Uber(ウーバー)…安東弘樹連載コラム
最近は、すっかり外出自粛にも慣れ、自宅での時間を、それなりに有意義に過ごせるようになってきました。と言いながら一刻も早いコロナ終息は願いますが…。
そこで使ってみたのが「Uber Eats」です。
改めて説明する必要はないかもしれませんが、簡単に言うと、お店とは別に“流し”の配達スタッフが、お店に商品を取りに行って、それを自宅などの指定場所に届けてくれるという、サービスアプリです。
配達スタッフの移動手段は基本的にバイク、自転車が多く、配達の状況や配達スタッフの現在の位置情報がGPSによってスマホやPC上で確認できるのが便利です。
配達スタッフの顔写真も見られるので到着したときも、何となく親近感があり、初めて配達スタッフから商品を受け取ったときには、思わず「いつもありがとうございます」と声をかけてしまいました(笑)。それに対してスタッフの方は「こちらこそ」と笑顔で返してくれました。
これまで4回ほど、使いましたが、どのスタッフもとても感じが良く、Uber Eats初体験のときに緊張していた自分が、今ではおかしく感じます。
ちなみにUber Eatsは、配達スタッフへの評価システムがあり、評判が悪いと契約できなくなるため、自然と感じがよい人が割合として多くなるということになります。しかも評価の項目が多く、それぞれの項目別に評価できる点もありがたいと感じました。
これまで配達してくれた4人には当然、「いいね!」を付けた事を記しておきます。
さらに便利なのは、家族でデリバリーを頼む場合でも個々に違う店に注文できる、という点です。時間も指定できるため、違うお店の商品を同時に頼めるので、好みが家族バラバラな我が家では重宝することが分かりました。
これまでもバラバラに、宅配のお寿司屋さんとピザ屋さんで、などという頼み方は可能でしたが、料金の下限が決まっているので、中々、注文しにくかったのが現実です。そもそも宅配サービスをやっている店は、あまり多くありません。
もちろん、手数料は多少掛かるのですが、コロナ禍の救世主という風に私は感じています。
すっかりUber Eatsに魅入られた私ですが、ふと、思いました。
あれ、元々Uberはライドシェアのアプリ会社だよな。日本では確か運用がないけど、何で、こんな便利なシステムが普及しないんだろう。
そこで色々と調べました。
またしても説明する必要はないかもしれませんが、簡単にUberによるライドシェアについてお話すると、一般ドライバーが自家用車で配車サービスを行うシステムで、利用者はアプリを使い自分の近くにいるクルマを、スマホ等の画面を見て自分の現在地からの距離だけではなく、顔写真や、車種、これまでの評価もみて判断し、乗ると決めたクルマのアイコンをタッチし、乗る場所と目的地を入力すれば料金が表示されるので、事前に精算もできます。
クレジットカードを持っていれば、アプリは簡単にインストールできるので、すぐに使える点も今風と言えるでしょう。何より、いつくるか分からないタクシーを路上で待つストレスから解放されるだけでもありがたいと言えます。
世界中で普及しているアプリですが、日本では、自家用車による配車サービスは「白タク行為」にあたるとして、現在、このサービスは使えません。Uberの日本法人は既存のタクシー会社と提携してタクシーやハイヤーの配車アプリとして運用しています。
あるタクシー会社では、元々存在していた配車アプリと比べてはるかに利便性が高いという判断で、元々のアプリの改良をやめてUberと契約したそうです。恐らく、さまざまな事情があり日本では普及しないのでしょうが、まずは我々日本人の特性が、ひとつ挙げられるかもしれません。
私がUber Eatsを初めて使ったときに「緊張した」と書きましたが、我々は「未知の物」に対しての警戒心が強いという特性があるようです。また、その裏返しに「知っている会社」「知っているサービス」を無条件で信用するというのも特徴かもしれません。初めて「Uber Eatsを使ってみようか」と妻に持ち掛けたときには「大丈夫?」と言われました。
妻は「新しい物には触れないし、何かを変えるのが苦手」という典型的な伝統的日本人気質を持っているので、想定通りの反応で、思わず笑いながら「何が?」ときくと、「何がという訳じゃないけど、ちゃんと届くのかな。普通の宅配にしない?」との答えが返ってきました。
そこで私がシステムを説明し、「色々と便利だから使ってみよう」と説得し初Uber Eats体験となったのですが、やはり既存のもの以外に対する日本人の警戒感を、妻を通して確認したような気がします。
もちろん、最近の特に都市部の人は変わってきたとは思いますが我々の根底には、まだ島国独特の感性が残っているのかもしれません。
すっかりUber Eatsを信用した妻に食後に配車サービスのUberについて説明し、使ってみたいかをきいてみたら、やはり「怖いから使えない」との返事。私が「何で?」ときいたら「会社に所属している運転手さんなら信用できるけど個人的に自家用車でくる人のクルマに乗る勇気がない」との返事。さらに私が「前にタクシーの運転手さんがすごく怖くて嫌だった」と話していたことを告げ、「会社に所属していても、そういう運転手さんが存在するのが現実だしUberは評価システムがあるから、むしろ怖い運転手さんは滅多にいないかもよ」と続けると、「うーん、でも何だかね」と歯切れの悪い返事が返ってきました。
そう、我々は、個人よりも「看板」を信用する癖があるようです。
90%。
これは日本人の就業者の中における「会社員」の比率です。9割の人が「看板」の下で仕事をしていて、名刺の一番上に多くの場合、個人名よりも大きな字で会社名が書いてあります。
そのため、タクシーも「この会社のタクシーなら安心」等と思うのでしょう。これが実際に期待にそぐわなかったとしても「じゃあ違う会社のタクシーなら安心」と看板を変えてみることはあっても、これまで経験したことがない形態のサービスに対しては二の足を踏んでしまうという特徴が、これまでさまざまな革新を遅らせてきたのは否定できないかもしれません。
さあ、ここでUberの話に戻しますが、私は早く日本でも普及して欲しいと思っています。都会のど真ん中でこそ、タクシーを拾うことは難しくありませんが、少しでも都市部から離れるとタクシーを拾うことは不可能に近いですし、そもそも、タクシー運転手さんの立場で考えても、拾われるまで、ひたすら走り続けなくてはならないのは環境的な観点からも労働環境としても、非効率的と言わざるを得ません。
近くに「需要」が発生したら、それに応えて配車する方が合理的なのは明らかです。しかも評価システムとGPSで全ての契約ドライバーが把握されているため、むしろ防犯の意味でもリスクは少ないと私は思います。
Uberがアメリカで普及し始めた頃、契約ドライバーによる事件が何件か発生したため、タクシー会社等が一斉に非難したのですが、詳しく調べたところ、タクシー会社に所属している運転手による事件の割合の方が高かったということが分かり、逆にUberの安全性が認められてしまった…、ということがあったそうです。日本のタクシー会社は、そんなことはないと思いますが、Uberが危険という根拠は、おそらく「何か新しいもの」に対する嫌悪によるものなのではないかと感じます。
逆に日本でも酔った客が運転手に暴行したり、強盗まで発生することがありますが、Uberの場合、配車した段階でアプリによって、使う方も素性は把握されますし、目的地に着いた時点で決済されるので料金の踏み倒しといった犯罪も防げます。また着いてから現金やクレジットカード等で支払いをするという手間がないので、降車時の時間が掛からないのもメリットでしょう。
もちろん、普及した場合タクシー会社にとって脅威になるのは理解できますし、日本では燃料代がアメリカ等と比べて高価なので、燃料代を自分で払うUberでは契約ドライバーが、どれくらい、確保できるか、また大きい問題として事故が発生した場合の責任の所在や保険の法整備も必要でしょう。しかし、どれも絶対に超えられない壁とは私は思いません。
実は私、もしUberが日本でも配車サービスが可能になったら、空き時間で一度、やってみたいと思っているんです。なにしろ運行したいときだけ運行すればよいので、好きな運転を気軽に仕事の一分にできるのなら、こんなによいことはありません。それに様々な一期一会と言える出会いも悪くないと思います。最初は緊張するでしょうけど。
もしそうなったら、評価の高得点を目指して頑張ります。
皆さんは、日本でのUberの普及、ありですか、なしですか?!
安東 弘樹
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