このコラムが引用されました!…安東弘樹連載コラム

私がこのコラムでチャンネル名を明記せず、何度か内容を引用させて頂いたYouTuberさんが先日、このコラムで私が書いた記事を引用した動画を上げていらっしゃいました。

私はそのYouTuberさんのファンで、他のコラムでは「これほど電気自動車(BEV)に真剣に向き合っている方はジャーナリストの中でも、ごく1部だけ」と絶賛した事もあり、内容にも賛同できるものが殆どでしたので、引用して頂いたのは嬉しかったのです。しかし、私の事をアナウンサーとしては御存知ない様で「自動車評論家」と仰っており、このコラムに関しても若干の誤解?があるようでしたので、この機会にこれまでの読者の皆様に対しても、このコラムを始めた経緯をお伝えしようと思います。

引用された内容について

まず引用された内容ですが、前回のSUBARUソルテラとTOYOTA bZ4Xの公道試乗会を受けた、こちらです。
「欧米メーカーと比べるとバッテリー保護のために、かなりマージンを取ってマネジメントをしているそうで、この両車の場合、10年間で70%のバッテリー性能を維持する為に(目標は90%)急速充電器に対しては1日(24時間以内?)2回までしか充電性能をフルに発揮させないプログラムになっているそうです。」

これについて、そのYouTuberさんは、「これが本当ならとても残念。というより失望。」と伝えていました。

また私が書いた「欧米メーカーと比べるとマージンを取っている」という部分に関しては、“それらの国のBEVはマージンも何も、今や長期間・長距離走行の後もバッテリー劣化はかなり抑えられている”というエビデンスも紹介して、少なくともテスラに関しては、“バッテリー性能はきちんと担保されている”と主張されています。
とにかくこのYouTuberさんは、歯に衣着せぬ論調で、時にはかなり強めの表現を使い、批評されていますが、私はそれが好きで、これまでの動画は殆ど拝見しています。

ただ、今回このYouTuberさんは、私が欧米メーカーより日本メーカーの方がマージンを取っている事を評価しているように思われた可能性があるのですが、私の真意としては、むしろ批判のつもりでした(笑)。

しかも、この「2回の急速充電後は、充電量を抑える」という事を、試乗後に開発担当者の方から伺ったのですが、その方は、あまり言って欲しくはない、という空気ではあったものの、完全に「言わないで」とは言われていなかったので、メーカーの反感を覚悟で、私は書かせて頂いたのです。恐らく他のライターさんで、ここに触れられている方は希有だと思われます。

しかし、動画の下に書かれた視聴者コメントに対して、このYouTuberさんの反応を拝見すると、「どこ系(TOYOTA系)のコラムかを考えると…」とのコメントもあり、私がこのコラムではTOYOTAに対して忖度をしている、というイメージをお持ちのようなので、他の読者の皆様に対してもこれだけは伝えようと思います。

私は「忖度」という言葉が本当に嫌いですし、忖度するという行為は、もっと嫌いです(笑)。

連載を引き受けたときの話

まだTBSのアナウンサーであった2015年から始めたこのコラム。最初にお声掛け頂いた時、大変光栄ではありましたが、やはりTOYOTA系、という事も有り、「TOYOTAにある程度気を遣わなければならないのでしょうか」と尋ねたところ、「確かにTOYOTA系ですが、あくまで車全般を扱うサイトなので、気を遣わなくて結構です」とのお返事を頂きました。

更に私は「でも正直、個人的にTOYOTAの車を、これまで40台弱(当時)のうち1台しか乗っておらず、しかもどちらかと言えば、アンチ、かもしれませんよ」と続けたのですが、先方は、「感情的に嫌い!といった、根拠の無い悪口でなければ何を書いて頂いてもかまいません」と約束をしてくれた事で連載を引き受けたのです。

正直、半信半疑という感じではありましたが(笑)、その後、実際に本当に私が納得いく形で、コラムを書かせて頂いています。

例えば、多くのジャーナリストが手放しで絶賛していた新型GR86に関しても、ユーザーによっては気になる人もいるであろう、細かい点についての批判や、他の輸入車と比較して劣っている部分について書かせて頂いた時も、そのままの掲載になりました。

逆に、他メーカーの車に関して批判の言葉が過ぎた時に、GAZOOサイドから「この表現は、控えて欲しい」と意見を頂いた事はありました。

忖度が嫌い、という理由もあって大企業を退社した私が、だからこそ7年以上にわたって、続けてこられたのだと思っています。

今回のソルテラ、bZ4Xのコラムに対しての読者の皆様からのコメントでも、「忖度無しで良い」という内容の他に、「こんな事を書いたらメーカーの技術力が無いみたいになってしまう」というものもありました。

でも私は、有りのままを書きたいと思っていますし、このサイトはこれまでも、またこれからも許容してくれると信じているからこそ書いてきました。これからも許される限り、書き続けていこうと思っています。

そして今回「自動車評論家」と言われ、何か嬉しいような、恐れ多い様な不思議な気持ちになりましたが(笑)、改めて簡単なプロフィールを紹介させて頂きます。多くの方に再認識して頂ければ幸いです。

安東弘樹プロフィール

1967年10月8日生まれ
幼少期から趣味としては自動車にしか興味が無く、それが今でも続いています。
7歳の時に両親が離婚し、経済的に不利な状況でありながらも意地で学費を払い、大学時代にはローンで車を購入し、それ以降45台の車を(一番最近に買った軽自動車以外は)ローンで購入し続けています。

局のアナウンサーでありながら常軌を逸したクルマ好きである事が少しずつ、浸透してきた2015年頃からコラムなどの執筆活動が始まり、2017年、TBS社員時代から「日本カー・オブザイヤー」の選考委員を務めさせて頂いています。

2018年3月にTBSを退社し、同年4月フリーランスのアナウンサーへ。
でも、まだまだ「何で、コイツがクルマについて語っているの?」というコメントが様々なサイトにも寄せられたりしますので(涙)、もっともっと頑張らなければならないと思っている次第です。

そのYouTuberさんに限らず、皆様、今後とも宜しくお願いいたします。

評論形態の広がりと今後

さて、今後メーカーの方は、オブラートに包むことの無い、それこそ忖度の必要が全く無い、シビアなYouTuberさん達を相手にしなければなりません。これはとても良い事だと思っています。

これまで、クルマ業界に関わらず、その業界に存在し続けなければならないプロの評論家だけが対象の物、事に対しての批評をしてきました。
それが十数年ほど前から、ユーザー全員が映像で発信できる様になり、よりリアルな検証を我々も観る事が出来るようになったのです。

クルマや物に限らず、全てのクリエーターが、ある意味平等に批評される社会、私は嫌いではありません。

ちなみに、今回紹介したYouTuberさんの動画は、これからも楽しみに観ていきたいと思います!

安東 弘樹