感性に響く上質なデザインで、日常の時間と心を豊かにする『MODELLISTA』のエアロパーツ
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モデリスタ3周年を記念して送り出された150台の限定車CASERTA (MR-Sベース・2000年)
自動車メーカーには「メーカー直系」のカスタマイズブランドが存在する。その自動車の性能を試す場、性能を引き上げる場としてモータースポーツへの参戦を支えるブランドもあれば、メーカーのクオリティを生かした純正カスタマイズパーツの製造を行うブランドもある。
この連載コラムでは、そんな各自動車メーカーのメーカー直系ブランドの成り立ちや歴史を振り返っていこう。
第2回目となる今回は、トヨタのカスタマイズブランド「MODELLISTA(モデリスタ)」をお届けする。
メーカー直系ブランドだからこそのメリット
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モデリスタはトヨタ、レクサス、ダイハツの新型車のコンプリートカーやカスタムパーツを手掛ける。写真はC-HR“BOOST IMPULSE STYLE (2016年)
1997年2月。国内のバブル景気の崩壊とともに、新車の販売市場は右肩下がり、もしくは横這いといった曇りの時代が訪れていた。そんな閉塞感を打開するべく、トヨタモデリスタインターナショナル、モデリスタ神戸、モデリスタ福岡が誕生する。(2002年に『株式会社トヨタモデリスタインターナショナル』に統合)。その強みと魅力は、なんといってもメーカー直系のカスタマイズブランドということである。
なぜ、メーカー直系のブランドが一目置かれるかと言うと、まずは新型車への対応が早いということだろう。
現在モデリスタの取り扱いで言うと、“トヨタ”、“レクサス”、“ダイハツ”のカスタムベースとして該当する新型車が出ると、モデリスタの各種パーツも、そのほとんどが新車発売と同時にリリースされる。よって、ディーラーで新車を注文する際に、モデリスタのエアロをはじめとするパーツを組み込んだ状態で購入できるという点も大きなメリットである。
次にアフターパーツの製品クオリティとして見た場合。当然メーカー直系なので、その製品の仕上がりは、最上級といって良いフィッティングを実現している点だ。ここ数年では、サードパーティー製のパーツも高い精度で作られているものが多いが、常に安定のクオリティのモデリスタを選ぶという安心感は大きい。そして何よりも魅力なのは、そのデザイン性の高さに尽きるだろう。
1997年から数々のコンプリートモデルをリリースするモデリスタ
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モデリスタ『PX-01』
モデリスタが船出をした1997年、最初の商品としてリリースされたのが『トヨタ・ハイラックスサーフ』をベースにした『PX-01』というコンプリートカーであった。大型の前後フルバンパーにオーバーフェンダー、武骨さを抑えるべくキャッチーな4灯ヘッドライト&グリル、そして特徴的なサイドステップを装備した、親しみやすいデザインで注目を集めた。
その後、デビューイヤーとなる1997年だけでも、グランビアPX-02、RAV4 PX-03、イプサムPX-06、プラドPX-09、ランクル70ネオクラシックPX-10、スターレットPX-11といった数々のコンプリートカーをリリースするなど、その攻勢力に圧倒された。
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初代ハリアーをモデリスタとザガートがコラボレーションして送り出したコンプリートカー『HARRIER ZAGATO』
そして1998年。デザインの力で業界の風向きを変えていくモデリスタに、新たな動きが。それは、イタリアの老舗カロッツェリアである『ZAGATO(ザガート)』(SZデザイン社)とのコラボレーションであった。
まずは初代ハリアーをベースとし、エクステリアにはイタリアンテイストが盛り込まれたザガート仕様のエアロキットと、18インチアルミホイール、ローダウンサスペンション等が組み込まれた。ボディサイズは全長4635mm×全幅1900mm×全高1640mmとなり、標準車の4575mm×1815mm×1665mmと比べると、85mmもワイドになり、25mmの車高ダウンによって迫力のワイド&ローフォルムを実現させている。
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『VM180 ZAGATO(MR-Sベース)』
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トヨペット店50周年を記念してリリースされた2代目ハリアー『HARRIER ZAGATO』
このザガートとのコラボレーションの流れは、2001年に登場した『VM180 ZAGATO(MR-Sベース)』や、2006年には2代目のハリアーをベースにして、当時の販売チャンネルであったトヨペット店の50周年記念 特別仕様車として『HARRIER ZAGATO』をリリース。日伊デザインの競演として、モデリスタのコンプリートカーラインアップに花を添えた。
モデリスタのエアロパーツが選ばれる理由
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モデリスタの専用カスタムパーツを装着した200系ランドクルーザー(2007年)
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モデリスタの専用カスタムパーツを装着した9代目カムリ(2011年)
2000年を過ぎた辺りから、コンプリートカー事業と並行しながら、後付けの用品としてのエアロパーツ販売の比重が大きくなっていく。既に“そのクルマ”を持っているユーザーにとってモデリスタのエアロが装着できるというのは、カスタマイズのチャンスが広がったことを意味し、マーケットもそれに反応してくれたのだ。
モデリスタ製品の主軸は、エクステリアを中心とするエアロパーツである。そのデザインの魅力は、明確なターゲット層を鑑みて造形されているように思う。
例えば、『ノーマルのクルマでは味気ない』
かと言って、『社外のエアロパーツでは派手過ぎてしまう』
『カスタマイズを施して個性を出したい』
『何度も交換するものではないので、飽きのこないデザインが理想』
こういったオーダーが、ミドル&アッパーミドル層から多いのは。云わば普遍的なものである。
よって、モデリスタのアイテム群は、“ハードなカスタマイズで目立ちたい”といった、熱狂的なユーザー層とは異なり、“個性的かつ、洗練されたクルマに長く乗りたい”といった、クルマ好きの層にピッタリと当てはまる。これを実現してくれるのが、モデリスタの真骨頂ではないだろうか。
モデリスタならではの“スポーティ”なカスタマイズ
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TOYOTA86 MODELLISTA Version (2012年)
SUVやクロスカントリー、セダンにミニバンなど、主要人気車種を軸に展開されるモデリスタのラインナップだが、トヨタ直系で言うと、『スポーツ』色の強い“GR SPORT”や“TRD”とは趣が変わり、『スポーティ』といった温度感のデザインで、それに共感するファンが多いのが特徴だ。
造形で言えば、しっかりスポーティでありながら、一部のクルマ好きに刺さるハードなデザインよりも、クルマと空間の境界面がどこか柔和さを感じさせるのではないか。
そんなモデリスタの、スポーティなデザインに分類できるいくつかのクルマを見ていこう。
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モデリスタ『ALTEZZA QUALITAT』(1999年)
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TOYOTA86 MODELLISTA Version (2012年)
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モデリスタ『LEXUS LC』(2020年)
1999年に登場した『ALTEZZA QUALITAT(アルテッツァ クオリタート)』は、より一層の走りと機能を追求したモデルで、専用のエアロパーツだけでなく、専用のグリルや専用のアルミホイールまでをコンプリート。潜航するかの如く空気を切り裂き、その先の世界を見せてくれる。そんな造形が美しい。
2012年にリリースされた『TOYOTA86 MODELLISTA Version.』は、“スタイリッシュモーション 先進的で躍動感溢れるスタイリッシュスタイル”をコンセプトにした都会的なデザインを採用。レーシングではなく、ストリートで映える造形が見どころのデザインとなっている。
2020年に登場した『LEXUS LC』は、“Sensual Sonic Chrome”と銘打って、流麗さを引き立てるスタイリングと随所に散りばめられた大型のメッキ加飾など、車格に見合った高貴なエクステリアパーツをリリース。スポーティさをスープアップさせる精密な造形は、モデリスタのデザイン力の賜物だろう。
これら、モデリスタの秀逸なデザインはクルマの枠を超え、クルーザーや腕時計の世界でも活躍の場を広げる。
スポーツユーティリティクルーザー『PONAM-31 Z Grade』のデザイン面で、トヨタマリンとのコラボレーションで参画。フライブリッジを囲むガーニッシュやキャビン内、そしてソファー等の造形やデザイン全般で、優雅で快適に過ごせる空間コーディネートを実現した。
また腕時計では、セイコーの企画・デザインスタッフが、“より感性を刺激するようなデザインに一歩踏み出したい”という意気から、他業界のデザイナーとコラボレーションはどうだ? と発案、モデリスタの門を叩いたという。ここでも、『後付け感のない、ベースとなるもの自体のポテンシャルを昇華させていく』といった、モデリスタならではのセンスが存分に活かされた。
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LEXUS GX MODELLISTA (2025年)
デザインには人の心を揺さぶる力がある。そのデザインを見て琴線に触れると、それを所有したくなり、所有することで心が豊かになる。心が豊かであれば笑顔の時間が増える。そんな上質なプロダクトを創造するカスタムブランドがモデリスタだろう。
2018年にはTRDを有するトヨタテクノクラフト、トヨタ車の架装や特殊車両を製作するジェータックスと統合し、「トヨタカスタマイジング&ディベロップメント」として新たなスタートを切っている。
メーカークオリティはそのままに、それぞれが持つ特徴を昇華することで、この先もその躍進は続いていくことだろう。
(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)
[GAZOO編集部]
メーカー直系ブランドストーリー
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感性に響く上質なデザインで、日常の時間と心を豊かにする『MODELLISTA』のエアロパーツ
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