日本の高速道路料金…安東弘樹連載コラム

皆さんは日本の高速道路を使う時、こう思いませんか。
「高速料金、高いな~…」。

私は自動車やバイクなどを使うYouTuberさんの動画を頻繁に観るのですが、ほぼ全てのYouTuberさんが高速道路を使い、出口でETCの料金が表示、もしくはアナウンスされると同じ言葉を呟きます。

そして仕事柄、頻繁に高速道路を使う私も、いつもクレジットカードのETC分請求額を見て愕然とします。毎月総請求額の半分以上を占めますので…。ほとんどが仕事での使用ですので経費にはなりますが、支払っていることに違いはないので、いつも唸っています(笑)。

海外の高速道路事情

  • ドイツ アウトバーン
  • アメリカ フリーウェイ

皆さんもしばしば、日本の高速道路料金は高いと聞くことがあると思いますが、改めて色々と今回検証してみましょう。まず、基本的なことからおさらいすると、日本の高速道路料金は、普通車については1kmあたり約24.6円に設定されており、実際に世界平均と比べて極めて高額です。

それでは、各国の高速道路の料金を見てみましょう。

まずはアジアから。
お隣、韓国の高速道路1kmあたりの料金は100ウォン前後(約10.6円・2025年10月現在のレートで)、中国は0.5元(約10.5円・同)。台湾では小型車は20kmまでは無料で、それ以上でも1kmあたり、僅か6円程度。走行が200kmを超える場合は同、5円未満と更に割引になります。

シンガポールの高速道路(エキスプレスウェイ)は基本的に無料ですが市街地を通る区間では特定の時間帯は料金が徴収されます(料金も時間によって変動)。その場合はERP(日本で言うETC)によっての徴収になります。1kmあたり、という計算は難しいですが基本は無料なので、負担はあまり大きくないでしょう。

続いてはヨーロッパです。
ドイツのアウトバーンは基本的に乗用車は無料ですが、1995年からは段階的に「大型車」は有料になっています。イギリスのモーターウェイも原則無料。イタリアの高速道路(アウトストラーダ)は1kmあたり0.07ユーロ(約12円)。フランスの高速道路(オートルート)は0.1ユーロ(約17円)とやや高めではあるものの、無料区間も多くあります。

そして私が幼少期に住んでいたスペインは現在、有料のAP高速道路と無料のA高速道路に分かれています。ただ、大半がA高速道路(無料)であり、やはり日本とは比べものになりません。

私が住んでいた1970年頃は高速道路が急ピッチで建設されていた時代。10年ほど前に生前の父親と高速道路について話した時は(父の車でスペイン各地を訪れた記憶があります)「高速道路を通る時にお金を払った記憶はない」と申しておりました。

最後に、一応、書いておきますがアメリカのフリーウェイやカナダのトランスカナダハイウェイなども無料です。

では何故日本だけ、こうも高額なのでしょうか?

日本の高速道路事情

  • 日本の高速道路料金所

まず考えられるのが日本特有の地形です。日本は山が多いため、高速道路を造るには多くのトンネルや高い橋の建設が必要です。また地震などの自然災害が多いため耐久性を高めなければならず、他の国に比べてどうしても建設維持費用が高くなります。

恐らく皆さんも、そういった理由は推測できるのではないでしょうか。ただ、私はそれに加え、今の日本のETCやサービスエリアもその原因の一つと考えています。

まずETCについて。以前もこのコラムでお伝えしましたが、例えば台湾は料金所のゲートが無く、コンビニでも買えるeTagというセンサーを車に取り付け、カメラが車のナンバーを読み取り、自動的に料金を徴収するシステムです。もしeTagを付けていない車がセンサーを通過した場合は後日、そのナンバーの車の所有者に1割増しの料金が請求されます。

ちなみに日本にある、あのETCゲートを一つ作るのに1億円が掛かり(以前出演したテレビ番組でNEXCOの方が言及)、その維持費やバーの上げ下げをするための電力など、とにかくコストが掛かります。何より、何らかのトラブルによりゲートが開かなかった場合に急ブレーキを掛けるクルマが現実的に存在するため危険です。

あ、また話が逸れそうになりましたので、今回は高速道路料金の話だけにしますが、全ての料金所を無くしてセンサーだけにするとコストはかなり下がるはずです。

実は今の日本でもセンサーだけの場所もあるので、(皆さんも、あれ、ゲートが無いのにETCが「○○円でした」と反応する所に記憶はありませんか?)簡単に切り替えられると私は思っています。

また特に主要高速道路のサービスエリアが最近、益々豪華になっていますが、これにも賛否があります。あのサービスエリア建設の原資も高速道路の通行料ですので、こんな豪華な施設をつくるのであれば、高速料金をもっと安くできるのではないか、という方が多いのも事実です。

個人的にはサービスエリアなどに寄って食事をするのが好きなので、どちらとも言えないのですが、観覧車や温泉施設などは「やりすぎ」ではないかと思うときもあります(トラックドライバーの皆さんのための施設は必要ですが、それより純粋にトラックの駐車スペースが不足しているので、その拡充は急務です)。

日本の場合、少なくとももう少し料金を安くすることは可能であるはずです。

ちなみに、海外の例を補足してお伝えすると、近年では高速道路の有料化や値上げの方向に傾いているのも事実です。スイスとオーストリアの高速道路は建設当初は無料でしたが、維持管理・環境改善のための費用確保を目的として有料化されました。ドイツも大型車に続いて乗用車も有料化の話は出ています。
しかし、有料化されたとしても各国の高速道路料金は日本より遥かに安いのも、また確かです。

さらに!日本では2050年までに道路建設費を返済するはずだった計画は、トンネル崩落事故などの補修費や維持費の膨れ上がりによって有料期間が延長され、2023年6月の法改正により現在では2115年(22世紀!)までの有料期間が決まっています。

また、道路の老朽化は進むため今後も莫大な補修・維持管理費用が必要であり、残念ながら私の息子達(15歳と19歳)ですら無料の高速道路を走る日を迎えるのは無理でしょう…(私の孫世代ですら無理かもしれません)。

現在、高速道路から得られた収益は合算されて、補修費を含めた赤字路線の負担を補う形で運用されています。実は赤字路線というのは、地方やその周辺に多く点在しているのですが、料金が一律で高額なため、多くの運送業者や個人が使用せず、変わらず混雑する国道などを使っているという場合も多いそうです。

これも個人的な見解ですが、通行量などをAI等を使って解析し、現在の交通量が少ない路線の料金を低く設定して高速道路に多くのクルマを誘導、国道などの混雑を緩和し通行をスムーズにすればトラックなどの燃費が良くなり使用燃料量も減らせるというものです。運送効率を高めた場合、全体で見た時の経済的メリットも生まれるのではないでしょうか。

2010年6月から約1年にわたって高速道路無料化社会実験が実施されました。その実験中の状況として国土交通省が公表したデータによると、実験区間の交通量がおよそ2倍増、無料道路と有料道路を跨ぐ利用も1.5倍に増加し、一般道の交通量が約2割減少したとのこと。

そういった実験結果を基に、当時は実用化されていなかったAIを駆使して更なる効率化を進めれば、世界一高い日本の高速道路料金を少しでも安くすることは可能なはずです。建設資材の高騰など避けられないコスト高に対して、テクノロジーと知恵で対抗する。これは道路建設や維持だけではなく、これから様々な分野で益々、求められてくるのではないでしょうか?

皆さんは、どう思われますか?

文:安東弘樹 写真:写真AC