「持つ」より「乗りたい」派だったクルマ好きの若者が、初めてのマイカーを選ぶまで【連載コラム:Z世代とクルマのリアル】
全3回で、Z世代とクルマの関係を追う本連載。
第1回では、クルマを持ちたくても経済的な負担から持ちにくい現実を取り上げました。第2回では、クルマが生活に欠かせない地域で、サブスクを選んだケースを紹介しました。
最終回に登場するのは、神奈川県川崎市に住む20代前半のmarcomz21さんです。大学4年生だったころはマイカーを持たず、レンタカーやカーシェアでさまざまなクルマに乗っていました。
その後、クルマ関連の会社に就職し、初めてのマイカーとして「MAZDA2 15 BD i Selection II」を購入。今回は、クルマを借りて楽しんでいたmarcomz21さんが、自分の一台を選ぶまでをたどります。
クルマがなくても暮らせる。それでも、いろいろなクルマに乗りたい
川崎市は公共交通が充実しており、marcomz21さん自身も「クルマがなくても生活できる」と話します。
それでも、クルマへの関心が薄かったわけではありません。
「クルマは好きだけど、マイカーは持っていなかったんです。好きだからこそ、いろいろなクルマに乗ってみたいと思っていました」
自宅には父親のCX-5(マツダ)がありますが、父親が通勤や休日に使っているため、いつでも自由に乗れるわけではありません。駐車場も1台分しかなく、自分のクルマを持つなら、別に月約2万円の駐車場代が必要になります。年齢的に保険料も高く、大学生だった当時、所有は現実的な選択ではありませんでした。
そこで選んだのが、レンタカーやカーシェアでした。レンタカーはガソリン代を含めても1回6,000円以内、カーシェアなら2時間で1,000円ほどに収まることもあります。
「駐車場代として消えていくお金があるなら、その分でいろいろなクルマに乗ってみたいと思いました。CDを1枚持つより、サブスクでいろいろな音楽を聴く感覚に近いかもしれません」
固定費を抑えながら、乗るたびに違うクルマを選べる。その身軽さにも魅力を感じたそうです。
レンタカーで広がった、クルマの楽しみ方
さまざまな車種を借りてきたmarcomz21さんも、免許を取得した当初は、運転に強い不安を感じていたといいます。
「怖かったんです。事故のリスクもありますし、友人を乗せるなら命を預かることにもなります。自分の技術で本当に大丈夫なのか、ずっと不安でした」
免許を取ってからしばらくは、父親のCX-5を月に一度ほど運転しながら、少しずつ経験を重ねたそうです。初めてレンタカーを利用したのは、友人と地元のパーキングエリアへ出かけようとしたときのこと。父親のクルマにはたばこの匂いが残っていたため、近所のレンタカー店で白いアクアを借りたといいます。
それからは、出かける場所だけでなく、どのクルマを借りるかも楽しみのひとつに。フィットやヤリス、アルト、MRワゴンに加え、ロードスターなどのMT車にも乗り、目当ての車種が近くになければ、交通費をかけて別の店舗まで借りにいくこともあるそうです。
「周りの同年代だと、いつも同じ店舗で同じような車種を借りる人が多いんです。交通費をかけていろいろな店舗へ行き、特定の車種を借りるのは、かなり珍しいと思います」
marcomz21さんのスマートフォンのアルバムには、これまでに運転したクルマの写真が並び、車種や年式、型式まで記録されているそう。
「何年かあとに『あのとき、どこに行ったっけ』となるのが嫌で。写真と一緒に残しておくと、少し危なかった場面や、うまく運転できたところも思い出せるんです」とmarcomz21さんは話します。
乗り比べて見えてきた、クルマ選びの基準
さまざまなクルマに乗るうち、marcomz21さんは、ステアリングやペダルの重さ、アクセルを踏んだときの力の出方、燃費など、車種ごとの違いを意識するようになったといいます。
なかでも、燃費を気にするきっかけとなったのが、約20年前の型のハイト系コンパクトカーを借りたときのことでした。街乗り中心で走って、燃費は1リットルあたり10kmほどだったそうです。
「最近のハイブリッド車なら、1リットルあたり20kmほど走ることもあります。クルマによって、燃料代は変わるんだなと。それからは、借りる前に燃費も調べるようになりました」
高性能なクルマにも興味はあるものの、性能を使いこなせるか、部品代や保険料を無理なく払えるかまで考えると、欲しさだけでは選べないと話します。
「それなら、その分のお金を高速代に回して、いろいろな場所へ出かけたいですね」
初めてのマイカーにMAZDA2を選んだ理由
社会人になったmarcomz21さんがマイカーの購入を決めたきっかけは、MAZDA2の国内生産終了を知ったことでした。
「低重心で運転が楽しいコンパクトカー、MAZDA2がなくなってしまうと聞いたんです」
就職してから時間がたち、頭金が貯まっていたこともあって、200万円前後のクルマなら無理なく購入できる見通しが立っていました。
10年落ちの中古車をローンで購入することも検討しましたが、新車と比べて月々の支払額に大きな差がなかったため、新車を選ぶことにしたといいます。また、ある程度の人数を乗せて長距離を走れることも、MAZDA2を選んだ理由のひとつでした。
当初は、価格を抑えた「15C II」も検討しましたが、希望していたSOSボタン付き仕様の在庫がなかったため、グレードを上げて「MAZDA2 15 BD i Selection II」を選んだそうです。
乗りくらべた経験が、納得の一台につながった
MAZDA2を選ぶ際には、レンタカーやカーシェアでさまざまなクルマを乗りくらべてきた経験も、判断材料になりました。
「ステアリングやペダルの重さ、パワーの出方、燃費など、いろいろなクルマの違いを知れたことが、クルマ選びに影響しました。クルマとの一体感も重視するようになりました」
マイカーを持たずにレンタカーやカーシェアを利用していた時期についても、marcomz21さんは「とても有意義だった」と振り返ります。
「毎回、新鮮な気持ちで運転できましたし、月極駐車場代や高い保険料のことを考えなくてよかったのも大きかったですね」
マイカーを持っていなかった時期も、購入までの空白だったわけではありません。負担を抑えながらさまざまなクルマを知り、自分の好みを確かめる時間になりました。
納車から1か月を待たず、MAZDA2の走行距離は1,000kmを超えたそうです。
暮らしに合わせて変わる、クルマとの付き合い方
本連載で紹介した若者たちは、それぞれ異なる環境と事情のなかで、クルマとの付き合い方を選んでいました。
経済的な負担からクルマを持ちにくい人、生活に必要なクルマをサブスクで利用する人、クルマがなくても暮らせる環境でさまざまな車種を借り、やがて自分の一台を購入した人。選択はそれぞれ異なりますが、いずれもZ世代に見られる多様な付き合い方の一例です。
クルマを「持つか、持たないか」という二択だけでは、その関係は捉えきれません。生活環境や経済状況、関心、ライフステージが変われば、自分に合う付き合い方も変化します。
若者の「クルマ離れ」を所有率だけで捉えると、こうした関わり方や変化はこぼれ落ちてしまいます。持っているかどうかだけでなく、何のために乗り、どのような方法を選び、その選択がどう変わっていくのか。そこまで見て初めて、Z世代とクルマの現在が見えてくるのではないでしょうか。
【X】
marcomz21さん
(文:小松暁子 編集:平木昌宏 写真提供:marcomz21さん)
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