アルファタウリ ホンダ ピエール・ガスリー選手の優勝…安東弘樹連載コラム

2020年、F1 第8戦、イタリアGP、24歳のフランス人ドライバー、ピエール・ガスリー選手が、見事人生で初めて、F1での勝利をつかみ取りました。

チームはHONDAエンジンを積んだアルファ・タウリ。去年までは、トロロッソ・HONDAというチーム名だったのをご存知の方も多いでしょう。

しかもガスリー選手は去年、シーズン途中でレッドブルからトロロッソに降格させられ、屈辱のシーズンだったと言っても過言ではありません。

しかし、ガスリー選手は、シーズンの後半も腐ることなく新チームで全力を尽くしました。

残り9戦で、ポイントが付与される10位以内の入賞が5戦、その内のブラジルGPでは2位表彰台を獲得、色々な想いはあったと思いますが、成績で応えたと言ってよいでしょう。

そしてチーム名が変わった今年も遅れてはじまったF1を全力で戦い、戦闘力が高いとは言えないマシンで7戦までで入賞4回と粘りのレースを続けてきました。

そして第8戦、ついに歓喜の瞬間が訪れます。イタリアGPの舞台は超高速サーキットで知られるモンツァサーキット。ガスリー選手は金曜日のフリープラクティスから「自分でもなぜ、こんなに速いのか分からない」というほど、好調でした。しかしレース後、ガスリー選手がコメントしていましたが、「優勝は想像していなかった」というほど、相変わらずメルセデスは終始、別次元の速さを誇っています。

でも、最終的に勝利の女神はガスリー選手に微笑んだのでした。

決勝レース開始早々、ポールポジションのハミルトン選手がレースを引っ張ります。

唯、フロント・ロー2番手スタートのボッタス選手は大きく遅れ、これもガスリー選手には後に有利に働くことになりました。

しかし多くの人は、メルセデスのワンツーフィニッシュはともかく、トップを快走するハミルトン選手の優勝は疑わなかったでしょう。


その後、セーフティカーが出たり赤旗中断になる様なクラッシュが起こる中、ガスリー選手は、専売特許の粘るレースを続けます。

そして運命の分かれ道が来ました。トップのハミルトン選手がセーフティカーが出る時のピットウィンドークローズ時にピットイン。ペナルティを受け、ここでガスリー選手がトップに出ます。ちなみにガスリー選手は赤旗中断中にタイヤ交換を済ますことができるなど、運も味方に付けていました。

正に女神が微笑んだ瞬間と言えるでしょう。

その後、トップを走りながらもクルマの性能で勝り予選でも3番手のタイムだった2位を走っているサインツ選手の猛追を受けながら何とか最後まで走りぬき、見事にトップでチェッカーを受けました。

レース後の表彰式でF1では24年振りとなるフランス国歌が流れ、シャンパン・ファイトの後、観客のいない中、表彰台の中央に座り、一人涙を流し感慨に耽っているガスリー選手の姿が忘れられません。

勿論、日本人としてはHONDAエンジンを積んだアルファ・タウリの優勝も嬉しいのですが、それ以上に失意の中でも希望を失わず、粘りの走りでずっと耐えてきた24歳の青年が
生まれて初めてのF1の勝利をつかむ、そのドラマに久しぶりにしびれました。

モータースポーツは道具を使うスポーツで、しかもその道具の良し悪しで結果がほとんど決まってしまう側面もあります。

しかし時として、女神は気まぐれも見せてくれます。そこがスポーツの醍醐味でもあるでしょう。

しかし、愚直な努力と、どんな時でも負けない不屈の精神を持ち合わせていない者に微笑むことは決してないのも事実です。

今回は、そんな普遍的な道理を観た気がしました。

8月23日(現地時間)には佐藤琢磨選手がインディ500の二回目の優勝を果たし100年以上の歴史の中で20人目の複数優勝者になり、こちらは43歳での快挙です。

国境も年齢も違いますがHONDAエンジンで戦う二人の男の歓喜を2週間の内に観ることができて本当に幸せでした。

今回は敢えて深くは触れませんが、日本においてのモータースポーツが、もう少し盛り上がれば良いなとは思いますが、こうやって少しずつ日本のマシンやドライバーが活躍していくことによって、いつの日かまた30年前の様な「熱」が日本にも戻ってくると信じています。

もちろん、理想はナショナリズムと関係なく、純粋にモータースポーツを楽しむ人が日本に増えてくれることですが、現状では欲張り過ぎかもしれません。

何事もガスリー選手の様に諦めずに粘って努力を続けていけば結果は付いてくるでしょう!

色々なことを教えてくれた今回のF1イタリアGPでした。

第9戦も、やはりアルファ・タウリにとってのホーム、イタリアのトスカーナGPです!

しかも今年初めて、観客を入れてのレースになり、しかも地元フェラーリチームのF1参戦1000回目の記念レース。さらに舞台のムジェロ・サーキットはフェラーリがオーナーです。

フェラーリのイベント等が行われているサーキットですがF1の開催は初めてという様々な想いが錯綜するレースと言えるでしょう。

今年はここまでまったくよいところがないフェラーリが、お膝元で意地をみせられるか。勢いに乗ったもう一つの地元チーム、アルファ・タウリがまた奇跡を起こすのか!無論、地力で勝るメルセデスも今回は黙っていないでしょう。

そして忘れてならないHONDAエンジンの本命チーム、今回のイタリアGPでは残念な結果に終わったレッドブルのフェルスタッペン選手も虎視眈々と、勝利を狙っているはずです。

今年のモータースポーツは、どうなってしまうのかと危惧していましたが、これまでのところ、各カテゴリーで、見所の多いシーズンになっているのではないでしょうか。

これも主催や運営の皆さんの努力があってのものですが、やはり己の栄誉や誇りを掛けて命懸けで戦っているドライバー達の想いがあってのことでしょう。

改めて、モータースポーツの醍醐味を実感させてくれたガスリー選手の快挙でした。

いやー、モータースポーツって本当に素晴らしいですね!

安東 弘樹

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