始まりました!2020年…安東弘樹連載コラム

ついに始まりました。2020年。
21世紀になって、早20年目。あまりに月日が経つのが早くて、茫然とします。
つい最近「いよいよ21世紀!」等と騒いでいたと思ったら、あれから20年以上経ってしまったんですね。その間、クルマの進歩は早かったのか遅かったのか、判断ができない自分に、先日、ふと気付きました。

クルマの動力源のメインは未だ内燃機関ですし、何と言っても、まだ空中を浮遊せずタイヤで走っています。私が子供の時に持っていた「21世紀の世界」という本にはクルマは空中を浮いて走行(飛行?)していました。自動運転も、完全実現にはまだ暫く掛かるでしょう。
そう考えると、30年前と比べても、意外とクルマ自体は革命的には変わっていない、と言っても過言ではありません。

さあ、そんな中での2020年です。
例えばEVに関して言えば、昨年、その種類は輸入車を中心に増えましたが、日本メーカーから新しいEVは出現しませんでした。

今年は、いよいよTOYOTAがEVを発表すると言われていることから、日本でも本格的にEV化が加速する、という意見も聞こえてきますが、実は私個人としては懐疑的です。日本人の保守性等も影響してくるかもしれませんが、EVの価格の問題もあるでしょう。そして何より、インフラが、まだまだ未整備と言わざるを得ません。

昨年、私はEVを1週間程借りて生活してみましたが、毎日最低100kmを走行する私には、やはり航続距離に不安が残りました。正確に申し上げると、クルマの航続距離に不安や不満を持った、というより、充電設備の少なさに驚いたというのが本音です。

日本という国は、EVを普及させようとしていないのではないかと感じました。

電気の供給源に対する明確な解答に迷いがあるのか、理由は分かりませんが、長距離走行に必要な高速道路のサービスエリアや、パーキングエリアの充電設備は、恐らく先進国の中でも、かなり貧弱と言えるでしょう。

実際に確認してみると、大きなサービスエリアでも多くて3基。実際は2基の所が多く、パーキングエリアでは1基の所が大半です。しかも、故障している充電器も少なくなく、現状、EVは街乗りだけで使って下さいと、国に言われているような気分になります。

そして、出力が小さいのも日本の特徴で、“チャデモ方式”による「急速充電器」の出力は50kw。欧米の“コンボ式”では、以前から150kw~350kwの出力で運用しています。しかもサービスエリア等では30分で他のクルマに譲らなければならず、実際に私の借りたクルマでは30分充電で100kmほどしか航続距離は伸びませんでした。

今後、日本でも“チャデモ方式”のまま出力を高める計画だそうですが、そうすると、電力の供給源や充電設備のコスト等、さまざまな問題が浮上しそうです。

クルマの進歩は、これまでメーカー自体に委ねられる割合が高かったと言えますが、これからは国や自治体、エネルギー供給会社等の協力無しでは、未来図を描くことはできないでしょう。

はっきり言えるのは、今現在、クルマの未来に関して、誰も「こうなる!」と断言するのができないということです。

将来、クルマは全てが電気で動くのか、燃料電池等、水素で動くのか、内燃機関は完全に無くなるのか。それとも共存させていくのか。
また、それに付随するエネルギー問題も、化石燃料は、いつまで使うのか、原子力はどうするのか、自然エネルギーだけでやっていける時代は来るのか。(ちなみに、自然エネルギー、再生可能エネルギーの可能性に関して、どうして専門家の間で、こうも意見が分かれるのか私には理解できません)方向性が見えない原因は技術的なことなのか、それ以外のことなのか。

明確な解答は、現状、出ないでしょう

実は、最近、クルマの将来像について、周りの方から訊かれることが多いのですが、「分かりません」と答えるしかなく、情けない限りです。個人的には全ての動力源に興味はありますし、否定もしません。

EVの楽しさにも目覚めましたし、燃料電池車の運転は、これまでのクルマと殆ど変わらないことも理解しました。ただ、自分で運転するのが大前提ですので、完全自動運転しか許されない時代になったら、クルマへの興味は激減するでしょうし、極端な話、生きていける自信すらありません(笑)

私の存命中は、そんな風にはならないと思いますので、生きた時代に恵まれたとはいえるでしょう。

50年後に生まれていたら、「運転の楽しさ」という言葉すら無い時代を過ごさなければならなかったかもしれませんので…。

もっとも今の時代でも、私に最高の快楽を与えてくれるMTのクルマは、既に絶滅危惧種になっており、クルマの選択に悩まなければならなくはなっていますが(泣)、特に日本において、この傾向は顕著になっているので、それが残念でなりません…。

話が少し逸れましたが、2020年は、自動車の未来への方向性が少し見えてくるような気はしています。

繰り返しになりますが、日本において、圧倒的なシェアを誇るTOYOTAがEVを販売し始めることによって、インフラも拡充してくるのではないかと思いますし、自動化も、やはりTOYOTAが、あれほどCMでアピールしていることを考えたら、今年中にもアクティブクルーズコントロールを作動させている時に、ステアリングから手を放すことが許される基準も変わってくるかもしれません。

ただ、少数派とはいえ、YouTube等を観ていると、確実に運転自体が好きな人はいます。バイクのように、趣味でクルマを楽しんでいるような人も存在しています。どうか、そういった人達のことも、メーカーや国は見捨てないでいただきたいと切に願います。

クルマは凶器にも棺桶にもなりますが、責任感を持って正しく使えば、便利で楽しい相棒になるんです。

もし、その責任を軽視し、無謀で危険な運転をする人が増えれば、より早く完全自動運転にしなければならなくなるでしょう。勿論、交通弱者と言われる方々(私も25年も経てばそうなると思います)には自動化は福音になりますが、運転が禁止される可能性に関しては、モラルが問われることになりそうです。

しかし、最近のそんな状況でも、ここ数年で各メーカーから「運転の楽しさ」という言葉が出始めてきたのは嬉しい限りです。

メーカーが生き残りを掛けて方向性を考える際に、「楽しさ」をキーワードに残してくれているのは、安全や持続可能性との共存を念頭に入れてくれていることの証だと、私は信じています。

昨今、クルマにとって100年に1度の変革期と言われていますが、逆に言えば100年間もの間、あまり変わらなかった、とも言えるでしょう。
通信分野が、この100年で、どれだけ変わったか、を考えると、これほど変わらなかったクルマの未来予測が難しいのは無理もないかもしれません。

さて2020年という、キリが良いこの年に大変革が訪れるのか、はたまた、あまり変わらないのか。今年最後のコラムで、答え合わせをするのが楽しみです。

何はともあれ、皆様にとって、2020年が幸多き1年になりますよう、祈念して結びとさせていただきます。

今年も宜しくお願い申し上げます!

安東 弘樹

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