楽しい東京オートサロン、だからこそ感じたこと…安東弘樹連載コラム

  • 写真: TOKYO AUTO SALON

去る1月13日(金)~15日(日)、年始恒例の東京オートサロン2023(以下、TAS)が開催されました。

毎年のように、この時期にはコラムを書いていますが、2021年は中止(バーチャルでのみ開催)、昨年2022年は入場者数制限下で開催。今年は久しぶりに制限無しでの開催になり、三日間で約18万人の方が来場したと発表されました。

ちなみに、これまでの最多入場者数は、コロナ禍直前の2020年で33万人を記録しています。まだ、人が集まる場所へ赴く事への抵抗がある方が多いのは確かですので、制限が無くても従来通りにはなりませんでした。

  • 人で埋め尽くされている会場 写真: TOKYO AUTO SALON

ただ、今年も私は土曜日に会場に行きましたが、殆どラッシュ時の電車の中の様でしたので、2020年は、今年の倍近くの来場者数だったと考えると確かに、小さい子どもは危険な位だったという記憶が蘇って来ました。

クルマ離れと言われて久しいのですが、TASの会場を見るとクルマ好きは、まだまだ多いと思える部分と、冷静に会場を見渡すと、平均年齢は確かに高めという事も感じます。
家族で来られている方も多いので、小中高校生の姿も沢山見られましたが、20代の方が少ないという印象は残りました。

さて、最初に正直に申し上げますが、今回は仕事としては、DUNLOPさんのブースでのトークショーのお仕事、一つのみで、仕事の都合もあり3日間でTASの会場に居られたのは4時間少々にとどまりました。

フリーランスになって最初のTAS2019では、某タイヤメーカーさんのブースの総合司会を二日間に渡って担当し、2020年には数社のブースを掛け持ちしておりました。二日間とも、開催期間中は掛かりっきりでTASの仕事に従事したので、今年は若干寂しく、しかも自由に観て回る時間も無かったので、不完全燃焼では有りました。

でも、外部からのメディアニュースや普段からお付き合いのあるジャーナリストの方などのSNSをチェック出来ましたので、客観的にTASを捉える事が出来た様な気がします。

特にテレビの地上波キー局のニュースでのTASの伝え方や、伝える時間などの差も興味深かったですし、局によってクルマへの理解度が違うのも、今回は客観的に感じる事が出来ました。

やはり、まだまだ欧米諸国と比べると、マニアではない「一般」の方のクルマへの興味の薄さを感じる場面も有りますし、相変わらず、私の仕事場の周りでもTASを知らない方が多いのも確かです。まだまだ私も努力が足りないと痛感します。

出来るだけ「普通の」(クルマに関係ない)番組に出演した際にはクルマの魅力や楽しさなどを伝えているつもりですが、放送されるのは私のこれまで所有してきたクルマの台数等、本質と関係ない事が多く、クルマの魅力について伝えてもデータが間違っていたり、訴求する部分が的外れになっていたりする場合が多く、放送後に忸怩たる思いをする事もあります。

問題は、キー局のテレビスタッフは都心部在住の方が殆どで、若いスタッフはクルマそのものを所有していませんし、ある程度の立場になったスタッフはクルマこそ所有しているもののクルマ通勤は原則禁止。以前は、ロケなどの下見(ロケハン)は自家用車の使用は認められていましたが、現在は殆どの局が、業務中は自家用車の使用は完全に禁止ですので、クルマに触れる機会が、ほぼ無い方が番組を作っているのが現状です。

ですから、必然的にクルマに興味のあるスタッフがプロデューサーからADに至るまで、「皆無」という状況も珍しくありません。(少なくともTBSでは各テレビ番組100人程度のスタッフの内、クルマ好きは1人、多くて2人といった状況。もっとちなみにアナウンス部では私が退職した時点で、クルマの話を出来るアナウンサーは1人も居ませんでした)

ですので、モーターショーやTASの情報も単なる経済ニュースの一つとして報道される事が多い、という事になります。

ましてやモータースポーツに興味のあるテレビスタッフ(特にTBSはモータースポーツ関係の番組は皆無)が少ない現状を御理解頂けたと思います。

私は今後、まだ一定の影響力のある、このテレビ地上波のキー局への啓蒙を何とかしていこうと思っています。

さて、今回のTASの話に戻りましょう!

私が担当したのは、大手タイヤメーカーDUNLOPのブースでのトークショーでした。

いつもはMC、司会の仕事が多かったのですが今回は、トークショーのゲスト?側。

慣れていないはずなのですが、もしかしたら得意なのは、こちらの方かもしれないと最近は思い始めています(アナウンサーとしては、どうかと思いますが)。

人から興味をもって自分の話を訊いて頂けるのが、まず嬉しいですし、ちょっと変わった私の経験が功を奏している様です。

生い立ちから学生時代、TBSアナウンサーとしても、特異な経験を多くさせて頂いた事も今となっては財産となっています。

またクルマに関しても、少し変わった指向を持っていますので、それも役に立っています。

私は、クルマに関しては、とにかく雑食で、全てが好きなのです。多くの方は好きな車の傾向、というのが見られるのですが。私は軽自動車もスーパーカーも好き。内燃機関もBEVも好き。唯一、抵抗があるのがCVTのフィーリングだけで、後は選り好みをしません。
あまり、このような指向の方にお会いした事が無いので、やはり「変わって」いるのでしょう。

それらをモデレーターの伊藤梓さん(元雑誌カーグラフィックの編集部員で自動車ライター・イラストレーター)が上手く引き出して下さいました。

30分間、「大人のカーライフ」というテーマで、お話しさせて頂きました。私は楽しかったのですが聴いてくださっていた方が楽しかったとしたら、尚、嬉しいです。

隣のHONDAブースが、かなり大掛かりで、大盛り上がりだった中、予想より沢山の方に来て頂き本当に感謝しかありません。

いまだに、前の方にいらっしゃった方のお顔を覚えている位です(笑)。

あらためて、私の様な者の話を聴いて下さって有難うございました!

そして、ここから予期していない事が起こりました。

  • NISSAN GT-R NISMO Special edition

スケジュールの都合で、時間があまり無かったのですが、どうしても観ておきたいブースが、いくつか有り、その一つ、日産のブースを通りかかりました。

ちょうどGT-R 2024モデルの解説を含めたトークショーが終わった所で、これまで何度も御世話になり、特に昨年は北海道で行われた新型フェアレディZの試乗会で熱いお話を伺った日産の田村宏志チーフ・プロダクト・スペシャリストに御挨拶に行った瞬間、「安東さん、こっち来て!見て!これ!」と、何と2024年モデルのGT-Rが展示してある舞台上に上げて頂いて、説明を始めたのです!

2024年モデル、NISSAN GT-R NISMO Special editionの空力の説明から入り、ドアを開けてシートの説明へ。

「安東さん。座ってみて!このシート凄いから!」これまでトークショーを観ていたお客様が殆ど残っている状態で、舞台上で始まった商品説明に、お客様も驚いています…。しかし夢中で説明する田村さん…(笑)。次のイベントの準備もあるのでしょう、途中で日産の広報の方が、割って入って来て、「写真を撮りましょう!」という事で一段落し、舞台から降りました(笑)。とても貴重な体験をさせて頂いて、深く感謝です!

広報の方曰く、その前日にはTOYOTAの豊田社長を同じくお客様の前で舞台に上げて、シートに座って貰って説明をしたそうです。そう、田村さんとは、そういう人で自分が携わったクルマの事になると、少年になってしまう、所謂、カー・ガイ、しかも生粋の、という事を今回再認識しました!またTASという舞台が、そうさせてしまうのかもしれません。これが「東京モーターショー」になると、ここまで自由には出来ない雰囲気だと思われます。

特にメーカーの垣根を越えて「車文化を盛り上げる」というのが当初からのテーマになっているのが、このような雰囲気を醸し出しているのでしょう。

  • エミーラ V6 ファーストエディション

しかし、ここで、会場を後にしなければならず、実質じっくりと観られたのは4つのブースにとどまり、自分が愛して止まない、ロータスの最新車、「ロータス・エミーラ」を足早に観て、会場を後にしたのでした。

相変わらずの熱気に包まれたTASでしたが、個人的には、あまりにも来場者数に対してスペースが足りておらず、特に小さい、お子さんや車椅子に乗られている方等が満足に、それぞれのブースを観ることが難しい状態になっていました。

会場を変えるのは難しいとは思うのですが、コロナが収束し、以前より多い来場者になった場合、何とか工夫をしなければ、来場者に満足して貰えなくなる可能性も見えました。例えばお子さんやハンディキャップがある方が少し高い位置から見学できる様な配慮は必須だと考えています。

運営に近い方に進言してみようと思いました。是非、来年も人数制限無しで、しかも、もっと観やすい環境で多くの方に、クルマを楽しく味わって頂きたいですね。

私も個人的に楽しみにしています!

(写真: TOKYO AUTO SALON/文:安東弘樹/編集:GAZOO編集部)