Z世代の7割はクルマが欲しい。それでも“買わない”本当の理由【連載コラム:Z世代とクルマのリアル】

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免許は持っているのに、マイカーを持たない20代、皆さんの身近にいませんか?

「若者のクルマ離れ」とよく言われますが、実態はそれほど単純ではありません。データを紐解くと、Z世代の多くは運転そのものに関心を持っており、いつかはクルマを持ちたいと思っている人も少なくないのです。

それなのに、なぜ彼らは車を“買わない”のか。そこには、かつての世代とは少し異なる財布の事情と、クルマを取り巻く現実がありました。

本連載では、数字から見えるZ世代の金銭事情を整理しながら、地方と都心、それぞれで「あえて持たない形」を選んだ若者たちの本音を追いかけます。第1回は、彼らが直面している「欲しくても、持てない」現実を、数字とともに見ていきましょう。

若年層の8割が免許を持ち、7割がクルマを欲しいと思っている。それでも『持てない』理由

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まず、「クルマ離れ」という言葉の前提を確認しておく必要があります。

  • 若年層の免許保有率

日本自動車工業会(JAMA)が2023年度に実施した「乗用車市場動向調査」によると、若年層の免許保有率は約8割にのぼります。免許を持っていないわけではありません。

  • Z世代の矛盾する本音

さらに、株式会社KINTOが2025年に実施した「Z世代のクルマに対する意識比較調査」では、将来的にクルマを持ちたいと答えた割合が都内で69.3%、地方では79.7%という結果が出ています。「クルマはいらない」どころか、7〜8割がいつかは所有したいと考えているのです。
[普通自動車免許を所有する都内在住Z世代309名および地方(政令指定都市がない県)在住のZ世代300名への調査]

ところが、同調査で「『若者のクルマ離れ』と聞いて、自分自身のことだと感じるか」という質問に対して、都内在住のZ世代の72.8%が「感じる」と回答しており、その数字は前年から21.5ポイントも上昇しています。

  • 車を欲しいと思わない理由

また、若年層の車非保有者のうちクルマの持ち方として、都内在住では「公共交通機関で十分」と答えた割合が約半数を占めており、関心はあるものの所有を先送りしている実態が浮かび上がります。また、インフレによる「クルマの購入を躊躇」や「保有期間の長期化」を選ぶ人が増えているという傾向も、同調査で明らかになっています。

24年間で社会保険料は1.4倍に。給料が増えても「手取り」が増えない構造

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第一ライフ資産運用経済研究所の分析によると、2000年から2024年の24年間で、勤労者世帯の勤め先収入は約633万円から697万円へとわずかな増加(年率+0.4%)にとどまっています。

一方で、社会保険料の負担額は同期間に約58万円から83万円へ、約1.4倍に膨らみました。直接税(所得税・住民税)の増加が約5万円にとどまったのに対し、社会保険料は約25万円もの増加です。収入の伸びを大きく上回る負担増が、この四半世紀に静かに進行していました。

  • 収入と負担のバランス

その背景には、制度の変化があります。厚生年金の保険料率は2004年から段階的に引き上げられ、2017年以降は18.3%(労使折半)で固定されています。健康保険料も同様に右肩上がりで推移してきました。さらに消費税は2019年に10%へと引き上げられ、家計の実質的な購買力を下押ししています。

大和総研の試算では、20代単身者の実質可処分所得は2012年から2024年の12年間でほぼ横ばいです。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、実質賃金は2022・2023年度と2年連続でマイナスを記録しました。

給料の額面は多少増えていても、引かれる額も増えて、物価も上がっている。手元に残るお金は、気づかぬうちにじわじわと目減りしてきました。それがこの世代の現実です。

そこにクルマを買うという選択肢を持ってくると、どうなるか。中古車でも程度の良い一台を手に入れるには頭金として数十万円前後が必要です。そこに毎月のローン返済、任意保険料、点検整備や車検費用、ガソリン代が加わります。都市部では駐車場代だけで月3〜5万円、年間換算で最大60万円が消えていく計算です。クルマを「持つ」ということは、毎月の家計に大きな固定費を抱えることを意味します。手取りが増えない時代に、この負担は決して小さくありません。

大学生の55%が奨学金を抱えて社会に出る

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手取りの問題に加えて、Z世代にはもうひとつの経済的な重荷があります。奨学金です。

日本学生支援機構(JASSO)の「令和4年度学生生活調査」(2024年11月発表)によると、大学昼間部に在籍する学生の55.0%が奨学金を受給しています。2人に1人以上が、学生のうちから借金を抱えているのです。

  • 学生と奨学金利用率

奨学金の大部分は返済が必要な「貸与型」です。社会に出て間もなく、毎月の返済が始まります。労働者福祉中央協議会が2024年に実施した調査では、JASSO奨学金の返済者のうち約7割が返済に不安を感じており、返済が「貯蓄」に影響していると答えた割合は6割強、「結婚」「出産」「子育て」への影響を感じる割合も4割前後にのぼっています。

こうした状況の中で、カーローンを組むことがどう見えるか。すでに毎月数万円の奨学金を返している若者にとって、そこにさらに数万円のローンを重ねることに抵抗を感じる方も多いでしょう。

かつての世代にとってローンは「欲しいものを手に入れるための手段」でした。しかしZ世代の多くにとって、ローンは「これ以上抱えたくない負債」。同じ言葉でも、受け取り方がまるで違います。この価値観のズレを理解しないと「なぜ買わないのか」という問いの答えには近づけません。

加えて、クルマの維持費には「突発的な出費」がつきまといます。車検のたびに数万円〜数十万円、予期せぬ故障があればさらに修理費が発生する。月々いくらかかるか正確に読めない支出の存在は、毎月の家計を1円単位で管理したいZ世代にとって、大きな心理的ハードルになっています。

Z世代は「所有しない」ではなく「別の乗り方」を見つけた

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しかし、彼らはクルマをあきらめたのではありません。

カーシェアリング主要5社の車両台数は2025年末時点で前年比18.6%増となり、7万台の大台を突破しました。ステーション数も3万2,000箇所を超え、前年比20.3%増で拡大が続いています(カーシェアリング比較360°・2025年)。

  • 別の乗り方の割合

    出典:日本学生支援機構(JASSO)、労働者福祉中央協議会、カーシェアリング比較360°、日本自動車工業会(JAMA)、株式会社KINTO の公開データを基に作成

意識の面でも、大きな変化が起きています。KINTOの2025年調査では、クルマのサブスクサービスを知っているZ世代のうち、次にクルマを持つとしたらサブスクを「検討したい」または「やや検討したい」と回答した割合は83.7%。都内に限ると、その割合は92.0%にのぼります。「検討したい」と答えた都内の割合は52.5%で、前年の32.2%から20ポイント以上の急上昇です。

2021年にJAMAが行った調査では「サブスク利用意向者はまだほとんどいない段階」でした。わずか数年で、Z世代のクルマとの向き合い方が大きく変わったのです。

月々定額で、自動車税も車検代も保険料も含まれている。突然の出費がなく、毎月の支出が確実に読める。この「支出の見える化」こそが、手取りが増えず、奨学金を返しながら生活する世代にとって、サブスクが「賢い選択肢」として映る最大の理由でしょう。所有という形を選ばなかっただけで、クルマへの関心は確実にあり続けています。

駐車場代だけで年60万円。都市と地方、違う事情が示す同じ現実

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クルマとの距離感は、住む場所によっても事情が異なります。

都市部では電車やバスが発達し、日常の移動に自家用車が必要なケースは少なくなっています。駐車場代が月3〜5万円に達することもある中で、カーシェアのステーションが駅前や住宅地に急増し、「必要な時に、必要な分だけ」という使い方が現実的な選択肢になっています。KINTO調査でも、収入が増えたらクルマ関連の支出を増やしたいと答えた割合が都内45.9%にのぼっており、経済的余裕さえあればクルマに向き合いたいという気持ちは確かにあります。

  • 車への関心度合い

一方、地方ではクルマは今も生活の足です。地方圏ほど自家用車の保有率は高く「1人1台」が当たり前の地域も多くあります。それでも「まとまった初期費用が用意できない」「維持費が毎月いくらかかるか読めない」という不安は、地方の若者も同様に抱えています。KINTO調査では地方在住Z世代でも37.7%が「収入が増えたらクルマ関連支出を増やしたい」と答えており、クルマへの思いは地方でも変わりません。

場所が違っても「所有のハードルが上がっている」という現実はこの世代に共通しています。そしてその根っこにある経済的な事情は、都市部も地方も、ほぼ同じです。

次回:山口県のクルマが欠かせない地域で、月2万円のサブスクを利用し続ける大学生

GAZOO編集部では、数字だけでは見えない実際の選択を知るため、地方でクルマと向き合う若者に取材を行いました。次回は、山口県のクルマが欠かせない地域で、自動車を持たずに月2万円のサブスクを利用し続ける大学生に話を聞きます。

(文・図解:小松暁子 編集:平木昌宏 画像:Adobe Stock)

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