私が2023年モータースポーツで楽しみにしていること・・・安東弘樹連載コラム

今年最初のコラムでございます。今年も何卒、宜しくお願い申し上げます!

2023年の最初に何を書こうか考えた時に、今年は様々なモータースポーツの世界選手権で楽しみな事が目白押しである事に気づき、皆様とシェアしようと思いつきました。

今年のF1

まずはF1。3年目を迎える角田裕毅選手は新しいパートナー、28歳のルーキー、ニック・デ・フリーズ選手と、どのような闘いを見せてくれるか楽しみです。

イギリスのスポーツ専門サイト「sports keeda」は、角田選手を「才能の塊でF1界最大のスターになる可能性がある」と評していますが、同時に「2023年の結果次第」とエクスキューズを付けています。正にその通りですが、今年の活躍を楽しみにしましょう。

ちなみにF1の一つ下のカテゴリー「F2」では、今年もチームDAMSで岩佐歩夢選手がフル参戦する予定です。昨年は最終戦でポール・トゥ・ウィンを飾り、ポイントランキング5位でシーズンを終えました。不運にも失格となったイタリア、モンツァでのレースで暫定の3位のままであれば、ポイントランキング3位でシーズンを終えてF1のスーパーライセンスも手にしていた程の活躍でした。しかもDAMSはトップチームとは言えない状況でしたので、そこでポテンシャルを発揮出来たのは、正に彼の才能と努力の賜物でしょう。

岩佐選手は、ドライバーとしてのスキルだけでは無く、セッティングを自らパワーポイントを駆使してエンジニアに提案するほどの理論派で、チームからの信頼も絶大と言われています。今シーズンはF2でトップクラスの結果を出し、スーパーライセンスを取得。来年は角田選手と日本人2人のF1ドライバーが活躍してくれる事を楽しみにしています。

更にちなみに今年の岩佐選手のチームメイトはF1フェラーリチームのエース、シャルル・ルクレール選手の弟、アーサー・ルクレール選手。その辺りも楽しみです。
ですので皆さん、今年はF2にも注目して下さい!

今年こそはこの目に焼き付けたいWRC

  • ベンジャミン・ヴェイラス選手(左)とセバスチャン・オジエ選手(右)

  • WRC史上最年少記録でドライバーズチャンピオンを獲得したカッレ・ロバンペラ選手

さて、続いては、昨年12年ぶりにラリー・ジャパンが開催されたWRC(世界ラリー選手権)について。

最終的には、TOYOTA GAZOO Racing WRTがマニュファクチャラーズタイトル。
そして、同、カッレ・ロバンペラ選手がドライバーズチャンピオンになり、TOYOTAがダブルタイトルを手にした2022年でした。(写真は全てトヨタ自動車株式会社)

  • 勝田貴元選手

そして、TOYOTA GAZOO Racing WRTネクスト・ジェネレーションから参戦し、最終戦のラリー・ジャパンで今シーズン2回目の3位表彰台を獲得。

ポイントランキング5位で終えた勝田貴元選手は今年、TOYOTA GAZOO Racing WRTでWRC、8回チャンピオンになっている、セバスチャン・オジエ選手とシートをシェアする形で参戦します。所謂、1軍に昇格した勝田選手が、どのような活躍をしてくれるのか、こちらも楽しみです。

2018年から2年半ほどWRCラリー・ジャパン招致応援団員であったにも関わらず、その任期中には招致が叶わなかった私。念願の日本開催となった昨年は、まさかの仕事で観戦も出来ませんでしたので、今年こそ、ラリー・ジャパンを、この目に焼き付けたいと思っています。

続いては、WEC(世界耐久選手権)について

ここ2年は、トップカテゴリーのハイパーカー・クラスをTOYOTA GAZOO Racing 、そしてTOYOTAが2連覇(その前のLMP1クラスからカウントすると4連覇)しています。しかし、ハイパーカー・クラスは実質1ワークス状態でしたので、勿論、耐久レースで簡単に勝てた訳ではありませんが、直接のライバルは不在だったと言っても過言ではありませんでした。

でも今年は、一気に参戦メーカー、チームが増え、ガチンコでのメーカーワークス同士の闘いを観る事が出来ます。

詳しいことは割愛しますがLMH(ルマンハイパーカー)と、このハイパーカー以外に今年から参戦可能となったLMDhというプロトタイプカー規定に基づくクルマの参戦も可能になった為、多くのチームが顔を揃える事となりました。

  • 左からセバスチャン・ブエミ選手、平川亮選手、ブレンドン・ハートレー選手/ TOYOTA GAZOO Racing

  • 左からホセ・マリア・ロペス選手、マイク・コンウェイ選手、そして右端の小林可夢偉選手/ TOYOTA GAZOO Racing

まずディフェンディング・チャンピオンのTOYOTA GAZOO Racing。マシンはトヨタ・GR010 HYBRID 7、8号車の2台。7号車には小林可夢偉選手、マイク・コンウェイ選手、ホセ・マリア・ロペス選手、8号車には平川亮選手とセバスチャン・ブエミ選手、ブレンドン・ハートレー選手が乗ります。

そして昨シーズン、途中参戦したプジョー・トタルエナジーズ。マシンはプジョー・9×8。 93、94号車の2台で、日本でもお馴染み、ポール・ディレスタ選手やロイック・デュバル選手等がドライブします。

更に、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ。マシンはポルシェ・963。5、6号車の2台で、6号車には日本でも長く活躍したアンドレ・ロッテラー選手が乗りますし、かつてはWECでのTOYOTAのライバルでもあった、ポルシェとの闘いは楽しみです。

そして、こちらも楽しみ、AFコルセ。マシンはフェラーリ・499P。50、51号車の2台で、現段階ではドライバーは発表されていません。ちなみに50号の意味は、ル・マン24時間レース参戦がトップカテゴリーでのワークスとしては50年振り、という意味合いも含まれているそうです。

最後にご紹介するのは、アメリカの名門、キャデラック・レーシング。マシンはキャデラック・V-LMDh。現時点ではカーナンバーは未定ですが1台のエントリーがある様です。ドライブするのはGP2時代に、ピエール・ガスリー選手とチームメイトだったイギリスのアレックス・リン選手など。

他にも同クラスには、WECファンにはお馴染み、グリッケンハウス・レーシング等、合計8チームがしのぎを削ります。

ここ数年は観られなかった、ワークスチームや、それに準ずるチームのプライドをかけた熾烈な闘いを観られるのが今から楽しみです。

8チーム中、グリッケンハウス以外の7チームがハイブリッドマシンですが、そのベースとなるエンジンがチームによって違うのがWECならではの楽しみと言って良いでしょう。
TOYOTAは3.5L V6 ターボ、ポルシェは4.6L V8 ターボ、プジョーは2.6L V6 ターボ、フェラーリは3.0L V6 ターボ、キャデラックは盤石?の5.5L V8 NA!

F1等は当然、排気量もレイアウトも同じエンジンでなければなりませんが、WECは自由度が大きいので、その違いを音でも楽しめるのが醍醐味です。勿論BOP(性能調整)もあり、どのチームが勝つのか、様々な意味で予想しにくいのも、ファンとしては楽しみではあります。

しかも今回はクルマの主要生産国、日本、ドイツ(ポルシェのペンスキーはアメリカのチームですがクルマはポルシェ謹製)、フランス、イタリア、アメリカ、のメーカーが勢揃いというのもWECの特徴となりました。

F1でも、考え方によって変わりますが、ワークスチームとしてはドイツ、フランス、イタリアの3カ国のメーカーのみ、という事になりますし、WRCに至っては、現状、純ワークスチームとしてはTOYOTA、HYUNDAI の日韓、2カ国のチームのみ(ハイブリッド・ラリ-1に参戦はしていますが、イギリスのM-SPORT FORDは、FORDの完全ワークスとは言い難い)という事になりますので、気付けばWECが最も国際色豊か?になったという事実に驚かされます。

さらに、来年2024年にはBMWやランボルギーニの参戦もアナウンスされていますので、益々、華やかな選手権になるでしょう。

そうそう今回はWEC第4戦、ル・マン24時間レースが100周年の記念大会となります!
そして、こちらも9月にはWRC同様、日本ラウンドのWEC富士6時間耐久レースが開催されますので、これも出来れば富士スピードウェイで直接、観戦したいものです。

昨年行われたサッカーW杯に比べると、モータースポーツは特に日本では、今回ご紹介した世界選手権でさえマイナースポーツと言わざるを得ません。

ですが、実は全ての選手権で日本人選手が第一線で活躍していて、WECとWRCではTOYOTAがワークスチームとして連覇を果たしているのに、日本で無関心な人が多い、というのが、どうにも納得がいきません(笑)。

モータースポーツの中継がキー局の中で唯一、BSやCSも含めて皆無だったTBSの社員時代、スポーツ部署の幹部に何度もモータースポーツの番組を進言し、その度に「あー、クルマは数字(視聴率)取れないから無理」と言われたのが思い出されます。

しかし、「テレビでやってないから興味が無くなった」なんて言わず、クルマ好きが一丸となってモータースポーツを盛り上げて、TBSにも番組や中継を放送させましょう(笑)。

新年の祈りとお願いでした。
あらためて、本年も何卒、宜しくお願い申し上げます!

安東弘樹