安を感じる機会も増えています。これはドライバーだけのことではなく日本全体から余裕と、それにともなう思いやりが希薄になっている様な気がしてならないのです。
特にクルマの場合、お互いの顔が見えにくいということもあり、感情をぶつけ易いのかもしれません。
顔が見えにくいということで言えば、最近の多くのクルマが、UVカット・プライバシー処理が施されている、色のついたガラスが装着されています。
少し前までは全面が透明なウィンドーでしたので、ドライバー同士、相手の表情や動作まで分かりました。
例えば車線変更しようとしているクルマを、少し減速して前に譲り入れたりした場合、前のクルマのドライバーが手を振って、お礼をしてくれているのが直接見えたり、逆に前のクルマのドライバーは、手を振ったことに対する後ろのドライバーのリアクションを、バックミラー越しに確認できたりしたものです。
クルマの運行上、一番必要なドライバー同士のコミュニケーションが、現在より密だったのではないでしょうか?今は同じ状況の場合、ガラスに色がついているので、手を振ったところで、後ろを走るドライバーには見えません。
ですから、日本では、世界でも珍しい、ハザードランプを点滅させて感謝の意を示すという習慣が広がったのだと思いますが、やはりお互いの表情を確認しあうコミュニケーションには叶いません。
無理やり割り込んできたクルマが、“とりあえず”1回だけハザードランプをパッと点けたのを見て不快に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?顔が見えないからこそ、その様なことが気軽にできてしまうのだと思います。
元々「内弁慶」と言われる日本人が、社会の閉塞感や気持ち的なクルマ離れ、それにともなう、クルマそのものに対する愛情の希薄化など、様々な複合的な要因によって、運転時に攻撃的になってしまっているのだとしたら、これから先も、その様な傾向が続いてしまう可能性もあります。
しかし、そうなってしまったら、こんなに悲しいことはありません。ずっとクルマを愛していきたい私としては、笑顔で路上を走っていきたいのです。この原稿を読んで下さっている皆さんは、恐らく、クルマへの愛がある方だと思いますので賛同していただけると思います。
だとしたら、どうか皆さん、周りのドライバーにマナーの良い、何より他者に優しい運転を心掛ける様に伝えていただきたいのです。クルマというのは、扱い次第で、強力な凶器になります。
余裕や思いやりが無いドライバーが運転すれば、それは周りのドライバーからしたら恐怖でしかありません。
さらに最近は、「悪気」は無いものの、道交法の理解不足や、クルマへの知識不足が要因で、図らずも危険な運転をしてしまっているドライバーも増えています。クルマの運転が簡単になることによって緊張感が薄れ、結果として危険運転を誘引してしまうということもあると私は思っています。
緊張感と余裕というのは矛盾すると思われる方もいらっしゃると思いますが、余裕があるからこそ、適度な緊張感も維持できますし、何より「思いやり」に繋がります。
全てのドライバーが思いやりと精神的余裕を持って運転する様になれば、極論を言うと、事故は限りなく0に近づくでしょう。
この原稿を書いている翌日からお盆休みが始まります。最大9連休という方もいらっしゃる大型連休ですので、クルマで里帰りやレジャーに出掛ける方も多いでしょう。
しかも普段はあまり運転する機会が少ないドライバーが運転することも多いと思われます。
慣れない運転を長時間するのは大変だと推測できますが、技術よりも他者(他車)を思いやる気持ちを持っていただければ、自らの事故も防ぐことに繋がります。
お盆中、渋滞は避けられないとは思いますが、マナー違反や危険運転による痛ましい事故だけは起きない様に祈ります。
また私はお盆中、ずっと仕事ですので、普段通り都内を中心にクルマで移動することになります。
普段から首都高を含めた都内の道を走っていて慣れているドライバーから良く聞くのが「お盆中は慣れないドライバーが首都高や都心をウロチョロして迷惑だ」という類の言葉ですが、それも間違った考え方だと私は思います。
いかにも慣れていないクルマを見かけたら、大きな心で、フォローしてあげる位の気持ちで接しませんか?慣れていないドライバーが首都高や入り組んだ都内の道を走ったら、戸惑うのは仕方がありません。正直、首都高の構造はカオスです。
慣れているドライバーが煽ったり、いたずらにクラクションを鳴らしたりすれば慣れていないドライバーを焦らせ事故のリスクを高めるだけというものです。もし自分が慣れていない大阪や名古屋の都市高速を走っている時に煽られたりしたら、嫌な気分になりますよね?
クルマの運転は思いやりと相互理解!このことを皆さんにも意識していただきたいですし自分自身も改めて胸に刻もうと思います。
安東 弘樹
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