2020年、総括…安東弘樹連載コラム

全人類にとって、2020年というのは悪い意味で歴史に残る年になるでしょう。

今年に入って世界中に知られるようになった、コロナウィルスの感染拡大はまさに世界中に影響を与えました。

影響の規模で言えばアフリカやアラスカにも戦線が拡大した第二次世界大戦以来、と言っても過言ではないはずです。

当然、クルマ業界にも大きな打撃を与え、特に3月から5月にかけては販売台数が世界中で激減し、特に自動車が基幹産業になっている国は経済的にもかなりの停滞を余儀なくされました。

最近になって販売台数は回復してきた様ですが、コロナウィルスの感染が終息するまでは、状況がどの様になるのか誰にも予想できないでしょう。

その中でヨーロッパを中心としたクルマの電動化や各メーカーがしのぎを削る運転支援システムの浸透も急加速で進みました。

しかし、どれも、まだ「過渡期」であり、これからモビリティが、どの様に変わっていくのか、一つの答えを出すには至っていません。

電動化も、電力の供給事情によって、環境負荷への有用性も変わってきますし、自動運転に関しても特に事故時の責任の所在を、どう定義するのか保険の分野まで含めた議論が必要です。

今後、自動運転のクルマによって起こった事故で人間が犠牲になった時、感情として、同乗者に対して、素直に「クルマのせいで、あなたのせいではありません」と遺族は思えるのか。また乗車していた側も目の前で自分のクルマと人が、ぶつかった瞬間を体感して、「クルマが悪かったので、私は関係ありません」と思えるものなのか。私には分かりません。いえ、おそらく、その様には思えないでしょう。

人間と比べれば機械の方がミスは少ないかもしれませんが、コンピューターも、そのコンピューターに動かされる機械も絶対に壊れない、ということは有り得ません。

そういった様々な解決しなければならない壁を、これから、どう乗り越えていくのか、一人一人が考えなければいけないと私は思っています。
政治はもちろん、社会を構成している一人一人が様々な既存のシステムに疑問を持ち、また、よりよい解決法を考え、発信していくことが、社会を前進させていく様な気がしてなりません。

もちろん、コロナ禍で生活、そのものが立ち行かなくなっている方も多いと思いますが、そういう時こそ、そこで感じた矛盾や不条理を、どんどん発信していただき、社会を変えていく「種」を植えていただきたいと思います。幸い今は発信ツールが沢山ありますので、不条理は、どんどん白日の下に晒していきましょう!

私もあらゆるSNSのアカウントは持っているのですが、発信はこれまで何もしてきませんでした。正直、私生活を発信するのは個人的には今後もできないと思いますが、このコラムで書く様なことを、SNSを使って発信するべきかもしれないと思い始めています。

反対意見をいただくことももちろん、あるでしょうが、その意見も含めて、自分の発見につなげるべきかもしれませんね。

さてモータースポーツの2020年も振り返ってみると、当然、ほとんどのカテゴリーで大きく影響を受けました。多くは開催カレンダーの変更を余儀なくされ、無観客のイベントがほとんどを占めました。

しかし、そんな中、F1ではハミルトン選手が7回目の年間チャンピオンを決めた上、勝利数が、あのシューマッハ氏の記録を超え世界一となりました。チャンピオン回数で並び、勝利数ではこの激動の年に超えるという、何ともドラマチックな展開になったのも様々な運命を感じます。

そして、佐藤琢磨選手が2度目のインディ500を制したのも今年で、コロナ禍で沈む日本に明るい話題と希望をもたらしてくれました。

年末にはF2で闘う角田裕毅選手が見事に「文句なし」の実力でF1昇格を決め、珍しく全国ネットのニュース番組で報じられたことに対して(個人的にはもう少し大きく伝えられてもよいと思いましたが)モータースポーツファンとして感謝の気持ちでいっぱいです。

今年、F1初勝利を飾ったガスリー選手と「アルファタウリ」チームでタッグを組んで、大暴れしてくれる事を期待しています。F1で7年ぶりに日本人ドライバーを応援できるのは今から本当に楽しみですね!

もう一つ、触れなければいけないのは今年10年ぶりに開催されることになっていたWRC日本ラウンドの中止です。私は一昨年からWRC日本ラウンド招致応援団員を拝命しているだけに今年の中止は、あまりにもショックでした。しかしコロナウィルスの感染状況を考えたら仕方がありません。

しかし来年2021年11月には「11年ぶりに」日本ラウンドが開催される予定ですので、皆さん、状況にもよるとは思いますが、WRCマシンが市街地を走る迫力を体感しに開催される愛知県、岐阜県にお越し下さい!そしてWRC日本ラウンドを盛り上げて下さい!関係者の皆さんが1年遅れても開催できてよかった!と心から喜べる様に私も微力ながら協力させていただこうと思っています。

ちなみに今年のWRCではTOYOTAヤリスに乗るセバスチャン・オジェ選手がシリーズ通しての激戦を制し、自身7度目のドライバーズチャンピオンとなりました。そして、是非お伝えしたいのは、オジェ選手がチャンピオンを決めた今季最終戦で、勝田貴元選手が自身初のWRCステージウィンを果たしていることで、来年の凱旋日本ラウンドでの活躍も期待しています。

まさに混沌とした2020年でしたが、個人的にも色々とありました。雑誌の取材で一乗り惚れした古典的なスポーツカーを、それまで11年間乗っていたクルマが想定外に高く売れたので、それを頭金にしてローンを組めたことで、買ったのはよいですが、すぐにコロナウィルス感染が拡大し、長距離のドライブをするべきか悩んだりしたのも今年。

もう1台のクルマは3月に高速道路を走行中、未だに何が当たったのか不明なのですが、ものすごい音がしたと思ったらウィンドーシールドが、車内に破片が飛び散るほど割れてしまい、保険を使って直したのですが、免責代も痛手となりました。

そうしたら何と今月上旬、自分が走っていた車線にトラックが車線変更しようとウィンカーを付けてきたので、自分の車線の前に譲って入れた瞬間に石が飛んできて、前回ほどではないものの、直径3センチ程の傷が付き、これもガラス全てを交換しなければならないとのことです。作業は来年になるそうで、今回は免責額も倍に増え、保険の等級は1年に二回、同じ修理をする事で、こちらに落ち度は全く無いのに2等級も下がり、保険金額が、かなり上がるそうです。

まさに踏んだり蹴ったりですが、普通に生活ができて、家族が無事であったことを幸運に思うことにしました。

今年の状況を考えさせられることと言えば、私の知人で「空前の売上で従業員へのボーナスが大幅に増やせて嬉しい反面、どこか後ろめたさも感じる」と言っていた消毒液等を製造販売している会社の経営者もいました。

しかし多くの方は様々な形で我慢を強いられ、苦痛を感じる1年であったと思います。

毎年、「来年は良い年になります様に」と皆が願いますが、今年の年末は、正に全人類が心の底から、そう祈るのではないでしょうか。

2020年の最後に改めて、こう申し上げます。

皆様にとって来年2021年が良い年になりますように!!

安東 弘樹

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