念願の「サーキットの狼」ミュージアムで浸る…安東弘樹連載コラム
皆さんは「サーキットの狼」という漫画をご存知ですか?
おそらく55歳の私と同年代、もしくは、前後の年齢の方は空前のスーパーカーブームを巻き起こした、「サーキットの狼」を知らない人はいないはずです。
私も当時、すっかりこの漫画にハマり、あっという間にスーパーカー少年になりました。
私は当時から理屈っぽい性格で、とにかくクルマのスペックや、生産された背景など、「知識」を詰め込んで勝ち誇る、少し嫌な感じのスーパーカーマニアでした(笑)。
とにかく、この漫画に出てくるクルマ達は百花繚乱!主人公の風吹裕也の愛車である、ロータス・ヨーロッパが地味に感じるほど、世界中のスーパーカーを駆る、個性豊かな登場人物が、公道レース(もちろん、非合法)を繰り広げます。
その後レースの世界に入っていくのですが、当時リアリティーのあるストーリーや登場するクルマが、実在するものであることなどすべてが珍しく、あっという間に大人気漫画になるのでした。
今の若いレーシングドライバーに、公道で競いあってクルマの運転スキルを身につけるような人はおらず、ほとんどが幼少期からクルマの運転を「カート」で学んでします。しかし当時のレーシングドライバーには「公道」出身者が多くいたこと含めて、相当リアルな描写だったと感服します。
登場するクルマが豪華すぎることを除けば、すべての漫画のエピソードが実際にあった話ではないかと、池沢早人師先生に確認したいくらいです(笑)。
駐車場で凄いロータス・エリーゼを発見
前置きが長くなりましたが、その池沢先生が名誉館長を務めるのが、私が訪問した「池沢早人師 サーキットの狼ミュージアム」なのです。
その存在は以前から知っていましたが、「いつか行こう」と思ったまま、10年以上が経っていました。
しかし、「いつか」と思っているだけでは、業界人の「いつか飲みに行きましょう」と同じく、永遠に来ない「いつか」になってしまうと思い、同じカラーリングの「ロータス・エリーゼ」に乗り、訪れることにしました。
以前から、コラムを書かせていただいている、某「紙の雑誌」の編集の方にダメもとで前日に声を掛けたら、まさかの二つ返事で快諾をいただきました。
その編集の方にカメラも回していただいたので、近いうちに動画も上げようかと思っています。
ミュージアムの場所ですが、首都高速湾岸線とつながっている東関東自動車道の潮来インターチェンジからクルマで10分ほどのところにあります。千葉の自宅からは45分で到着しました。
高い建物が周りにあまり無いので、近づくとすぐに分かります。建物の外側にはサーキットの狼のイラストが大きく描かれていて、駐車場に入った瞬間にテンションが上がってきました(笑)。自分でいうのも気持ち悪いですが、少年時代に戻っていくのを感じます。
まず、駐車場に入ってすぐ風吹裕也の愛車、ロータス・ヨーロッパのイラストの隣にクルマを停めて写真撮影をしました。
するとそこへ、オレンジ色のロータス・エリーゼが入ってきました。しかも、こちらを見て会釈してくれています。さらに、そのクルマを関係者駐車場らしき場所に停めて、こちらに歩いて来てくださいました。
そして、「凄い!風吹裕也と同じ色のエリーゼじゃないですか!」と声を掛けていただいたので、私が「このミュージアムのスタッフの方ですか?」と尋ねたところ、「スタッフというか、代表というか社長というか」とのお応え。
私がビックリして、「それは失礼いたしました。実はこのエリーゼ、白のボディに青と緑と赤のストライプが、それぞれ入った3種類の各色10台の限定車で、元々エリーゼが欲しかった私が販売店に問い合わせたところ、そのうちの赤のストライプのクルマが最後の1台だったので、思わず注文してしまいました。そしたら偶然にも、風吹裕也と同じ色のロータスになってしまったので、ずっと御社のミュージアムが気になっていたんです。それで、今回やっと念願が叶って訪れることが出来たのです!」と一気に説明をしてしまいました。
おそらく、社長は面食らったと思います(笑)。社長、その説は失礼しました。
「それでしたら」ということで社長が、いろいろと館内の説明をしてくださり、実りのある「見学」になりました。
まさかですが、感激で手が震えました
ミュージアムに入ってまず目に飛び込んでくるのは、漫画の登場人物たち、それぞれの愛車の数々です。
まずはもちろん主人公、風吹裕也のロータス・ヨーロッパ。
実際にサーキット走行をしていたオーナーからロータス・ヨーロッパを譲りうけ、サーキットの狼カラーにカラーリング。
ですが、カラーリング後もサーキット走行を続け、ミュージアムに展示する時間が少なくなったため、もう1台を同じカラーリングにし、池沢先生のサインを入れて、展示専用車をつくったそうです。
このミュージアムの凄いところは、展示用のロータス・ヨーロッパをはじめ、基本的にすべてのクルマが「動かせる状態」になっていることです。
今回、お話をしてくださった社長のお父様で、このミュージアムを実質的に「つくった」会長や池沢先生のコダワリだということです。
「クルマは走らなければ意味が無い。」私もまったくの同感です。ただ、それには多大なご苦労もあると思います。ただただ、その情熱には脱帽です。
ロータス・ヨーロッパの隣には、風吹裕也のライバル早瀬左近のポルシェ911カレラRSや壮絶な最期をとげた、沖田のフェラーリ・ディノ246GT。
さらには飛鳥ミノルのランボルギーニ・ミウラ、隼人ピーターソンのトヨタ2000GT(オープンバージョン)等、ほぼすべての登場人物たちの愛車がそろっている様はまさに圧巻の一言でした。
そのほかにも歴史的に価値のあるレーシングカー等、展示車の数と質に驚きました。
なかでも1960年代後半に、国民的に盛り上がりを見せていた「日本グランプリ」のトップカテゴリーで、1969年に1-2フィニッシュを飾った日産R382の20号車(2位になったクルマ)。これも動く状態で保存、展示されており、実際に私を案内してくださった社長がドライブした時のDVDも見せていただきました。
そのクルマのコクピットに特別に私も座らせていただきました。感激で手が震えていた自分に驚きました。
そのほかにも、池沢早人師先生の未公開の原稿などが展示してある池沢先生に特化したコーナーや、展示してあるクルマの仕様書や設計図など、貴重な資料を閲覧できるような場所もあり、クルマ好きなら何時間もいられる空間になっていました。
それにしても、思い立ってアポなしで訪れたにもかかわらず、社長自らが時間をさいて貴重なお話をしてくださり、充実した時間になったこと、本当に感謝してもしきれません。
ちなみに開館日は土日祝祭日のみで、開館時間は10時~16時(入館は15時30分まで)ですので、訪れる際にはお気を付けください。
私が訪れたのは7月のある日曜日でしたが、やはりクルマ好きのお客様で、館内は賑やかでした。
そして嬉しかったのは、私はマスクをして館内を観て回っていたのですが、多くの方に「愛車遍歴、観ました」とか、「ラジオ聴いてますよ!(TBSラジオでクルマの番組を担当しておりますので)」などと声を掛けていただいたことです。
やはりクルマ好き同士ならでは、単なるお声掛けだけではなく、具体的なクルマの話でそれぞれ皆さんと、お話ができたことが何より素敵な時間になりました。
入館料は内容を考えたら破格の、大人税込み800円。
小中高校生はなんと400円!です。
この価格も会長と社長の心意気で、「出来るだけ多くの、特に若い人にクルマのロマンを知ってほしい」という想いからの価格設定だそうです。これにも感動!
皆さんも、ぜひ、この夏休み(もちろん、夏でなくても)、訪れてみてください。
きっとさらにクルマが好きになると思いますよ!
池沢早人師・サーキットの狼ミュージアム
茨城県神栖市息栖1127-26
URL:https://www.ookami-museum.com/index.php
安東弘樹
安東弘樹連載コラム
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