TOYOTAのモータースポーツ大躍進の一方で…安東弘樹連載コラム
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写真:TOYOTA RACING
モータースポーツシーンでのTOYOTAの存在感
先日おこなわれた、2026年の第94回ル・マン24時間レースは、トヨタ・レーシング7号車が大逆転で4年ぶり6度目の優勝を飾りました。予選で苦戦し14番手スタート。更にレース序盤のタイヤトラブル、センサー不具合などがあったにもかかわらず、フェラーリの4連覇を阻み、最後は2位になったBMWとおよそ11秒差という僅差での優勝というドラマチックな幕切れとなりました。
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TOYOTA RACING 7号車・8号車/ル・マン24時間レース 写真:TOYOTA RACING
7号車のドライバーはマイク・コンウェイ選手、小林可夢偉選手、ニック・デ・フリース選手の3人。表彰台の真ん中で、満面の笑みで勝利の美酒に酔っている3人を観て私も感動を禁じ得ませんでした!
ちなみに同じく予選15番手と苦しんだ8号車も3位表彰台を獲得。トヨタ・レーシングは1・3フィニッシュという見事な結果を残しました。
WEC(FIA世界耐久選手権)でのTOYOTAの近年での活躍は目覚ましく、タイトルを獲得したのは、2014年、2018―2019年、2019―2020年、2021年、2022年、2023年、2024年の7回!(2025年はフェラーリ)
今年も、ル・マン24時間レースで他のレースの2倍のポイントを獲得したことで、マニュファクチャラーズランキングでは現在1位に付けています。
また、先月行われた「ラリージャパン」で盛り上がったWRC(世界ラリー選手権)でもTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team (以下TGR)は、現在7戦中6勝していて、圧倒的首位に立っています。
しかも現在、WRCで5連覇中という圧倒的強さを発揮しています。
さらにF1でもTOYOTAは2024年からアメリカのF1チーム、ハースと技術提携しており、チーム名もTGR(TOYOTA GAZOO Racing) Haas F1 Team になっています。
こう考えると、今、TOYOTAは世界的な3大自動車選手権(F1、WEC、WRC)のうち、2つを複数回制覇しており、残りの1つF1でも存在感を示しているのです。
これは実は日本人としては非常に誇らしいことであり、長いモータースポーツの歴史のなかでも偉業と言って良いのではないでしょうか。
しかし…、これは「謎」と言って良いと思いますが、日本国内での盛り上がりが少ないのです。
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2026 ラリージャパン 写真:トヨタ自動車
日本におけるモータースポーツの盛り上がり
先程、私は「ラリージャパンで盛り上がった」と書きましたが、それは日本の「モータースポーツファン」の中で、という意味で、残念ながら「日本中で」とは言えない状況です。
奇しくも、今、サッカーW杯が行われていますが、ル・マン24時間レースでトヨタ・レーシングが優勝した時と、W杯での日本代表の初戦、オランダ戦が近かったこともあり、トヨタ・レーシングの優勝よりもサッカー日本代表の「引き分け」の方が大きいニュースになったのは言うまでもありません。
このコラムで何度も「日本におけるモータースポーツの位置」という内容を書いてきましたが、なかなか劇的には変わってこないのが現状です。
それでも、いくつかのテレビ局が、それぞれの配信フォーマットを使ってF1やWRCなどを放送(配信)してくれています。(残念ながら私が在籍していたTBS以外!)、特にテレビ朝日さんは、ABEMAをフルに使って、様々な切り口で盛り上げてくださっています。
それでもなかなか日本社会にモータースポーツが定着しないので、私は最近、AIに尋ねました。「どうして日本でモータースポーツが定着しないのか?」
AIの回答として出てくる理由が「日本ではモータースポーツ(自動車)が「文化」として定着していない」「若者のクルマ離れ」「地上波で放送していない」の3つに集約されます。
しかし、それでは納得できないので、続けて「どうして日本ではクルマやモータースポーツが「文化」として定着しないのか」という質問をしてみると、
「日本では長年、クルマは便利で快適な「道具」として発達してきたから」さらに「経済的な低迷により可処分所得が減りクルマにお金を掛けられなくなり、その傾向に拍車が掛かってきた」
さらにさらに重ねて訊いてみると、「比較的経済的に恵まれた都市部では、公共交通機関が張り巡らされており、クルマの必要性が減少してきた」と返されてしまい、それでは、と重ねて、「趣味としてのクルマが日本で発達しなかった理由」と訊くと、「日本では自動車が文化として定着しなかったから」という、まさに堂々巡りになり、危うく正気を失ってしまいそうになりました(笑)。
色々と質問内容を変えて聞いてみると、「元々、馬車文化だった欧米が富裕層を中心に文化としての自動車に移行しやすかった」というような回答もでてきました。
確かにアメリカやイギリス、ドイツなどの一部のヨーロッパの国では、モータースポーツを「自分でも」楽しんでいる人が多いので、人気があるのは分かりますが、それ以外のヨーロッパの国々や中南米や東欧など、日本と比べても自身がモータースポーツを楽しめる状況ではなさそうな国でも、日本と比べるとモータースポーツの人気が高い国もあります。さまざまな要素で、どうしても心からは理解できないのです。
日本では「ナショナリズム」が絡まないと、スポーツが定着しにくいという分析が数多くあります。AIに訊いても「日本のスポーツがナショナリズム先行、というのはスポーツ社会学や歴史学の観点から長年議論されている」と回答されます。
しかし、それに当てはめると、現在の状況はTOYOTAがチームとして大活躍しているうえに、日本人ドライバー、小林可夢偉選手が過日のル・マン24時間レースで、見事に勝っており(しかも2回目!)、実は世界三大レース(ル・マン24時間レース、インディ500、F1モナコグランプリ)の内、二つ(インディ500では佐藤琢磨選手が2回も優勝しています)を日本人ドライバーが制覇していますので、十分、ナショナリズムの観点からも注目されるはずなのですが、何故でしょう?
そこで、気になるのが「若者のクルマ離れ」というフレーズです。このフレーズ、じつは言われ初めて実に20年以上、経っています。ということは「若者」どころか「中年」以下の日本人、つまり半数以上がクルマから離れている、ということを意味します。
もちろん、家庭を持って子どもが生まれると生活のために「自動車」を購入する人は増えてきますが、当然それは趣味ではなく「道具」を買う感覚です。
車種の選択理由もドライバビリティやデザイン、所有欲を満足させてくれるか、どうかではなく「便利かどうか」に特化することになるでしょう。
その中でももちろん、クルマ好きや趣味にしたい人もいるでしょう。
しかし、そこに立ちはだかるのが「経済の停滞」と「物価高」です。そりゃあ、興味をなくすしかありません。
そんな中でも純粋にスポーツとして、モータースポーツを観てくださる方は本当に有り難いのですが、やはり少数になるのは仕方がないのかもしれません。
しかも、そこに拍車を掛けるのではないかという現象を今、私は目の当たりにしています。
クルマが遠い存在になっていく!?
私の長男は私の影響もあり、クルマやモータースポーツが大好きです。
そんな息子が今、自動車教習所に通っているのですが、これが大変なのです。
まず教習所のサイトやアプリで教習の予約ができるのですが、これがまず空いていません。二ヶ月先まで埋まっています。では、どうするかというと朝から教習所に行って「キャンセル待ち」をして、「コマ」が空いたら、教習を受けられるという状況です。
朝7時~夜まで教習所で待っていても、講習(教習)を受けられない時さえあるそうです。大学生の息子は大学の授業の合間に教習を入れるのですが、それだと教習を受けられない日の方が多い、という状況なのです。(ちなみに3月4月の繁忙期ではなく5月、6月、例年であれば閑散期でこの状況)
高額な入学金や講習・教習料(10年で教習料は15%上昇*日経新聞2025年5月21日)を事前に支払っているにもかかわらず、教習を受けられない現実に、途中で諦めて退所する学生さんもいるとのこと…。
実はこの状況、コロナ禍以降顕著になったそうです。
コロナ禍以前から、少子高齢社会の影響をモロに受けた教習所は閉校を余儀なくされ、指導員不足(10年で11%減少*同・日経新聞)に悩まされています。しかし、コロナ禍で自動車の運転需要が急速に高まり、それ以降、教習所のこのような状況が常態化しているのが現実なのです。
これでは若者のクルマ離れが加速する、というものです。教習所に入学してから9ヶ月間で卒業できなければ、免許は取得できません。
私の時代には、9ヶ月もあれば殆どの方が余裕で卒業できましたが(私は合宿だったので半月で卒業しました)、最近では、良くてギリギリ、働きながらや通学しながらだと間に合わなくなり、泣く泣く退校ということも珍しくないそうです。
この状況ですので、せめて入校から卒業までの期間を1年間にするなど、工夫をしていただきたいと切に願います。
いつか「普通自動車免許」が遠い存在のものになってしまうのではないかと危惧しています。
それでなくてもドライバー不足に悩まされている日本なのですから。
せっかく、日本の代表企業であるTOYOTAが世界のモータースポーツシーンで存在感を存分に発揮しているのですから、その国で自動車免許の取得が、「技術」ではなく「機会」の問題で難しくなっているというのは、何とも切ないことです。
もしくは「指定教習所」を卒業して「技能試験免除」という制度を見直して、高額な教習所に何ヶ月も通うのではなく、自分が用意したクルマを使って教習所で練習し(欧米の多くの国は公道で隣に教官やベテランドライバーを乗せて練習できますが、日本では無理でしょう)、「厳しい」技能試験を「免除されない」代わりに頻繁に受けられる欧米のような制度にするなど、根本的に制度そのものを変えることも視野に入れるべきだと思っています。
皆さんは、日本のモータースポーツシーン、教習所制度、どのようにお考えですか?
安東弘樹







