GAZOO.com 座談会 その3 「平成5大クルマニュース・令和のモビリティ展望」Car Watch 編集部 谷川氏

2019年12月、GAZOO.com編集部から平成の5大クルマニュースや令和のモビリティ展望などのお題をいただいた。新しい情報、時代を見通す情報を積極的に伝えるのが好きなため、時代を振り返るのはあまり得意ではないのだが、2度目の東京オリンピックの前年となる2019年は、そういったことに適切な年なのかもしれないと思いつつ、平成を振り返りつつ、令和の展望などをお伝えしていきたい。

平成となると、元年の1989年は日本のクルマ業界にとって特別な年で、トヨタ「セルシオ」や日産「スカイライン GT-R」、ユーノス「ロードスター」が…と書きたいところだが、Car Watchの創刊は2008年(平成20年)9月。そのため、ニュースの裏側も見てきた平成20年以降の5大ニュースをお届けしたい。

危機をバネに大きく成長したトヨタ

まず、第一に挙げたいのが、平成20年12月22日の「トヨタ、営業利益が1500億円の赤字」というもの。これはトヨタの記録に残る初の営業赤字で(通期は黒字を確保)、その原因はもちろんリーマンショックの影響だった。この会見を行なうというニュースが編集部に入ってきたため、急遽、名古屋駅前のトヨタ本社に出張し会見を取材。渡辺捷昭社長(当時)や豊田章男副社長(当時)らの会見を記事にした。
この創業以来の営業赤字が、翌年の豊田章男社長の登板、そして現在も進化を続けるTNGA(Toyota New Global Architecture)といった「もっといいクルマづくり」の登場につながっていると思えるからだ。大きな危機を迎えたトヨタが、その危機をバネに大きな成長を見せたのが平成後半の一大トピックだ。

アウディの自動駐車システム「zFAS」

そして、次は自動運転時代の幕開けだろう。記者は毎年1月に米国ラスベガスで開催される「CES」を取材しているが、平成26年(2014年)のCESに登場したのが、アウディの自動駐車システム。これは今ではすっかり有名になった半導体メーカーNVIDIAの「Tegra」チップを搭載した「zFAS」(アウディスタッフは、ズィーファスと発音していた)モジュールを搭載。ちょっとしたノートPCの基板なみの大きさとなっていたが、このzFAS搭載アウディ車が無人で駐車場に入るのを見たときは、「クルマもここまで来たのか~」という衝撃を受けた。
完全自動駐車は法律の問題で実現していないが、人がクルマに乗る形での自動駐車システムはすでにいろいろなクルマに搭載されており、この5年の変化の速さは驚異的に感じる。

モータースポーツ 撤退から復帰・勝利の時代

次に挙げたいのは、モータースポーツ撤退の時代と、復帰・勝利の時代が平成後半に来たこと。
先ほども触れたように、2008年はリーマンショックが起こり、世界中が不況に。その結果、世界でクルマが売れなくなり、多くの自動車メーカーがモータースポーツから撤退するという現象が起きた。
トヨタやホンダのF1撤退(トヨタは平成21年11月4日会見、ホンダは平成20年12月5日会見)は象徴的だったが、トヨタは平成24年にル・マン復帰、ホンダは平成27年にF1に復帰している。
また、トヨタは平成29年にWRC復帰、日産は平成30年からフォーミュラEに参戦するなど、ほとんどの世界的レースに日本メーカーが参戦する珍しい時代となっているほか、平成最終年にトヨタは中嶋一貴選手らとともにル・マン24時間を初優勝、平成29年にはホンダエンジンで佐藤琢磨選手がインディ500をアジア人として初優勝している。
トヨタのWRCタイトル獲得などを考慮すると、日本のモータースポーツのレベルの高さが、世界に認められたのが平成後半といえる。

“見える化”された自動車事故と平成から引き継がれる令和への課題

そして、悲しいことだが自動車事故がクローズアップされたのも、平成のトピックと言える。
交通事故死者数は、平成元年の1万1086人から平成30年の3532人と大幅に減ったものの、悲惨な事故の報道が増加したため、事故死そのものが増えたと思っている人も多い。
近年の事故報道の増加は、ドライブレコーダーの普及により事故が“見える化”されたことや、クルマのエアバックの増加など、搭乗者にとって安全になった結果、歩行者などの事故死がとくに目立つようになったことなどが挙げられる。
ただ、事故は究極のゼロを目指し続ける必要があり、自動車メーカー、そして運転者のさらなる努力が必要だ。平成で事故死ゼロは実現できなかったため、これは令和で実現すべき課題となるだろう。

効率のよい移動方法を模索し始めた時代

最後は、クルマの電動化。ハイブリッド車(HV)であるトヨタ「プリウス」の登場が平成9年、現代の電気自動車(EV)である三菱「i-MiEV」の量産車登場が平成21年。
HV、EV、そしてHVの電池ましまし版のPHVと、さまざまな電動化が進んだのが平成という時代になる。平成後半は世界的なCO2削減目標達成のために、一気にEVへという流れもあったが、EVを構成するのに必要な電池の確保や充電などの問題もあって、EV、PHV、HVなど電動化車両をどうするのがよいか議論になっている。
ウェルトゥホイール(原油を掘る井戸から、移動のためのタイヤまで)という考え方も浸透しつつあり、発電時からCO2排出量を抑制しつつ、効率のよい(CO2発生量の少ない)移動方法をメーカーだけでなく社会が模索している。ただ、確実に言えるのは、ガソリンエンジンのみでは難しい減速時のエネルギー回生を、電動化を行なうことでできるようになるため、マイルドハイブリッドや48Vハイブリッドなど、さまざまな手段が検討されたのが平成であったし、令和になった今でも、未だその答えは出ていない。
電池のブレークスルーがない限りは、一つ一つ地道に効率を上げながら、達成されていくのかもしれない。

令和時代のクルマ、そして、愛⾞・⾃家⽤⾞の在り⽅とは

令和に向けての展望は、交通事故死ゼロの達成、CO2排出量の抑制をいかに成し遂げるかが自動車のポイントになるだろう。いくら自動車が有用なものといえ、交通事故死ゼロ、CO2排出量の抑制に向かって着実に進まない限り、社会が自動車の存在を許してくれなくなってしまうだろう。

お題の最後として、「愛⾞、⾃家⽤⾞の在り⽅」があるが、これは平成の5大ニュースと密接に関係している。

ここ数年、クルマの電動化が進んだ結果エンジンの存在感が低下している。典型的な車種としては、トヨタ「プリウス」でエンジンの出力とモーターの出力、エネルギー回生をスムーズに行なうTHS IIというパワートレーンを搭載しており、エンジンの存在感が非常に小さい。電池ましましのプリウスPHVなら、さらにエンジンの存在感は小さいだろう。自分の愛車のエンジンは直6でソレタコデュアルといった価値観とは、異なる価値観を持ったクルマであり、それが日本のベストセラーになっている現実がある。

では、このプリウスに代表される電動化車両は、愛車としてどうなのだろうと思った場合、十分愛車であることに気がつく。クルマとは移動の手段であり、一緒に移動することで思い出が生まれ、それが愛車の条件であると記者は思う。家族と過ごした思い出、友達と過ごした思い出、恋人と過ごした思い出、そこに移動の相棒であるクルマがあった場合、どんなクルマでも愛車になっていくだろう。

その際の愛車は、自家用車がよいのか、シェアカーがよいのかということは、個人のライフスタイルや価値観による。都市部では駐車場代や税制などのために経済的なハードルが上がっているほか、タクシーや公共交通機関などの代替手段が豊富なため、クルマを所有することのメリットが見えづらくなっている。
一方、田舎などでは公共交通機関がなく(もしくはとても不便な状況)であり、自家用車がないと家族の急病の際など、命に直結する問題もある。
個人の思い、社会の状況など、一人一人によって異なる条件が多すぎるが、自分や家族の成長を自分のクルマと一緒に過ごせると、そのクルマはかけがえのない愛車になるだろう。

(文・写真:Car Watch 編集部 谷川潔)

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