2021年に思うこと…安東弘樹連載コラム
新型コロナウィルスの世界中での感染拡大によって未曽有の事態となった2020年でしたが、今年も終息は見えません。
日本でも1都3県で緊急事態宣言が発令されて、社会活動にもさまざまな制約が課せられています。
私は元々、お酒も飲まず家族以外の方との外食も一年に数回程度、という極めて地味?な生活を送っておりましたので、その点では、あまり生活は変わりません。旅もクルマでの一人旅が中心で、ひたすら運転しているのが楽しく、クルマ好き同士のオフ会のようなものも参加したことがなく、一人で行動するのが基本という、かなりの「陰キャ」と言えるでしょう。
しかし、それでもコロナ禍では、たまに食事をする人とも会うのを躊躇しますので、その度に、普段から複数の人と会って食事をしたり、お酒を飲むのが好きな方にとって、また世界のさまざまな所に旅行に行くのが好きだったような方にとって、今の状況が、どれほどストレスになっているか想像して心苦しくなります。
ただ、このコロナウィルスの感染拡大で、飛行機の飛ぶ本数が激減したこと等から大気中の二酸化炭素が減っていたり、経済活動の停滞により主に新興国の空が澄んできたり有害な排水などが減って公害が少なくなっているという情報を耳にすると、複雑な心境になり、あることに気付いてしまいました。
そもそも、多くの人が、冷暖房のある家に住み、クルマを持ち、余暇で国内外の旅行を楽しめ、コンビニやスーパーマーケットに行けば生活必需品や食料を比較的安価で手に入るような生活を享受できているのは日本を含めた先進国や一部の新興国だけで、その数は地球全体の人口比で圧倒的少数です。
その先進国の人々のために多くの資源が消費され、地球環境が悪くなっているのは、完全なる事実と言えるでしょう。
でも、その状況は限界になってきているのも確かで、ここ10数年で、ようやくSDGsのような目標が掲げられたり、環境意識というものを考えるようになってきましたが、一度、味わってしまった生活を変えることも難しく、中々人類が一枚岩になって、この問題を解決する方向に持っていくのは難しいようです。
クルマが唯一の趣味である私も、明日から環境に悪いクルマは緊急時以外は使用禁止、と言われたら相当苦しむでしょう。
もし、地球環境をすぐにでも正常化したいならば、18世紀以前の生活スタイルに戻す必要があり、とても現実的とは言えません。
確かに人類が個々の楽しみを享受できるようになったのは、19世紀以降で、それまでは一部の特権階級の人以外は、ひたすら自分の生活のためだけに働き、子どもを産み育て、種を繋いでいくことを主な活動にし、ある意味「慎ましく」暮らしていました。
それが特に産業革命以降、一部の国、地域の人々だけが自分のための富を蓄え、18世紀まででは考えられないような贅沢な食事をして、お酒を飲み、さらに第二次世界大戦以降は資本主義国を中心に便利な生活のための道具を揃えられるようになり、「不要不急の」旅行まで、「大衆」と言われる庶民まで楽しめるようになっていきました。
地球全体では、それでも少数の人ですが、その活動量はすさまじく世界中の資源を消費し、さまざまな形で地球の環境は悪化し、結果自分たちの首も絞めつつある、というのが現実です。
コロナウィルスというのは、そんな人類への警鐘なのではないかとさえ考える学者がいるのにも同意している自分もいます。
しばらく、現代文明の象徴とも言われてきた「自動車」を愛している自分も相当、地球を汚してきたのではないかと自己嫌悪にも苛まれました。自動車の地球環境への影響は何も走行時の排気ガスだけではありません。製造時には内燃機関のクルマだけではなくハイブリッド車やEVでも当然、二酸化炭素も排出しますし、内燃機関は全て大気中に有害物質を撒き散らしながら走行します。利便性や快適な生活のため、それに目をつぶって今まで我々は「自動車」を使ってきました。
しかも私の場合は趣味として、それを使用してきましたので、罪はさらに重いと言えるでしょう。もっと言えば先進国の多くの人が持つ、趣味と言えるものには多かれ少なかれ、必ず環境への負担と無縁ではいられません。全ての物の流通にはさまざまな交通手段が必要ですし、製造時にも負担が「ゼロ」ということはないでしょう。
ここまで「文明社会」や「個人が楽しむ」ということを否定するようなことばかり述べてきましたが、私を含め、もう18世紀以前の生活に戻るのは不可能です。
どうすればいいのかを考えた時、やはり生活を維持しつつ、環境負荷を可能な限り18世紀以前に近づけるように科学技術を「有効に」使うことが現実的であるように思います。
自動車で言えば大気汚染のことを考慮すればEV化は望まれますが、動力である電気を生み出す方法が環境に負荷を与えるようでは本末転倒になります。また製造過程で出る二酸化炭素を減らすために工場で使う電力を再生可能な自然エネルギーで賄えるようにしたり、その電力を蓄えるバッテリーも有害物質を使わなくていい物にする、等。色々とアプローチはありますが、どれも「あと一歩」という所まで近づいている技術も多く、可能な限り早い実用化が望まれます。
ただ、革新的な進歩は、既成の技術や部品を、また、それに携わって来た人の技術や存在を無用化してしまうことも多く、これからは、そういった問題を、どう解決していくかが、課題になっていくでしょう。
これまでは科学技術の進歩が地球に負荷を与えてきました。だからこそ、その技術を享受できる人が増えれば増えるほど、問題が顕著になってきたという歴史を歩んできたのです。これからは環境に負荷を与えない、つまり、その技術を享受する人が増えても問題にならないような技術の進歩が必要になってきますし、そうでなければ、この地球の環境は悪化し続け、資源は枯渇していくのは明らかです。
今、生きている我々の行動次第で、自分たちの子や孫、その次の世代の一部の人だけではない全人類の生活が変わってくるのは間違いないでしょう。
新年早々、緊急事態宣言発令の一報を知った瞬間に、そんなことを考えました。
でも私は聖人君子ではありません。やっぱりクルマに乗りたいです!
どうか優秀な世界の自動車メーカーの皆さん!造る時も、また、どんなに走っても環境負荷がなく、運転をしても楽しく、運転が苦手な人には自動運転も選択でき、しかも人をワクワクさせるカッコイイクルマ、生み出してくれませんか!
完全に他力本願ですが、私は運転はできてもクルマを造る能力がありません…。
以前も紹介しましたがSF(サイエンス・フィクション)の父、ジュール・ヴェルヌは言いました。
「人間が想像できることは必ず人間は実現できる」
今、最も人間が想像、実現しなければならないのは、地球に負荷を与えず、全ての人が便利で快適な生活を営み、かつある程度楽しさも享受できる世の中にすることでしょう。
そんな夢のようなことを新年に望みつつ、今年は製造過程から負荷を減らす試みをどれだけしているか、それを踏まえて、見ても触れても乗っても楽しいクルマを提案してくれているかを見つつ、さまざまなクルマと向き合っていこうと思っています。
どうか皆様、今年も何卒、よろしくお願い申し上げます!
安東 弘樹
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