雪道走行を叶えるべく宿場街「大内宿」に行ってきました…安東弘樹連載コラム
先日、以前からずっと訪れてみたかった福島県南会津郡に位置する、大内宿に行って参りました。
大内宿というのは、江戸時代に会津若松市と日光今市を結ぶ重要な街道の宿場街として栄えた面影をそのままに、茅葺き屋根の民家が建ち並んでいる場所です。
しかもこの景観を引き継ぐために、住民の皆さんは憲章を作り、「売らない・貸さない・壊さない」の3原則を守っているのです。
その為、住民の方は店舗兼住居として生活されています。ご不便な事もあるそうですが、皆さん誇りを持って、屋根葺きの技術習得や継承にも全力で取り組んでいらっしゃるとのことです。
訪問したのは、日本全体を最強寒波が包んだ時期の少し後でしたので、念願の雪道走行が出来ると確信し、装備も万端にして千葉の自宅から大内宿に向かいました。
ただ、私が雪道走行を目的に何処かへ行くと、雪が積もっていない、という事が多いので若干の不安はありました。最強寒波で各地が大雪に見舞われ、立ち往生が発生した場所もありましたので、流石に東北の、しかも会津地方ですので、雪が路面に無いという事は無いだろうと、雪面をスタッドレスタイヤが踏みしめる、あの大好きな感覚を思い出して、はやる気持ちを抑えて安全運転で大内宿に向かいました。
しかし…、東北自動車道の白河ICを15時頃に降りた際には、路面に積雪は無く、若干の焦り?を感じてきます。
「まさか…」
3年前、新型コロナウイルス感染拡大の直前に、新しいスタッドレスタイヤの性能を試す為、わざわざ、日本屈指の豪雪地である青森県、酸ヶ湯温泉に出向いた時の事が頭をよぎります。
1月下旬の最も雪が降る次期を狙って訪問したにもかかわらず…、酸ヶ湯温泉奥にあるホテルに到着するまで、高速道路、一般道全ての路面に1mmの雪も積もっていなかったのです。
以前、この事はこのコラムでも紹介した記憶もありますが、ホテルのレストラン支配人の方が、「この時期に雪が積もっていないのは人生で初めて」、とおっしゃっていたのをハッキリと覚えています。
他にも、北海道に行っても帰路につく直前まで雪が降らない…など、とにかく私は雪に縁がありません。
しかし、今回は少なくとも2、3日前まで南会津地方は、かなりの降雪、積雪がありましたので雪道走行出来るのは間違いないだろうと思っていました。
白河IC付近はともかく、南会津地方は、かなりの積雪があるとの情報を得ていましたので、この後には雪を踏みしめて走る事になるだろうと信じて大内宿に向かいます。
ICから国道289号線、国道121号線、県道329号線を走ると、大内宿に到着するのですが、二つの国道を走行中は、シャーベット状になった雪が少しだけ道路脇に残っているだけで路面は黒々と見えています。この辺りから嫌な予感がしてきました。「しかし県道に入ったら流石に路面に雪は残っているだろう」と自分に言い聞かせ、走り続けます。
しかし、その時が来てしまいました。雪面を走ることなく、大内宿の大駐車場に到着してしまったのです…。
またしても、雪道走行は皆無…と思ったその時!今回宿泊させていただいた大内宿の中に居を構える「民宿伊勢屋」さんの駐車場の看板が見え、しかも県道から少し離れている、その駐車場に通ずる道には、見事に雪が積もっているではありませんか!
喜んで駐車場に向かいスタッドレスタイヤが、キチッと機能する事を確認できました。
が、それもつかの間。県道から駐車場までの距離は数十メートルしかなく、走行性能を試すことも出来ず、クルマを停めました。
大内宿の中ですので、無駄に奥まで走る事は出来ません。かくして私の目的の一つである、雪道走行は数十メートルで終わりました…。
しかし、地面や建物の屋根には、しっかりと雪が積もっている夕方の大内宿は、とても美しく、想像以上の光景に息を呑むことになったのです。
天候は晴れていますが、凛とした空気の冷たさが、より景観を美しいものにしてくれます。
動画を撮りながら、思わず「これが大内宿かー!想像以上だな」と呟いてしまいました。
全長450mの街を端から端まで歩き、ゆっくり街並みを観て、最後は街の全景が見渡せる高台から動画や写真を撮影して、宿に入りました。
雪道を走れなかった失望感が感動で打ち消されていたのは言うまでもありません。
宿は、改装・修繕はしていますが、基本的には昔ながらの作りのままになっています。
絶品の釜飯に舌鼓
一応、各部屋に鍵は付いているものの、襖だけが部屋と廊下を隔てています。しかし、不安はありませんでした。私は1人で泊まりましたが、全4部屋中、他3部屋は御夫婦だと思われる二人組。何故か全員が一つ屋根の下(実際に、その通りです)に居る家族のような気分にさせてくれる宿だったからでしょう。
実際に食事も同じ時間に、同じ部屋で一緒に食べます。テーブルこそ違いますが、それぞれの間にはアクリル板が設置されているものの、親戚の家に集まって食事をしている様な感覚でした。
その食事ですが、とにかく、絶品でした。
白いご飯の代わりに釜飯、そして数々のおかずが出てきたのですが、その釜飯のご飯(お米)が美味しいのです!私は食通ではありませんが、ご飯が美味しくないと、体の受け付けない センサーが働いてしまうのです。それでも食べ物は残せませんので、必ず一粒残らず食べますが、最近は外食で「美味しい!」と思えるご飯に出会えた事が無かっただけに、感動も一塩でした。
私の理想は、粒がふっくらとしながら、弾力もあり、かつ、噛むと一粒一粒が離れていくように粒立っているご飯です。
最近、どんな高級店でも、少なくとも首都圏では何故か粒立っているご飯が少なくなっており、お米自体が柔らかく炊かれているのか、最後にご飯粒の原型をとどめず、崩れたお米がお茶碗にへばり付いてしまう様な「ご飯」が増えている様な気がしていました。
どんな高級店で、料理自体が美味しくても、ご飯が美味しくなかったら、本当にガッカリです。大内宿で美味しいご飯を食べた翌日に、都内の某高級蕎麦店に行く機会があり、そこで、お蕎麦とご飯、天ぷらのセットを注文し、まずはお蕎麦を美味しく頂きました。流石、と言えるほど蕎麦は美味しく、あっという間に平らげてしまったのですが、その後に、天ぷらを口に運び、直後にご飯を一口食べた時に、一瞬、箸が止まってしまったのです。美味しくない…、特に食感が全体的にべチャっとしていて、粒を感じません。なんとか頑張って美味しい天ぷらと一緒に飲み込みました。
一つのメニューで大内宿での宿泊代の半額ほどの価格帯のお店です。悲しい気持ちでお店を後にしたのは言うまでもありません。
何だか今回はクルマと無関係なコラムになってしまいましたが(笑)、雪道を走れなかった(結局帰路も殆ど雪道を走行することは出来ませんでした)事を忘れる位の感動を頂いた大内宿の景色と、食事のことを書かずにはいられませんでした。
そして改めて、思い立ったらすぐに私を、好きな場所に連れて行ってくれるクルマの存在に感謝しました。実際に今回も1日半、仕事が空いたので、念願だった大内宿に行こう!と急遽、宿を予約して、クルマに荷物を放り込んで出発、夢の実現となったのです。
公共の交通機関では、到底、実現不可能ではないでしょうか。
ちなみに、大内宿の宿は人気で、今回は土曜日の宿泊なのにもかかわらず何故予約できたか、宿に着いてから理解できました。
何と翌日から一週間、大内宿の雪まつりが開催されるという事。
これは街道筋の家々の軒先に雪灯籠が作られ、夜に明かりが灯される。という幻想的なお祭りです。実際に土曜日には家々毎に、雪灯籠が作られている最中でした。
前日に泊まってしまったら、勿体ないというものです。それで、その日は避ける人が多かったのかもしれません。実際に翌日からお祭りの期間を超えて3週間ほどは満室でした。
お祭りを観る事は出来ませんでしたが、宿泊できたのは幸運だったのかもしれません。
雪まつり当日の朝、チェックアウトして、すぐに帰宅、そのまま仕事でしたので、大内宿滞在は17時間弱と慌ただしい旅になりましたが、自分の愛車が夢を叶えてくれた事で、更に幸福を感じた貴重な時間でした。
更に、ちなみに、以前同じく今に残る宿場街、“奈良井宿”を訪れた際に宿泊したのが、「御宿伊勢屋」。偶然、同じ名前の宿だった事に驚いた事も最後にお伝えしておきます。
安東弘樹
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