近年のクルマの内装について…安東弘樹連載コラム

  • アルカナ/ルノー

    アルカナ/ルノー

カーオブザイヤー選考委員という仕事柄、新しい車に乗る機会が頻繁にあるのですが、クルマの内装はここ5年ほどで完全に新しくなってきました。

以前は、国やメーカーによって、個性がはっきり分かれていましたが、最近は各メーカーの個性をアピールしつつも、最新のインターフェイスを表現する為、気付くと全体的に似てきている事に気付きます。

今回は写真を沢山載せておきますが、皆さんはどのように感じますか?

  • ソルテラ/SUBARU

    ソルテラ/SUBARU

  • ポロ/フォルクスワーゲン

    ポロ/フォルクスワーゲン

  • ステップワゴン/HONDA

    ステップワゴン/HONDA

  • サクラ/日産

    サクラ/日産

  • eKクロスEV/三菱自動車

    eKクロスEV/三菱自動車

写真では伝わらない質感など、やはりクルマの価格帯によって差は有るものの、基本的に機能を突き詰めると各車とも似た雰囲気になります。
大きなセンターモニターやフルデジタルディスプレイの実現と、視認性の両立を考えるとデザインの自由度は限られるので、仕方がないのかもしれません。

それだけに若い方を中心に、古いクルマが人気を博す、という流れも出来てくるのでしょう。

私はこれまで「最新のクルマが最良のクルマ」、という考え方で、新しいクルマを乗り継いで来ました。しかし、ここに来て最新のクルマとは異なるデザイン言語のクルマに惹かれる気持ちも理解できるようになってきました。

メーターのフルディスプレイ化は、見やすくするために、あまり奇をてらったデザインには出来ませんし、センターメーターも、せいぜい横に長い長方形か、正方形にする位の違いで、その周囲もデザインの自由度は限られるでしょう。

ただ、自由度が限られているだけに、人々を惹き付ける内装へどう具現化するかは、デザイナーの腕の見せ所と言えるかもしれません。

機能が増えていく度に、スイッチ類も増える時代を経て、その後デジタルディスプレイによって物理スイッチは減ってきたものの、機能自体はどんどん増えています。そのためモニターの中で操作する必要があり、10年ぶりにクルマを購入する、という方は相当戸惑うようです。

私は「新しくクルマを購入する」、という知人にその選択を相談される事が多いのですが、久しぶりにショールームに行く、という方には「最近のクルマは10年前と比べると様子が違うので相当驚きますよ。」と事前に「脅す?」ようにしています(笑)

事前に伝えていても、「実際に見てビックリした」と言われることが多いのが現状です。

それほど、この10年程でクルマの機能、またそれを操作するコントロール系の変化は著しいという事なのです。

ジャーナリストや私のような立場で日々、新しいクルマに触れる人は希有なので、我々は、その事を常に意識していなければならないと、相談に乗る度に肝に銘じています。

しかし、この流れもEV化や自動化によって、また大きな変革を迎えるかもしれません。

運転操作系のスイッチは必要がなくなり、空調やオーディオなどの操作のみになっていくでしょう。

運転やスイッチ操作が大好きな私にとっては寂しい流れですが、私が生きている間は、全てのクルマが完全自動運転になる事はないと確信?しているので、暫くはクルマの操作を楽しみたいとは思っていますが(笑)。

考えてみると、最新のクルマの運転席は最も複雑で、人を惑わせているのかもしれません。

  • フェアレディZ/日産

    フェアレディZ/日産

  • シビックType R/HONDA

    シビックType R/HONDA

  • C5X/シトロエン

    C5X/シトロエン

  • CX-60/MAZDA

    CX-60/MAZDA

実際、12年ぶりにクルマを購入した50代後半の知人男性は、「やり方が難しいので、基本的な操作以外のスイッチは触らないようにしている」と言っていました。

先進的な運転席になった事で、沢山ある機能を使えなくなっているという、“本末転倒”といった状況になっているのです。

また、昨今スマートスピーカーが、驚くほどの音声認識をしてくれる一方で、クルマの音声コマンドの認識だけは進化が遅く・・・相変わらず、ストレスに感じることが多いです。

慣れない方の為にも、より一層の進化を切に願います。(私は自分の指を使っての操作が好きなのですが、多くの人にとってはストレスらしいので)

クルマのパワーユニット(動力源)は100年に1度の変革期、と言われていますが、それを操作する運転席(コクピット)も、同様に変革期なのだと思います。

その変革に、ドライバーがついて行けない状態だとすれば、販売店の役割も重要になってきますし、それについてメーカーも責任を負うべきだと考えます。

最近は、すっかりメジャーになってきたACC(アダプティブクルーズコントロール)も、クルマに詳しいドライバーは使いこなしていますが、実際は半分位のドライバーが使っていない、というのが現状です。もしかするとその現状を、メーカーもジャーナリストも認識していないのかもしれません。

これも私の実体験ですが、私があるテレビ番組でACCの話をしたのを聞いて、久しぶりに連絡をくれた高校時代の友人に「最近のクルマは凄いね」と言われました。

その友人は「新車を1年前に買ったが、そんな物は付いていない」と言うので、車種を確認したところ、間違いなくACCは装備されているクルマなのです。

それで、「そのクルマなら絶対に同じ機能は付いているので、ハンドルに、こんな文字やイラストが描かれたスイッチはない?」と訊くと「有ったような気がする」との返答。

「それが、ACCのスイッチだよ(笑)」と説明すると、
「あー、何か車屋さんから何か聞いた気もしてきた」という具合でした。

ですから、販売店のスタッフが一緒に高速道路を同乗し、実践して説明しなければ、言葉だけではしっかりと認識して貰えないのが現実の様です。

それだけ、最近のクルマの運転席周り、特にステアリング自体に多く配置されているスイッチを全て機能させる事は難しくなっているのは確かでしょう。

そのため、自ずとステアリングの形も、以前のような個性を打ち出す事は難しくなる訳です。

だからこそ各メーカーは、制約の中で独自性を発揮しようと頑張っています。我々ユーザーは、それに想いを馳せながら、その進化を楽しんでいくつもりで是非、使いこなしていこうではありませんか。

そして、そのメーカーの努力を無駄にしない為にも、メーカーとユーザーの橋渡しをする販売店は、全ての機能を余すところなくユーザーに伝え、上手く操作できるように導いて頂きたいと思います。

それにしても今回、運転席の写真を改めて並べてみましたが、以前より似てきているとはいえ、やはり個性もあって楽しいものですね。

安東弘樹

MORIZO on the Road