フェード現象とは?べーパーロック現象との違いや起きたときの対策を解説
フェード現象とは、ブレーキのトラブルに関する現象で、交通事故につながる恐れのある危険なものです。ベーパーロック現象との違いや、前兆、対策、未然に防ぐ方法についてご紹介します。また、フェード現象やベーパーロック現象が起きやすいシチュエーションもご紹介します。紹介内容は乗用車が中心ですが、トラック向けの内容も一部掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
フェード現象やべーパーロック現象とは?
ブレーキが利かなくなる現象
フェード現象・べーパーロック現象とは、長い下り坂などでフットブレーキを踏み続けることで、ブレーキが利きづらくなってしまう現象です。どちらもブレーキを連続で使用することが原因で起こります。
2022年、静岡県で観光バスが横転して1人が死亡し、負傷者を多数出した事故を記憶している人もいるでしょう。上記は、フェード現象が原因で起こった事故と言われています。事故を起こしたバスのフットブレーキで使われていたドラム式部分は焼けた跡があったそうです。とくに大量の荷物や人を運ぶ大型車は摩擦熱が発生しやすいため、注意が必要です。
フェード現象とベーパーロック現象の違い
フェード現象:摩擦材の発熱によりガスが発生し摩擦係数が低下するために起こる
ベーパーロック現象:ブレーキオイルの沸騰により気泡が発生し、ブレーキの圧力を伝えることができなく起こる
フェード現象・べーパーロック現象の主な原因はフットブレーキの多用にありますが、ブレーキが利きづらくなる仕組みに違いがあります。
とくにべーパーロック現象はフットブレーキの多用だけでなく、メンテナンス不足も大きな原因の一つです。
以下、自動車のブレーキの種類や仕組みについて解説します。
自動車のブレーキの仕組み
- フットブレーキ
- エンジンブレーキ
- ブレーキフルード
ブレーキにはフットブレーキとエンジンブレーキがあり、どちらも自動車の減速させるためのものです。一つずつ解説します。
フットブレーキ
フットブレーキは、ブレーキペダルを踏むことでタイヤの回転を制御し、減速する仕組みです。ブレーキペダルを踏みこんだ力をブレーキに伝える方法としては、油圧式、エアー式、空気油圧複合式があります。ブレーキの構造には、ドラムブレーキとディスクブレーキの2種類があります。
ドラムブレーキには、ブレーキシューという部品があり、それをドラムに押し付けることで制動力を発生させます。ディスクブレーキにはブレーキローターという部品がありブレーキパッドがブレーキローターを挟むことで、制動力を発生させます。
エンジンブレーキ
エンジンブレーキは、アクセルペダルから足をはなしたとき、エンジン内の抵抗が増えることにより、発生する減速力です。エンジンブレーキという部品はありませんのでブレーキランプは点灯しません。
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ブレーキフルード
べーパーロック現象の主な原因は、フットブレーキの多用やメンテナンス不足による、ブレーキ液のトラブルです。
フットブレーキを使いすぎると、摩擦熱がブレーキ液に伝わって、ブレーキ液が沸騰し、気泡が発生します。この気泡によって、ブレーキペダルによって発生した力がうまくブレーキ液に伝えられなくなり、ブレーキが効かなくなってしまいます。
また、メンテナンス不足も大きな原因です。ブレーキフルードは吸湿性が高いため、次第に水分を中にため込みます。その結果沸点が下がるため、摩擦熱によって沸騰しやすくなります。
フェード現象やベーパーロック現象の前兆
- ブレーキの利きが悪くなっている
- ブレーキから異臭がする
上記のような現象がある場合は、たとえブレーキが使える状態でも、すぐに車を休ませてエンジンを冷やしましょう。これらはフェード現象やベーパーロック現象の前兆であるため、異変を感じたらできるだけ早く修理・点検を受けることが大切です。
フェード現象やベーパーロック現象を未然に防ぐ方法
- 長い下り坂ではエンジンブレーキを活用する
- ブレーキの点検を定期的に行う
- バン、トラックの場合、最大積載量を守る
フェード現象、ベーパーロック現象、いずれも主な原因はフットブレーキの多用です。上記3つのポイントを押さえ、安全に運転しましょう。
長い下り坂ではエンジンブレーキを活用する
山道などで下り坂が続くときは、ブレーキを踏む回数を減らすために、Dレンジ(ドライブ)から低速ギアに切り替えて、エンジンブレーキを主体的に使用するようにしましょう。フットブレーキは補助的に使うと、長い下り坂でも安心です。
ブレーキの点検を定期的に行う
車が止まらないと、大きな事故になります。ブレーキの点検は定期的に行い、そしてブレーキフルードは定期的に交換し、安全な走行を心がけましょう。日常点検する際には、適切なブレーキペダルの踏みしろ、ブレーキの液量は規定の量が入っているか、ブレーキの利き、異音などについてチェックするとよいでしょう。
最大積載量を守る
過積載は車両に大きな負担をかけます。バスやトラックなど車両重量が大きい車両は、とくに注意が必要です。必ず最大積載量を守り、搭載量が多い場合には制動力不足となることがありますので気をつけましょう。また大型車に搭載されている排気ガスブレーキやリターダーを利用しましょう。
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フェード現象やベーパーロック現象が起きたときの対策
エンジンブレーキを使って減速をする
もしフェード現象やベーパーロック現象が起きた場合には、エンジンブレーキを使用し減速しましょう。慌てず、ギアを少しずつ下げ、減速していきます。十分にスピードが下がったら、サイドブレーキをかけて停車しましょう。
これらの現象が起こったら、ブレーキパットを冷やすことが大切です。近くに停車スペースがあれば停車して、ブレーキが冷えるまで60分程度待ってみましょう。フェード現象の場合ブレーキが冷えると、制動力が回復することもあります。しかし、ベーパーロック現象の場合はエアーが残り完全に回復することは難しく再発の可能性が高いです。このような現象が起きた後は、基本的に走らず、販売店で点検をしてもらいましょう。
フェード現象やベーパーロック現象が起きやすいケース
- 坂道・山道の走行
- エアブレーキを装備したトラックの運転
- ブレーキにドラムブレーキが使用されている車の運転
フェード現象やベーパーロック現象がどのように起きるのか知っておくことで、予防をすることができるでしょう。現象が発生しやすいシチュエーションについてご紹介します。
坂道・山道の走行
山道はカーブが多く、アップダウンの激しい勾配が続く道路も多いため、ブレーキを多用するため、フェード現象が起きやすいと言えます。とくに直線距離が短く、コーナーが続く場合にはブレーキを酷使しがちです。低いギアとエンジンブレーキを使い、フットブレーキ頼りの運転をしないようにしましょう。長い下り坂の場合も同じです。
エアブレーキを装備したトラックの運転
エアブレーキは、圧縮された空気が膨張するときに発生する力で車を停車させます。大型トラックや大型バスなど、減速するのに大きな制動力が必要なトラックに使われています。エアブレーキを搭載した車では、ブレーキペダルのバタ踏みはNG。バタ踏みとは、ブレーキペダルの踏み込み、ゆるめ操作を短時間に必要以上繰り返すことです。エアタンク内のエアー圧が下がってしまい、制動力が低下しますので注意しましょう。
ブレーキにドラムブレーキが使用されている車の運転
ドラムブレーキとは、車輪の内側につけられたドラム内部に「ブレーキシュー(制輪子)」を押し付けて回転を止めるシステムのことです。ドラムブレーキは放熱性が悪いという特徴があるため、ディスクブレーキよりフェード現象が起きやすいです。運転する際には注意しましょう。
車のブレーキに関するその他の現象
- ウォーターフェード現象
- ハイドロブレーニング現象
車に関する危険な現象としては、フェード現象やベーパーロック現象の他にも、上記のようなものがあります。
ウォーターフェード現象
ウォーターフェード現象は、水によってブレーキの摩擦材が濡れることで、その制動力が弱くなる現象です。冠水した道路や水中を走った時に起こりやすく、ウォーターフェード現象になるとブレーキが深刻な機能不全に陥り、事故につながる危険があります。雨天走行する場合は、ブレーキを急激にかけすぎないようにしましょう。また、水たまりを通過した際には、しばらくブレーキを踏み込まないようにするなどの注意が必要です。
ハイドロブレーニング現象
ハイドロブレーニング現象は、濡れた路面を高速で走るときに起こる現象です。タイヤと路面との間に水の膜ができることで、車体が浮き、ハンドルやブレーキがコントロールできなくなります。高速で走る際に起きるため、とくに高速道路を走行中に起きやすいため、注意しましょう。
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フェード現象やベーパーロック現象を知り、安全に走行しましょう
フェード現象やベーパーロック現象についてご紹介しました。どちらも、下り坂でブレーキが利きづらくなる現象で、事故につながる危険があります。それぞれの現象がなぜ起こるのかを押さえ、安全な走行に役立ててください。
また、もしフェード現象やべーパーロック現象が起きてしまった時の対策や予防についても解説しました。日ごろのメンテナンスを欠かさず、前兆があった場合は冷静に対処しましょう。
ブレーキは、安全に走行するために最も重要な装置です。ブレーキの点検を定期的に行い、安全に走行しましょう。
(GAZOO編集部)
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