日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025 10ベストカー決定…安東弘樹連載コラム
去る11月6日(水)日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025(以下COTY)の10ベストカーが発表されました。
今期、59人の選考委員による投票で31車のノミネート車の中から、まずは10車が選ばれました。この10台の中から2024-2025期の日本カー・オブ・ザ・イヤーが選ばれます。
最近になって、より幅広い分野の方が選考委員に選ばれており、様々な見地で、「良いクルマ」が選ばれる様になったと思います。
例えば、工学に詳しい技術ジャーナリストの方やIT企業出身の企業コンサルタントの方などが選考委員に名を連ねたのが良い例ではないでしょうか。
それぞれ専門的な知識を、お持ちで、かつ豊富なクルマ経験も有る方々です。
それから、これは機会がある毎に申し上げていますが、過去の事は私には語れませんが、少なくとも私が選考委員になって以降は、自動車メーカーやインポーターなどからの利益供与は一切、受けていませんし、車を判断するときに、何らかの忖度をする事はありえません。
最近になっても、その様なイメージをお持ちの方が、いらっしゃるようですが、それはハッキリと否定させて頂きます。
もし、その様な事を自分が経験したり、直接見聞きした場合は、皆様に報告して私はCOTY選考委員をすぐに辞めます。
これだけは、お約束しますので、どうかその様な目でCOTYを見ないで頂きたいと切に願います。
勿論、今は様々な情報をインターネットで入手出来ますし、価値観も多様化していますので、COTYの価値は以前と比べて変わってきているのは確かです。
しかし、運転技術が高いレーシングドライバー、テストドライバーの方や元自動車メーカー勤務の方、ずっと自動車雑誌を作ってきたベテラン編集者などに加えて技術の専門家など多種多様な選考委員の経験値を総動員して決める賞典です。価値が全く無いとは言えないと思っています。
私も一応、毎日最低100km、年間では5万km近くを運転し、アナウンサーの仕事の合間にメーカー、インポーター主催の試乗会に参加する他、時には近所の各販売店に赴き、「普通の客」として、新しい車の試乗や販売スタッフの生の声を聞いて、車の判断の参考にしています。
そして販売店に行った際は必ず、「見積もり」を頂き、クルマ毎のリアルな価格(先方から提案される値引きも含めて。ちなみに、こちらから値引きを要求することはありません)を知る様にしています。
余程オーラが無いのか、元々知名度が低いのか、近所の自動車販売店で私と認識される事は殆どありません(笑)。その為、幸か不幸か、何度行っても、「普通のお客さん」として扱って下さいます。
そんな状況の中、最前線で「お客様」と対峙している販売スタッフの方の声を「さり気なく」伺うと、色々な事が見えてくるのです。メーカーやインポーターの状況や、それぞれのメーカーの士気の充実度などまでが、販売スタッフを通して、クルマに表われている場合すらあります。
選考委員の中でも、私は、こうした「普通の客」の立場も加味する、という役目を勝手に担っているつもりです。
今回の10ベストカー
では肝心の10ベストカーをご紹介しましょう!
この度、選考委員の投票によって選ばれたのは
スズキ フロンクス
トヨタ ランドクルーザー250
ホンダ フリード
マツダ CX-80
三菱 トライトン
レクサス LBX
BYD シール(SEAL)
ヒョンデ アイオニック(IONIQ)5 N
MINI クーパー
ボルボ EX30
の10車でした。(※記載はノミネート順です。)
ちなみに今回ノミネートされた31車の中から私が投票した10車の内6車が10ベストカーに選ばれたのですが…と、いう事は、4車は残念ながら選ばれなかった、という事になります。
今期は私、6勝4敗という結果になりました。(毎回、それぞれの選考委員は、自分の選考と全員の総計の結果を比較して、この様に何勝何敗、という表現をします。)
幅広い分野の方々が選考しますので、ある程度意見が割れるのは当然ですが、やはり10車を選ぶ段階では、例え自分の評価と違うクルマが選ばれても納得は出来るものです。
ただ、その期の「ナンバー1」であるCOTYの1車に関しては、時々、「私としては」納得出来ない時もあります(笑)。
その時は「私が、そのクルマを深く理解できていなかったのだろう」、と無理矢理?納得する様にしています。
今回の10ベストカーの内容をまとめると、
日本メーカーが6車
輸入車が4車
輸入車の内、3車はBEV(純電気自動車)で1車(MINI)もBEVも含めたクルマになりますので、相変わらず、輸入車はBEV率が高く、日本メーカーはBEV以外のクルマという最近の動向と同様の結果となりました。
またポルシェやフェラーリといったスポーツカーやスーパーカーが最近、ノミネートされるようになりましたが、選考委員としては、これらの評価は難しく、やはり今年もこういった種類のクルマが10ベストカーに残る事はなかったのも特に日本でのCOTYの特徴と言えるかもしれません。
確かにそれらは、素晴らしいクルマではありますが、私も「今年の1台」として選ぶには現実的ではないと思ってしまった事をお伝えしておきます(これは逆忖度になるのでしょうか?)。
更に私自身、自分が本当に欲しいと思って購入し、所有しているクルマがBEVとPHEV(プラグインハイブリッド車)と純ガソリンエンジンMT車ですので、現在、「良い」クルマを選ぶのは本当に難しくなっています。もし、私が、自分の3台のクルマの中で、どれが1番良いクルマか選べ、と言われても答えに窮してしまうでしょう。
環境負荷の大小も含めて、様々なパワーユニットの選択肢が存在する中で、価値観の多様性も加味すると、益々、「今年の1台」を決める意味があるのか、ここ数年は本当に悩みます。
純ガソリンNA、V型12気筒のフェラーリと軽自動車の商用電気自動車の両方がノミネートされている中で、どれが今年の1番のクルマかを決める訳ですので…。
正に10年以上前には存在しなかった悩みと言えます。
しかしだからこそ、様々な分野をバックグラウンドに持つ選考委員が真剣に悩んで、投票する、このCOTYを皆様に注目して頂きたいのです。
もはや、ユーザーの皆様の「バイヤーズガイド」(クルマ選びの指針)にはならないかもしれません。
また、選ばれた10車の中には普段、皆様が見向きもしなかった様なクルマもあるとは思いますが、それぞれの分野でクルマに関する知識と経験を持った選考委員が、どのクルマを選んだのか、少しでも興味を持って頂いたとしたら、我々としては嬉しい限りです。
千葉県のサーキットにて、この10車を今月下旬、選考委員は改めて試乗し直して日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025を決めます。
各部門賞も含めてCOTYを決める投票は毎回、悶絶するほど悩みますし、時には何回も投票し直します(投票期限までは何回も修正できますので)。
しかし、勿論、まだ申し上げられませんが、今回は珍しく、この原稿を書いている今、私の中では、2車まで絞られています。
どちらも試乗した瞬間に「これは素晴らしいクルマだ…」と呟いてしまったのです。
しかし、まだ、どちらにするかは決まっていません。
以前もお伝えしましたが、2017年に選考委員になってから、まだ1度も自分が選んだクルマが、実際にCOTYに輝いた事はありません(苦笑)。
今期も、それは続くのか?!
いずれにせよ、日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025の発表は12月5日(木)。
私も楽しみにしています。
安東弘樹
安東弘樹連載コラム
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